悪者のキャリアは、どのように築かれているのでしょうか。
性格の暗黒面である「ダークトライアド」が、仕事の成功にどのような影響を与えるのか、気になりますよね。
ダークトライアドとは、ナルシシズム、サイコパシー、マキャベリアニズムという3つの特性のことです。
これらの特性を持つ人は、自分を高く評価したり、他者の感情を理解しにくかったり、権力志向が強かったりするそうです。
でも、こうした性格が、本当にキャリアにプラスの影響を与えるのでしょうか。
それとも、マイナスの影響があるのでしょうか。
今回は、ドイツの研究チームによる論文「Do Bad Guys Get Ahead or Fall Behind? Relationships of the Dark Triad of Personality With Objective and Subjective Career Success」をもとに、悪者のキャリアの関係について探ってみたいと思います。
この論文は、ドイツの民間企業で働く若者を対象に、ダークトライアドの特性がキャリアの成功にどのように影響するのかを調べたものです。
キャリアの成功には、収入や地位といった客観的な指標と、満足度といった主観的な指標があるそうです。
果たして、ダークトライアドを持つ「悪者」は、キャリアで成功するのでしょうか。
それとも、失敗するのでしょうか。一緒に考えてみましょう。
今回も、性格研究者で悪者図鑑著者のトキワ(@etokiwa999)が解説していきます。
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目次
- 1 ダークトライアドとは?ナルシシズム、サイコパシー、マキャベリアニズムの特徴
- 2 悪者のキャリア:ダークトライアドの収入や地位
- 2.1 ドイツの民間企業で働く若者793人を対象とした調査
- 2.2 悪者のキャリア:客観的成功として月収と管理職の地位を測定
- 2.3 悪者のキャリア:主観的成功としてキャリア満足度も測定
- 2.4 悪者のキャリア:ナルシシズムは月収と関連あり
- 2.5 悪者のキャリア:ナルシシズムは管理職の地位やキャリア満足度とは関連なし
- 2.6 悪者のキャリア:サイコパシーは月収と負の関連
- 2.7 悪者のキャリア:サイコパシーは管理職の地位とも負の関連
- 2.8 悪者のキャリア:サイコパシーはキャリア満足度とも負の関連
- 2.9 悪者のキャリア:マキャベリアニズムは管理職の地位と正の関連
- 2.10 悪者のキャリア:マキャベリアニズムはキャリア満足度と弱い正の関連
- 2.11 悪者のキャリア:マキャベリアニズムは月収とは関連なし
- 2.12 悪者のキャリア:ダークトライアドによるキャリア成功への影響
- 2.13 悪者のキャリア:ダークトライアドの影響は性別、年齢、勤続年数などを考慮しても同様
- 3 悪者のキャリア:ダークトライアドによるキャリア成功への影響
- 4 悪者のキャリアの関係に関する研究の課題
- 5 最後に悪者のキャリアのまとめ
ダークトライアドとは?ナルシシズム、サイコパシー、マキャベリアニズムの特徴
ナルシシズムの特徴
この傾向が強い人は、自分を過大に評価する傾向があります。
また、他者からの賞賛を強く求める一方で、人間関係を築くのが苦手です。
ナルシシズムの特徴として、以下のようなものが挙げられます。
- 自分の成功にこだわる
- 賞賛を求める
- 自己高揚に努める
- 他者を信頼せず、思いやりに欠ける
さらに、ナルシシズムの高い人は、達成志向が強いことが分かっています。
これは、高い地位につきたいという欲求につながると考えられます。
加えて、成功に関連する状況では、強い感情反応を示し、それを自己高揚に利用します。
優れた印象管理能力も、ナルシシズムの特徴の一つと言えるでしょう。
サイコパシーの特徴
サイコパシーの高い人は、衝動的で共感性に乏しいことが特徴です。
また、罪悪感や後悔の念が薄く、感情が浅いのも特徴の一つです。
サイコパシーの特徴をまとめると、以下のようになります。
- 衝動性が高い
- 共感性と不安が低い
- 罪悪感や後悔が少ない
