友達の性格は自分と似ている?
友達を選ぶとき、性格の似た人を選びがちだと思ったことはありませんか?
最近の心理学研究では、友達の性格の類似性について興味深い発見がありました。
「Similarity and Assumed Similarity in Personality Reports of Well-Acquainted Persons」という論文では、大学生を対象に、自分と友達の性格がどれくらい似ているかを調べています。
どんな相手だと似ていると感じるのか、どんな性格が似やすいのか、などこの研究の結果について詳しく見ていきましょう。
今回も、性格研究者で悪者図鑑著者のトキワ(@etokiwa999)が解説していきます。
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目次
友達の性格は似ている?性格の類似性と仮定された類似性
性格の6つの次元とは?
近年、性格心理学では、性格を6つの次元で捉えるHEXACOが注目されています。
その6つの次元とは、以下のようなものです。
- 正直・謙虚さ(Honesty-Humility):正直で謙虚な性格
- 誠実性(Conscientiousness):真面目で誠実な性格
- 情緒安定性(Emotionality):感情が安定している性格
- 外向性(Extraversion):活発で外向的な性格
- 協調性(Agreeableness):優しく協調的な性格
- 開放性(Openness):新しいことに興味を持つ開放的な性格
これらの6つの次元は、HEXACOモデルと呼ばれる性格の分類法に基づいています。
HEXACOモデルは、多くの研究で支持されている信頼性の高い性格モデルの一つです。
性格の類似性を調べる際には、この6つの次元がよく用いられています。
友達の性格の類似性を調べた研究
友達との性格の類似性を調べた研究があります。
この研究では、大学生を対象に、自分と友達の性格を6つの次元で評価してもらいました。
そして、自分と友達の性格がどの程度似ているかを調べました。
つまり、性格の類似性を測定したのです。
さらに、この研究では、もう一つの興味深い点も調べました。
それは、「仮定された類似性」です。
仮定された類似性とは、「友達の性格は自分と似ている」と思い込む傾向のことを指します。
友達の性格を評価する際に、自分との類似性を過大に見積もってしまう傾向があるのです。
この研究では、性格の類似性だけでなく、仮定された類似性についても検討しました。
正直・謙虚さと開放性で類似性が高い
研究の結果、正直・謙虚さと開放性の2つの次元で、友達との類似性が比較的高いことがわかりました。
正直・謙虚さと開放性は、価値観と関連が深い性格の次元です。
価値観が似ている人同士は、友達になりやすいのかもしれません。
一方で、誠実性、情緒安定性、外向性、協調性の4つの次元では、友達との類似性はあまり高くありませんでした。
これらの次元は、価値観との関連が弱いのかもしれません。
友達の性格の類似性はあまり高くない
友達との性格の類似性は、全体的にはそれほど高くないことがわかりました。
正直・謙虚さと開放性で類似性が比較的高かったものの、その程度は限定的でした。
性格の類似性を表す相関係数は、0.25でした(最小-1、最大1)。
相関係数が0.30を超えると、ある程度の類似性があると言えます。
しかし、今回の研究では、中程度の類似性が見られました。
では、なぜ友達との性格の類似性はあまり高くないのでしょうか。
その理由の一つとして、性格よりも他の要因が友達選択に影響している可能性が考えられます。
例えば、年齢、性別、学歴、趣味、価値観などです。
これらの要因が、性格よりも友達選択に強く影響しているのかもしれません。
友達の性格は自分と似ていると仮定しやすい
一方で、友達の性格は自分と似ていると仮定する傾向が強いことがわかりました。
これは、「仮定された類似性」と呼ばれる現象です。
特に、正直・謙虚さと開放性の次元で、仮定された類似性が高くなっていました。
友達の正直・謙虚さと開放性を評価する際、自分との類似性を過大に見積もる傾向があるようです。
仮定された類似性が高くなる理由として、以下のようなことが考えられます。
- 自分と似ている人を友達に選ぶ傾向がある
- 友達の性格を自分に近づけて評価する傾向がある
- 自分の性格を友達に投影する傾向がある
つまり、実際の類似性よりも、主観的な類似性が高くなりやすいのです。
友達の性格の類似性と価値観の関係
価値観の2つの軸とは?
