離婚のリスクは、性格特性によって異なることが明らかになりました。
イギリス、ベルギー、ドイツの研究チームが行った大規模な調査で、この興味深い事実が明らかになったのです。
研究では、1972年から2009年の間に結婚したカップルを対象に、性格特性と離婚の関連が詳しく分析されました。
性格特性は、「外向性」や「誠実性」など、5つの特性に分けて測定されています。
その結果、外向的な人は離婚のリスクが高く、誠実な人は結婚生活が安定する傾向があることが分かったのです。
この研究は、「性格特性と離婚の関連は時代とともに変化するのか?」というタイトルで発表されました。
性格と離婚の関係について、とてもユニークな視点を提供する研究だと言えるでしょう。
では、この研究の詳しい内容を見ていきましょう。
今回も、性格研究者で悪者図鑑著者のトキワ(@etokiwa999)が解説していきます。
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目次
性格特性と離婚の関係を調べた3カ国の研究
イギリス、ベルギー、ドイツのデータを分析
イギリス、ベルギー、ドイツの3カ国で行われた研究では、性格特性と離婚の関係性が調べられました。
これらの国々は、福祉制度や労働市場、ジェンダー平等の程度などの点で異なっています。
しかし、いずれの国でも、この研究の対象期間中に家族生活に大きな変化があったと考えられます。
そのため、性格特性と離婚の関連性を探るのに適した国々だと言えるでしょう。
研究では、これら3カ国の全国代表サンプルのデータが用いられ、詳細な分析が行われました。
その結果、性格特性と離婚の関係性について、興味深い知見が得られたのです。
1972年から2009年に結婚したカップルが対象
研究の対象となったのは、1972年から2009年の間に結婚したカップルです。
この期間は、いずれの国でも家族の安定性が低下し始めた時期と重なっています。
ただし、離婚率の上昇ペースには国ごとに差があったため、性格特性の影響の変化を完全に捉えられていない可能性もあります。
とはいえ、この期間は十分に長く、時代による変化を探るには適しているでしょう。
研究では、この期間に結婚したカップルを対象に、詳細なデータが収集されました。
そして、そのデータをもとに、性格特性と離婚の関連性が丹念に分析されたのです。
性格特性は「ビッグファイブ」という5つの特性で測定
性格特性は、「ビッグファイブ」と呼ばれる5つの特性で測定されました。
ビッグファイブとは、以下の5つの特性を指します。
- 外向性:社交的で活発な傾向
- 協調性:思いやりがあり、人当たりが良い傾向
- 誠実性:責任感が強く、規律正しい傾向
- 神経症傾向:不安になりやすく、情緒不安定な傾向
- 経験への開放性:好奇心が強く、新しいことに挑戦する傾向
これらの特性は、人格を包括的に捉える上で重要だと考えられています。
研究では、これらの特性がどのように離婚と関連しているかが調べられました。
そして、時代による変化も含めて、多角的な分析が行われたのです。
外向的な人は離婚リスクが高い
外向性と離婚の正の関連は3カ国で一貫
外向性と離婚の正の関連は、イギリス、ベルギー、ドイツの3カ国全てで一貫して見られました。
外向的な人は、内向的な人に比べて、離婚するリスクが高いことが明らかになったのです。
この傾向は、他の要因を考慮に入れても変わりませんでした。
外向性は、他の性格特性とは独立して、離婚と関連していたと言えます。
ただし、その影響の大きさには国ごとに多少の差があったようです。
とはいえ、総じて外向性は離婚のリスク要因だと言えるでしょう。
外向的な人は社交的で新しいパートナーを見つけやすい
外向的な人が離婚リスクを高めてしまう理由の1つに、新しいパートナーを見つけやすいことが挙げられます。
人は、一般に社交的で人当たりが良いため、異性との出会いの機会が多くなります。
また、外向的な人は、新しい関係を築くことにも積極的です。
そのため、既存の関係に不満を感じた時に、新しいパートナーを見つける可能性が高くなるのです。
こうした傾向は、既婚者の不倫行動とも関連していると考えられています。
つまり、外向的な人は、新しいパートナーを探すことで、離婚のリスクを高めてしまうのでしょう。
外向性の影響は時代を通じて変わらない
外向性と離婚の関連は、時代を通じて変わらないことも明らかになりました。
つまり、外向的な人は、昔も今も、離婚のリスクが高いと言えます。
