「愛着の遺伝」って聞いたことがありますか?
私たちが人とどう関わるか、そのパターンは生まれつき決まっている部分もあります。
たとえば、「見捨てられたくない」と不安になったり、「ひとりが楽」と思ったりする気持ち。それは性格だけでなく、遺伝や育ち方の影響を受けているのです。
今回紹介する論文『Genetics of adult attachment』では、愛着と遺伝の関係が詳しく調べられています。
「愛着って生まれつき?」「親の育て方で変わる?」「友だちや恋人の影響は?」そんな疑問に答えるため、最新の研究とデータをもとに、わかりやすくまとめました。
愛着について知ることは、自分自身を理解するヒントにもなります。ぜひ読み進めてみてください。
今回も、性格研究者で悪者図鑑著者のトキワ(@etokiwa999)が解説していきます。
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愛着の遺伝が注目される理由
愛着スタイルとは何か?不安型・回避型の違い
人は幼いころから特定の人と強い絆を結びます。 この関係の形を「愛着スタイル」といいます。
代表的なスタイルには次の3つがあります。
- 安全型:人と親しくなるのが得意
- 不安型:相手に捨てられる不安が強い
- 回避型:人と距離を置きたがる
不安型はいつも相手に気をつかいすぎます。 回避型は助けを求めることが苦手です。
どのスタイルも生き方や人づきあいに影響します。
特に不安型と回避型は、心の健康にも関係します。 このため、研究者たちはその仕組みに注目しています。
愛着スタイルの違いは性格だけでなく、 子どものころの経験や体質にも関係しています。
それぞれのスタイルがどのようにできるのかを知ることは、 自分や他人との関係を理解するうえで大切です。
愛着スタイルは生まれつきだけでなく、経験でも変わります。
愛着は子ども時代の経験だけで決まる?
まず愛着は子ども時代の親との関係で育まれます。 しかし、大人になるまでに変化することもあります。
これまで「親の育て方」が一番の要因だと思われてきました。 たとえば、
- よく話を聞いてくれる親なら安全型
- 怒りっぽい親だと不安型や回避型になりやすい
ところが、最近の研究ではそれだけで説明できません。
たとえば、仲の良い友だちとの関係や、 学校の先生との交流も影響を与えるのです。
さらに、大人になってからの恋愛や仕事の人間関係でも、 愛着スタイルが変わることがあると分かっています。
つまり、子ども時代の影響は大きいですが、 その後の経験でも愛着は変化します。
愛着は育ちだけでなく、その後の人生経験でも形が変わります。
なぜ今「愛着の遺伝」が研究されているのか
愛着が遺伝でどれだけ決まるのかが注目されています。
きっかけは、双子の研究や遺伝子の違いが関係してきたからです。
以前は、愛着は育てられ方や家庭の環境によると考えられていました。 しかし、同じ家で育った双子でも、 違う愛着スタイルになることがあります。
そこで、研究者たちは遺伝の影響を調べるようになりました。
とくに大人になってからの愛着スタイルは、 子ども時代よりも遺伝の影響が大きいとわかってきたのです。
たとえば、不安型愛着は最大で45%、 回避型愛着は最大で39%が遺伝で説明できるとされています。
そのため、愛着の遺伝は心理学と生物学の両方から注目されています。
安全な愛着がもたらす心理的な安定とは
安全型の愛着は心の安定にとても役立ちます。
このタイプの人は他人を信じやすく、 困ったときにも助けを求めやすいのが特徴です。
また、ストレスに強く、落ち込みにくい傾向があります。 いわば「心の回復力」が高いタイプです。
次のような良い影響が知られています。
- 人間関係が長続きしやすい
- 自分の気持ちをうまく伝えられる
- 不安や怒りをコントロールしやすい
安全型の人は、相手との距離を上手にとることができます。 それが信頼関係を育て、さらに心を安定させるのです。
逆に、不安型や回避型の人は、 こうした心の安定を得にくい傾向があります。
だからこそ、安全型の愛着を育むことが大切なのです。
不安定な愛着と心の不調のつながり
不安型や回避型の愛着は心の不調と関係があります。
たとえば、うつや不安、怒り、孤独などが起きやすくなります。
特に、不安型の人は、 相手に見捨てられる不安をいつも抱えてしまいます。
また、回避型の人は、 自分の気持ちを隠してしまうことが多く、 結果として人と深い関係を築けません。
こうした愛着の特徴は、次のような問題と関係します。
- 自己評価が低くなる
- 他人への信頼が持てなくなる
- 恋愛や友人関係での衝突が増える
研究では、こうしたスタイルの人が、 心の病気になりやすいことも示されています。
つまり、不安定な愛着は心の健康に大きな影響を与えるのです。
愛着の遺伝と性格特性の関係
性格と愛着のつながりはあるの?
