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自己決定理論とは?モチベーションの高い性格と遺伝を解説

    自己決定理論

    自己決定理論をご存知でしょうか?この理論は、人間の動機づけについて研究する心理学の分野で注目されています。

    私たちには、自律性、有能さ、関係性という3つの基本的な心理的欲求があると考えられているのです。これらの欲求が満たされると、自発的に行動し、心理的な成長や充実感を感じられるのだそうです。

    興味深いことに、最近の研究では、この自己決定理論と性格の関係性についても探られています。

    クロアチアの研究者たちが行った双子研究「Etiology of basic psychological needs and their association with personality: A twin study」では、基本的心理欲求と性格の遺伝的な基盤について調べられました。そ

    の結果、欲求と性格の個人差には、共通の遺伝的要因が関与していることが示唆されたのです。

    この研究は、私たちのパーソナリティを理解する上で、重要な示唆を与えてくれるものかもしれません。

    性格と欲求の関係性を探ることで、人間のあり方の多様性に迫ることができそうです。

    それでは、この研究の内容を、もう少し詳しく見ていきましょう。

    今回も、性格研究者で悪者図鑑著者のトキワ(@etokiwa999)が解説していきます。

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    自己決定理論とは?基本的心理欲求について知ろう

    自己決定理論の概要

    自己決定理論(SDT:Self-Determination Theory)とは、人間の動機づけに関する心理学の理論です。

    この理論では、誰もが生まれながらに持っている3つの基本的な心理的欲求があると考えられています。
    それらは、自律性、有能さ、関係性の欲求です。

    自己決定理論によると、これらの欲求が満たされることで、人は自発的に行動するようになり、心理的な成長やウェルビーイングが促進されるとされています。

    • 自律性の欲求:自分の意思で行動を選択したいという欲求
    • 有能さの欲求:自分の能力を発揮し、成果を上げたいという欲求
    • 関係性の欲求:他者とのつながりを感じたいという欲求

    これら3つの欲求は、人間に普遍的に備わっているものだと考えられています。
    自己決定理論は、これらの欲求の充足が、人の行動や心理的健康に重要な役割を果たすことを示唆しています。

    自己決定理論①:自律性の欲求とは

    自律性の欲求とは、自分の意思で行動を選択し、自分の価値観に基づいて生きたいという欲求のことです。
    自律的に行動することで、自分の行動に責任を持ち、やりがいを感じることができます。
    一方、外的な圧力や強制によって行動を制限されると、自律性の欲求が阻害され、モチベーションが低下してしまいます。
    自律性の欲求が満たされる条件としては、以下のようなものがあげられます。

    • 自分で選択する機会があること
    • 自分の行動の理由や目的を理解していること
    • 自分の興味や価値観に沿った行動ができること

    したがって、自律性の欲求を満たすためには、自分の内面と向き合い、自分の価値観を大切にしながら、主体的に行動していくことが重要となります。
    自律性の欲求が満たされると、自分の人生に対する満足度が高まり、自己実現につながっていきます。

    自己決定理論②:有能さの欲求とは

    有能さの欲求とは、自分の能力を発揮し、目標を達成したいという欲求のことです。
    人は誰しも、自分の力を試したり、成長したいと願う気持ちを持っています。
    有能さの欲求が満たされると、自信が高まり、さらなる挑戦へのモチベーションが生まれます。
    反対に、有能さの欲求が阻害されると、無力感を感じたり、やる気を失ってしまいます。
    有能さの欲求を満たすためには、以下のような要素が必要とされています。

    • 適度な難易度の課題や目標があること
    • 自分の力で課題を解決できる機会があること
    • 努力した結果、目標を達成できること

    つまり、自分の能力を発揮できる環境や機会が与えられ、努力が実を結ぶ体験をすることで、有能さの欲求が満たされるのです。
    有能さの欲求が満たされると、自己効力感が高まり、新しいことへの興味や関心が広がっていきます。

