マキャヴェリズムの改善は、近年とても注目されているテーマです。
マキャヴェリズムとは、人をだましたり、うまく利用しようとしたりする性格のことを指します。
でも、そんな性格も変えることができるのです。
この記事では、論文『Understanding Machiavellianism: Traits, Psychological Perspectives, and Implications for Psychotherapy』をもとに、マキャヴェリズムの特徴や、それを改善するための方法をやさしく解説します。
感情に気づきにくい、自分を守るために他人を信じられない、そんな悩みを抱える人もいるかもしれません。
けれども、共感する力や感情の理解を育てることで、少しずつ変わっていくことができます。若いうちから始めることで、より良い人間関係も築けます。
今回も、性格研究者で悪者図鑑著者のトキワ(@etokiwa999)が解説していきます。
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目次
マキャヴェリズムの改善に向けて知っておきたいこと
マキャヴェリズムとはどんな性格特性か
まずマキャヴェリズムとは、他人を操作する性格の傾向です。
この性格は、16世紀の思想家マキャヴェリの考えに由来します。
しかし、現在では心理学のなかで性格特性として使われています。
特に重要な特徴は以下のとおりです。
- 他人をだまして自分の得を得ようとする
- 相手の感情に関心を持たない
- 信頼や誠実な関係を大切にしない
- 目標のためならうそやごまかしも使う
このような人は、人間関係を道具のように扱います。
人の気持ちを考えず、自分の成功ばかりを重視します。
また、共感の心が弱く、感情のつながりを避けます。
この特性は「ダークトライアド」と呼ばれる3つの性格群の一つです。
他の2つは、自己愛(ナルシシズム)とサイコパシーです。
3つとも、人に迷惑をかける行動が多く見られます。
マキャヴェリズムは一見冷静で計画的に見えることもあります。
ですが、他人との信頼をこわす行動が多く、長期的には問題になります。
この性格は、他人に迷惑をかけるだけでなく、自分にも不利な影響をもたらします。
操作的な行動が起きる心理的な理由
マキャヴェリズムの人は、人は信用できないと考えています。
この考えは「皮肉な世界観」と呼ばれます。
つまり、「みんな自分の利益しか考えていない」と思い込んでいるのです。
この考えが強いと、次のような行動が増えます。
- うそをついて自分の立場を守る
- 他人の感情を使ってコントロールする
- 仲間をふりして裏で利用する
なぜこうした考えが生まれるのでしょうか。
子どものころに、家族との信頼関係がうまく育たなかったことが多いです。
たとえば、親からの放任や暴言、感情的な交流の少なさが関係しています。
また、感情を抑えるクセがある人が多く、相手の痛みにも無関心です。
そのため、「やられる前にやる」という考えに陥りやすくなります。
このような考えは、本人を守るためにできたものですが、かえって人間関係をこわす原因にもなります。
他人への共感が弱い理由とは
マキャヴェリズムの人は、他人の気持ちを感じにくいです。
でも、まったく理解できないわけではありません。
「どう思っているか」は分かるけれど、「どう感じているか」に共感できないのです。
これを心理学では「認知的共感はあるが情動的共感がない」と言います。
具体的には以下のような違いがあります。
- 認知的共感:相手の考えを理解する力
- 情動的共感:相手の感情に心を動かされる力
マキャヴェリズムの人は前者が高く、後者がとても低い傾向があります。
だから、他人の気持ちを知ることはできるが感じることはできません。
このズレが、他人を操作する行動につながります。
しかも、情動的共感が低いと、罪悪感や後悔を感じにくくなります。
それにより、うそや裏切りに対するブレーキがかかりません。
つまり、相手を思いやる気持ちが育ちにくいため、関係が一方的になります。
感情をうまく理解できない問題
マキャヴェリズムの人は、自分の感情にも鈍感です。
これは「アレキシサイミア」という状態で、感情を言葉にしづらい性格を指します。
この傾向が強いと、自分が何を感じているのかよく分かりません。
主な特徴は以下のとおりです。
- 気持ちをうまく説明できない
- 感情より行動に注目する
- 他人の気持ちにも無関心になりやすい
こうした傾向は、自分の内面とのつながりを弱めます。
そのため、人とのつながりも浅くなりがちです。
感情よりも目に見える行動や利益を優先するようになります。
このような心のクセが、マキャヴェリズムの性格と深く関わっています。