性格特性と愛着スタイルには関係があります。
まず性格特性とは、ふだんの考え方や感じ方の傾向です。
たとえば、情動性が高い人は心配しやすいです。 誠実性が高い人はまじめでコツコツと行動します。
研究では、不安型愛着と情動性に共通の遺伝的な影響があり、 その重なりは63%にもなると報告されています。
これは、性格も愛着も共通の体質からできていることを示します。
また、誠実性と回避型愛着との関係も指摘されています。 誠実性が高い人は、感情をコントロールしやすく、 回避型になりにくい可能性があります。
このように、性格特性と愛着スタイルは別のものですが、 重なる部分も多く、どちらも生まれ持った傾向が影響しています。
つまり、性格と愛着は似た部分があり、遺伝がかかわっています。
情動性が高い人は不安型愛着になりやすい?
情動性が高いと、不安型の愛着になりやすいです。
この特性は、感情のゆれが大きく、 不安や怒りなどを感じやすい性格のことです。
この性格特性は、気持ちの安定に関わるため、 愛着スタイルとも深くつながっています。
とくに、不安型愛着では次のような特徴があります。
- 相手に嫌われるのがこわい
- つい相手に合わせすぎる
- 離れることに強いストレスを感じる
研究によると、不安型の愛着と情動性の関係は、 かなり強く、63%が同じ遺伝的な影響だとされています。
つまり、気持ちが不安定になりやすい体質が、 そのまま愛着の不安にもつながっているのです。
もちろん、育った環境や人間関係も影響しますが、 もともとの感情の動きやすさも大切な要素です。
情動性が高い人ほど、不安型の愛着になりやすいと考えられます。
誠実性と回避型愛着の意外な関係
誠実性が高い人は回避型になりにくいかもしれません。
この特性は、まじめで責任感があり、 コツコツと物事をやりとげる性格のことです。
このような人は、自分の気持ちを落ち着けたり、 まわりの人と良い関係を築いたりする力があります。
一方、回避型愛着の人は、
- 人と距離をとりたがる
- 自分の気持ちを伝えにくい
- 助けを求めるのが苦手 などの特徴があります。
研究では、誠実性が高い人ほど、 回避型の傾向が少ないことが示されています。
その理由として、誠実な人はストレスに強く、 他人に対して信頼を持ちやすいことが関係していると考えられます。
つまり、誠実性の高さは、愛着の不安や回避をやわらげる力になります。
誠実な性格がある人ほど、人との関係を避けにくい傾向があるのです。
同じ家庭でも性格や愛着が違う理由
兄弟でも性格や愛着が違うのはよくあります。
たとえ同じ親に育てられていても、 その子どもたちの性格や愛着スタイルは異なることがあります。
この違いは「非共有環境」と「遺伝」が関係しています。
非共有環境とは、
- 友だち関係
- 学校での経験
- 親からの接し方のちょっとした違い など、兄弟でも異なる体験をすることです。
また、それぞれが持つ体質や遺伝の違いも影響します。
たとえば、同じように怒られても、 落ち込みやすい子と気にしない子がいます。
こうした個性は、生まれつきの気質のちがいからくるものです。
つまり、親の育て方だけではなく、 本人がもつ気質や環境も性格や愛着に影響するのです。
だからこそ、家庭が同じでも、愛着の形は人それぞれなのです。
性格と愛着に共通する遺伝的な土台
性格と愛着は、共通の体質からできている部分があります。
研究によると、不安型愛着と情動性のあいだには、 約6割以上の共通した遺伝的な影響があります。
このような重なりは、他の性格特性にも見られます。
つまり、人との関係に対する考え方や感じ方は、 生まれ持った傾向がもとになっている部分があるのです。
また、遺伝子の違いによって、 気持ちの安定のしやすさや、助けを求める行動にも違いが出ます。
ただし、こうした体質だけで愛着が決まるわけではありません。
子ども時代の経験や、大人になってからの恋愛など、 人生の中でいろいろなことが愛着スタイルに影響を与えます。
それでも、性格と愛着には共通の遺伝的な土台があるとわかっています。
愛着の遺伝が示された双子研究の結果
双子研究ってどんなことを調べてるの?