    自己決定理論③:関係性の欲求とは

    関係性の欲求とは、他者とつながりを感じ、愛情や所属感を得たいという欲求のことです。
    人は社会的な動物であり、一人では生きていけません。
    他者から受け入れられ、大切にされることで、安心感や充実感を得ることができます。
    逆に、関係性の欲求が満たされないと、孤独感や疎外感を感じ、心理的な問題を抱えるリスクが高まります。
    関係性の欲求を満たすには、以下のような要件が重要となります。

    • 自分を理解し、受け入れてくれる人がいること
    • 互いに思いやりを持ち、支え合える関係性があること
    • 集団に所属し、役割を果たす機会があること

    要するに、自分らしさを認めてもらえる環境の中で、他者と協力しながら生活することで、関係性の欲求が満たされていくのです。
    関係性の欲求が満たされると、自尊心が高まり、ストレスへの耐性も強くなります。

    基本的心理欲求が満たされることの重要性

    自己決定理論では、自律性、有能さ、関係性の3つの基本的心理欲求が満たされることが、人の成長や適応に不可欠だと考えられています。
    これらの欲求が満たされると、人は自発的に行動し、創造性を発揮し、困難にも立ち向かえるようになります。
    反対に、欲求が阻害されると、受動的になったり、不適応な行動をとってしまいます。
    基本的心理欲求が満たされるためには、以下のような環境づくりが大切です。

    • 自分で選択し、決定する機会を与える
    • 適度なチャレンジを与え、フィードバックを行う
    • 受容的な態度で接し、サポートを提供する

    つまり、個人の自主性を尊重しつつ、成長を後押しし、支えていくことが求められるのです。
    欲求が満たされた状態では、人は自己実現に向けて邁進し、より良い人生を送ることができると考えられています。

    自己決定理論と性格の関係性

    ビッグファイブについて

    ビッグファイブとは、人の性格を5つの次元で捉える理論モデルのことです。
    そこでは、性格を以下の5つの特性に分類しています。

    • 開放性:知的好奇心、想像力、創造性など
    • 誠実性:自制心、規律性、勤勉さなど
    • 外向性:社交性、積極性、活発さなど
    • 協調性:思いやり、利他性、調和性など
    • 神経症傾向:情緒不安定、不安、ストレスへの脆弱性など

    この5つの特性は、多くの研究により見出され、性格を理解する上で有用なフレームワークとなっています。

    それぞれの特性は、環境との相互作用を通じて形成され、行動パターンに影響を与えると考えられています。

    ビッグファイブは、性格の個人差を包括的に捉えるための枠組みを提供し、心理学や行動科学の分野で広く活用されています。

    基本的心理欲求と神経症傾向の関係

    自己決定理論の基本的心理欲求と神経症傾向との間には、負の関係性があることが示されています。
    つまり、自律性、有能さ、関係性の欲求が満たされていないと、神経症傾向が高くなりやすいということです。
    神経症傾向が高い人は、以下のような特徴を持っています。