- 感情が浅い
- 自分を優れていると信じている
- 他者を利用する傾向がある
こうした特徴から、サイコパシーの高い人は、反社会的行動を取りやすいと言えます。
また、責任感が低く、生産性に悪影響を与える可能性も指摘されています。
中でも、衝動性の高さは、攻撃的で反社会的な行動につながりやすいようです。
サイコパシーの高い人は、組織内での社会化に問題を抱えやすいと考えられています。
マキャベリアニズムの特徴
マキャベリアニズムの高い人は、他者を操作・利用する傾向が強いことが特徴です。
また、シニカルな人間観を持ち、道徳よりも実利を優先する傾向があります。
マキャベリアニズムの特徴として、以下のような点が挙げられます。
- 他者を操作する戦術が有効だと信じている
- 人間性についてシニカルな見方をする
- 道徳観よりも実利を優先する
こうした特徴から、マキャベリアニズムの高い人は、リーダーシップと関連が深いと言われています。
権力の維持・拡大を重視し、地位に対する欲求が強いのも特徴です。
加えて、マキャベリアニズムの高い人は、政治的スキルや達成欲求が高いことが分かっています。
これらは、客観的な悪者のキャリアの成功につながる要因と考えられます。
マキャベリアニズムの高い人は、社会的に受け入れられる形で巧みに他者を操作する傾向があるようです。
ダークトライアドの3つの特性の違い
ダークトライアドの3つの特性は、それぞれ異なる特徴を持っています。
ナルシシズムは自己評価の高さ、サイコパシーは共感性の欠如、マキャベリアニズムは操作性が特徴です。
以下のように、3つの特性の違いをまとめることができます。
- ナルシシズム:自己評価が高い、賞賛を求める
- サイコパシー:共感性に乏しい、反社会的行動をとりやすい
- マキャベリアニズム:他者を操作する、権力志向が強い
ただし、これらの特性は互いに関連しており、完全に独立しているわけではありません。
例えば、ナルシシズムとマキャベリアニズムは、ともに低い協調性と関連があると言われています。
一方で、サイコパシーは、ナルシシズムやマキャベリアニズムよりも衝動性が高いことが特徴です。
このように、ダークトライアドの3つの特性は、共通点と相違点を持っていると言えるでしょう。
悪者のキャリア:ダークトライアドの収入や地位
ドイツの民間企業で働く若者793人を対象とした調査
ドイツの研究チームは、民間企業で働く25歳から34歳の若者793人を対象に調査を行いました。
この調査は、ダークトライアドの性格特性が、キャリアの成功にどのように影響するかを明らかにすることを目的としています。
調査対象者の詳細は以下の通りです。
- 女性の割合は46%
- 平均年齢は30歳(標準偏差2.76)
- 68%が職業訓練を最高学歴としている
- 平均労働時間は週37.5時間(標準偏差5.25)
調査では、ダークトライアドの3つの特性(ナルシシズム、サイコパシー、マキャベリアニズム)を測定しました。
また、キャリアの成功を評価するために、客観的な指標と主観的な指標を用いています。
客観的な指標には、月収と管理職の地位が含まれます。
一方、主観的な指標としては、キャリア満足度が測定されました。
悪者のキャリア:客観的成功として月収と管理職の地位を測定
調査では、客観的なキャリアの成功を評価するために、月収と管理職の地位を測定しました。
月収は、税引き前の月収を21段階で尋ねる方法で測定されました。
具体的には、以下のように分類されています。
- 500ユーロ未満を1とする
- 9,500ユーロ以上9,999ユーロ以下を20とする
- 10,000ユーロ以上を21とする
一方、管理職の地位は、二値変数で測定されました。
管理職の地位にある場合を1、そうでない場合を0としてコーディングしています。
これは、管理職の地位が、より高い権力や高い階層的地位と関連しているためです。
客観的なキャリアの成功を評価することで、ダークトライアドの特性が実際のキャリアの結果にどのように影響するかを明らかにすることができます。
月収と管理職の地位は、悪者のキャリアの成功を測定する上で、重要な指標と考えられています。