この結果は、外向性の影響が、社会の変化に左右されにくいことを示唆しています。
外向性は、離婚に対する社会の障壁が下がっても、依然として重要な要因であり続けるのでしょう。
ただし、今回の研究では、十分に長い期間をカバーできていない可能性もあります。
より長期的な変化を捉えるためには、さらなる研究が必要かもしれません。
とはいえ、現時点では、外向性は普遍的な離婚のリスク要因だと考えられます。
誠実で協調性の高い人は結婚生活が安定
誠実性は離婚リスクを下げる効果がある
誠実性は、離婚のリスクを下げる効果があることが分かりました。
つまり、誠実な人ほど、結婚生活が安定する傾向にあるのです。
この傾向は、特にイギリスで顕著でした。
誠実性は、他の要因を考慮しても、離婚と負の関連を示していました。
誠実な人は、規範を守り、コミットメントを大切にする傾向があります。
そのため、パートナーとの関係を大切にし、離婚を避けようとするのでしょう。
ただし、誠実性の効果は国によって異なり、ドイツでは明確な関連が見られませんでした。
特にドイツでは誠実性の安定効果が顕著
ドイツでは、誠実性が結婚生活を安定させる効果が特に顕著でした。
誠実性の高い人は、離婚のリスクが低いだけでなく、時代を通じてその傾向が強まっていたのです。
つまり、ドイツでは、誠実性の重要性が増している可能性があります。
これは、ドイツ社会の特性と関連しているのかもしれません。
ドイツでは、他の2カ国に比べて、伝統的な性別役割分業が根強く残っています。
そのため、誠実性のような特性が、結婚生活の安定に重要な役割を果たしているのかもしれません。
ただし、この解釈は慎重に検討する必要があります。
より詳細な分析が求められるでしょう。
誠実な人は規範を守り、コミットメントが強い
誠実な人が結婚生活を安定させられる理由は、以下の2点が考えられます。
- 規範を守る傾向が強い
- コミットメントが強い
こういった人は、社会的規範をよく守る傾向があります。
そのため、「結婚は一生もの」といった規範を内面化しているかもしれません。
また、誠実な人は、一般に責任感が強く、コミットメントを大切にします。
そのため、多少の不満があっても、簡単に関係を諦めたりしないのでしょう。
こうした特性が、結婚生活の安定につながっていると考えられます。
ただし、誠実性の効果は、社会の変化に応じて変わる可能性もあります。
より長期的な視点から、その影響を探る必要があるでしょう。
協調性も一部の国で離婚リスクを下げる
協調性も、離婚のリスクを下げる効果があるようです。
ただし、その傾向は国によって異なりました。
ドイツでは、協調性が高いほど、離婚のリスクが低下する傾向が見られました。
一方、イギリスやベルギーでは、明確な関連は見られませんでした。
協調性の高い人は、人当たりが良く、思いやりがあるため、パートナーとの関係を円滑に保ちやすいのかもしれません。
ただし、協調性の効果は、社会的な文脈に左右される可能性があります。
そのため、国によって結果が異なったのかもしれません。
より詳細な検討が必要だと言えるでしょう。
協調性の高い人は寛容で親和的
協調性の高い人は、以下のような特徴を持っていると考えられています。
- 寛容で受容的である
- 人当たりが良く、親和的である
- 思いやりがあり、優しい
- 協力的で、調和を大切にする
これらの特徴は、パートナーとの関係を円滑にするのに役立つでしょう。
協調性の高い人は、パートナーの欠点も受け入れやすく、柔軟に対応できるかもしれません。
また、親和的な態度は、パートナーとのコミュニケーションを促進するでしょう。
こうした特性が、結婚生活の安定につながる可能性があります。
ただし、協調性の効果は、状況に応じて変わるかもしれません。
時代や社会によって、その影響は異なると考えられます。
神経症傾向が強いと離婚リスクがやや上昇
イギリスとドイツでは神経症傾向と離婚リスクに正の関連
イギリスとドイツでは、神経症傾向が強いほど、離婚のリスクが高まる傾向が見られました。
つまり、神経症傾向が強い人は、結婚生活が不安定になりやすいと言えます。
この傾向は、他の要因を考慮しても変わりませんでした。
神経症傾向は、性格特性の中でも、特に離婚と関連が深いと考えられています。
ただし、その影響の大きさは、国によって異なるようです。
イギリスとドイツでは比較的明確な関連が見られましたが、ベルギーではそれほど強くありませんでした。
より詳細な検討が必要だと言えるでしょう。
神経症の高い人はネガティブな感情表出が多い