    • ネガティブな感情を感じやすい
    • ストレスへの耐性が低い
    • 不安や緊張を感じやすい

    このような傾向は、基本的心理欲求が阻害されることで生じると考えられます。

    例えば、自分の意思が尊重されない環境では、自律性の欲求が満たされず、不安感が高まるかもしれません。

    また、能力を発揮する機会が与えられないと、有能さの欲求が阻害され、無力感を感じるかもしれません。

    要するに、基本的心理欲求が満たされない状況では、ネガティブな感情が生じやすく、神経症傾向が高まると考えられるのです。

    基本的心理欲求と外向性の関係

    自己決定理論の基本的心理欲求と外向性との間には、正の関係性があることが報告されています。
    外向的な人は、以下のような特徴を持っていると考えられています。

    • 社交的で、人と交流することを好む
    • 活発で、積極的に行動する
    • ポジティブな感情を感じやすい

    このような外向的な傾向は、基本的心理欲求が満たされることと関連していると考えられます。

    例えば、他者とのつながりを感じられる環境では、関係性の欲求が満たされ、社交的な行動が促進されるかもしれません。

    また、自分の能力を発揮できる機会があると、有能さの欲求が満たされ、積極的に行動するようになるかもしれません。

    つまり、基本的心理欲求が満たされる状況では、外向的な行動が引き出され、ポジティブな感情が生まれやすいと考えられるのです。

    外向性と基本的心理欲求の関連性は、性格と動機づけの相互作用を示唆するものと言えます。

    有能さの欲求と誠実性の関連

    有能さの欲求と誠実性との間には、正の関連性があることが示唆されています。
    誠実性の高い人は、以下のような特徴を持っていると考えられています。

    • 目標に向けて粘り強く取り組む
    • 自制心や規律性が高い
    • 責任感を持って行動する

    このような誠実な傾向は、有能さの欲求と結びついていると考えられます。
    有能さの欲求が高い人は、自分の能力を発揮し、目標を達成することを望みます。
    そのためには、粘り強く努力し、自制心を発揮することが求められます。
    つまり、有能さの欲求は、誠実性の高さにつながる行動を動機づけると考えられるのです。
    また、誠実性の高さは、有能さの欲求を満たす環境を作り出すことにも寄与するかもしれません。
    目標に向けて着実に取り組むことで、自分の能力を発揮する機会が増え、有能感が高まるのです。
    有能さの欲求と誠実性の関連性は、動機づけと性格特性の相乗効果を示唆するものと言えるでしょう。

    自律性・関係性の欲求と協調性の関連

    自律性と関係性の欲求は、協調性と正の関連性を持つことが示されています。
    協調性の高い人は、以下のような特徴を持っていると考えられています。

    • 他者への思いやりや共感性が高い
    • 人間関係を大切にし、協力的である
    • 利他的な行動をとる傾向がある

    このような協調的な傾向は、自律性と関係性の欲求と結びついていると考えられます。
    自律性の欲求が満たされると、自分の価値観に基づいて行動することができます。
    その価値観の中に、他者への思いやりや協調性が含まれていれば、利他的な行動が促進されるかもしれません。
    また、関係性の欲求が満たされると、他者とのつながりを大切にし、協力的な行動をとろうとするでしょう。
    良好な人間関係を築くためには、相手の立場に立って考え、協調性を発揮することが求められます。
    つまり、自律性と関係性の欲求は、協調的な行動を動機づける源となり得るのです。
    自律性・関係性の欲求と協調性の関連は、個人の欲求と社会的な適応の結びつきを示唆しています。

    性格が基本的心理欲求に与える影響

    性格特性は、自己決定理論の基本的心理欲求の充足感に影響を与えることが示唆されています。
    つまり、性格のタイプによって、欲求が満たされる程度が異なるということです。
    例えば、以下のような影響が考えられます。

    • 神経症傾向が高いと、欲求の充足感が低下しやすい
    • 外向性が高いと、関係性の欲求が満たされやすい
    • 誠実性が高いと、有能さの欲求が満たされやすい
    • 協調性が高いと、自律性と関係性の欲求が満たされやすい

    このように、性格特性は欲求の充足感に影響を及ぼし、心理的な適応に関わっていると考えられます。
    ただし、性格と欲求の関係は一方向的なものではなく、相互作用的であることが示唆されています。
    つまり、欲求が満たされることで、性格特性が変化したり、強化されたりする可能性もあるのです。
    性格と基本的心理欲求の関連性を理解することは、個人の適応や成長を支援する上で重要な示唆を与えてくれるでしょう。

    双子研究から見る自己決定理論の欲求の遺伝的影響

    双子研究とは何か

    一卵性双生児と二卵性双生児を比較することで、形質の遺伝と環境の影響を調べる研究手法です。
    一卵性双生児は遺伝的に同一であるのに対し、二卵性双生児は兄弟姉妹と同程度の遺伝的類似性を持ちます。
    したがって、形質の類似度が一卵性でより高ければ、その形質には遺伝的な影響が大きいと考えられるのです。
    双子研究では、以下のような指標を用いて、遺伝と環境の影響力を推定します。

