読解力が高い人は、あいまいな言葉にもだまされないと思っていませんか。
たとえば、SNSで「宇宙と心はつながっている」といった投稿を見て、なんとなく深いと感じた経験はないでしょうか。
意味を説明できないのに、なぜか納得してしまう。
そんな「あるある」は、実は多くの人に起きています。
従来は、読解力さえあれば意味のない言葉は見抜けると考えられてきました。
しかし心理学の研究は、それほど単純ではないことを示しています。
意味がはっきりしない文章でも、一定の割合の人が「やや深い」と評価することが分かりました。
つまり、読解力と信じやすさには意外な関係があるのです。
このテーマを扱ったのが、論文「On the reception and detection of pseudo-profound bullshit」です。
カナダのウォータールー大学(University of Waterloo)の研究者らが行い、学術誌「Judgment and Decision Making」に2015年に掲載されました。
約800人を対象にした実験から、考える力や信念との関連が明らかになりました。
本記事では、その結果を分かりやすく解説します。
今回も、性格研究者で悪者図鑑著者のトキワ(@etokiwa999)が解説していきます。
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読解力が低いと危険?研究のきっかけから見える意外な可能性
意味のない文章を深いと感じる人がいる
意味がないのに深いと感じる人がいることが、この研究の出発点です。
たとえば、あなたが次の文を読んだらどうでしょうか。
「全体性は無限の現象を静める」です。
なんとなく深そうに見えませんか。
しかし、よく考えると意味ははっきりしません。
研究では大学生280人に読んでもらいました。
その結果、平均評価は2.6でした。
評価は1から5までの5段階です。
つまり、多くの人が「やや深い」と答えました。
さらに、約27%は3以上をつけました。
ここで大切なのは、
・文章は文法的には正しいこと
・しかし具体的な意味はないこと
・それでも深く感じる人がいること
この事実は意外にも重要です。
読解力とは、意味を見抜く力でもあります。
意味があいまいな言葉に反応する心の動きが、研究の焦点になりました。
つまり、この研究は「深さの正体」を探る試みなのです。
デタラメと嘘はどう違うのか
デタラメは「真実に無関心な言葉」です。
まず、嘘とは何でしょうか。
嘘は、真実を知りつつ反対を言うことです。
一方で、デタラメは少し違います。
真実かどうかを気にせずに話します。
とにかく印象を与えることが目的です。
たとえば、
・難しい言葉を並べる
・抽象的な表現を使う
・意味をあえてぼかす
このような特徴があります。
研究では、このような文を集めました。
そして参加者に深さを評価してもらいました。
重要なのは、
「意味がない」ことと
「文が成り立っている」ことの違いです。
文が整っていると、人は意味があると感じやすいのです。
つまり、デタラメは見た目が整っています。
そのため、読解力が低いと区別が難しくなるのです。
この違いを理解することが、第一歩になります。
文法が正しいだけで信じてしまう理由
人は文法が正しいと、それだけで意味があると感じやすいです。
もしあなたが試験で文章問題を読んだらどうでしょうか。
文法が正しければ、内容も正しいと思いませんか。
研究では、単語を無作為に組み合わせました。
しかし文の形は整えました。
すると、多くの人が深いと答えました。
平均は2.6です。
なぜでしょうか。
理由の一つは「最初に信じる傾向」です。
人はまず受け入れ、あとで疑います。
しかし疑うには考える力が必要です。
考える力とは、
・立ち止まること
・意味を確かめること
・言葉同士の関係を見ること
これが弱いと、印象で判断しやすくなります。
つまり、文法の整いが安心感を生みます。
その安心感が「深さ」に見えることがあるのです。
SNS時代に増える曖昧な言葉
短くてあいまいな言葉は、深く見えやすいです。
現代は短文が多い時代です。
特に140文字の投稿などが広まりました。
短い言葉は説明が不足しがちです。
その結果、意味がぼやけます。
研究では、実際の投稿文も使いました。
そして無意味な文と比べました。
