仕事の性差って、本当にあるのでしょうか?
「男の仕事」「女の仕事」といった言葉を聞いたことがあるかもしれません。
でも、今の社会ではそんな考え方はもう古いのかもしれません。
男女で働き方や評価が違うのかどうか、気になりますよね。
今回は『A Meta-Analysis of Gender Proportionality Effects on Job Performance』という研究論文をもとに、「男女の仕事の評価は平等なのか?」というテーマで最新のデータを紹介します。
この研究は、10万人以上の働く人を対象に、158の研究結果をまとめたものです。
性別による評価の差があるのか、どんな仕事で差が出るのかなど、意外な事実が見えてきました。
この記事では、難しい言葉を使わずに、分かるようにやさしく解説します。
性別に関係なく、自分らしく働きたいあなたにこそ読んでほしい内容です。
今回も、性格研究者で悪者図鑑著者のトキワ(@etokiwa999)が解説していきます。
※以下のHEXACO-JP診断は個人向けになります。サンブレイズテストは法人向けになります。


仕事の性差と評価の真実
性別で仕事の評価に差はあるの?
男女で仕事の評価に明確な差はほとんどありません。
多くの人が、女性は低く評価されやすいと考えています。
しかし研究では、女性のほうが少しだけ高く評価されています。
これは158の研究と10万人以上のデータに基づいています。
たとえば以下のような結果が出ました。
- 女性のほうが仕事の成績が0.1ポイントほど高い
- 80%の研究で、男女の評価差はほぼなし
- 客観的な数値でも男女の違いはごく小さい
つまり、性別によって大きく損をすることはなさそうです。
とはいえ、わずかな差も積み重なれば影響することもあります。
このように、実際には性別よりも個人の努力や能力が重視されているのです。
女性は実際に男性よりも評価が低いのか?
実際には女性のほうがやや高い評価を受けています。
多くの人が「女性は損をしている」と思うかもしれません。
ですが、研究ではむしろ女性が高く評価される傾向がありました。
たとえば以下の点がわかっています。
- 主観的な評価では女性の方が0.1ポイント高い
- 客観的な成果(売上など)でも小さな差で女性が上
- 周囲に良い影響を与える行動(後述)も女性が多め
もちろん、全ての職場で同じとは限りません。
ですが全体としては、女性が不利という証拠は見つかっていません。
このように、イメージと実際の結果には差があるのです。
トークン効果って何?なぜ注目されてきたのか
「トークン効果」は、少数派が不利になる考え方です。
職場で女性が少ないと、それだけで目立ってしまいます。
そのため、周りからステレオタイプで見られやすくなります。
たとえば次のようなことが起こるとされていました。
- 「女性は感情的だ」と思われる
- 少ない人数の中で代表のように扱われる
- 小さなミスが目立ちやすくなる
こうした環境では、正当に評価されにくいと考えられてきました。
しかし今回の研究では、実際には大きな不利は見つかりませんでした。
つまり、「人数が少ないだけで評価が下がる」とは言い切れないのです。
小さな差でも影響はある?研究から見た数値の意味
男女の評価差は小さくても、気をつける必要があります。
研究では、女性が0.1ポイントだけ評価が高いとされました。
たったそれだけと思うかもしれませんが、意味のある差です。
このような点が注目されています。
- 評価差が昇進やボーナスに影響することもある
- 同じ能力でも、受け取る言葉が変わる可能性がある
- 長期的には、少しの違いが大きな結果につながる
このように、小さな差だからこそ慎重に見ていく必要があります。
ほんの少しの違いでも、蓄積すると格差になることもあるのです。
男女の職場評価に関する研究が増えている理由
性別による評価の公平さが社会で注目されているからです。
近年、男女の平等や働き方に関心が高まっています。
そのため、研究でもこのテーマが多く取り上げられています。
たとえば以下のような理由があります。
- 働く人の多様性が社会全体で重視されている
- 公正な評価制度を作ることが求められている
- 法律や制度がジェンダー平等を後押ししている
研究が進むことで、感覚や思い込みではなく、事実に基づいた議論ができるようになります。
だからこそ、今後もこの分野の研究は増えていくでしょう。
仕事の性差と組織内の男女比
女性が少ない職場では差別があるの?