    • 遺伝率:形質の個人差のうち、遺伝的な要因で説明される割合
    • 共有環境:家庭環境など、双子に共通する環境要因の影響力
    • 非共有環境:双子ごとに異なる、個別の経験の影響力

    これらの指標を算出することで、形質の遺伝と環境の規定因を明らかにすることができます。
    双子研究は、心理学、医学、行動遺伝学など、様々な分野で活用されています。
    人間の行動や特性の個人差を理解する上で、重要な知見をもたらしてくれる研究手法だと言えるでしょう。

    一卵性双生児と二卵性双生児の違い

    二卵性双生児と一卵性双生児は、遺伝的な類似性の程度が大きく異なります。
    一卵性双生児は、受精卵が分離することで生じるため、遺伝的に100%同一です。
    つまり、DNAのすべてを共有しているのです。
    一方、二卵性双生児は、2つの卵子がそれぞれ別の精子と受精することで生じます。
    そのため、二卵性双生児の遺伝的類似性は、兄弟姉妹と同程度(約50%)になります。
    この遺伝的な差異が、双子研究において重要な意味を持ちます。
    以下のように、双子の類似性を比較することで、形質の遺伝の影響力を推定できるのです。

    • 一卵性の類似度が二卵性より高い→遺伝の影響が示唆される
    • 一卵性と二卵性の類似度が同程度→環境の影響が示唆される

    このように、一卵性と二卵性の比較は、行動や特性の個人差の由来を探る手がかりとなります。
    双子研究は、遺伝と環境の複雑な相互作用を解き明かす上で、欠かせない研究デザインだと言えるでしょう。

    基本的心理欲求の遺伝率について

    双子研究により、自己決定理論の基本的心理欲求には遺伝的な影響があることが示されています。
    クロアチアの研究では、以下のような遺伝率が報告されました。

    • 自律性の欲求:44%
    • 有能さの欲求:45%
    • 関係性の欲求:52%

    これらの値は、各欲求の個人差のうち、遺伝的な要因で説明される割合を示しています。
    つまり、欲求の充足感には、ある程度の遺伝的な規定因があるということです。
    興味深いことに、これらの遺伝率は、性格特性の遺伝率とほぼ同程度でした。
    性格と欲求の個人差には、共通の遺伝的基盤があるのかもしれません。
    一方、残りの分散は、非共有環境の影響で説明されました。
    つまり、個人に固有の経験や環境が、欲求の充足感に影響を与えていると考えられます。
    共有環境の影響は見られなかったため、家庭環境よりも、個別の経験の方が重要なのかもしれません。
    基本的心理欲求の遺伝率は、欲求の個人差が遺伝と環境の両方に規定されていることを示唆しています。

    自律性の欲求の遺伝率

    クロアチアの双子研究では、自律性の欲求の遺伝率が44%と推定されました。
    つまり、自律性の欲求の個人差のうち、44%が遺伝的な要因で説明されるということです。
    自律性の欲求は、自分の意思で行動を選択し、自分の価値観に基づいて生きたいという欲求でした。
    この欲求の充足感には、ある程度の遺伝的な影響があると考えられます。
    ただし、残りの56%は環境要因、特に非共有環境の影響で説明されました。
    自律性の欲求は、以下のような経験によって影響を受けるのかもしれません。

    • 自分で選択する機会の多さ
    • 自分の興味や価値観に沿った活動への従事
    • 自律的な行動を支持・促進する周囲の態度

    このように、遺伝的な要因だけでなく、個人に固有の経験も自律性の欲求に関与していると考えられます。
    自律性の欲求の個人差を理解するには、遺伝と環境の相互作用を考慮することが重要だと言えるでしょう。
    遺伝的な影響を踏まえつつ、自律性を支える環境を整えることが、欲求の充足につながるのかもしれません。