すると、本物の投稿の平均は2.77でした。
無意味な文よりやや高い数値でした。
しかし両者の評価は強く関係していました。
相関は0.88と高い値でした。
つまり、
・あいまいさ
・抽象性
・短さ
これらが共通点でした。
読解力が低いと、
「説明がないこと」を深さと感じやすいです。
そのため、言葉のあいまいさには注意が必要です。
研究が注目した「疑似深遠なデタラメ」
疑似深遠とは「深そうに見えるが中身がない」ことです。
研究者はこの現象に名前をつけました。
それが「疑似深遠なデタラメ」です。
特徴は次の通りです。
・抽象語が多い
・意味が特定できない
・反論しにくい
たとえば、
「意識は宇宙と調和する」です。
一見すると深そうです。
しかし具体性はありません。
研究では約800人が参加しました。
その多くが一定の深さを感じました。
つまり、人は中身より印象に影響されます。
読解力とは、
「意味を確かめる力」です。
印象と意味を分けて考える力でもあります。
この研究は、その力の差を明らかにしました。
ここから先は、読解力と考える力の関係を見ていきます。
読解力と深さの感じ方はどう結びつくのか
実験では何を参加者に読ませたのか
参加者は意味がはっきりしない文章を読まされました。
もしあなたが実験に参加したらどうでしょうか。
画面に10個の文章が表示されます。
たとえば、
・「無限の現象は静けさに包まれる」
・「意識は現実を調和させる」
どれも文法は正しいです。
しかし意味はあいまいです。
研究では大学生280人が参加しました。
さらに別の研究では198人も参加しました。
評価は1から5までです。
1は「まったく深くない」です。
5は「とても深い」です。
その結果、平均は2.6前後でした。
つまり多くの人が少し深いと答えました。
重要なのは、
・文章は作り話だったこと
・単語は無作為に組み合わされたこと
・それでも評価が上がったこと
この実験は、読解力の差を測る手がかりになりました。
意味を探そうとする姿勢が問われたのです。
深さは1から5で評価された
深さは5段階で数値化されました。
参加者は直感で数字を選びました。
1はまったく深くないです。
3はやや深いです。
5はとても深いです。
まず、平均が2.6でした。
これは2と3の間です。
さらに約27%は3以上でした。
つまり4人に1人以上が深いと判断しました。
ここで考えてみましょう。
もしあなたが意味を説明できない文章を読んだら、
3以上をつけますか。
評価の背景には、
・印象の強さ
・言葉の難しさ
・考える時間の長さ
が影響したと考えられます。
この数値は偶然とは言いにくいです。
読解力の違いが表れた可能性があります。
数字で示されたことで、
現象の存在がはっきりしました。
多くの人が「やや深い」と答えた
意味がないのに多くの人が深いと感じました。
研究では18.3%だけが2未満でした。
残りの約8割は2以上でした。
つまり大半の人が、
少なくとも少しは深いと感じました。
さらに27.2%は3以上でした。
これはかなりの割合です。
たとえば、
占いの言葉が当たっていると感じることがあります。
具体的でなくても心に響くことがあります。
この現象に似ています。
研究者はこれを「受け入れやすさ」と考えました。
最初に信じる傾向があるかもしれません。
しかし一方で、
全員がだまされたわけではありません。
読解力が高い人ほど、
低い評価をつける傾向がありました。
つまり差があったことが重要なのです。
本物の名言との違いも調べた
研究では本物の名言も比較されました。
もしあなたが次の言葉を読んだらどうでしょうか。
「雨にぬれた人は雨を恐れない」です。
これは具体的な意味があります。
努力や経験を表しています。
研究ではこのような名言も提示しました。
その平均は約3.0でした。
一方で、疑似深遠な文は2.7前後でした。
差はありましたが大きすぎませんでした。
ここがポイントです。
本物とデタラメの差が小さい人もいました。
読解力が高い人は、
名言は高く、デタラメは低く評価しました。
これを「見分ける力」と呼びます。
単に疑うだけではありません。
意味を比べる力が必要です。
この比較により、
読解力の役割がより明確になりました。
普通の文章は深いと感じにくい
日常的な文章はほとんど深いと感じられませんでした。