悪者のキャリア:主観的成功としてキャリア満足度も測定
調査では、客観的な指標に加えて、主観的なキャリアの成功も測定しました。
具体的には、キャリア満足度を評価するために、5項目の尺度を使用しています。
この尺度は、以下のような項目で構成されています。
- 「私は、これまでのキャリア全体の目標達成度に満足している」
- 「私は、収入の向上という点で、キャリア目標を達成している」
- 「私は、昇進の面で、キャリア目標を達成している」
- 「私は、新しいスキルを開発するという点で、キャリア目標を達成している」
- 「私は、全体的に、自分のキャリアに満足している」
主観的なキャリアの成功を測定することで、個人がどのように自身のキャリアを評価しているかを知ることができます。
キャリア満足度は、客観的な成功とは異なる側面を捉えている可能性があります。
ダークトライアドの特性が、主観的なキャリアの成功にどのように影響するかを検討することは重要だと言えるでしょう。
悪者のキャリア:ナルシシズムは月収と関連あり
分析の結果、ナルシシズムは月収と正の関連があることが示されました。
つまり、ナルシシズムの高い人ほど、月収が高い傾向にあると言えます。
この結果は、以下のような理由で説明できるかもしれません。
- ナルシシズムの高い人は、成功へのモチベーションが高い
- ナルシシズムの高い人は、自己価値感が高い
- ナルシシズムの高い人は、印象管理が上手である
ナルシシズムの高さが月収に与える影響は、他の変数を統制しても有意でした。
つまり、性別、年齢、勤続年数、組織規模、学歴、労働時間など、他の要因の影響を取り除いても、ナルシシズムと月収の関連性は維持されたのです。
これはナルシシズムがキャリアの成功に影響を与える可能性を示唆する結果だと考えられます。
悪者のキャリア:ナルシシズムは管理職の地位やキャリア満足度とは関連なし
分析の結果、ナルシシズムは管理職の地位やキャリア満足度とは関連がないことが示されました。
ナルシシズムと管理職の地位の関連性は統計的に有意ではなく、キャリア満足度との関連性も有意ではありませんでした。
この結果は、以下のような理由で説明できるかもしれません。
- サンプルの年齢が若く、ナルシシズムの影響が表れていない可能性がある
- ナルシシズムの影響は、客観的な成功と主観的な成功で異なるのかもしれない
- ナルシシズムの影響は、他の要因に隠れている可能性がある
ただし、ナルシシズムと管理職の地位、キャリア満足度との関連性がないという結果は、予想に反するものでした。
先行研究では、ナルシシズムがキャリアの成功全般に正の影響を与えると考えられてきたためです。
この点については、さらなる検討が必要だと言えるでしょう。
ナルシシズムがキャリアの成功に与える影響は、一面的ではないのかもしれません。
状況や測定方法によって、ナルシシズムの効果が異なる可能性も考えられます。
悪者のキャリア:サイコパシーは月収と負の関連
分析の結果、サイコパシーは月収と負の関連があることが示されました。
つまり、サイコパシーの高い人ほど、月収が低い傾向にあると言えます。
この結果は、以下のような理由で説明できるかもしれません。
- サイコパシーの高い人は、衝動的で反社会的な行動をとりやすい
- サイコパシーの高い人は、組織内での社会化に問題を抱えやすい
- サイコパシーの高い人は、生産性に悪影響を与える可能性がある
ただし、サイコパシーと月収の負の関連性は、統制変数を含めた分析でのみ有意でした。
つまり、性別、年齢、勤続年数、組織規模、学歴、労働時間などの影響を取り除いた場合に、サイコパシーと月収の関連性が見られたのです。
これは、サイコパシーの影響が、他の要因に隠れている可能性を示唆しています。
悪者のキャリア:サイコパシーは管理職の地位とも負の関連
分析の結果、サイコパシーは管理職の地位とも負の関連があることが示されました。
つまり、サイコパシーの高い人ほど、管理職になる可能性が低いと言えます。
この結果は、以下のような理由で説明できるかもしれません。
- サイコパシーの高い人は、リーダーシップに必要な社会的スキルに欠ける
