「エリー調査」って聞いたことありますか?
これはアメリカで行われた、選挙と人の考え方に関する有名な研究です。正式なタイトルは『The People’s Choice』。
この調査では、テレビや新聞よりも、家族や友達といった「まわりの人」の影響が大きいことが明らかになりました。
今の時代、私たちは毎日たくさんの情報にふれています。SNSで流れてくるニュースや意見もそのひとつです。
でも、実は情報そのものよりも、「誰が言っているか」のほうが、私たちの考えに強く影響しているかもしれません。
この記事では、そんなエリー調査の内容と、今の社会でどう活かせるのかを、わかりやすく紹介します。政治にくわしくない人でも、「あ、これって自分のことかも」と思える内容です。
今回も、性格研究者で悪者図鑑著者のトキワ(@etokiwa999)が解説していきます。
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目次
エリー調査とは?基本をわかりやすく解説
エリー調査って何?
エリー調査は、アメリカの有名な選挙研究です。
これは、投票行動がどう決まるかを調べたものです。
1940年のアメリカ大統領選挙を対象にしています。
調査はオハイオ州エリー郡で行われました。
選挙期間中、600人ほどの人に何度も質問しました。
くわしくは、7か月間で7回インタビューが行われました。
その結果、多くの人は最初から投票先が決まっていました。
つまり、選挙期間中に意見が変わる人は少なかったのです。
この調査から、考えを変えるきっかけは何かが見えてきました。
とくに、まわりの人との関係が重要だとわかりました。
まとめると、エリー調査は選挙の考え方や社会の影響を解き明かす重要な研究です。
誰がどこで調べたの?
調査を行ったのは、ポール・ラザースフェルドたちです。
彼はアメリカの社会学者で、メディア研究の先がけです。
調査の場所はオハイオ州エリー郡という地域です。
エリー郡は、都市と農村がまじった地域です。
共和党と民主党の支持がちょうど半分ずつでした。
そのため、どちらに動くかが分かりやすい場所でした。
調査に協力したのは約600人の市民でした。
この人たちに7か月間、何度も意見を聞きました。
聞き方は、実際に会ってインタビューする方法でした。
こうして、考えの変化や影響をていねいに調べました。
このように、研究者はエリー郡で実際の人々を使って調査を行い、信頼できる結果を得ました。
どんな人が調査されたの?
調査対象はふつうの市民でした。
政治に特別くわしい人ではありません。
年齢や仕事、性別など、さまざまな人が含まれていました。
とくに、投票権のある大人を中心に調べています。
住んでいる場所も、都市と農村の両方が含まれます。
宗教や収入のちがいもふまえて、広く人を選びました。
そのため、多くの立場からの意見が集まりました。
調査のねらいは、ふつうの人がどう考えるかを知ることです。
特別な知識がない人でも、どう影響を受けるかが大事でした。
つまり、エリー調査では、社会の中の多様な人たちがどのように投票を決めているかを明らかにしました。
調査の目的はなに?
目的は、マスメディアが人の考えにどれだけ影響するかを見ることです。
当時、多くの人がメディアの力を信じていました。
新聞やラジオが人の考えを大きく変えると思われていました。
でも、実際にはどうなのかをはっきりさせる必要がありました。
そこで、調査ではメディアと人間関係の影響を比べました。
結果として、身近な人のほうが大きな影響を持つと分かりました。
マスメディアだけで意見が変わる人は少なかったのです。
これは当時の考え方を大きく変える発見でした。
まとめると、この調査の目的は、情報の流れと投票行動の関係をしっかり調べることでした。
どうやって調べたの?
調査はインタビュー形式でくり返し行われました。
一度だけではなく、選挙期間中に7回も行いました。
これを「パネル調査」といいます。
何度も同じ人に話を聞く方法です。
これによって、時間の中での変化が見えました。
調査員が家を訪ねて、直接話を聞きました。
聞く内容は、投票の意見やその理由です。
また、どんな人から影響を受けたかも聞いています。
このようにして、人の考えがどう変わるかを調べました。
この調査方法によって、表面的な意見ではなく、人の心の動きがくわしく分かりました。
エリー調査が明かした投票のヒミツ
多くの人が投票先を変えなかった理由
調査では半数以上の人が投票先を変えませんでした。
これはとても大きな発見です。
選挙期間が長くても、考えはほぼ変わらなかったのです。
人は意見を持つと、それを守ろうとします。
とくに、すでに信じていることを大切にします。
このような性質を「先有傾向」といいます。
先有傾向があると、新しい意見を受け入れにくくなります。
つまり、最初に決めたことを変えにくいのです。
この傾向が投票行動にも強く影響していました。
まとめると、多くの人はもともとの考えを守り、選挙中もほとんど意見を変えませんでした。
投票を変えた人ってどんな人?