価値観は、人生において何を重要視するかを表す概念です。
心理学者のシュワルツは、価値観を2つの軸で整理しました。
その2つの軸とは、以下のようなものです。
- 自己超越 vs 自己高揚:他者のために行動するか、自分の利益を優先するか
- 開放性 vs 保守性:新しいことに挑戦するか、伝統を重視するか
この2つの軸は、価値観の基本的な構造を表していると考えられています。
多くの研究で、この2つの軸の妥当性が確認されています。
価値観は、性格と密接に関連していると考えられています。
特に、正直・謙虚さと開放性は、価値観と強い関連があると言われています。
正直・謙虚さと開放性は価値観と関連が深い
この2つは、価値観と関連が深いことがわかっています。
正直・謙虚さは、自己超越的な価値観と結びつきやすいと言えます。
つまり、正直・謙虚さが高い人は、他者のために行動することを重視するでしょう。
一方、正直・謙虚さが低い人は、自分の利益を優先しがちです。
また、開放性が高い人は、新しいことに挑戦することを好むでしょう。
反対に、開放性が低い人は、伝統を重視する傾向があります。
他の4つの性格の次元と価値観の関連は、それほど強くないようです。
他の4つとは、誠実性、情緒安定性、外向性、協調性であり、価値観との結びつきが弱いと言えます。
つまり、正直・謙虚さと開放性は、価値観の個人差を反映した性格の次元だと考えられるのです。
価値観も友達と類似している
価値観も、友達と類似していることがわかっています。
友達同士は、価値観が似ている傾向があるようです。
価値観の類似性は、性格の類似性と同程度であることが示されました。
では、なぜ友達同士の価値観は似ているのでしょうか。
その理由として、以下のようなことが考えられます。
- 価値観が似ている人を友達に選ぶ傾向がある
- 友達との関わりを通じて、価値観が似てくる
- 価値観が似ている人と友達になりやすい環境がある
価値観は、人生の目標や生き方に関わる重要な概念です。
価値観が似ている人と友達になることで、心理的な安定が得られるのかもしれません。
ただし、価値観の類似性も、性格と同様に、それほど高くはありませんでした。
友達選択には、価値観以外の要因も影響しているようです。
価値観も友達と似ていると仮定しやすい
価値観についても、友達と似ていると思い込む傾向が強いことがわかりました。
特に、自己超越 vs 自己高揚の軸と、開放性 vs 保守性の軸で、仮定された類似性が見られました。
仮定された類似性が高くなる理由は、性格の場合と似ているかもしれません。
自分と価値観が合う人を友達に選んでいると思い込む傾向があるのでしょう。
また、友達の価値観を自分に近づけて評価したり、自分の価値観を友達に投影したりするのかもしれません。
価値観は、性格よりも自覚しにくい概念です。
そのため、実際の類似性よりも、主観的な類似性が高くなりやすいと考えられます。
価値観の仮定された類似性は、友達関係を維持するための心理的な働きなのかもしれません。
親友VS親しい知人—仮定された類似性の違い
友達の性格:親友は自分と似ていると仮定
親友の性格は、自分と似ていると思い込む(仮定する)傾向が強いことがわかりました。
親友の正直・謙虚さと開放性を評価する際、自分との類似性を過大に見積もりがちです。
(思い込みによる類似性は、中程度の相関係数(0.33から0.48)を示していました。)
親友は、最も親密な関係の一つです。
親友との類似性を高く見積もることで、関係の安定性を保とうとするのかもしれません。
また、親友との類似性を確認することで、自己の価値観を補強しているのかもしれません。
ただし、協調性については、親友でも類似性を仮定する傾向は弱いようです。
協調性は、価値観との関連が弱い性格の次元だと考えられます。
そのため、親友との類似性を過大視する必要がないのかもしれません。
親友との仮定された類似性は、性格のうち価値観に関連する次元で高くなる傾向があると言えそうです。
友達の性格:親しい知人との類似性はあまり仮定しない
一方で、親しい知人との性格の類似性は、あまり仮定しないことがわかりました。
親しい知人の正直・謙虚さと開放性を評価する際、自分との類似性をそれほど過大視しないようです。
(この場合の思い込みによる類似性は、弱い相関係数(0.16から0.26)に留まっていました。)
親しい知人は、親友ほど親密な関係ではありません。
そのため、類似性を高く見積もる必要性が低いのかもしれません。
また、親しい知人との価値観の違いを認識しやすいのかもしれません。
ただし、親しい知人でも、ある程度の仮定された類似性が見られました。
完全に類似性を仮定しないわけではないようです。
親密でない関係でも、ある程度の類似性を期待する傾向があるのかもしれません。
親しい知人との仮定された類似性は、親友ほど高くはないものの、ゼロではないと言えます。
関係の親密さに応じて、仮定された類似性の程度は変化するようです。