双子研究は、遺伝と環境の影響を調べる方法です。
同じ遺伝子を持つ一卵性双子と、 半分だけ遺伝子が同じ二卵性双子を比べます。
もし一卵性の方が似ている点が多ければ、 遺伝の影響が強いと考えられます。
逆に、両方の双子で似ていれば、 環境の影響が強いことを意味します。
この方法は、性格や病気の研究にも使われてきました。
最近では、愛着スタイルの研究にも活用されています。
どのくらい愛着が遺伝で決まるのかを調べるには、 とても信頼性の高い手法です。
双子研究は、愛着と遺伝の関係を調べるための重要な手がかりになります。
子ども時代の愛着は遺伝より環境が強い
子どもの愛着スタイルは、環境の影響が大きいです。
とくに「親の育て方」や「家庭の雰囲気」が関係しています。
いくつかの双子研究では、 子どもの愛着における遺伝の影響はほとんど見られませんでした。
そのかわり、次のような環境が愛着を決めていることが分かりました。
- 親が子どもの気持ちに応える姿勢
- 怒りやすいか、優しく接しているか
- 家庭内での安心感の有無
このような環境のちがいが、 兄弟の愛着スタイルの違いにもつながります。
つまり、幼いころの愛着は、 育てられた環境によって大きく左右されるのです。
子どものころは、遺伝よりも家庭の環境が重要です。
大人になると遺伝の影響が強くなる理由
大人の愛着スタイルは、遺伝の影響が強くなります。
思春期を過ぎると、家庭以外の経験が増えていきます。
その結果、自分の性格や感じ方が、 より強く行動や考え方にあらわれてきます。
このとき、もともとの体質や気質が、 愛着スタイルにも関わってくるのです。
研究では、大人になると次のような傾向が見られました。
- 愛着不安の約40%は遺伝の影響
- 回避型愛着も30%以上が遺伝で説明できる
つまり、年を重ねるごとに、 遺伝の力がよりはっきりとあらわれるようになります。
成長とともに、遺伝の影響が愛着に表れやすくなります。
不安型愛着は最大45%が遺伝で説明できる
不安型愛着は、遺伝の影響が大きいタイプです。
まず不安型の人は、 相手に見捨てられるのではと常に不安を感じやすいです。
双子研究によって、 このスタイルの約45%が遺伝によって説明できるとされました。
これは、もともとの気質や感情の動きやすさが、 愛着の不安にも表れていることを意味します。
また、残りの部分は環境の影響とされています。 たとえば、親の接し方や学校での人間関係などです。
このことから、不安型愛着には、 生まれ持った要素と育ちの両方がかかわっていると考えられます。
不安型愛着は、遺伝と環境の両方の影響を受けるのです。
回避型愛着も最大39%が遺伝の影響?
回避型愛着にも、遺伝の関わりがあります。
回避型の人は、人との距離をとりたがります。 助けを求めるのが苦手で、ひとりで頑張ろうとする傾向があります。
研究では、回避型愛着の最大39%が遺伝で説明できるとされました。
ただし、不安型と比べると、 やや遺伝の影響は小さいとされています。
一方で、育った環境やその人の選ぶ人間関係も、 このスタイルに大きく影響します。
たとえば、信頼できる大人と出会った経験があると、 回避型の傾向が弱まることもあります。
回避型愛着も、遺伝と環境のバランスで形づくられます。
愛着に関係する注目の遺伝子たち
オキシトシン受容体ってなに?
