幸せの要因って何だと思いますか?お金、健康、友だち、自由な時間…いろいろ思いつくかもしれません。
けれど本当に大事なものは、データから見えてくることもあります。今回紹介するのは、経済協力開発機構(OECD)の論文『What Makes for a Better Life?』です。
この論文では、34か国・7年分の調査データから「人がどうすれば幸せを感じるのか」を探っています。
「収入が増えれば幸せ?」「友だちがいるとどう変わる?」「不安の少ない社会って何?」そんな疑問に、わかりやすく答えてくれる内容です。
この記事では、その研究をもとに、若い人でもすぐに活かせるような20の視点を紹介します。自分の生活をちょっと見直したくなる、そんなヒントがきっと見つかるはずです。
今回も、性格研究者で悪者図鑑著者のトキワ(@etokiwa999)が解説していきます。
※以下のHEXACO-JP診断は個人向けになります。サンブレイズテストは法人向けになります。


要因 | 幸せへの影響度 |
---|---|
失業 | -1.03 |
病気やケガ | -0.57 |
食糧不足(貧困) | -1.0 |
親しい友人がいる | +0.88 |
ボランティア参加 | +0.37 |
高等教育(大学) | +0.81 |
所得が2倍になる | +0.18 |
結婚してる | +0.26 |
生活選択の自由感 | +0.41 |
夜道が安全 | +0.17 |
幸せの要因とは?データで見える本当のしあわせ
収入が多いと幸せになれるの?
収入が多いほど生活満足度が上がる傾向があります。
ただし、増えるほど効果が小さくなります。
たとえば収入が2倍になると、満足度が約0.3ポイント上がります。
ですが、収入の影響はほかの要因よりも弱いです。
以下のような理由が考えられます。
- 生活に必要なお金があれば十分と感じる人が多い
- 高収入でもストレスが多いと満足度は上がらない
- 他人と比べてしまい、幸せを感じにくくなる
したがって、収入が全てではありません。
また、物価が高い地域では収入の価値が下がります。
お金があるだけで幸せになれるとは限らないのです。
幸せには、人との関係や心の状態も大切です。
まとめると、収入は幸せに関係しますが、それだけでは足りません。
失業は幸せにどんな影響があるのか
仕事がない状態は、強く満足度を下げます。
たとえば失業は満足度を1ポイント以上下げます。
これは収入減だけでなく、心への影響も大きいからです。
理由としては次のようなものがあります。
- 自信を失いやすくなる
- 社会とのつながりが弱くなる
- 毎日のリズムがくずれる
失業中は気持ちが落ち込みやすくなります。
また、再就職できるか不安になることもあります。
一方、学生や専業主婦など仕事をしていない人でも、失業とは意味が違います。
失業は「仕事をしたいけれどできない」状態です。
そのため精神的なストレスが強くなります。
つまり、失業は経済面よりも心の面で大きな影響を与えるのです。
健康状態が悪いとどう感じる?
健康に問題があると、幸福感が大きく下がります。
身体だけでなく心の健康も含まれます。
たとえば病気やけが、精神的なストレスなどです。
主な影響としては以下のとおりです。
- 日常生活が不便になる
- 未来への不安が強まる
- 楽しいことを感じにくくなる
とくに慢性的な病気やけがは、長く影響します。
研究では、障がいがある人の満足度は0.7ポイント以上下がるとされています。
また、健康が悪いと仕事や人間関係にも影響します。
逆に健康な人は、活動的になり、前向きな気持ちになりやすいです。
健康は幸せを感じるための土台になるものです。
結婚している人は本当に幸せ?