投票先を変えた人は全体の12%だけでした。
この少ない人たちには特徴がありました。
まず、家族やまわりの人の意見がバラバラでした。
たとえば、父と母で支持する政党が違っていたりします。
こうした状態を「交差圧力」といいます。
どちらの意見を信じるかで迷いやすくなります。
このような状況だと、意見が変わりやすくなります。
交差圧力を受けた人は、投票先を変えることが多かったです。
つまり、投票先を変えた人の多くは、まわりからいろいろな意見を受けていたことが原因でした。
意見を変えにくい人の共通点
最初に意見を持っていた人は、変えにくかったです。
このような人は、自分の考えに自信を持っていました。
また、同じ考えの人と話すことが多い人でした。
それにより、自分の考えが正しいと思いやすくなります。
こういう環境では、意見を変える理由が少なくなります。
さらに、マスメディアよりも友人や家族を信じていました。
そのため、新しい情報が入っても受け入れづらかったのです。
このような人は、調査全体でも多く見られました。
このことから、意見を変えにくい人は、自信や環境によって強く考えを保ち続けることが分かりました。
投票行動はどこで決まる?
多くの人の投票行動は、家庭や地域で決まっていました。
新聞やラジオよりも、身近な人との会話が大切でした。
家庭では親の意見が強く働いていました。
地域では近所の人や友人が大きな影響を持ちました。
また、仕事場でも同僚の意見が関係していました。
つまり、毎日の生活の中で意見が形づくられていたのです。
このように、投票は個人だけでなく、まわりの影響を受けて決まっていました。
まとめると、投票行動は生活の中の人間関係によって自然に形づくられることが多いと分かります。
社会的な背景と投票の関係
人の立場や生活の条件が投票先に強く関係していました。
たとえば、農村に住むお金持ちの人は共和党を支持する傾向がありました。
一方で、都市に住む貧しい人は民主党を好みました。
また、宗教も関係していました。
プロテスタントは共和党、カトリックは民主党を選ぶ傾向でした。
このような社会的な背景を「先有傾向」と呼びます。
つまり、人は育った環境や属する集団によって考え方が似てくるのです。
このように、個人の投票は、その人の暮らしや社会の中での立場によって決まることが多いといえます。
マスメディアより強い「人のつながり」
家族や友達の影響が強かった理由
身近な人の意見は信じやすく、行動に影響します。
調査では、家族や友人との会話が意見に強く関係していました。
新聞やラジオよりも、知っている人の言葉を信じる人が多かったです。
とくに親や兄弟などの意見は大きく影響していました。
安心感のある相手の意見は受け入れやすいのです。
また、日常の中でよく話す人の考えは、自然と心に残ります。
信頼している人の言葉は、そのまま自分の意見になることもあります。
このようなつながりが、投票先を決める大きな力になりました。
まとめると、エリー調査では、家族や友人など近い人の影響が、投票行動にとても強く働いていることがわかりました。
意見指導者ってどんな人?
意見指導者とは、まわりに影響をあたえる人のことです。
ふつうの人ですが、よく相談されたり、話を聞かれたりします。
政治や社会の話題について、自信を持って話す人が多いです。
特別な仕事ではなく、近所の親切な人や学校の先輩などです。
この人たちが、周囲の意見をまとめたり広めたりします。
エリー調査では、こうした人たちを通して情報が広がるとされました。
つまり、情報はまず意見指導者に届き、その後まわりに伝わります。
この考えは、のちに大切な理論として注目されました。
意見指導者は、情報の中継役となり、投票行動にも大きな影響を与える存在だといえます。
「二段階の流れ」ってなに?
情報はまず一部の人に届き、そこから広がります。
これを「二段階の流れ」といいます。
第一段階では、メディアが意見指導者に情報を伝えます。
第二段階では、その意見指導者がまわりの人に話します。
この仕組みは、調査で明らかになりました。
多くの人は、新聞ではなく友人や家族から意見を聞いていました。
つまり、情報の入り口はメディアでも、信じるのは身近な人だったのです。
この流れが、考え方に強く影響を与えていました。
情報の流れには段階があり、身近な人を通して意見が広がることがエリー調査で示されました。
なぜテレビや新聞じゃ足りない?