オキシトシンは「絆をつくるホルモン」と呼ばれています。
赤ちゃんとお母さんのつながり、恋人との信頼関係など、 人と人との結びつきに深く関わるホルモンです。
その働きを助けるのが「オキシトシン受容体」という部分で、 この受容体がうまく働くかどうかは、遺伝子によって変わります。
この受容体の遺伝子は「OXTR遺伝子」と呼ばれます。 OXTRにあるわずかな違いが、人づきあいの仕方にも影響するのです。
研究では、OXTR遺伝子にある特定の型を持つ人が、 不安型や回避型の愛着になりやすい傾向があると示されました。
さらに、この遺伝子の一部が強く働かなくなる「メチル化」が進むと、 人との距離をとる傾向が強まるという結果もあります。
オキシトシン受容体は、人とのつながり方に関わる大事な遺伝子です。
OXTR遺伝子の違いで愛着が変わる?
OXTR遺伝子には、人によって違いがあります。
この違いは「多型(たけい)」とよばれ、 その中でもよく研究されているのが「rs53576」と「rs2254298」です。
たとえば、rs53576という部分では、 「G型」と「A型」という2つの型があります。
研究の中には、G型を持つ人に不安型や回避型が多いという結果や、 逆に安心しやすいという結果もありました。
つまり、研究ごとに違うことも分かっており、 この遺伝子の影響はとても複雑であると考えられます。
また、OXTRの遺伝子が働きにくくなる「メチル化」が進むと、 人と親しくなりにくい傾向があるとわかっています。
これらの研究は、主に唾液や血液から調べられました。
OXTRの違いや働き方は、人間関係に影響していると考えられています。
セロトニンと不安な気持ちのつながり
セロトニンは、気持ちを安定させる働きがあります。
この物質がうまく働かないと、不安や落ち込みが強くなります。
セロトニンに関係する遺伝子には、 「5HT1A」「5HT2A」「5HTTLPR」などがあります。
たとえば、5HTTLPRの「S型」と呼ばれる人は、 心の傷やトラウマに対して、反応が強く出ることがあります。
また、これらの遺伝子がメチル化すると、 セロトニンの働きが弱まり、気持ちの安定が難しくなることもあります。
つまり、これらの遺伝子の働き方によって、 不安型の愛着スタイルになりやすいかどうかが変わるのです。
セロトニンに関する遺伝子も、愛着と深い関係があります。
ドーパミンは人づきあいの好みに関係?
ドーパミンは「やる気」や「報酬」に関わる物質です。
このドーパミンがよく働くと、人と関わることが楽しく感じられます。
この働きに関係する遺伝子には、 「DRD2」「DRD4」「COMT」などがあります。
たとえば、DRD2の特定の型を持つ人は、 愛着不安の傾向が強くなるという研究があります。
また、DRD4の7リピート型を持つ人は、 育った環境によって愛着スタイルが大きく変わる可能性があるとされます。
COMTという遺伝子では、両方の型を持つ人(ヘテロ型)が、 回避型愛着になりやすいという研究もありました。
このように、ドーパミンに関わる遺伝子も、 人との関わり方や心の動きに関係しています。
ドーパミンの働きは、愛着スタイルにも影響を与えています。
COMT遺伝子と回避型愛着の関係
COMT遺伝子は、脳の前の部分の働きに関係します。
この遺伝子がつくる酵素は、ドーパミンなどを分解する役割をもちます。
COMTには「Val型」と「Met型」の2つの型があります。
ある研究では、Val型とMet型の両方を持つ人(ヘテロ型)が、 もっとも回避型の傾向が強いとされました。
これは「遺伝子のちょうど真ん中の型」が、 心の働きに特別な影響を与えていることを示します。
こうした現象は「ヘテロシス効果」と呼ばれています。
この遺伝子の違いによって、人との距離感や、 感情のコントロールの仕方が変わる可能性があります。
COMT遺伝子の働きは、回避型愛着とつながっているのです。
愛着の遺伝と環境のかかわり方
遺伝だけでは愛着は決まらない
愛着は、遺伝だけでなく環境の影響も受けます。
たとえ遺伝で不安型や回避型になりやすくても、 育った家庭や人間関係によって変わることがあります。
愛着の研究では、双子であっても、 ちがう愛着スタイルになることがあると分かりました。
これは、育った経験や周りの人の影響が、 愛着スタイルに大きく関係していることを示しています。
たとえば、次のような環境の違いがあります。
- 親がやさしく受け入れてくれるかどうか
- 友だちと安心して過ごせるかどうか
- 学校や地域での経験
遺伝の影響はたしかにありますが、 それを上回るくらい、環境が大きな役割を果たすこともあります。
つまり、愛着は生まれつきだけでなく、育ち方で変わるのです。
親の子育てが遺伝の影響を変える?