女性が少ないだけでは、評価が下がるとは限りません。
これまでは「女性が少ないと不利」という考えがありました。
しかし今回の研究では、人数の少なさと評価は関係が薄いとされました。
たとえば、以下のようなことが分かっています。
- 女性が1〜15%の職場でも、評価が低いとは言えない
- 女性が多い職場でも、評価が急に上がるわけではない
- 数の違いよりも、仕事内容や環境の方が影響が大きい
つまり、「少数派だから評価が下がる」とは限らないのです。
この研究は、性別よりも個人の実力が評価されていることを示しています。
女性の割合が増えれば評価は上がる?
女性の割合が多くても、評価の傾向はあまり変わりません。
多くの人が、「女性が多い職場なら評価も公平になる」と思うかもしれません。
ですが、研究では女性の割合が増えても評価の差は大きく変わらないと示されました。
具体的には次のような結果です。
- 女性が多い職場でも、評価の差は0.1ポイント前後
- 男女比と評価の関連はほとんどなかった
- ステレオタイプの影響も限定的だった
そのため、人数だけで職場の公平さが決まるとは言えないことがわかります。
評価の公正さは、組織の姿勢や評価方法にも左右されるのです。
少数派の女性が感じるプレッシャーとは
女性が少ない職場では、目立つことで負担を感じることがあります。
たとえ評価が公平でも、心理的なプレッシャーは存在します。
「トークン(象徴)」として扱われることが、緊張や不安につながるのです。
このような状況が報告されています。
- 女性が「代表」として見られがち
- ミスが目立ちやすいと感じる
- 常に「評価されている」と意識しやすい
こうした精神的負担が、長く働く上での障害になることもあります。
つまり、数が少ないだけで評価が下がるわけではなくても、精神的な影響は残るのです。
組織の男女比と評価の関係は意外な結果に
男女比が偏っていても、評価はあまり影響を受けませんでした。
従来の考えでは、「女性が少ないほど不利になる」とされていました。
しかしこの研究では、そのような線形の関係(人数が増えるほど評価が上がる)は見られませんでした。
研究結果は次のとおりです。
- 男女比と職務評価の間に大きな相関はなし
- 男女比にかかわらず、女性がやや高い評価
- 男性が多くても、評価が偏っているとは限らない
このことから、組織の性別構成だけでは評価の傾向を説明できないといえます。
思い込みではなく、事実に基づいて見ることが大切です。
男女比が同じでも評価に差はある?
男女が同じ数でも、評価に小さな差は見られました。
興味深いのは、男女比が同じでも女性の方がやや高い評価を受けていた点です。
つまり、男女が平等な割合でも「女性の方が不利になる」とは限りません。
以下のような傾向が示されました。
- 男女比が五分五分でも女性が少し高評価
- 評価の差は一貫して小さいが、女性に有利
- 職場全体の文化や評価者の態度の方が重要
結論として、男女が同じ人数でも性別による不平等は見られなかったということになります。
評価の差は、個人の行動や能力に由来する部分が大きいのです。
仕事の性差と職務の種類
主観的な評価と客観的な評価の違い
主観的な評価でも、客観的な評価でも、男女の差は小さいです。
まず、評価の方法には主観的なものと客観的なものがあります。
主観的な評価とは、上司などが感じたことにもとづく判断です。
客観的な評価は、売上などの数字で決まるものです。
研究によると、次のような結果が出ました。
- 主観的評価:女性のほうが0.1ポイント高い
- 客観的評価:男女差は0.03ポイントとわずか
- どちらも女性にわずかに有利な結果
つまり、どんな方法でも男女の差はあまり大きくないということです。
評価の形が違っても、性別による不平等はほとんど見られませんでした。
上司の評価は性別で変わるの?
上司の性別によっても、評価に大きな差は出ませんでした。
評価する人の考えや立場が、結果に影響することもあります。
しかし、研究では評価者が誰であっても大きな違いはありませんでした。
注目すべきポイントは以下の通りです。
- 男性上司でも女性上司でも、評価の傾向は同じ
- 男女ともに、女性をやや高く評価する傾向
- 性別よりも「その人の働きぶり」が重視される傾向
つまり、評価する側の性別も、評価される側の性別と同じように影響が少ないのです。
個人の仕事ぶりが、きちんと見られているといえます。
売上や成果でも男女に差はある?
売上などの数字でも、男女の差はほとんどありません。
「数字で評価される仕事なら平等だろう」と思うかもしれません。
実際、その通りで、研究では男女の違いはごく小さなものでした。
次のようなデータが示されています。
- 客観的成果の平均差は0.03ポイント
- 女性の方がやや成果が高い傾向
- 性別よりも経験や工夫の方が影響大
つまり、成果主義の仕事でも、性別による差別はほとんどないと考えられます。
男女の違いよりも、個人の取り組みの方が成果に反映されるのです。
組織市民行動ってどんな仕事のこと?