さらに、自分の感情に無関心だと、相手の感情にも無関心になります。
感情への気づきの弱さは、自分にも他人にも冷たい行動につながります。
信頼を築きにくい人間関係の特徴
マキャヴェリズムの人は、人との距離を保ちたがります。
これは「回避的愛着スタイル」と呼ばれるものです。
人と親しくなることを怖れ、信頼を避ける傾向があります。
具体的な行動としては以下のようなものがあります。
- 必要なときだけ人と関わる
- 深い話や感情の共有を避ける
- 他人を信じず、心を開かない
こうした人は、人間関係を「使えるかどうか」で判断する傾向があります。
感情的なつながりを大切にせず、損得で動きがちです。
そのため、人間関係が長続きしにくく、孤立することもあります。
また、他人の親切や思いやりを疑うことも多いです。
「裏があるのでは」と感じてしまい、素直に受け取れません。
このような人間関係のあり方は、本人を守る反面、信頼を遠ざけてしまいます。
マキャヴェリズムの改善に役立つ心理のしくみ
情動性の低さがもたらす問題とは
マキャヴェリズムの人は情動性がとても低いです。
情動性とは、不安や悲しみなどの感情の強さや反応のしやすさを表します。
この特性が低いと、感情に鈍くなり、人の気持ちに気づきにくくなります。
その結果、次のような問題が起こりやすくなります。
- 自分の気持ちに気づかずストレスがたまりやすい
- 他人の感情に無関心で冷たく見える
- 共感ができずにトラブルを起こす
感情に気づけないと、人との関係もうまくいきません。
また、感情を出さないことで「強い人」に見えるかもしれませんが、実はとても傷つきやすい場合もあります。
感情を無視することは、短期的には楽に感じるかもしれません。
しかし、長期的には人間関係の悪化や孤立につながります。
情動性の低さは、周囲と心を通わせる力を弱め、信頼関係を築く妨げになります。
認知的共感は高くても情動的共感が低い理由
マキャヴェリズムの人は頭でわかっても心が動きません。
認知的共感は、相手が「どう思っているか」を理解する力です。
一方、情動的共感は「どう感じているか」に共鳴する力です。
マキャヴェリズムの人は、認知的共感は高いことが多いです。
つまり、相手の考えを読むのは得意です。
しかし、その気持ちに寄り添うことが苦手です。
そのため次のような行動をとることがあります。
- 相手の弱みを見抜いて利用する
- 表向きは優しくふるまうが、裏では目的のために動く
- 自分の利益のために感情を操作する
これは、頭では人の気持ちを理解しても、心では感じていないからです。
感情が動かないので、良心や罪悪感を持ちにくくなります。
つまり、他人の感情を知っても、それを思いやる気持ちが育たないのがこの特性の問題点です。
感情に気づきにくい性格の傾向
マキャヴェリズムの人は感情をことばにしづらいです。
これは「アレキシサイミア」と呼ばれる傾向です。
この状態では、自分の感情をうまく感じ取れず、説明も難しくなります。
この傾向が強い人の特徴には以下のようなものがあります。
- 感情の違いがよく分からない
- 「悲しい」「寂しい」などの言葉を使うのが苦手
- 気持ちよりも出来事や行動に注目しがち
そのため、話し合いでは本音が出にくく、表面的な会話になりやすいです。
自分の感情に無関心だと、他人の気持ちにも気づきにくくなります。
また、感情を感じる力が弱いと、ストレスの原因に気づかず、心の健康にも悪影響があります。
感情に鈍感なままでいると、自分自身の心の声も、人の気持ちも聞き取れなくなってしまいます。
他人の感情を読む力を操作に使う危険
マキャヴェリズムの人は人の感情を利用することがあります。
彼らは他人の考えや感情を理解するのが得意です。
しかし、その力を相手のためではなく、自分のために使うことが多いです。
具体的には次のような使い方をします。
- 弱っている人に優しくして信用を得る
- 相手の反応を読みながら言葉を選び、誘導する
- 相手が怒らないようにごまかしながら目的を達成する
このように、感情を読む力が「共感」ではなく「戦略」に使われます。
本来、感情を理解する力は人と仲良くなるためのものです。
しかし、目的のために使われると、相手を傷つける結果になります。
この使い方が続くと、周囲との信頼関係が壊れ、自分も孤立していきます。
他人の感情を読む力をどう使うかが、信頼される人になるかどうかを決める大事な分かれ道です。
「人は信じられない」と思い込む世界観
マキャヴェリズムの人は、人間はみんな自分勝手だと思っています。
これを「皮肉な世界観」といいます。
この考え方が強いと、他人を疑う気持ちが先に立ちます。
たとえば以下のような考え方をします。
- 他人の親切には裏がある
- 助けるよりも先に自分を守るべき
