子どもの誠実性って、いったい何でしょうか?
「まじめな性格」や「きちんとしている子」と言われることがあるかもしれません。
でも実は、誠実性はただの性格ではなく、将来の勉強や仕事、健康にも関わる大切な力です。
どんな環境で育ったか、親の行動や家庭の雰囲気が、誠実性の育ち方に深く関係しています。
今回紹介するのは、アメリカの研究「Dynamic Associations Among Socioeconomic Status (SES), Parenting Investments, and Conscientiousness Across Time and Generations」です。
この研究では、子どもの誠実性がどう育ち、どう受けつがれるのかを三世代にわたって調べています。
この記事では、その研究をもとに、誠実性がなぜ大切なのか、どんな家庭環境が関係しているのかを、わかりやすく解説します。
今回も、性格研究者で悪者図鑑著者のトキワ(@etokiwa999)が解説していきます。
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子どもの誠実性とは何かを知ろう
誠実性ってどんな性格特性なの?
誠実性とは、自分をしっかりコントロールできる力です。
物ごとにまじめに取り組み、ルールを守ろうとします。
気持ちや行動を落ち着いて保つことが得意です。
この性格特性は、次のような特徴があります。
- 責任感がある
- まじめでコツコツ努力できる
- 時間や約束を守る
- 落ちついていて感情的になりにくい
- 目標に向かって計画を立てられる
このような誠実性は、小さなころから育ち始めます。
子どもが自分の行動をうまく調整できるとき、誠実性が育っています。
研究でも、小さいころの行動が大人になっても続くと分かりました。
とくに自己コントロール力が関係しています。
誠実性とは、社会で生きるために大切な性格です。
まじめに努力する力があると、周りから信頼されやすくなります。
誠実な子どもが将来得られるメリットとは
誠実な子どもは、大人になっても成功しやすいです。
いろいろな研究で、誠実性と成功が強く関係するとわかっています。
とくに社会に出てから、大きなメリットがあります。
たとえば以下のような点です。
- 学校の成績がよくなる
- 良い仕事につきやすくなる
- 結婚や家庭生活が安定する
- けんこう的な生活を続けやすい
- お金の使い方が計画的になる
こうした成果は、10年、20年と長い時間で見ても続きます。
このようなちがいは、誠実性が高いかどうかで現れるのです。
家庭や学校で学んだことが、大人になって花ひらくとも言えます。
つまり、誠実な性格は人生のいろいろな場面で役に立ちます。
誠実性と学校・仕事のつながり
誠実性が高いと、学びや働く力がのびやすいです。
これは、勉強や仕事にまじめに向き合えるからです。
アメリカの調査では、誠実な子どもほど学歴も高くなっていました。
なぜ誠実性が学校や仕事で大切なのでしょうか?
- 時間を守るので先生や上司から信頼されやすい
- 課題や宿題を忘れずにこなせる
- やりとげる力があるので、失敗してもあきらめない
- 自分の感情をコントロールして冷静に話せる
また、誠実な性格のある子は大学に行く割合も高いことがわかっています。
社会人になってからも収入が高い傾向があるというデータもあります。
誠実性は、学びや仕事で続ける力と信頼を得る力につながっています。
誠実性が健康や人間関係にも影響する理由
まず誠実性は、からだと心の健康を守る力にもなります。
ただの性格ではなく、生き方の土台になるからです。
たとえば、誠実な人ほど次のようなことができるからです。
- たばこやお酒をひかえる
- 食事や運動の習慣を大切にする
- イライラしても怒鳴らない
- 約束を守って人との関係を大切にする
こうした習慣が、長生きや病気の予防につながります。
研究では、誠実な人はより長く生きるという結果も出ています。
つまり、誠実性は健康や人づきあいにも大きく関係しています。
誠実性のある子はどう行動する?
誠実な子どもは、行動や言葉にあらわれます。
ふだんのしぐさや反応にも、その性格が出ています。
たとえば次のような行動です。
- 宿題をきちんとやる
- 頼まれたことを忘れずにこなす
- 物をていねいに扱う
- うそをつかないように気をつける
- 自分の気持ちをおさえて考える時間をもつ
大人の見ていないところでも、正しいことをしようとするのも特徴です。
こうした行動は、小さなころから親や先生に見守られて育ちます。
誠実な子は、自分の行動に責任をもって行動しようとするのが強みです。
子どもの誠実性と家庭の関係を見てみよう
親の教育レベルが子どもに与える影響
親の学歴が高いと、子どもの誠実性も育ちやすいです。
研究では、親の教育と子どもの性格に関係があることがわかっています。
なかでも誠実性は、親の教育レベルと強く結びついていました。
なぜ学歴の高さが子どもに影響するのでしょうか?