- サイコパシーの高い人は、部下から好ましくない存在と見なされやすい
- サイコパシーの高い人は、組織内での昇進に不利になる可能性がある
ただし、サイコパシーと管理職の地位の負の関連性は、統制変数を含めた分析でのみ有意でした。
つまり、性別、年齢、勤続年数、組織規模、学歴、労働時間などの影響を取り除いた場合に、サイコパシーと管理職の地位の関連性が見られたのです。
悪者のキャリア:サイコパシーはキャリア満足度とも負の関連
分析の結果、サイコパシーはキャリア満足度とも負の関連があることが示されました。
つまり、サイコパシーの高い人ほど、自身のキャリアに満足していない傾向にあると言えます。
この結果は、以下のような理由で説明できるかもしれません。
- サイコパシーの高い人は、対人関係が上手くいかず、キャリアに悪影響を及ぼす
- サイコパシーの高い人は、衝動的な行動が仕事上の問題につながりやすい
- サイコパシーの高い人は、キャリアの満足度を高く評価しにくい傾向がある
サイコパシーとキャリア満足度の負の関連性は、統制変数の有無にかかわらず有意でした。
つまり、性別、年齢、勤続年数、組織規模、学歴、労働時間などの影響を考慮しても、サイコパシーとキャリア満足度の関連性は維持されたのです。
悪者のキャリア:マキャベリアニズムは管理職の地位と正の関連
分析の結果、マキャベリアニズムは管理職の地位と正の関連があることが示されました。
つまり、マキャベリアニズムの高い人ほど、管理職になる可能性が高いと言えます。
この結果は、以下のような理由で説明できるかもしれません。
- マキャベリアニズムの高い人は、権力志向が強く、高い地位を目指す
- マキャベリアニズムの高い人は、政治的スキルが高く、昇進に有利である
- マキャベリアニズムの高い人は、他者を巧みに操作し、地位を獲得しやすい
マキャベリアニズムと管理職の地位の正の関連性は、統制変数の有無にかかわらず有意でした。
つまり、性別、年齢、勤続年数、組織規模、学歴、労働時間などの影響を考慮しても、マキャベリアニズムと管理職の地位の関連性は維持されたのです。
悪者のキャリア:マキャベリアニズムはキャリア満足度と弱い正の関連
分析の結果、マキャベリアニズムはキャリア満足度と弱い正の関連がある可能性が示されました。
つまり、マキャベリアニズムの高い人ほど、自身のキャリアに満足している傾向にあるのかもしれません。
ただし、この関連性は統計的に有意ではなく、解釈には注意が必要です。
マキャベリアニズムとキャリア満足度の関連性が示唆された理由として、以下のようなことが考えられます。
- マキャベリアニズムの高い人は、高い地位を獲得し、それがキャリア満足度につながる
- マキャベリアニズムの高い人は、自身のキャリアを肯定的に評価しやすい傾向がある
- マキャベリアニズムの高い人は、他者からの評価を気にせず、自身の基準で満足度を判断する
悪者のキャリア:マキャベリアニズムは月収とは関連なし
分析の結果、マキャベリアニズムは月収とは関連がないことが示されました。
つまり、マキャベリアニズムの高さは、月収の多寡とは直接的な関係がないと言えます。
この結果は、以下のような理由で説明できるかもしれません。
- マキャベリアニズムの影響は、月収よりも地位の獲得に現れやすい
- マキャベリアニズムの高い人は、必ずしも高い報酬を求めるわけではない
- マキャベリアニズムの影響は、他の要因に隠れている可能性がある
マキャベリアニズムと月収の関連性が見られなかったのは、統制変数の有無にかかわらずでした。
つまり、性別、年齢、勤続年数、組織規模、学歴、労働時間などの影響を考慮しても、マキャベリアニズムと月収の関連性は見出せなかったのです。
ただし、マキャベリアニズムと月収の関連性がないという結果は、予想に反するものでした。
先行研究では、マキャベリアニズムが政治的スキルや達成欲求と関連することが示されており、月収への正の影響が予想されたためです。
この点については、さらなる検討が必要だと言えるでしょう。
マキャベリアニズムが客観的なキャリアの成功に与える影響は、一面的ではないのかもしれません。