    有能さの欲求の遺伝率

    有能さの欲求の遺伝率は、45%と推定されています。
    つまり、有能さの欲求の個人差のうち、45%が遺伝的な要因で説明されるということです。
    有能さの欲求は、自分の能力を発揮し、目標を達成したいという欲求のことでした。
    この欲求の充足感には、遺伝的な影響があると考えられます。
    一方、残りの55%は環境要因、特に非共有環境の影響で説明されました。
    有能さの欲求は、以下のような経験によって影響を受けるのかもしれません。

    • 自分の力で課題を解決できる機会の多さ
    • 適度な難易度の目標へのチャレンジ
    • 努力に対するポジティブなフィードバック

    このように、有能さの欲求の個人差には、遺伝と環境の両方が関与していると考えられます。
    特に、個人に固有の経験が、有能感の形成に重要な役割を果たすのかもしれません。
    有能さの欲求を満たすには、遺伝的な傾向を考慮しつつ、個人の能力を発揮できる環境を整えることが大切だと言えるでしょう。
    成長を実感できる機会を提供することが、有能さの欲求の充足につながるのかもしれません。

    関係性の欲求の遺伝率

    関係性の欲求の遺伝率は、52%と推定されています。
    これは、関係性の欲求の個人差のうち、52%が遺伝的な要因で説明されることを意味します。
    関係性の欲求は、他者とつながりを感じ、愛情や所属感を得たいという欲求のことでした。
    この欲求の充足感には、遺伝的な影響が比較的大きいと考えられます。
    しかし、残りの48%は環境要因、特に非共有環境の影響で説明されました。
    関係性の欲求は、以下のような経験によって影響を受けるのかもしれません。

    • 自分を理解し、受け入れてくれる人との出会い
    • 互いに支え合える関係性の構築
    • 集団に所属し、役割を果たす機会の多さ

    このように、関係性の欲求の個人差には、遺伝と環境の両方が関与していると考えられます。
    特に、個人に固有の対人経験が、関係性の充足感に大きな影響を与えるのかもしれません。
    関係性の欲求を満たすには、遺伝的な傾向を踏まえつつ、良好な人間関係を築ける環境を整えることが重要だと言えるでしょう。
    他者との絆を深められる機会を提供することが、関係性の欲求の充足につながるのかもしれません。

    基本的心理欲求の遺伝率と性格の遺伝率の比較

    基本的心理欲求の遺伝率は、性格特性の遺伝率と同程度であることが示されています。
    クロアチアの双子研究では、以下のような遺伝率が報告されました。

    • 基本的心理欲求:44~52%
    • 性格特性(ビッグファイブ):約40%

    このように、欲求と性格のどちらも、中程度の遺伝率を示したのです。
    この結果は、欲求と性格の個人差に、共通の遺伝的基盤がある可能性を示唆しています。
    つまり、同じ遺伝的な要因が、欲求と性格の両方に影響を与えているのかもしれません。
    ただし、欲求と性格の遺伝率は完全に一致しているわけではありません。
    特に関係性の欲求は、性格特性よりも遺伝率がやや高いようです。
    したがって、欲求と性格の個人差には、共通の遺伝的基盤があるものの、それぞれ固有の遺伝的影響もあると考えられます。
    また、欲求と性格のどちらも、非共有環境の影響を受けることが示されました。
    個人に固有の経験が、欲求と性格の形成に重要な役割を果たすのかもしれません。
    欲求と性格の遺伝率の比較は、両者の個人差の由来について、示唆を与えてくれます。
    共通の遺伝的基盤と固有の環境的影響を考慮することが、人間の多様性を理解する上で重要だと言えるでしょう。

    自己決定理論における欲求と性格の遺伝的関連性

    基本的心理欲求と性格の遺伝的な重なり

    双子研究により、基本的心理欲求と性格特性の間には、遺伝的な重なりがあることが示唆されています。
    つまり、欲求と性格の個人差に、共通の遺伝的基盤があると考えられるのです。
    クロアチアの研究では、欲求と性格の遺伝的相関が検討されました。
    遺伝的相関とは、2つの形質の遺伝的影響の重なりの程度を表す指標です。
    その結果、欲求と性格の間には、有意な遺伝的相関が見られました。
    特に、以下のような関連性が示されました。