結婚している人は、平均して満足度が高いです。
独身と比べて約0.4ポイント高いという結果もあります。
これはパートナーがいることで支え合えるからです。
結婚の影響としては以下があります。
- 心の支えができる
- 生活が安定しやすくなる
- 子どもを育てる安心感がある
ただし、誰にでも当てはまるわけではありません。
結婚生活に不満があると、逆に満足度が下がることもあります。
また、国や文化によって結果が異なる場合もあります。
重要なのは「どんな関係性か」という点です。
愛情や信頼がある結婚ほど、幸せを感じやすくなります。
つまり、結婚は大きな支えになりますが、関係の質がより大切です。
子どもがいると満足度は上がるのか
子どもがいるからといって、必ずしも幸せになるとは限りません。
むしろ、子どもがいることで負担を感じる場合もあります。
研究によると、子どもがいる人の満足度は少し下がることがあります。
その理由は以下の通りです。
- 時間やお金の負担が増える
- 睡眠不足やストレスがたまりやすい
- 自分の時間が少なくなる
特に、ひとり親や病気の子どもがいる家庭では大きな影響があります。
ただし、長い目で見ると「生きがい」になることもあります。
また、子どもが成長すると支えになる場合もあります。
状況やサポートの有無によって感じ方が変わります。
要するに、子どもは幸せの要因にもなりますが、同時に負担も生まれるのです。
幸せの要因に関する意外な事実
住んでいる場所と幸せの関係
住む場所によって、感じる幸せは変わります。
特に都市と田舎では、感じ方が少し違います。
大都市や郊外に住む人は、やや満足度が高い傾向があります。
理由は以下のとおりです。
- 医療や交通の便利さがある
- 仕事の選択肢が多い
- 娯楽やサービスが豊富
一方、小さな町や村に住む人も不便さ以外では不満が少ないようです。
静かさや自然の多さに満足する人もいます。
つまり、「どこが良いか」は人によって変わります。
交通の不便さや騒音などの環境も影響します。
住環境は、快適さと安全のバランスが大切なのです。
外国生まれの人はどう感じている?
外国で暮らしている人は、幸せを感じにくいことがあります。
調査では、移住者は平均より満足度が低い傾向が見られました。
たとえば生活満足度は0.4ポイントほど低くなります。
これは以下のような理由が考えられます。
- 言葉や文化の違いによる孤立
- 差別や偏見を受けることがある
- 家族や友人との距離がある
また、働き口や住居が安定しないことも不安を生みます。
ただし、長く住むことで満足度が上がる人もいます。
地域の支援や交流の場があると安心感が高まります。
つまり、移住者の幸福感には社会とのつながりが大きく関係しています。
学歴が高いと満足度はどうなる?
学歴が高い人ほど、生活に満足している傾向があります。
特に大学などの高等教育を受けた人は、満足度が高くなります。
研究では大学卒の人は0.8ポイントほど高いという結果もあります。
この理由としては次の点があります。
- 就職のチャンスが広がる
- 健康や生活に関する知識が増える
- 社会的な信頼を得やすい
ただし、学歴の影響は他の要因を通して現れます。
つまり、教育が直接幸せを生むというより、
それによって得られる生活の安定が幸せにつながるのです。
結局のところ、教育は将来の選択肢を広げ、安心感を生みます。
感情バランスから見える本当の気持ち
その日の気分も、幸せの大切な指標です。
感情バランスとは、ポジティブな気分とネガティブな気分の差です。
たとえば「笑った」「楽しかった」と感じた人は、
「悲しかった」「心配だった」と感じた人より幸せを感じます。
この調査では、以下のような点が感情に影響していました。
- よく眠れたかどうか
- 笑顔で過ごす時間があったか
- 不安や落ち込みがあったか
感情バランスが良い人は、生活満足度も高いです。
そのため、日々の小さな喜びも重要な要因になります。
つまり、幸せは長期的な評価だけでなく、その日の気分にも左右されます。
男性と女性で感じ方に違いはある?