悪者のキャリア:ダークトライアドによるキャリア成功への影響
分析の結果、ダークトライアドの3つの特性は、キャリアの成功の分散の1.5~2.0%を説明することが示されました。
この値は、性別、年齢、勤続年数、組織規模、学歴、労働時間などの影響を統制した上での数値です。
つまり、ダークトライアドの特性は、他の要因とは独立に、キャリアの成功に影響を与えていると言えます。
ただし、ダークトライアドによるキャリア成功への影響は、絶対的な値としては小さいものでした。
説明率が1.5~2.0%ということは、キャリアの成功の大部分は、ダークトライアド以外の要因によって説明されることを意味します。
例えば、以下のような要因が考えられます。
- 個人の能力や業績
- 所属する組織の特性
- 経済状況などの外的要因
ダークトライアドがキャリアの成功に与える影響は、限定的であると言えるかもしれません。
ただし、ダークトライアドの特性は、他の要因とは異なる独自の影響を持っている可能性があります。
例えば、ダークトライアドの特性は、個人の行動や対人関係に影響を与えることで、間接的にキャリアの成功に影響を及ぼすのかもしれません。
悪者のキャリアの成功の関連性については、さらなる検討が必要だと言えるでしょう。
ダークトライアドの特性は、キャリアの成功に一定の影響を与えていますが、その影響力は限定的であると考えられます。
悪者のキャリア:ダークトライアドの影響は性別、年齢、勤続年数などを考慮しても同様
分析の結果、ダークトライアドがキャリアの成功に与える影響は、性別、年齢、勤続年数などの要因を考慮しても、同様のパターンを示すことが明らかになりました。
具体的には、以下のような結果が得られています。
- ナルシシズムは、統制変数の有無にかかわらず、月収と正の関連を示した
- サイコパシーは、統制変数を含めた分析でのみ、月収や管理職の地位と負の関連を示した
- マキャベリアニズムは、統制変数の有無にかかわらず、管理職の地位や主観的な満足度と正の関連を示した
これらの結果は、ダークトライアドの影響が、他の要因とは独立したものであることを示唆しています。
つまり、ダークトライアドの特性は、性別、年齢、勤続年数などの個人的な属性や、組織の規模、学歴、労働時間などの状況的な要因とは別に、キャリアの成功に影響を与えていると考えられます。
また、ダークトライアドの影響は、キャリアの成功の指標によっても異なる可能性があります。
例えば、ナルシシズムは月収とは関連するが、管理職の地位とは関連しないというように、ダークトライアドの特性によって、影響を受ける成功の側面が異なるのかもしれません。
ダークトライアドの影響は、他の要因とは独立したものであると考えられますが、その影響のパターンは一様ではないと言えます。
悪者のキャリア:ダークトライアドによるキャリア成功への影響
ナルシシズムの高い人は出世欲が強く、印象管理が上手
ナルシシズムの高い人は、出世欲が強く、印象管理が上手であることが知られています。
これらの特徴が、ナルシシズムとキャリアの成功の関連性を説明する要因となっている可能性があります。
ナルシシズムの高い人は、以下のような傾向を持っていると考えられます。
- 高い地位や権力を求める
- 自分の能力を高く評価する
- 他者からの賞賛を強く求める
- 自己呈示に長けている
こうした傾向は、キャリアの成功に正の影響を与えると考えられます。
また、自己呈示の巧みさは、他者からの評価を高め、昇進などのチャンスにつながる可能性があります。
実際に、ナルシシズムの高さは、リーダーシップや職務パフォーマンスとの関連が示されています。
ナルシシズムの高い人は、自信を持って行動し、他者を引っ張っていく力を発揮しやすいと考えられます。
また、ナルシシズムの高い人は、他者を顧みない行動をとりがちであるため、人間関係で問題を抱える可能性もあります。
ナルシシズムとキャリアの成功の関連性については、メリットとデメリットの両面から検討する必要があると言えるでしょう。
サイコパシーの高い人は衝動的で共感性に乏しく、社会性に問題
サイコパシーの高い人は、衝動的で共感性に乏しく、社会性に問題を抱えやすいことが知られています。