    • 神経症傾向と欲求の間には負の遺伝的相関
    • 外向性と欲求の間には正の遺伝的相関
    • 誠実性と有能さの欲求の間には正の遺伝的相関

    このような遺伝的な重なりは、欲求と性格の個人差が、一部、同じ遺伝的要因に基づくことを示唆しています。
    ただし、環境的な影響の重なりは限定的であり、欲求と性格の環境的規定因は、mostly independentだと考えられます。
    つまり、遺伝的には関連するものの、環境的には独立した影響を受けているのかもしれません。
    欲求と性格の遺伝的な重なりを理解することは、パーソナリティの個人差の由来を探る上で重要だと言えるでしょう。

    神経症傾向・外向性と欲求の遺伝的共通性

    神経症傾向と外向性は、基本的心理欲求と遺伝的に関連することが示されています。
    クロアチアの双子研究では、以下のような遺伝的相関が報告されました。

    • 神経症傾向と欲求:負の相関(-0.53 ~ -0.73)
    • 外向性と欲求:正の相関(0.43 ~ 0.65)

    このように、神経症傾向が高いほど欲求の充足感が低く、外向性が高いほど欲求の充足感が高い傾向があるのです。
    そして、この関連性には、遺伝的な共通基盤があると考えられます。
    つまり、神経症傾向と外向性の遺伝的要因が、欲求の個人差にも影響を与えているのかもしれません。
    例えば、神経症傾向の遺伝的要因が、欲求の充足を阻害する可能性が考えられます。
    また、外向性の遺伝的要因が、欲求の充足を促進するのかもしれません。
    一方、神経症傾向と外向性は、欲求と環境的にも関連していました。
    ただし、遺伝的相関に比べると、環境的相関は小さい傾向にありました。
    したがって、神経症傾向・外向性と欲求の関連性は、主に遺伝的な共通性に基づくと考えられます。
    パーソナリティの中核をなす神経症傾向と外向性が、欲求の個人差と遺伝的に結びついているという知見は、示唆に富むものだと言えるでしょう。

    有能さの欲求と誠実性の遺伝的関連

    有能さの欲求と誠実性の間には、遺伝的な関連性があることが示されています。
    クロアチアの双子研究では、有能さの欲求と誠実性の遺伝的相関が、0.68と報告されました。
    これは、有能さの欲求と誠実性の遺伝的影響に、かなりの重なりがあることを示唆しています。
    つまり、有能さの欲求の遺伝的要因と、誠実性の遺伝的要因が、一部共通しているのかもしれません。
    例えば、目標達成への動機づけに関わる遺伝的要因が、有能さの欲求と誠実性の両方に影響を与えている可能性が考えられます。
    また、自制心や粘り強さに関わる遺伝的要因が、有能さの欲求と誠実性の個人差に寄与しているのかもしれません。
    一方、有能さの欲求と誠実性の環境的相関は、0.26でした。
    これは、有能さの欲求と誠実性の環境的影響にも、ある程度の重なりがあることを示唆しています。
    ただし、遺伝的相関に比べると、環境的相関は小さい傾向にありました。
    したがって、有能さの欲求と誠実性の関連性は、主に遺伝的な共通性に基づくと考えられます。
    有能さの欲求と誠実性の遺伝的関連は、パーソナリティの動機づけ的側面と、行動制御的側面の結びつきを示唆するものだと言えるでしょう。