協調性では親友でも類似性を仮定しにくい
協調性については、親友でも類似性を仮定する傾向が弱いことがわかりました。
親友の協調性を評価する際、自分との類似性をあまり過大視しないようです。
親友との協調性の仮定された類似性は、ほとんどゼロに近い相関係数(-0.04から0.06)でした。
協調性は、価値観との関連が弱い性格の次元だと考えられています。
そのため、親友との類似性を確認する必要性が低いのかもしれません。
また、協調性の個人差は、関係の親密さに影響しにくいのかもしれません。
他の性格の次元でも、価値観との関連が弱いものは、類似性を仮定しにくいと予想されます。
例えば、誠実性、情緒安定性、外向性なども、仮定された類似性が低いかもしれません。
性格の類似性を仮定するかどうかは、その次元が価値観とどれだけ関連しているかに依存しそうです。
価値観と関連の深い正直・謙虚さと開放性では、親友でも類似性を仮定しやすいと言えます。
親密な関係ほど類似性を仮定する傾向が強い
親密な関係ほど、性格の類似性を仮定する傾向が強いことがわかりました。
親友との仮定された類似性は、親しい知人よりも有意に高くなっていました。
この傾向は、正直・謙虚さと開放性で特に顕著でした。
親密な関係ほど、類似性を仮定する理由として、以下のようなことが考えられます。
- 親密な関係では、類似性を確認することで安心感を得られる
- 親密な関係では、自分との類似性を過大視することで、関係の安定性を保とうとする
- 親密な関係では、相手との価値観の一致を求める傾向が強い
つまり、関係が親密であるほど、類似性を仮定することが心理的に重要になるのでしょう。
特に、価値観に関連する正直・謙虚さと開放性では、類似性の仮定が重要になると考えられます。
ただし、類似性の仮定は、必ずしも適応的とは限りません。
過度な類似性の仮定は、関係の問題を見過ごす原因になるかもしれません。
適度な類似性の認識が、健全な関係の維持につながるのではないでしょうか。
友達の性格の類似性と仮定された類似性のメカニズム
認知的一貫性を保つ動機づけ
類似性を仮定する理由の一つに、認知的一貫性を保つ動機づけがあります。
認知的一貫性とは、自分の信念や行動に矛盾がないことを指します。
人は、認知的一貫性を保つことで、心理的な安定を得ようとする傾向があります。
友達関係においても、認知的一貫性を保とうとする動機づけが働くと考えられています。
自分が大切にしている価値観を、友達も共有していると信じることで、認知的一貫性が保たれるのです。
そのため、友達の性格を自分に似ていると仮定しやすくなるのかもしれません。
特に、正直・謙虚さと開放性は価値観と関連が深い性格の次元です。
これらの次元で類似性を仮定することは、認知的一貫性を保つ上で重要なのかもしれません。
自分の価値観に合う友達を選んでいるという信念を維持できるからです。
親密な関係ほど類似性を仮定するのはなぜ?
親密な関係ほど、類似性を仮定する傾向が強いのはなぜでしょうか。
その理由の一つとして、親密な関係では認知的一貫性を保つ必要性が高いことが考えられます。
親友など親密な相手とは、価値観が一致していることを確認したいと思うはずです。
そうすることで、関係の安定性が保たれると感じられるからです。
また、親密な関係では、相手のことをよく知っていると思いやすいことも影響しているかもしれません。
相手のことをよく知っていると感じると、自分との類似性を過大に見積もりがちなのです。
一方、親しい知人など、あまり親密でない相手については、類似性を過大視する必要性が低いと考えられます。
さらに、親密な関係では、相手に自分の価値観を投影する傾向が強いことも関係しているでしょう。
自分の大切にしている価値観を、相手も共有していると思い込みたいと感じるのです。
このような投影が、類似性の仮定を強める原因になっているのかもしれません。
性格の類似性と価値観の関連の重要性
性格の類似性を考える上で、価値観との関連を理解することが重要です。
正直・謙虚さと開放性は、価値観と深い関わりがある性格の次元だと言えます。
これらの次元は、自己超越 vs 自己高揚、開放性 vs 保守性という価値観の軸と対応しているのです。
そのため、正直・謙虚さと開放性の類似性は、価値観の類似性を反映していると考えられます。
友達との類似性を確認することは、価値観の共有を確かめる意味があるのかもしれません。
また、類似性を仮定することは、価値観の一致を信じる心理的な働きなのかもしれません。
一方、誠実性、情緒安定性、外向性、協調性は、価値観との関連が弱い性格の次元です。
これらの次元の類似性は、価値観の共有とは別の意味を持つと考えられます。
例えば、性格の相性や行動傾向の一致を反映しているのかもしれません。
性格の類似性を探る際は、それぞれの次元が価値観とどう関わっているかを考慮する必要がありそうです。
価値観に関連する次元とそうでない次元では、類似性の意味合いが異なると言えます。