これらの特徴が、サイコパシーとキャリアの成功の負の関連性を説明する要因となっている可能性があります。
サイコパシーの高い人は、以下のような傾向を持っていると考えられます。
- 衝動的で、計画性に欠ける
- 他者の感情を理解しにくい
- 良心の呵責を感じにくい
- 反社会的な行動をとりやすい
こうした傾向は、キャリアの成功に負の影響を与えると考えられます。
例えば、衝動的な行動は、ミスや問題行動につながりやすいでしょう。
また、共感性の欠如は、他者との協力関係を築きにくくし、チームワークを阻害する可能性があります。
実際に、サイコパシーの高さは、職場での対人関係の問題や、非生産的な行動との関連が示されています。
サイコパシーの高い人は、組織に適応しにくく、長期的なキャリアの成功を築きにくいのかもしれません。
ただし、サイコパシーの高い人が、常に職場で問題を起こすわけではありません。
状況によっては、サイコパシーの特徴が、短期的な成果につながる可能性もあります。
例えば、冷静な判断力や、困難な状況でも動じない強さは、ビジネスの場面で役立つ場合もあるでしょう。
サイコパシーとキャリアの成功の関連性については、状況や時間軸を考慮した検討が必要だと言えます。
短期的な成果と長期的な成功では、サイコパシーの影響が異なる可能性があります。
マキャベリアニズムの高い人は権力志向が強く操作的
マキャベリアニズムの高い人は、権力志向が強く、他者を操作する傾向があることが知られています。
これらの特徴が、マキャベリアニズムとキャリアの成功の関連性を説明する要因となっている可能性があります。
マキャベリアニズムの高い人は、以下のような傾向を持っていると考えられます。
- 権力や地位を求める
- 他者を操縦することを厭わない
- 戦略的に行動する
- 道徳的な規範にとらわれない
こうした傾向は、キャリアの成功に正の影響を与える可能性があります。
例えば、権力志向の強さは、高い地位を目指す行動につながるでしょう。
また、戦略的な行動は、組織内の政治的なゲームをうまく立ち回ることにつながるかもしれません。
実際に、マキャベリアニズムの高さは、リーダーシップや昇進との関連が示されています。
マキャベリアニズムの高い人は、組織内の権力構造を把握し、うまく立ち回ることで、キャリアを築いていくのかもしれません。
悪者のキャリアの関係に関する研究の課題
横断調査のため因果関係は不明
本研究は横断調査であるため、ダークトライアドとキャリアの成功の因果関係は明らかではありません。
横断調査とは、ある一時点でデータを収集する手法です。
この手法では、変数間の関連性は検討できますが、どちらが原因でどちらが結果なのかを特定することは難しいと言えます。
例えば、本研究では、ナルシシズムの高さと月収の正の関連性が示されました。
しかし、これは以下のような可能性を排除できません。
- ナルシシズムが高いから月収が高いのではなく、月収が高いからナルシシズムが高くなった
- ナルシシズムと月収の両方に影響を与える第三の変数が存在する
因果関係を明らかにするためには、縦断調査やより厳密な実験デザインが必要だと考えられます。
縦断調査とは、同じ対象者に対して複数の時点でデータを収集する手法です。
この手法を用いることで、変数間の時間的な前後関係を検討することができます。
また、実験デザインを用いることで、特定の変数を操作し、その効果を検証することも可能です。
自己申告データによる共通方法バイアスの可能性
本研究では、すべての変数が自己申告によって測定されています。
このことから、共通方法バイアスが生じている可能性があります。
共通方法バイアスとは、同じ測定方法を用いることで、変数間の関連性が実際よりも強く(または弱く)評価されてしまう現象を指します。
例えば、本研究では、ダークトライアドの特性とキャリアの成功をどちらも自己申告で測定しています。
このため、以下のような可能性が考えられます。
- ナルシシズムの高い人は、自尊心を維持するために、月収を実際よりも高く申告した
- サイコパシーの高い人は、社会的に望ましくない回答を避けるために、キャリアの満足度を実際よりも高く申告した