- 人を信じると損をする
このような考え方は、過去の経験から作られたことが多いです。
たとえば、子どものころに傷ついた経験や、親との信頼関係が弱かったことなどが影響します。
この世界観のもとでは、人を信じようとする気持ちが育ちにくくなります。
その結果、人とのつながりがうすくなり、ますます孤独になってしまいます。
「人は信じられない」と思う心をゆるめることが、人とのつながりを築く第一歩になります。
マキャヴェリズムの改善に向けた治療の課題
心を開きにくく信頼関係が築きにくい
マキャヴェリズムの人はセラピストにも心を開きません。
信頼関係は、心理的な治療でとても大切な土台です。
ですが、この特性を持つ人は、他人を深く信じることが難しいです。
その理由として、次のような点が挙げられます。
- 他人を基本的に疑ってかかる
- セラピストの言葉を表面的にしか受け取らない
- 感情のやりとりを避けようとする
こうした態度は、治療の進行を遅らせます。
セラピストがどんなに丁寧に関わっても、相手が閉じていれば効果が出にくいのです。
また、セラピーを「役に立つかどうか」でしか見ない人もいます。
そのため、内面的な変化よりも、自分の利益を優先してしまいます。
信頼できる関係を築けないと、深い話し合いができず、心の変化が起きにくくなります。
セラピストを操作しようとすることがある
マキャヴェリズムの人は治療の場でも操作的です。
セラピストとの関係さえも、利用できるものと考えることがあります。
この傾向が強いと、治療を本来の目的とは違う方向に使ってしまいます。
たとえば次のような行動です。
- 良い患者を演じて印象を良くしようとする
- セラピストを味方につけて他人を操作しようとする
- 法的な目的のためだけに治療を受けるふりをする
このように、治療関係自体が「戦略の道具」になることもあります。
セラピストも騙されてしまうことがあり、判断が難しくなります。
そのため、専門家側は冷静で客観的な視点を持ち続けることが必要です。
感情に流されず、事実をもとに対応するスキルが求められます。
治療の場でさえも操作対象になるため、専門家は注意深く関わる必要があります。
感情を話すこと自体が苦手な場合もある
マキャヴェリズムの人は自分の感情を話すのが難しいです。
これは、感情をうまく感じられなかったり、表現する言葉が見つからないためです。
心の中で何を感じているか分からないまま、表面的な会話になることも多いです。
主な理由は以下のようなものがあります。
- 感情に気づかないまま話している
- 気持ちを説明することに慣れていない
- 感情を見せるのは弱さだと思っている
このような状態では、治療の本質である「自分を知ること」が難しくなります。
自分の気持ちを言葉にできなければ、問題を深く掘り下げることもできません。
治療では、少しずつ感情のラベルを付ける練習をしていくことが大切です。
感情を語れないままでは、自分の心の変化に気づくこともできません。
表面上は協力的でも本音は見せない
マキャヴェリズムの人は表向きは良い態度を取ります。
治療の場では、協力しているように見せるのが上手です。
ですが、心の奥では別の意図を持っていることがあります。
たとえば以下のような行動が見られます。
- セラピストに合わせているふりをする
- 本当の感情を隠したまま話を進める
- 目的を達成するためだけに協力している
このような態度は、治療の進行をゆがめてしまいます。
見かけの協力があるため、問題が見えづらくなるのです。
セラピストは、その裏にある動機や本音を読み取る必要があります。
そして、安心して本音を話せるような関係づくりが大切です。
表面だけの協力は、かえって治療を停滞させる原因になります。
権利意識や不信感をどう扱うかがカギ
マキャヴェリズムの人には「自分は特別だ」という気持ちがあります。
これは「権利意識」と呼ばれるもので、「自分は人より優先されるべき」と思っている感覚です。
さらに、人に対する強い不信感も同時に持っています。
このような心のクセがあると、治療でも問題が生じます。
- セラピストに対しても命令的な態度をとる
- 指示に反発したり、否定的な態度を見せる
- 他人の好意を信じられず、距離を置こうとする
これらは、過去に信頼を裏切られた経験などからくる防衛反応です。
本当は傷つくのが怖くて、先に相手を遠ざけてしまうのです。
このような心の動きを理解しながら、少しずつ信頼を取り戻すことが大切です。
権利意識と不信感を乗り越えるには、安心できる関係づくりが欠かせません。
マキャヴェリズムの改善に使える心理的アプローチ
共感力を育てるトレーニングの効果
共感を育てることはマキャヴェリズムの改善に重要です。