- 本や学びの道具が家にあることが多い
- 子どもの話をしっかり聞く姿勢がある
- 子どもに考える時間を与える習慣がある
- 学ぶことの大切さを行動で見せている
こうした家庭では、子どもが自分から考えて行動する力が育ちます。
その積み重ねが、誠実な性格につながるのです。
つまり、学歴が高い親ほど子どもの誠実性を育てやすい環境をつくっています。
親の収入が家庭環境にどう関わるのか
親の収入が高いと、子どもが良い環境で育ちやすくなります。
このことが、子どもの誠実性にも影響します。
なぜなら、収入があると生活に余裕が生まれるからです。
たとえば以下のようなことができます。
- 安定した住まいで落ち着いた毎日を送れる
- 健康な食事をとることができる
- 学びの道具や遊びの場所がそろっている
- 習い事や本などの経験がふえる
こうした豊かさは、子どもが安心して自分の行動をコントロールできる力を育てます。
また、困ったときに大人が助けてくれる安心感も誠実性に関係しています。
収入の高さは、子どもにとっての環境づくりに直結しているのです。
親の温かい接し方が子どもを変える
親が子どもに温かく接すると、誠実性が育ちやすくなります。
この「温かさ」とは、優しく見守るような態度をさします。
研究では、次のような親の行動が効果的でした。
- 子どもの話に耳を傾ける
- 失敗しても怒らずに受け入れる
- 手伝ってくれたら感謝の言葉をかける
- 一緒に遊ぶなど、かかわりの時間を大切にする
こうした関わりを受けた子は、安心して自分の行動をコントロールできます。
その結果、他人にやさしくなり、決まりを守るようになります。
親のあたたかさは、子どもの性格の土台をつくる大事な力なのです。
しつけのやり方が性格にどう影響する?
しつけの方法も、誠実性の育ち方に関係しています。
とくに「一貫したルール」を守ることが重要とされています。
一貫したしつけとは、こんな特徴があります。
- 毎回同じように伝える
- よくないことは理由もそえて注意する
- ほめるときも決まったルールで行う
- おこるときも感情をおさえて冷静にする
逆に、バラバラなしつけは子どもを混乱させます。
その結果、ルールを守る力や自己コントロールが育ちにくくなります。
安定したしつけの中で、子どもは安心して行動の調整を学べます。
それが誠実性の発達にもつながっていくのです。
物の豊かさが子どもの誠実性に関係する理由
物が足りていることも、子どもの性格に影響します。
とくに、学びに必要な道具や環境がそろっていることが大切です。
研究では、以下のようなものが関係していました。
- 本やノート、えんぴつなどの学習道具
- きれいで広すぎず、落ち着いた住まい
- テレビやゲームよりも学びに使える道具
- 家族と安心して話せる時間や空間
こうした物や環境が整っていると、子どもは計画的に行動できます。
また、学ぶことが当たり前になり、がんばる習慣がついてきます。
つまり、物質的な環境が誠実な行動を育てる土台になります。
子どもの誠実性と親の誠実性のつながり
親が誠実だと子も誠実になる?