こうしたバイアスが生じると、変数間の関連性が歪んで評価されてしまう可能性があります。
共通方法バイアスを防ぐためには、複数の測定方法を用いることが有効だと考えられています。
例えば、ダークトライアドの特性は自己申告で、キャリアの成功は他者評価で測定するといった工夫が考えられます。
また、測定時期を複数に分けることで、バイアスを減らすことができるかもしれません。
若年層のみを対象としたサンプリング
本研究は、25歳から34歳までの若年層を対象としています。
このことから、結果の一般化可能性には注意が必要だと言えます。
一般化可能性とは、研究で得られた結果が、研究対象以外にも当てはまるかどうかを指します。
本研究の結果が、他の年代にも当てはまるかどうかは、慎重に検討する必要があります。
例えば、以下のような可能性が考えられます。
- 若年層では、ダークトライアドの特性がキャリアの成功に影響しやすいが、中高年層では影響が小さい
- 若年層では、キャリアの成功の指標として月収が重要だが、中高年層では役職などの指標が重要になる
こうした可能性を考慮すると、本研究の結果を他の年代に一般化するには、注意が必要だと言えます。
年代によって、キャリアの成功の捉え方や、性格特性の影響が異なる可能性があるためです。
一般化可能性を高めるためには、より幅広い年代を対象とした調査が求められます。
また、年代ごとの分析を行うことで、年代による違いを検討することも重要だと考えられます。
ダークトライアドの簡易尺度を使用
本研究では、ダークトライアドの特性を測定するために、簡易版の尺度が用いられています。
このことから、測定の妥当性や信頼性に関する問題が生じている可能性があります。
妥当性とは、尺度が測定したい概念を適切に測定できているかどうかを指します。
信頼性とは、尺度が一貫した結果を産出できるかどうかを指します。
本研究で用いられた尺度は、以下のような特徴を持っています。
- 各特性につき4項目ずつ、合計12項目で構成されている
- 十分な信頼性係数(クロンバックのα)が確認されている
- 妥当性に関する検討は限定的である
簡易版の尺度は、回答の負担が少ないというメリットがある一方で、測定の精度が低下するリスクがあります。
例えば、以下のような可能性が考えられます。
- 尺度の項目数が少ないため、各特性の一部の側面しか測定できていない
- 尺度の項目内容が不適切であるため、各特性を適切に測定できていない
こうした可能性を考慮すると、本研究の結果は、測定の問題による影響を受けている可能性があります。
測定の妥当性や信頼性を高めるためには、より詳細な尺度を用いることが有効だと考えられています。
最後に悪者のキャリアのまとめ
ダークトライアドとキャリアの関係について、今回の研究からわかったことをまとめてみましょう。
まず、ナルシシズムの高い人は、収入が高くなりやすいようです。
一方、サイコパシーの高い人は、収入や地位、満足度が低くなりやすいという結果でした。
マキャベリアニズムの高い人は、地位が高くなりやすく、満足度も高めだそうです。
権力志向の強さや戦略的な行動が、キャリアにプラスに働くのかもしれません。
ただし、今回の研究にはいくつか課題もあります。
因果関係の特定が難しかったり、調査対象が若者に限られていたりと、結果の一般化には注意が必要です。
それでも、悪者のキャリアの関係について、興味深い示唆が得られたのは確かでしょう。
みなさんも、自分の性格を見つめ直してみるのも面白いかもしれませんね。
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ライター 兼 編集長:トキワエイスケ @etokiwa999
株式会社SUNBLAZE代表。子どもの頃、貧困・虐待家庭やいじめ、不登校、中退など社会問題当事者だったため、社会問題を10年間研究し自由国民社より「悪者図鑑」出版。その後も社会問題や悪者が生まれる決定要因(仕事・教育・健康・性格・遺伝・地域など)を在野で研究しており、社会問題の発生予測を目指している。凸凸凸凹(WAIS-Ⅳ)。