マキャヴェリズムの人は、他人の感情を感じる力が弱いです。
そのため、共感力を高める訓練が役立ちます。
このトレーニングでは以下のような方法を使います。
- 人の気持ちを言葉にする練習
- 他人の立場になって考える課題
- 日常での感情の観察と記録
これらの活動を通じて、感情への理解が深まります。
感情の共有ができるようになると、人間関係もよくなっていきます。
研究では、共感トレーニングによって操作的な行動が減ることが示されています。
相手を利用するよりも、協力しようとする気持ちが生まれてくるのです。
共感力は、他人とつながるための土台となり、信頼関係を築く第一歩になります。
他人の立場で考える練習のやり方
「他人の立場に立つ」練習は効果的な支援です。
この練習は「ロールテイキング」と呼ばれています。
マキャヴェリズムの人にとって、自分以外の視点を持つことは苦手なことが多いです。
練習では、以下のような課題が使われます。
- 相手の気持ちや考えを想像する作文
- 二人の立場を入れ替えて話し合うロールプレイ
- 映画や物語を読んで登場人物の視点を考える
このような活動をくり返すことで、視野が広がっていきます。
自分と違う考え方にも共感しやすくなります。
とくに思春期ではこのトレーニングがとても有効です。
若いうちに視点の転換ができるようになると、大人になってからの人間関係にもよい影響を与えます。
他人の立場を考える力は、思いやりや対話の基礎になります。
認知行動療法で考え方を見直す方法
考え方のクセを直すには認知行動療法が有効です。
認知行動療法では、物事のとらえ方と思考パターンを変える練習をします。
マキャヴェリズムの人は「人は信用できない」という考えにとらわれがちです。
そのため、以下のような内容が治療に使われます。
- 他人への見方をチェックして書き出す
- 過去の体験から信じられる例を探す
- 「操作しないと損をする」という思い込みに気づく
このようなワークを続けることで、思考の幅が広がっていきます。
すべての人が敵ではないという新しい認識が生まれる可能性もあります。
また、感情と行動の関係にも注目することで、衝動的な行動も減っていきます。
考え方を柔らかくすることが、信頼や協力を学ぶ第一歩になります。
スキーマ療法で根本の思い込みに働きかける
スキーマ療法は深いレベルの思い込みを変える方法です。
まずスキーマとは、幼い頃から身につけた「自分や他人に対する考え方」です。
マキャヴェリズムの人は、「人は裏切る」「自分は特別」などのスキーマを強く持っていることがあります。
治療では、次のようなステップでスキーマに取り組みます。
- 自分の思い込みを見つけて記録する
- そのスキーマができた体験をふり返る
- 今の現実に合わない部分を検討する
- 代わりに使える新しい考え方を練習する
スキーマは根深いので変えるには時間がかかります。
しかし、少しずつ他人との関係や感情の扱い方に変化が出てきます。
特に「不信」や「利用されることへの恐れ」への理解が深まることで、防衛的な行動もやわらぎます。
スキーマ療法は、性格の奥にある思い込みをやさしく見直す手助けになります。
倫理的な判断力を育てるトレーニング
善悪の感覚を育てる練習もマキャヴェリズムに効果的です。
マキャヴェリズムの人は、自分の利益を最優先にする傾向があります。
そのため、「それが正しいかどうか」を考える力を育てることが必要です。
練習方法としては、以下のような取り組みがあります。
- 実際にありそうなジレンマの場面を考える
- 自分の行動が他人にどう影響するかを話し合う
- 選択によって得られる結果を比較する
- 長期的な人間関係の変化を想像してみる
こうした活動を通じて、「相手にも気持ちがある」という感覚を養うことができます。
また、思いやりのある行動が、長い目で見ると自分の利益にもなると気づけるようになります。
本人が「正しいことをする意味」を理解できるようになると、操作的な行動も減っていきます。
倫理のトレーニングは、自分と他人を同じように大切にする意識を育てます。
マキャヴェリズムの改善とこれからの可能性
長期的な治療が必要な理由とは
マキャヴェリズムの改善には時間がかかります。
この性格特性は、長年にわたり身についた考え方と行動のクセからできています。
そのため、短期間での変化はむずかしく、じっくりとした支援が必要です。
主な理由としては、以下の点が挙げられます。
- 思い込みの根が深く、すぐには変わらない
- 感情への気づきが少なく、自分をふり返りにくい
- 防衛的な行動が習慣化している
研究によると、長期の関わりによって信頼関係が少しずつ築かれ、変化が見られるようになります。
とくに「人は信用できるかもしれない」と感じるようになるには、継続した経験が必要です。