親の誠実性は子どもにも伝わる傾向があります。
研究では、親の性格と子どもの性格に関連があるとわかっています。
特に誠実性では、そのつながりが強く見られました。
この関係には以下のような理由があります。
- 親が手本となって行動する
- まじめに生活する姿が自然と伝わる
- 自分の行動をコントロールする力が似てくる
- 落ち着いたふるまいをまねるようになる
また、思春期の親の性格がその後の子育てにも影響していました。
つまり、自分が子どもだったときの性格が次の世代にも続くのです。
親の誠実なふるまいは、言葉以上に子どもへ届いています。
思春期の誠実性がその後に影響する理由
思春期に育った誠実性が、大人になっても影響を持ちます。
研究では、15歳ごろの性格が将来の生活にもつながるとわかりました。
具体的には、次のような影響がありました。
- 学校をしっかり卒業しやすい
- 安定した収入を得やすくなる
- 自分の子どもを育てるときの姿勢に関係する
つまり、思春期の性格は「自分の未来」と「子どもの未来」の両方に関わります。
この時期に誠実性が高かった人ほど、子育ても落ち着いて行える傾向がありました。
誠実性は、一生を通じて影響を与え続ける性格特性です。
親の性格が子どもの環境をどう作るのか
親の性格によって、子どもが育つ環境も変わります。
誠実な親は、安定した家庭づくりが得意です。
これは、以下のような行動に表れます。
- 生活リズムが整っている
- 約束を守る姿を見せている
- 子どもの話をしっかり聞く
- トラブルにも冷静に対応する
そのため、子どもは安心して生活でき、落ち着いて行動する力が育ちます。
また、誠実な親は学びの道具や健康な食事などにも気を配る傾向があります。
親の性格は、子どもの環境の「空気」をつくっているとも言えます。
家庭での行動が子に受け継がれる仕組み
子どもは親の行動を見てまねることで性格を学びます。
とくに毎日の小さな行動が大きな影響を与えます。
次のような場面で子どもは学んでいます。
- 時間どおりに起きる、寝る
- 忘れ物をしないように準備する
- ありがとう、ごめんなさいを言う
- ルールを守る
- 人にやさしく接する
これらの行動を繰り返し見ていると、子どもも自然とまねするようになります。
そして、それが性格の一部になっていきます。
家庭でのふだんの行動は、言葉以上に子どもの性格に残ります。
世代を越えて誠実性がつながるとは?
誠実性は、親から子、そして孫へとつながっていきます。
研究では、3世代にわたる影響が確認されました。
たとえば、こんな流れが見られました。
- G1世代(祖父母)の誠実な育て方
- G2世代(親)の誠実な性格と学歴・収入
- G3世代(子ども)の誠実なふるまい
また、親の誠実性が高いほど、子どもの誠実性も高くなる傾向がありました。
この関係には、性格の伝わりだけでなく、育て方や生活環境も影響しています。
誠実性は、ひとつの家庭の中で長い時間をかけて受け継がれるのです。
子どもの誠実性と行動遺伝学の関係
誠実性はどれくらい遺伝するの?
誠実性はおよそ半分が遺伝の影響とされています。
行動遺伝学では、性格の違いがどこから来るのかを調べます。
双子の研究などから、誠実性の遺伝率は40〜50%と報告されています。
つまり、兄弟姉妹や親子で似た性格になる理由の一つは遺伝です。
- 自己コントロールのしやすさ
- 感情の落ちつきやすさ
- 目標に向かう力
こうした特性が、生まれつきある傾向として受け継がれます。
しかし、それだけではすべてを説明できません。
残りの性格の違いは、主に環境の違いにあると考えられています。
誠実性は一部が遺伝により決まりますが、それだけではありません。
遺伝だけではない育ちの影響とは
性格は育つ環境によっても大きく変わります。
たとえ遺伝で誠実性が高い傾向があっても、育ち方次第で変わるのです。
研究では、誠実性の発達に次のような要素が関わっていました。
- 親の温かい態度や会話
- 一貫したしつけの方法
- 安定した家庭のリズム
- 学びやすい環境の整備
こうした育て方は、子どもが自分で考え、行動を調整する力を育てます。
その結果、誠実性が高くなるのです。
また、親の性格や態度も手本となって子に伝わります。
育ちの環境が、誠実性の発達に大きくかかわっているのです。
家庭の影響が小さいってどういう意味?
行動遺伝学では、家庭の「共有環境」はあまり影響がないとされます。
ここで言う「共有環境」とは、兄弟姉妹が同じように受ける家庭の条件のことです。
たとえば以下のようなものです。
- 親の年収や学歴
- 家の広さや町の環境
- 同じ学校に通うこと
しかし、行動遺伝学の研究ではこの共有環境よりも、兄弟姉妹ごとの経験(非共有環境)が重要とされています。
つまり、同じ家にいても、一人ひとりちがう育ち方をしているという考え方です。
この見方では、家庭の影響は小さいと表現されます。
親子の誠実性が似るのは遺伝も関係している?