研究では普通の文も使いました。
「赤ちゃんは注意が必要です」などです。
平均は1.4でした。
ほとんどの人が1を選びました。
80%以上が「まったく深くない」と答えました。
これは予想通りかもしれません。
具体的で明確な文は、
深さより事実として受け取られます。
しかし中には高く評価する人もいました。
その人たちは他の文も高く評価しました。
つまり、
・なんでも深く感じる人
・意味を区別できる人
の違いが見えました。
読解力は、
意味の濃さを見分ける力とも言えます。
次は、その力と考える力の関係を見ていきます。
読解力と考える力のつながり
考える力が高い人は見抜きやすい
考える力が高い人ほど、デタラメを見抜きやすい傾向がありました。
研究では、問題をじっくり考える課題が使われました。
すぐ答えたくなる問題を出します。
しかし正解には考え直しが必要です。
この成績と深さの評価を比べました。
すると相関は約−0.33でした。
これは弱くない関係です。
もしあなたがその課題を受けたらどうでしょうか。
直感で答えますか。
それとも一度立ち止まりますか。
成績が高い人は、
・デタラメ文の評価が低い
・本物の名言は高く評価する
という傾向がありました。
つまり読解力は、
考える力と結びついていました。
意味を確かめる姿勢が鍵なのです。
直感に頼る人ほど深いと感じやすい
直感を信じやすい人ほど、深いと感じやすい傾向がありました。
研究では「直感を信じるか」を質問しました。
自分はひらめきを大事にするかを答えます。
その得点と深さの評価を比べました。
すると正の関係が見られました。
つまり直感派ほど評価が高めでした。
たとえば、
「宇宙と心はつながっている」
という文を見たとします。
直感で響けば3や4をつけます。
しかし意味を考えると迷うかもしれません。
ここで差が出ました。
直感だけでは意味は測れません。
読解力とは、
感じるだけでなく考える力です。
印象と意味を分ける力でもあります。
数字や言葉に強い人ほど慎重になる
言葉や数字に強い人は慎重に判断する傾向がありました。
研究では語彙問題も行いました。
言葉の意味を選ぶ課題です。
また数字の問題も出しました。
割合や確率を考える内容です。
語彙の得点との相関は約−0.37でした。
数字の力とも負の関係がありました。
これはどういうことでしょうか。
言葉の細かい違いがわかる人は、
あいまいさに気づきやすいのです。
数字に強い人も、
すぐ信じずに確かめます。
つまり、
・語彙力
・数字を扱う力
が読解力を支えていました。
慎重さが見抜く力につながったのです。
立ち止まって考えることの大切さ
一度立ち止まるだけで判断は変わります。
研究者は人には傾向があると考えました。
まず信じて、あとで疑う傾向です。
しかし疑うには力が必要です。
その力が考える力です。
もしあなたが実験参加者ならどうでしょうか。
10個の文章が次々と表示されます。
時間をかけずに評価しますか。
立ち止まる人は、
「意味は何だろう」と考えます。
その違いが結果に出ました。
考える課題の得点が高い人は、
深さの評価が低めでした。
つまり読解力は、
スピードよりも確認です。
立ち止まる習慣が防波堤になります。
「なんとなく深い」の正体
なんとなく深いと感じるのは、印象の力かもしれません。
抽象的な言葉は広く解釈できます。
そのため自分の経験を重ねやすいです。
たとえば、
「意識は現実を変える」と聞くと、
人は意味を想像します。
しかし実際の内容は具体的ではありません。
それでも心に残ることがあります。
研究では約800人が参加しました。
多くが2以上を選びました。
これは単なる偶然ではなさそうです。
「なんとなく深い」は、
・あいまいさ
・難しそうな言葉
・文の整い
が合わさった結果と考えられます。
読解力とは、その正体を見抜く力です。
感じるだけで終わらない姿勢が重要なのです。
読解力と信じやすさの意外な関係
超常現象を信じやすい人との共通点
超常現象を信じやすい人ほど、デタラメを深いと感じやすい傾向がありました。
研究では、天使や霊などを信じるかを聞きました。
8項目で5段階評価を行いました。
その得点と深さの評価を比べました。
すると相関は約0.30でした。
これは小さくない関係です。
もしあなたが、
「見えない力が世界を動かす」
という文を読んだらどうでしょうか。