組織市民行動とは、周囲を助ける行動のことです。
この言葉は少し聞き慣れないかもしれません。
組織市民行動とは、会社で自分の仕事以外に他人を助けたり、雰囲気を良くしたりする行動を指します。
たとえば、以下のような行動です。
- 困っている同僚を手伝う
- ゴミ拾いや整理整頓を率先して行う
- 会議でみんなの意見をまとめる
研究では、女性の方がこうした行動を多くとる傾向がありました。
その結果、評価もやや高くなる傾向があります。
つまり、周囲との関係を大事にする行動が評価される場面では、女性が強みを持っているのです。
女性は周りを助ける行動が得意?
女性は周囲をサポートする行動で高評価を受けやすいです。
研究では、女性は組織市民行動をよく行っていることがわかっています。
これは、誠実さや思いやりといった性格特性が影響しているかもしれません。
次のような傾向があります。
- チーム全体の空気づくりに積極的
- 他人のミスをカバーすることが多い
- 上司や同僚から信頼されやすい
こうした行動は、成績に直接つながらなくても、全体の評価を高める要因になります。
つまり、女性は「助け合いの力」が高く、それが仕事の評価にもプラスに働いているのです。
仕事の性差と働く場所の違い
民間企業と軍隊で差はあるの?
民間でも軍隊でも、性別による評価差は小さいです。
軍隊は男性中心の職場と考えられがちです。
そのため、女性が不利になるのではないかと心配されてきました。
しかし研究では、軍隊でも民間でも評価差はほとんど変わりませんでした。
具体的には、次のような数値が示されています。
- 民間企業:女性の評価が平均0.10ポイント高い
- 軍隊:女性の評価が平均0.06ポイント高い
- どちらでも、女性にやや有利な傾向
つまり、職場の種類に関係なく、性別の影響はあまり大きくないのです。
軍隊でも、公平な評価が行われている例は多いのです。
組織の数が違うと結果はどう変わる?
1つの会社か複数の会社かでも、評価傾向は大きく変わりません。
研究では、1つの組織だけを調べた研究と、複数の組織を調べた研究がありました。
でも、どちらでも結果は似ていました。
以下のような傾向があります。
- 単一の会社:女性が0.09ポイント高評価
- 複数の会社:女性が0.11ポイント高評価
- 評価差の幅はどちらもほぼ同じ
つまり、どのような規模の研究でも、女性がやや高い評価という結果は変わらないのです。
組織の数が違っても、性差の傾向は安定しているといえます。
一つの会社だけを見ると違いはある?
一つの会社を調べた場合でも、女性がやや高評価でした。
「この会社だけ特別なんじゃないの?」と思うかもしれません。
でも、個別の会社に限定した調査でも同じような結果が出ています。
たとえば、次のような事実があります。
- 特定の企業でも女性の評価が高かった
- 評価基準が明確な会社ほど、性別の影響が小さい
- 公正な評価制度を持つ会社では差が出にくい
つまり、どの会社でも性別よりも仕事の質や行動が評価されていることがわかります。
会社ごとのばらつきよりも、全体的な傾向の方が明確でした。
職場の文化が評価に影響するの?
職場の文化よりも、個人の行動が評価に影響していました。
「男社会の会社では女性が不利では?」と思う人もいるでしょう。
でも研究では、文化的な違いよりも個人の行動が重視されていました。
次のようなポイントがあります。
- ステレオタイプがある職場でも差は小さい
- 評価者が仕事内容に注目していた
- 個人の誠実性や協力性が評価につながった
つまり、文化よりも実際の働き方や姿勢が重要という結果です。
職場全体の雰囲気より、個々の実力が評価に反映される時代になっています。
上司が多い職場では女性は不利?
上司の多さや立場の違いでも、性差の影響は見られませんでした。
管理職の多い職場では、男性中心になりがちです。
そうした環境で女性が不利になるのではと考えられてきました。
しかし、研究ではそのような明確な不利は見られませんでした。
注目すべき点は以下の通りです。
- 管理職かどうかに関係なく女性がやや高評価
- 上司の立場や数が性差に強い影響を与えなかった
- 評価制度そのものの透明さが重要
このことから、上司の多さや職場の構造だけでは性差は説明できないといえます。
評価の公平さは、制度と意識のバランスで決まるのです。
仕事の性差と職種・時代の変化
男らしい仕事と女らしい仕事ってまだあるの?