性格の類似性研究の意義と今後の展望
性格の類似性はさほど高くないが意義深い発見
全体的に性格の類似性はさほど高くないことがわかりました。
正直・謙虚さと開放性で類似性が比較的高かったものの、相関係数は0.30を下回っていました。
性格の類似性は、友達選択にはそれほど大きな影響を与えていないのかもしれません。
ただし、性格の類似性が低いからと言って、意味がないわけではありません。
類似性が低くても、性格の組み合わせによっては、関係の質に影響する可能性があります。
例えば、外向性が高い人と低い人の組み合わせは、コミュニケーションの問題を引き起こすかもしれません。
また、性格の類似性は、関係の段階によって変化する可能性もあります。
出会ったばかりの段階では類似性が低くても、付き合いが長くなるにつれて似てくるかもしれません。
長期的な視点から、性格の類似性を捉える必要があると言えます。
性格の類似性に関する発見は、友達関係の理解を深める上で意義深いと考えられます。
類似性の程度だけでなく、その意味合いを探ることが大切だと言えそうです。
年齢や宗教性など他の変数との比較
性格の類似性は、年齢や宗教性など他の変数と比べると低いことがわかっています。
例えば、年齢の類似性を表す相関係数は0.70程度と報告されています。
宗教性の類似性も、0.70程度と非常に高いことが知られています。
なぜ、性格の類似性は年齢や宗教性ほど高くないのでしょうか。
その理由の一つとして、性格は見えにくい特性であることが考えられます。
年齢や宗教性は比較的わかりやすい特性ですが、性格は外から観察しにくい側面があります。
そのため、友達選択の際に性格の類似性が重視されにくいのかもしれません。
また、性格よりも年齢や宗教性の方が、友達との共通点を見出しやすいことも影響しているでしょう。
同じ年代の人や同じ宗教を信じる人との間では、話が合いやすいと感じられます。
一方、性格の類似性は、そこまで明確な共通点にはならないのかもしれません。
ただし、性格の類似性が低いからと言って、重要でないわけではありません。
むしろ、年齢や宗教性など他の変数と比べて類似性が低いからこそ、性格の組み合わせが関係の質に与える影響は大きいと考えられます。
性格の類似性が関係の形成・維持に与える影響
性格の類似性は、関係の形成や維持に影響を与えると考えられています。
例えば、正直・謙虚さや開放性が似ている人同士は、価値観が合うため、友達になりやすいかもしれません。
逆に、これらの次元で類似性が低い場合、友達関係が築きにくいことが予想されます。
また、類似性の程度は、関係の段階によって変化する可能性があります。
出会ったばかりの段階では、性格の類似性はあまり重要でないかもしれません。
しかし、付き合いが長くなるにつれて、性格の不一致が問題になってくるかもしれません。
さらに、性格の類似性は、関係の満足度にも影響を与えると考えられます。
性格が似ている友達とは、話が合ってストレスが少ないと感じられるでしょう。
一方、性格が合わない友達とは、コミュニケーションがうまくいかず、不満を感じやすいかもしれません。
ただし、性格の類似性が高ければ良い関係だとは限りません。
類似性が高すぎると、新しい刺激や学びが得られにくくなる可能性もあります。
適度な類似性と相違性のバランスが、良好な関係の維持に役立つのかもしれません。
縦断的研究の必要性
性格の類似性が関係に与える影響を明らかにするには、縦断的研究が必要です。
縦断的研究とは、同じ人を長期的に追跡して変化を調べる研究方法のことです。
性格の類似性と関係の変化を同時に追跡することで、因果関係が明らかになると期待されます。
具体的には、以下のような研究が考えられます。
- 出会ったばかりの友達の性格の類似性を調べ、その後の関係の変化を追跡する
- 長期的な友達関係において、性格の類似性と関係の満足度の変化を調べる
- 恋人や夫婦などの親密な関係で、性格の類似性と関係の安定性との関連を探る
このような研究によって、性格の類似性が関係の形成や維持に与える影響が明らかになるでしょう。
また、関係の段階によって類似性の重要性がどう変化するかも分かると考えられます。
縦断的研究は手間と時間がかかりますが、性格の類似性の役割を理解する上で欠かせません。
今後、縦断的研究が進むことで、性格と対人関係の関連がより深く理解できるはずです。
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ライター 兼 編集長:トキワエイスケ @etokiwa999
株式会社SUNBLAZE代表。子どもの頃、貧困・虐待家庭やいじめ、不登校、中退など社会問題当事者だったため、社会問題を10年間研究し自由国民社より「悪者図鑑」出版。その後も社会問題や悪者が生まれる決定要因(仕事・教育・健康・性格・遺伝・地域など)を在野で研究しており、社会問題の発生予測を目指している。凸凸凸凹(WAIS-Ⅳ)。