親と子で性格が似ているのは、遺伝の影響もあると考えられています。
研究では、親と子どもの誠実性に直接的な関係が見られました。
この関係について、研究の中では「遺伝的な要因が大きく関わっている可能性が高い」とはっきり述べられています。
つまり、性格の一部は親から子へと自然に受け継がれているのです。
これはたとえば、こんなことに表れます。
- まじめな親の子どもも、物ごとに真剣に取り組む
- 自己コントロールが得意な親の子も、落ち着いた性格になる
もちろん、それがすべてではありません。
親の行動や育て方、家庭の雰囲気も、子どもの性格に影響します。
ですが、生まれもった気質として似る部分があるのは自然なことです。
誠実性は、遺伝と環境の両方から形づくられているといえます。
子どもの誠実性を育てるヒント
教育や学びの機会をどう活かすか
学ぶ環境があることで、誠実性は育ちやすくなります。
子どもが学びに集中できる場所や道具はとても大切です。
たとえば、以下のようなものが役立ちます。
- 本やノート、えんぴつなどの文具
- 静かに集中できるスペース
- 学ぶ楽しさを感じられる場面
- 課題や宿題に向き合う時間
親がそばで「よく頑張ったね」と声をかけることも大きな力になります。
また、質問されたときに一緒に考えることも信頼につながります。
子どもが学ぶことを楽しいと感じると、まじめな姿勢が育ちやすくなります。
あたたかい声かけがなぜ大事?
やさしい声かけは、子どもの心を安定させます。
それが誠実性の土台をつくる大切なステップです。
子どもにとってうれしい声かけにはこんなものがあります。
- 「ありがとう」「がんばったね」
- 「大丈夫」「一緒にやろうか」
- 「まちがえてもいいよ」
こうした言葉は、安心感や信頼感を育てます。
すると、子どもは落ちついて自分の行動をふり返ることができます。
その結果、よく考えて行動する力が育ちます。
あたたかい声は、子どもの心の支えとなり、誠実な性格の育成にもつながります。
しっかり褒めてしっかりルールも
誠実性を育てるには、バランスが大切です。
ほめることとルールを守らせること、どちらも必要です。
以下のような方法が効果的です。
- よい行動を見つけてすぐにほめる
- ルールは短く、わかりやすく伝える
- 決まりを破ったときは、落ち着いて注意する
- なぜそれが大事なのか、理由も説明する
このように、子どもが理解しやすいように伝えることが大切です。
ほめるだけでも、しかるだけでも十分ではありません。
両方をバランスよく使うことで、行動をコントロールする力が身につきます。
ルールと安心の両方が、子どもの誠実性をのばすポイントです。
本や学習道具がある環境の大切さ
身のまわりの環境は、性格にも影響します。
とくに本や学びの道具があると、誠実性が育ちやすいです。
家の中にこんな物があるとよいとされています。
- 年齢に合った絵本や読み物
- ノートやペンなどの文房具
- 学びに使えるおもちゃやパズル
- 静かに読書できる場所
研究では、こうした環境が子どもの行動にも良い影響を与えるとわかりました。
それは、集中する習慣が身につくからです。
物の多さではなく、「学びに使える環境」があることが大切です。
小さな習慣が性格を形づくる
日々の習慣が、子どもの誠実性をつくります。
一つひとつは小さくても、毎日続くことで大きな力になります。
たとえば、こんな習慣が効果的です。
- 毎日決まった時間に起きる
- 宿題を自分から始める
- 使った物をもとの場所に戻す
- 約束の時間を守る
こうした習慣は、自己管理する力を育てます。
誠実性は「まじめに行動できる力」なので、毎日の積み重ねがとても重要です。
子どもが小さなことでも自分でやれるようになると、誠実な性格が育ちやすくなります。
最後に
誠実性は、生まれつきだけで決まるものではありません。
家庭のあたたかさや毎日の習慣、学ぶ環境など、まわりの影響で少しずつ育っていきます。
今回紹介した研究では、親の性格や育て方が、子どもの誠実性に大きく関係していることがわかりました。
しかもその影響は、子どもだけでなく、さらに次の世代にもつながっていくのです。
つまり、あなたの今の性格や行動も、未来の家族やまわりの人にとって大切な意味をもつかもしれません。
もし「もっとまじめになりたい」「自分を変えたい」と思うなら、毎日の小さな行動から始めてみてください。
誠実性は、少しずつ積み上げていける力です。
自分のためにも、未来のためにも、今日からできることを大切にしていきましょう。

ライター 兼 編集長:トキワエイスケ @etokiwa999
株式会社SUNBLAZE代表。子どもの頃、貧困・虐待家庭やいじめ、不登校、中退など社会問題当事者だったため、社会問題を10年間研究し自由国民社より「悪者図鑑」出版。その後も社会問題や悪者が生まれる決定要因(仕事・教育・健康・性格・遺伝・地域など)を在野で研究しており、社会問題の発生予測を目指している。凸凸凸凹(WAIS-Ⅳ)。