仕事に性別イメージはありますが、評価には大きく影響しません。
たとえば「建設業は男の仕事」「保育は女の仕事」という考え方があります。
これは性別による仕事のイメージ、つまりステレオタイプです。
研究では、こうしたイメージが評価にどう影響するかが調べられました。
その結果、以下のようなことがわかりました。
- 男性的な職種でも女性の評価は少し高い
- 女性的な職種でも評価の差はほとんどない
- 中立的な職種でも一貫して女性がやや高評価
つまり、性別のイメージと評価はあまり結びついていないのです。
今では仕事の種類に関係なく、能力で評価される傾向が強まっています。
男性が多い仕事で女性はどう評価される?
男性が多い職場でも、女性の評価は不利になりませんでした。
これまで、男性中心の仕事では女性が不利だと考えられてきました。
でも今回の研究では、それを裏づける結果は出ませんでした。
以下のような内容が確認されています。
- 男性が多い職場でも、女性は少し高評価
- 性別構成に関係なく、評価基準が平等なら差が出にくい
- 実際の成果や行動が評価を決めていた
このように、男性が多いからといって、女性が不利になるとは限らないのです。
働く人の数よりも、仕事の内容や働き方が重視されています。
研究の目的で評価は変わるの?
評価が何のために行われるかによって、多少の違いはありました。
たとえば、昇進や給料を決めるための評価と、研究目的の評価では使い方が違います。
ですが、どちらの場合でも女性の方がやや高く評価されていました。
具体的には次のような傾向があります。
- 昇進などのための評価:女性が0.11ポイント高い
- 研究目的の評価:女性が0.10ポイント高い
- 評価の理由が違っても結果はあまり変わらない
つまり、評価の目的に関係なく、公平さは保たれていたと言えます。
どういう場面で評価されるかよりも、内容が重要とされているのです。
昔と今で性差の見られ方は変わった?
時代が変わっても、性別による評価差は一貫して小さいままでした。
「昔は差別が多かったけど、今は違うのでは?」と思うかもしれません。
しかし研究では、過去のデータでも評価の差は小さいと示されています。
たとえば次のような年代別の傾向があります。
- 1970年代:女性の方がやや高評価(d=−0.27)
- 1990年代以降:差は縮まりつつあるが、女性有利が継続
- 最新の2010年代:差は最小だが、女性の方が少し上
つまり、時代によって評価の差は少し変化しても、大きな逆転は起きていないのです。
社会が変わっても、評価においては比較的安定した傾向が見られます。
論文から見た未来の仕事の性差とは
今後は性別よりも個人の特性がますます重視されるでしょう。
今回の研究でわかったのは、「性別による不公平はそれほど見られない」という事実です。
それは、社会が少しずつ変わってきた証でもあります。
未来の職場において注目される点は以下の通りです。
- 性別より誠実性や協調性などの性格特性が大切になる
- 評価制度の透明性と公正さがますます求められる
- 個人の能力や努力が正しく評価される仕組みが広がる
つまり、今後は「男だから」「女だから」といった見方はますます通用しなくなるのです。
働く人それぞれの力がまっすぐ評価される社会が近づいています。
最後に
ここまで見てきたように、仕事の性差は思っているよりずっと小さいものでした。
多くの人が「女性は不利なんじゃないか」と感じているかもしれませんが、研究によるとむしろ女性の方が少しだけ高く評価されていることもあるのです。
もちろん、職場の環境や文化によって感じ方は違うかもしれません。
でも、評価の場面では性別よりも「どんなふうに働くか」が大事にされているのが今の現実です。
だからこそ、これから働くみなさんには「自分の力を信じて、性別にとらわれずに働ける時代が来ている」と知ってほしいと思います。
自分らしく、誠実に、まわりと協力して働くことが、評価されるいちばんの近道です。
性別で仕事が決まる時代は、もう終わりに近づいています。
これからの未来は、自分の努力や人柄がちゃんと見てもらえる社会なのです。

ライター 兼 編集長:トキワエイスケ @etokiwa999
株式会社SUNBLAZE代表。子どもの頃、貧困・虐待家庭やいじめ、不登校、中退など社会問題当事者だったため、社会問題を10年間研究し自由国民社より「悪者図鑑」出版。その後も社会問題や悪者が生まれる決定要因(仕事・教育・健康・性格・遺伝・地域など)を在野で研究しており、社会問題の発生予測を目指している。凸凸凸凹(WAIS-Ⅳ)。