超常現象を信じる人は、
意味を想像しやすいかもしれません。
研究ではこの傾向が何度も確認されました。
4つの研究で似た結果が出ました。
つまり、
・あいまいな説明を受け入れる姿勢
・目に見えない力への信頼
が共通点でした。
読解力は、信じる前に考える力でもあるのです。
陰謀論との関連も見られた
陰謀論を信じやすい人も、深いと感じやすい傾向がありました。
研究では15項目の質問をしました。
「秘密の集団が世界を動かしている」
といった文に答えてもらいました。
その得点と比較すると、
相関は約0.17でした。
数字は大きくはありません。
しかし一定の関係は見られました。
もしあなたが、
「世界の出来事は裏で操作されている」
という話を聞いたらどうでしょうか。
証拠がなくても納得する人もいます。
あいまいな説明に意味を見つける力が、
両方に共通している可能性があります。
つまり読解力が低いと、
説明の不足に気づきにくくなります。
小さな差でも社会では影響が広がります。
その点が重要です。
代替医療を信じやすい傾向
代替医療を強く信じる人も、深いと感じやすい傾向がありました。
研究では10種類の療法を挙げました。
効果をどの程度信じるかを聞きました。
その合計得点との相関は約0.24でした。
たとえば、
「水は記憶を持つ」と聞いたらどうでしょうか。
科学的説明ははっきりしません。
しかし印象は強い言葉です。
研究ではこのような信念と、
デタラメ評価の高さが結びつきました。
ここで重要なのは、
すべての人が信じるわけではない点です。
差があったことが意味を持ちます。
読解力は、
説明が十分かどうかを考える力です。
印象だけで判断しない姿勢が大切です。
なんでも受け入れる姿勢の影響
なんでも受け入れる姿勢は、評価を押し上げる可能性があります。
研究では普通の文章も提示しました。
「赤ちゃんは世話が必要です」などです。
多くの人は1を選びました。
しかし一部は高く評価しました。
その人たちは、
デタラメ文も高く評価しました。
つまり、
・全体的に深く感じやすい人
・区別できる人
の違いがありました。
これは「反応の偏り」と呼ばれます。
何でも肯定しやすい傾向です。
読解力が低い場合、
この偏りが強まるかもしれません。
ただし全員が当てはまるわけではありません。
姿勢の違いが結果に影響しました。
受け入れる前に考えることが重要です。
読解力は「疑う力」でもある
読解力は、ただ読む力ではなく疑う力でもあります。
研究では本物の名言も提示しました。
平均は約3.1でした。
一方でデタラメ文は約2.3でした。
差を比べると、
考える力が高い人ほど差が大きくなりました。
つまり区別できていました。
疑うとは否定することではありません。
意味を確かめることです。
・言葉は具体的か
・説明は十分か
・根拠はあるか
こうした問いを持つ力が読解力です。
数字や実験はその差を示しました。
読解力は、
信じる前に立ち止まる力です。
それが社会で生きる武器になります。
最後に
今回の研究から分かったのは、読解力はただ文章を読む力ではないということです。
意味がはっきりしない言葉を前にしたとき、すぐに「深い」と感じるのか、それとも一度立ち止まって考えるのかで差が出ます。
実験では、多くの人が意味のない文章に2や3をつけました。
しかし考える力が高い人ほど、評価は低くなる傾向がありました。
さらに、超常現象や陰謀論を強く信じる人ほど、高く評価する傾向も見られました。
だからこそ大切なのは、すぐ信じないことです。
疑うことは否定することではありません。
「本当に意味はあるのか」と考えることです。
SNS時代では、深そうな言葉が毎日のように流れてきます。
読解力とは、その中から意味と印象を分ける力です。
考える習慣を持つことが、これからの時代の大きな武器になります。

ライター 兼 編集長:トキワエイスケ @etokiwa999
株式会社SUNBLAZE代表。子どもの頃、貧困・虐待家庭やいじめ、不登校、中退など社会問題当事者だったため、社会問題を10年間研究し自由国民社より「悪者図鑑」出版。その後も社会問題や悪者が生まれる決定要因(仕事・教育・健康・性格・遺伝・地域など)を在野で研究し、論文4本執筆(うち2本ジャーナル掲載)。社会問題の発生予測を目指している。凸凸凸凹(WAIS-Ⅳ)。