    自律性・関係性の欲求と協調性の遺伝的関連

    自律性の欲求と関係性の欲求は、協調性と遺伝的に関連することが示されています。
    クロアチアの双子研究では、以下のような遺伝的相関が報告されました。

    • 自律性の欲求と協調性:0.52
    • 関係性の欲求と協調性:0.53

    このように、自律性の欲求と関係性の欲求は、協調性と中程度の遺伝的関連性を示したのです。
    これは、自律性・関係性の欲求と協調性の遺伝的影響に、ある程度の重なりがあることを示唆しています。
    例えば、他者への思いやりや協力的な態度に関わる遺伝的要因が、欲求と協調性の両方に影響を与えている可能性が考えられます。
    また、社会的な調和を重視する傾向の遺伝的基盤が、欲求と協調性の個人差に寄与しているのかもしれません。
    一方、関係性の欲求と協調性の環境的相関は、0.25でした。
    これは、関係性の欲求と協調性の環境的影響にも、ある程度の重なりがあることを示唆しています。
    ただし、自律性の欲求と協調性の環境的相関は、有意ではありませんでした。
    したがって、自律性・関係性の欲求と協調性の関連性は、主に遺伝的な共通性に基づくと考えられます。
    自律性・関係性の欲求と協調性の遺伝的関連は、パーソナリティの社会的な適応に関わる側面の結びつきを示唆するものだと言えるでしょう。

    環境要因の影響の独立性

    基本的心理欲求と性格特性の環境的影響は、ほとんど独立していることが示唆されています。
    クロアチアの双子研究では、欲求と性格の遺伝的相関は中程度から強い一方で、環境的相関は弱い傾向にありました。
    具体的には、以下のような環境的相関が報告されました。

    • 欲求と神経症傾向:-0.19 ~ -0.37
    • 欲求と外向性:0.17 ~ 0.32
    • 有能さの欲求と誠実性:0.26
    • 関係性の欲求と協調性:0.25

    このように、欲求と性格の環境的相関は、遺伝的相関に比べて小さい値を示したのです。
    この結果は、欲求と性格の環境的影響が、ほとんど重複していないことを示唆しています。
    つまり、欲求と性格は、遺伝的には関連するものの、環境的にはそれぞれ独自の影響を受けている可能性が高いのです。
    欲求の環境的規定因と、性格の環境的規定因は、異なる経験や出来事である可能性が考えられます。
    例えば、欲求の充足感は、個人に固有の対人経験や達成経験によって左右されるのかもしれません。
    一方、性格特性は、より幅広い生活経験や文化的影響を受けて形成されるのかもしれません。
    欲求と性格の環境的影響の独立性は、パーソナリティの形成における経験の多様性を示唆するものだと言えるでしょう。
    遺伝的な共通基盤と、環境的な独自性を考慮することが、人間の個性を理解する上で重要だと考えられます。

    まとめ:自己決定理論とビッグファイブの関係性と遺伝

    本研究は、自己決定理論の基本的心理欲求と、性格5因子の関係性および遺伝的基盤について検討しました。

    • 基本的心理欲求と性格特性の間には、中程度の表現型相関が見られた。
    • 基本的心理欲求の個人差には、遺伝的要因が中程度に寄与していた。
    • 基本的心理欲求と性格特性の間には、中程度から強い遺伝的相関が見られた。
    • 基本的心理欲求と性格特性の環境的影響は、ほとんど独立していた。

    これらの結果から、以下のような示唆が得られます。

    まず、基本的心理欲求と性格特性は、表現型レベルで関連しており、パーソナリティの重要な側面を捉えていると考えられます。

    また、基本的心理欲求の個人差には、遺伝的要因が一定の役割を果たしており、欲求の充足感には生物学的基盤があるのかもしれません。

    欲求と性格の遺伝的・環境的基盤を考慮することで、人間の多様性と適応のメカニズムに迫ることができるかもしれません。

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    tokiwa eisuke

    ライター 兼 編集長:トキワエイスケ @etokiwa999
    株式会社SUNBLAZE代表。子どもの頃、貧困・虐待家庭やいじめ、不登校、中退など社会問題当事者だったため、社会問題を10年間研究し自由国民社より「悪者図鑑」出版。その後も社会問題や悪者が生まれる決定要因(仕事・教育・健康・性格・遺伝・地域など)を在野で研究しており、社会問題の発生予測を目指している。凸凸凸凹(WAIS-Ⅳ)。