神経症傾向の高い人は、ネガティブな感情を表出しやすいことが知られています。
例えば、以下のような特徴があります。
- 不安や心配が多い
- ストレスに弱く、すぐに動揺する
- 怒りっぽく、感情的になりやすい
- ネガティブな出来事に敏感である
こうした特徴は、パートナーとの関係を悪化させる可能性があります。
神経症傾向の高い人は、些細なことで不満を感じたり、パートナーを責めたりしがちです。
また、ネガティブな感情表出は、コミュニケーションを阻害するでしょう。
こうした問題が積み重なると、離婚のリスクが高まるのかもしれません。
ただし、神経症傾向の影響は、状況に応じて変わる可能性があります。
ストレスの多い環境では、その影響が強くなるかもしれません。
ただしベルギーでは明確な関連は見られず
ベルギーでは、神経症傾向と離婚の関連は明確ではありませんでした。
つまり、神経症傾向の高い人でも、必ずしも離婚のリスクが高いわけではないようです。
この結果は、神経症傾向の影響が普遍的ではないことを示唆しています。
ベルギーの社会的・文化的な特性が、神経症傾向の影響を弱めているのかもしれません。
例えば、ベルギーでは、カップル間のコミュニケーションが比較的円滑だと言われています。
そのため、神経症傾向の高い人でも、うまく関係を維持できるのかもしれません。
ただし、この解釈は慎重に検討する必要があります。
ベルギーの結果が、偶然の産物である可能性も排除できません。
神経症傾向と離婚の関連については、さらなる研究が求められるでしょう。
新しい経験に開放的だと離婚しやすい?
経験への開放性は一部の国で離婚リスク上昇と関連
経験への開放性は、一部の国で離婚のリスクを高める可能性があります。
ドイツでは、経験への開放性が高いほど、離婚のリスクが上昇する傾向が見られました。
つまり、新しいことに挑戦するのが好きな人ほど、結婚生活が不安定になりやすいのかもしれません。
ただし、この傾向はドイツ特有のものであり、他の国では明確ではありませんでした。
経験への開放性と離婚の関連は、社会的・文化的な文脈に左右される可能性があります。
ドイツ社会の特性が、経験への開放性の影響を強めているのかもしれません。
ただし、この解釈は慎重に検討する必要があるでしょう。
より詳細な分析が求められます。
好奇心が旺盛で従来の価値観にとらわれない人が該当
経験への開放性が高い人は、以下のような特徴を持っていると考えられています。
- 好奇心が旺盛で、新しいことに興味がある
- 創造的で、独創的なアイデアを持っている
- 従来の価値観にとらわれず、自由奔放である
- 美的感覚が優れ、芸術的である
これらの特徴は、刺激的で充実した人生を送るのに役立つでしょう。
しかし、結婚生活においては、不安定さをもたらす可能性があります。
経験への開放性が高い人は、既存の関係に飽きやすく、新しい刺激を求めがちです。
また、伝統的な価値観にとらわれないため、離婚に対する抵抗感が弱いのかもしれません。
こうした特性が、離婚のリスクを高める可能性があります。
ただし、経験への開放性の影響は、時代とともに変化しつつあるようです。
ただし時代とともにその影響は減少傾向
経験への開放性と離婚の関連は、時代とともに弱まっている可能性があります。
イギリスとドイツでは、経験への開放性の影響が減少傾向にあることが示唆されました。
つまり、昔ほど経験への開放性が離婚のリスク要因ではなくなってきているのかもしれません。
この変化は、離婚に対する社会の態度の変化と関連しているのかもしれません。
かつては、離婚は社会的に受け入れられにくく、伝統的な価値観からの逸脱とみなされていました。
そのため、経験への開放性が高い人ほど、離婚に踏み切りやすかったのでしょう。
しかし、現代では離婚がより一般的になり、社会的な障壁が下がってきています。
その結果、経験への開放性の影響が弱まってきた可能性があります。
ただし、この解釈は慎重に検討する必要があります。
より長期的な変化を捉えるためには、さらなる研究が求められるでしょう。
離婚のハードルが下がると性格の影響は変化
離婚への外的障壁が下がると誠実性の効果が弱まる
誠実性は、規範の遵守や義務の履行と関連する特性です。
そのため、離婚に対する社会的な障壁が高い場合、誠実性の高い人ほど離婚を避けようとするでしょう。
しかし、離婚が一般的になり、社会的な障壁が下がってくると、誠実性の影響は弱まるかもしれません。
つまり、誠実な人でも、離婚を選択しやすくなるのです。
この変化は、ドイツで見られた誠実性の効果の変化と整合的です。