男性と女性では、幸せの感じ方に少し違いがあります。
研究では、女性のほうが生活満足度はやや高いです。
ただし、感情面では男性よりネガティブな感情も多く報告されました。
つまり、女性は良い感情も悪い感情も強く感じやすい傾向があります。
これは以下の理由が考えられます。
- 周囲との関係を大切にする傾向がある
- 感情を表に出しやすい文化的背景がある
- 家事や育児など負担が集中しやすい
また、性別だけでなく年齢や状況によっても違いは出てきます。
重要なのは、自分の感情に気づき、対処することです。
性別による差はありますが、どちらにとっても心の健康は大切です。
人とのつながりが幸せの要因になる理由
信頼できる友だちがいることの大切さ
親しい友だちがいる人は、特に幸福度が高いです。
調査によると「信頼できる友だちがいる」と答えた人は、
満足度が約0.88ポイントも高くなっています。
これは収入が2倍になる影響より大きい数字です。
理由は以下のような点があります。
- 困ったときに相談できる安心感
- 孤独を感じにくくなる
- 一緒に楽しい時間を過ごせる
信頼できる友人は、心の支えになります。
また、笑ったり会話したりすることで、気分も明るくなります。
人との結びつきがあるだけで、生きる力がわいてきます。
つまり、友だちは心の健康を守る大切な存在です。
ボランティア活動がもたらす幸せ
人を助ける行動は、自分の幸せにもつながります。
ボランティアをしている人は、していない人より満足度が高いです。
調査では、ボランティア参加者の満足度は約0.34ポイント高くなります。
その理由には以下の点があります。
- 他人の役に立つことで自信がつく
- 感謝される経験が増える
- 新しい人間関係ができる
人に感謝されることで、自分の存在価値を感じられます。
また、行動することで孤独感が減るという効果もあります。
社会とのつながりを感じることが、心を前向きにするのです。
要するに、誰かのために動くことは、自分の幸せにもつながるのです。
人を助けることが自分にも返ってくる
親切にすることが、まわりまわって自分の喜びになります。
助け合いの気持ちは、人間関係をあたたかくします。
この研究では、「知らない人を助けたことがある人」は、
生活に対する満足度が高くなる傾向がありました。
理由としては以下のことが考えられます。
- 自分が必要とされていると感じる
- 他人の笑顔が、自分の元気になる
- 相手との信頼関係が生まれる
また、周りの人からも好意を返されることが多くなります。
小さな親切が積み重なると、大きなつながりになります。
助ける行動は、自分の心にも良い影響を与えるのです。
社会全体の信頼感が影響するって本当?
周囲の人を「信じられる」と感じる社会では、幸福度が高くなります。
この研究では、国ごとに「人は信頼できる」と思っている人が多いほど、
その国全体の平均満足度も高い傾向がありました。
たとえば、信頼感が1%上がると、満足度も上がります。
理由は以下のようなことが考えられます。
- 不安や心配が少なくなる
- 協力しやすい環境ができる
- 安心して行動できる
社会の中で「他人を信用できる」という空気が広がると、
個人の暮らしにも安心感が生まれます。
このように、目に見えない信頼が大きな力を持っています。
つまり、信頼できる社会は、みんなの幸せを育てる土台になります。
結婚やパートナーの存在の効果
人生のパートナーがいることは、心の安定につながります。
調査では、結婚している人や恋人がいる人は、
いない人よりも生活満足度が高くなる傾向がありました。
理由は次のような点です。
- 感情を分かち合える
- 経済的にも支え合える
- 孤独感が減る
特に、信頼や愛情がある関係では効果が大きくなります。
逆に、関係に問題があると、満足度は下がることもあります。
大切なのは「一緒にいて安心できる相手かどうか」です。
人は誰かとつながることで、自分らしくいられるようになります。
パートナーの存在は、安心感と幸福感を与える大切な要因です。
幸せの要因と環境や自由のつながり
空気や水のきれいさは気分に影響する
きれいな空気や水があると、心も落ち着きます。
環境の良さは、生活の快適さに直結します。
研究では、自然が身近にある人の満足度が高い傾向がありました。