親のかかわり方は、愛着の形を変える力があります。
たとえば、心配しやすい体質を持っていても、 親が安心感をくれると、不安型になりにくいです。
逆に、安心感が足りない育てられ方をすると、 不安型や回避型になることがあります。
つまり、親の対応しだいで、 もともとの遺伝の影響が強く出ることもあれば、弱まることもあるのです。
これを「遺伝と環境の相互作用」といいます。
たとえば、同じ遺伝子を持っていても、 親とのかかわりが違えば、愛着のタイプも変わります。
このように、親の子育ては、 子どもの心の形を左右する大切な環境なのです。
親の関わり方によって、遺伝の影響も変化するのです。
幼少期の友人関係が愛着に与える影響
友人関係も、愛着のスタイルに影響を与えます。
とくに子どものころの人間関係は、心の土台をつくります。
たとえば、信頼できる友だちがいる子は、 安全型の愛着になりやすいです。
逆に、いじめや孤立の経験があると、 不安型や回避型になりやすくなります。
親との関係があまりよくなくても、 信頼できる友人がいると、それが支えになります。
また、先生や地域の人など、 親以外の大人との関わりも重要です。
このように、育つ中で出会う人すべてが、 心のあり方に影響を与えているのです。
だからこそ、友人との関係も愛着の形成に関わっています。
環境によって「遺伝の働き方」も変わる
遺伝子の働き方は、環境によって変わります。
遺伝子は「設計図」のようなものですが、 実際にどう働くかは、外からの影響でも変わります。
これを「エピジェネティクス」といいます。
たとえば、ストレスの多い生活や、 安心できない人間関係が続くと、 ある遺伝子の働きが弱くなることがあります。
その結果、気持ちの安定がしにくくなったり、 他人と親しくなりにくくなったりします。
逆に、あたたかい環境で育つと、 遺伝子の働きが良い方向に変わることもあります。
このように、遺伝は決まった運命ではなく、 環境とのやりとりの中で変わるのです。
つまり、遺伝の影響は、環境次第で強くも弱くもなります。
メチル化って?遺伝子に刻まれる環境の記憶
メチル化は、遺伝子の働きを調節するしくみです。
メチル化とは、遺伝子の一部に「印」がつくようなもので、 これによって遺伝子の働き方が変わります。
たとえば、OXTR遺伝子がメチル化されると、 オキシトシンがうまく働かず、人と距離をとりやすくなります。
このメチル化は、生活の中の経験やストレスによって進みます。
つまり、どんな環境で育ったかが、 遺伝子の動きにも記録されていくのです。
このような変化は、時間をかけて心や行動に影響します。
ただし、メチル化の状態は変えられることもあります。 安心できる人間関係ができれば、 働きが戻る可能性もあると考えられています。
メチル化は、環境の記憶が遺伝子に刻まれる仕組みです。
最後に
「愛着の遺伝」は、生まれつきと育ちの両方から成り立っています。
たしかに、遺伝子によって人との距離の取り方や不安の感じやすさは変わります。
でもそれだけでは決まりません。
親の育て方や友人関係、学校での経験など、いろいろな環境が影響します。
とくに、大人になるにつれて遺伝の影響が強くなりますが、
それでも周りの人との関わり方次第で、心の形は変わっていきます。
自分の愛着スタイルを知ることは、これからの人間関係をよりよくする第一歩です。
「変われる可能性がある」と知るだけでも、前向きになれます。
心のしくみを理解して、自分にもやさしくなってみましょう。

ライター 兼 編集長:トキワエイスケ @etokiwa999
株式会社SUNBLAZE代表。子どもの頃、貧困・虐待家庭やいじめ、不登校、中退など社会問題当事者だったため、社会問題を10年間研究し自由国民社より「悪者図鑑」出版。その後も社会問題や悪者が生まれる決定要因(仕事・教育・健康・性格・遺伝・地域など)を在野で研究しており、社会問題の発生予測を目指している。凸凸凸凹(WAIS-Ⅳ)。