ドイツでは、誠実性の影響が時代とともに強まっていた可能性があります。
これは、ドイツ社会の伝統的な価値観と関連しているのかもしれません。
一方、カップル内の問題は重要であり続ける
一方で、カップル内の問題は、離婚のリスクに対して重要であり続けると考えられています。
例えば、以下のような問題が挙げられます。
- コミュニケーション不足
- 価値観の不一致
- 情緒的なサポートの欠如
- 関係への不満足感
これらの問題は、社会の変化に関わらず、離婚のリスクを高めるでしょう。
そのため、協調性や神経症傾向など、カップル内の問題と関連する性格特性の影響は、比較的安定していると考えられています。
実際、今回の研究でも、これらの特性の影響に大きな変化は見られませんでした。
ただし、より長期的な変化を捉えるためには、さらなる研究が必要かもしれません。
いずれにせよ、カップル内の問題は、離婚を考える上で重要な要因であり続けるでしょう。
誠実性や協調性、神経症傾向の影響は比較的安定
誠実性や協調性、神経症傾向など、カップル内の問題と関連する性格特性の影響は、比較的安定していると考えられています。
これらの特性は、パートナーとの関係性や結婚生活の質に直接的に影響を与えるでしょう。
そのため、社会の変化に関わらず、離婚のリスクと関連し続けると予想されます。
今回の研究でも、これらの特性の影響に大きな変化は見られませんでした。
ただし、一部の国では、誠実性の影響が時代とともに変化している可能性が示唆されました。
これは、社会的な文脈によって、性格特性の影響が異なることを示唆しているのかもしれません。
より詳細な検討が必要だと言えるでしょう。
いずれにせよ、カップル内の問題と関連する性格特性は、離婚を考える上で重要な要因の1つだと考えられます。
これらの特性は、社会の変化に関わらず、一定の影響力を持ち続けるのかもしれません。
まとめ:性格特性でみる離婚リスク
外向的だと離婚リスクが高く、誠実だと結婚生活が安定
性格特性は、離婚のリスクと関連していることが明らかになりました。
特に、外向性と誠実性は、離婚を予測する上で重要な特性だと言えます。
外向的な人は、社交的で新しいパートナーを見つけやすいため、離婚のリスクが高くなります。
一方、誠実な人は、規範を守り、コミットメントを大切にするため、結婚生活が安定する傾向があります。
これらの特性は、社会の変化に関わらず、離婚と関連し続けるでしょう。
ただし、その影響の大きさは、国や時代によって異なる可能性があります。
より詳細な検討が必要だと言えます。
神経症傾向と経験への開放性は一部の国で離婚リスクを高める
神経症傾向と経験への開放性も、一部の国で離婚のリスクを高める可能性があります。
この特性の高い人は、ネガティブな感情を表出しやすく、パートナーとの関係を悪化させがちです。
経験への開放性が高い人は、既存の関係に飽きやすく、新しい刺激を求めがちです。
これらの特性は、離婚のリスクを高める可能性がありますが、その影響は国によって異なるようです。
また、経験への開放性の影響は、時代とともに弱まっている可能性が示唆されました。
これらの特性と離婚の関連については、さらなる研究が求められるでしょう。
性格の影響は社会の変化とともに一部変化する
性格特性と離婚の関連は、社会の変化とともに一部変化する可能性があります。
特に、離婚への外的障壁が下がると、誠実性や経験への開放性の影響が弱まるかもしれません。
一方で、カップル内の問題と関連する特性(協調性や神経症傾向など)の影響は、比較的安定していると考えられています。
ただし、これらの変化については、より長期的な視点から検討する必要があります。
また、国や文化によって、性格特性の影響が異なる可能性もあります。
いずれにせよ、性格特性は離婚を考える上で重要な要因の1つだと言えるでしょう。
離婚のリスクを理解するためには、性格特性と社会的な文脈の両方を考慮することが大切です。
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ライター 兼 編集長:トキワエイスケ @etokiwa999
株式会社SUNBLAZE代表。子どもの頃、貧困・虐待家庭やいじめ、不登校、中退など社会問題当事者だったため、社会問題を10年間研究し自由国民社より「悪者図鑑」出版。その後も社会問題や悪者が生まれる決定要因(仕事・教育・健康・性格・遺伝・地域など)を在野で研究しており、社会問題の発生予測を目指している。凸凸凸凹(WAIS-Ⅳ)。