その理由は次のような点です。
- 呼吸しやすく、体の調子が良くなる
- 景色にいやされて、気持ちが安定する
- 外での活動がしやすく、元気が出る
逆に、空気が汚れていたり、水がにごっていたりすると、
不安やストレスのもとになります。
環境が悪いと、健康にも悪影響が出てしまいます。
安心して暮らせる場所があることは、幸せにつながるのです。
つまり、自然の豊かさや清潔な環境は、見えないけれど大切な幸せの土台です。
夜道が安全かどうかは安心感につながる
安心して歩ける夜道は、心の余裕を生みます。
調査では、「夜ひとりで歩くのがこわくない」と感じている人は、
満足度が高い傾向にありました。
その理由は以下のようなことです。
- 日々の行動に制限がなくなる
- 不安が少なく、気持ちが安定する
- 地域とのつながりを感じやすい
反対に、夜道に不安を感じる地域では、
生活に対して満足できない人が増えることがあります。
特に女性や高齢者にとって、安全な環境は大きな意味を持ちます。
防犯対策がしっかりした地域では、暮らしやすさが向上します。
夜でも安心できる街は、心の平和を守る大切な場所なのです。
物を盗まれた経験が心に残る理由
盗難などの被害にあうと、心の不安が大きくなります。
この研究では、「過去1年で物を盗まれた経験」がある人は、
満足度が低くなる傾向があると示されています。
その理由は次のような点です。
- 自分の安全が守られていないと感じる
- 他人を信じにくくなる
- 不安な気持ちが日々続く
また、金額の大小に関係なく、心に傷が残ることがあります。
とくに自宅や身近な場所での被害は、安心感を奪います。
その結果、日常生活にも悪い影響を与えることになります。
被害の経験は、物だけでなく心の幸せも奪うのです。
人生を自分で選べると感じることの重要性
自分の行動を自分で決められる感覚は、幸せに大きく影響します。
この研究では、「人生を自分でコントロールできる」と感じる人は、
生活満足度が高くなることが分かっています。
たとえば満足度は約0.41ポイント高くなるという結果があります。
理由は以下のとおりです。
- 失敗しても自分の責任として受けとめられる
- 選ぶ楽しさがある
- 将来の希望を持ちやすくなる
反対に、「誰かに決められてばかり」と感じると、
無力感や不満がたまりやすくなります。
だからこそ、選択の自由があることは、とても大切です。
自分の人生を自分で選んでいるという感覚が、幸福感を高めます。
政治や社会への信頼と幸せの関係
社会や政治を信じられる人は、より幸せを感じやすいです。
研究では、「政府や制度を信頼している人」のほうが、
生活への満足度が高い傾向がありました。
このような信頼には以下の理由があります。
- 公平に扱われていると感じる
- 将来に希望を持ちやすい
- 不安や混乱を感じにくくなる
政治に対して信頼が持てないと、不満や不安が増えます。
特に税金や福祉など、生活に直接関係することが多いためです。
信頼は目に見えないけれど、心の安定につながるのです。
社会全体への信頼感があると、暮らしの満足度も自然と高まります。
最後に
幸せは特別なことではなく、日々の中にあります。今回紹介したように、「幸せの要因」はお金だけではありません。
信頼できる友だちがいること、体が元気なこと、自分の人生を自分で選べること、そんな身近なことが大きな影響を持っています。
また、安心して暮らせる環境や、誰かを助ける行動も心を豊かにしてくれます。今の自分に何があって、何が足りないのかを知るだけで、少しずつ満足感は変わってきます。
大切なのは、自分が何に価値を感じるかに気づくことです。今回の内容を参考にして、自分にとっての「しあわせ」について考えてみてください。
それが、これからの選択や行動のヒントになるかもしれません。

ライター 兼 編集長:トキワエイスケ @etokiwa999
株式会社SUNBLAZE代表。子どもの頃、貧困・虐待家庭やいじめ、不登校、中退など社会問題当事者だったため、社会問題を10年間研究し自由国民社より「悪者図鑑」出版。その後も社会問題や悪者が生まれる決定要因(仕事・教育・健康・性格・遺伝・地域など)を在野で研究しており、社会問題の発生予測を目指している。凸凸凸凹(WAIS-Ⅳ)。