短い支援では、表面的な態度は変わっても、内面的な変化までは届きにくいとされています。
マキャヴェリズムを本質的に改善するには、時間をかけて心の土台から見直す必要があります。
正直・謙虚さを高める取り組みの工夫
正直・謙虚さを育てることはマキャヴェリズムの改善に効果的です。
まず正直・謙虚さとは、約束を守る、責任を持つ、コツコツ努力する性格特性のことです。
マキャヴェリズムの人は、こうした面が弱い傾向にあります。
そこで使われる方法には、以下のようなものがあります。
- 毎週、小さな目標を決めて行動する
- 途中で投げ出さずやりきる習慣をつける
- 他人との約束を守ることの大切さを学ぶ
このような取り組みを繰り返すことで、誠実にふるまう力が少しずつ育っていきます。
とくに若い世代では、こうした行動を通じて性格そのものが変わることもあります。
研究では、定期的な行動練習が正直・謙虚さを高める効果を持つことが示されています。
誠実な行動を続けることが、信頼される自分をつくるきっかけになります。
感情を育てるための体へのアプローチ
感情を感じやすくするには体からの働きかけも効果的です。
マキャヴェリズムの人は感情に鈍く、心を動かすのが苦手です。
そのため、言葉だけでなく、体の使い方から感情に近づく方法があります。
たとえば以下のような工夫があります。
- 姿勢を正すことで気分が明るくなる
- 深呼吸をしてリラックスしやすくする
- 表情を意識的に変えて気持ちに変化をつける
研究によると、まっすぐ立つだけで脳の働きがよくなり、感情も少し動きやすくなるそうです。
体を通して心に変化を起こす方法は、簡単で始めやすい点でも有効です。
感情を扱うのが苦手な人にとっては、言葉より体の感覚の方が入りやすい場合もあります。
体の働きかけは、心の柔らかさや感情の目覚めを助ける手軽な手段になります。
思春期のうちからの支援が効果的
マキャヴェリズムの傾向は若いうちに対処するのが効果的です。
子どもの頃から他人の感情に共感できないままだと、大人になってから操作的な行動が強まるおそれがあります。
とくに思春期は、性格が大きく変わる時期です。
この時期の支援には次のような取り組みがあります。
- 他人の立場を考える練習を学校で行う
- 友だちとの関係で共感を育てる
- 感情を話す習慣を家庭でもつける
研究では、共感力の低い子どもはルールを破りやすくなる傾向があります。
そのため、早めの介入がその後の行動に良い影響を与えるとされています。
成長段階に合わせた支援は、性格全体のバランスを整える手助けになります。
若いうちからのサポートは、将来の人間関係や社会生活をより良くするための大きな一歩になります。
一人ひとりに合った対処が大切になる
マキャヴェリズムの改善には個別の対応が必要です。
すべての人が同じ理由でこの性格特性を持っているわけではありません。
その人の過去の経験や考え方によって、必要な支援も変わってきます。
支援で大切なことは以下のような点です。
- 相手の信頼のレベルに応じて関わり方を工夫する
- どの感情が弱いかをしっかり見きわめる
- 本人が納得できる形で取り組みを設計する
ある人には共感の練習が効果的でも、別の人には感情の言語化が先になる場合もあります。
一律の対応ではうまくいかず、相手に合った柔軟な支援が必要です。
本人のモチベーションや性格傾向をよく理解して、長く取り組める環境をつくることが大切です。
一人ひとりに合った方法こそが、持続的な変化を引き出す力になります。
最後に
マキャヴェリズムのような性格特性も、変えられる可能性があります。
だれかを利用したくなる気持ちの裏には、不安や信じられない気持ちが隠れていることもあります。
でも、少しずつでも感情を感じたり、人の気持ちを想像したりする力を育てていくことで、自分の行動や考え方も変わっていきます。
大切なのは、他人を信じてみようとする気持ちや、自分の弱さを認める勇気です。
すぐにはうまくいかなくても、時間をかければ変化は起こります。今回紹介した方法は、学校生活や友だちとの関わりの中でも活かせます。
自分をよりよくしたいと思ったとき、この記事がそのきっかけになればうれしいです。未来は、今のあなたの行動から始まります。

ライター 兼 編集長:トキワエイスケ @etokiwa999
株式会社SUNBLAZE代表。子どもの頃、貧困・虐待家庭やいじめ、不登校、中退など社会問題当事者だったため、社会問題を10年間研究し自由国民社より「悪者図鑑」出版。その後も社会問題や悪者が生まれる決定要因(仕事・教育・健康・性格・遺伝・地域など)を在野で研究し、論文3本執筆(うち1本ジャーナル掲載)。社会問題の発生予測を目指している。凸凸凸凹(WAIS-Ⅳ)。