情報はあっても、信じる相手が大切なのです。
新聞やテレビは多くの情報を伝えます。
しかし、それだけで人の意見はなかなか変わりません。
なぜなら、情報をどう受け取るかは人によってちがうからです。
とくに、すでに考えがある人は、新しい意見を受け入れにくいです。
そのとき、信頼する人が同じ意見を言えば安心して受け入れられます。
つまり、情報の中身より、誰が言ったかが大事になるのです。
エリー調査では、この点がはっきりと示されました。
情報を正しく伝えるには、信頼できる人を通すことがとても大切だとわかりました。
近所の人が政治の見方を決める?
地域のつながりが、考え方に大きな影響を与えます。
調査では、同じ町に住む人の意見が似ていることがわかりました。
近所の人どうしで、政治について話すことがよくあります。
その中で、多くの人が同じ考えを持つようになります。
たとえば、みんながある政党を応援していれば、自分もそうすることが安心になります。
このような集団を「準拠集団」といいます。
準拠集団は、人が行動や意見を決めるときの基準になる存在です。
つまり、地域の中の関係が投票の考え方を形づくるのです。
近くの人とのつながりが強いと、自然と同じ意見になることがあり、投票行動にも大きく影響します。
エリー調査がわかりやすくする社会の仕組み
「先有傾向」とは何のこと?
「先有傾向」とは、生まれ育った環境で考えが決まることです。
人は、自分が育った場所や家庭の考えに強く影響されます。
たとえば、親がいつも同じ政党を応援していると、自分もそうなりやすいです。
また、友達や近所の人の考えも大きな力になります。
このように、考えはあとからではなく、もともとあることが多いです。
エリー調査では、このような先にできた考えが投票行動に強く関係しているとわかりました。
だから、新しい意見やメディアの話を聞いても、簡単には考えは変わらないのです。
つまり、先有傾向とは、自分の意見がすでにある社会の中で育まれるという考え方です。
住んでいる場所と投票のつながり
地域によって、投票の傾向がはっきり分かれます。
エリー調査では、住んでいる場所が意見に影響するとわかりました。
たとえば、農村に住む人は保守的な考えを持つことが多く、共和党を支持しやすいです。
反対に、都市に住む人は変化を受け入れやすく、民主党を選ぶことが多いです。
これは、その場所の仕事や生活環境によるものです。
また、まわりの人の意見に合わせることで、地域全体の考え方も似てきます。
このように、どこに住んでいるかで、その人の投票傾向がおおよそ見えてくるのです。
宗教や収入と政治の関係
信じていることやお金のことも、投票に影響します。
エリー調査では、宗教と収入が意見に関係していました。
たとえば、プロテスタントの人は伝統を大事にする考えが強く、共和党を選ぶことが多かったです。
カトリックの人は弱い立場の人に寄りそう気持ちが強く、民主党を選びやすい傾向がありました。
また、お金に余裕がある人は現状を守ろうとするため、保守的な政党を選びます。
一方、生活に困っている人は変化を求めて、進歩的な政党を選ぶことが多かったのです。
宗教やお金の状況は、社会への考え方を通じて、投票の選び方にもつながっています。
準拠集団ってどういう意味?
準拠集団とは、自分の考え方の参考にする人たちです。
人はひとりでは意見を決めません。
まわりにいる人たちが何を考えているかを見て、自分の考えを決めることが多いです。
たとえば、友達がある政党を支持していれば、自分もそうしようと思うかもしれません。
これが「準拠集団」のはたらきです。
エリー調査では、この準拠集団の影響がとても大きいと示されました。
とくに近所の人や家族、同じ仕事の人などがその例です。
つまり、準拠集団は、自分の意見や行動の基準になる大切な存在です。
社会が人の考え方に与える影響
社会のしくみやつながりは、人の意見を形づくります。
人はひとりで生きているわけではありません。
家庭、学校、地域、仕事など、いろいろな場所で人と関わっています。
それぞれの場所で、考え方や行動が自然と決まっていきます。
エリー調査では、そうした社会的なつながりが投票に影響しているとわかりました。
社会の中で身につけた意見は、自分でも気づかないうちに強くなっています。
そのため、メディアの情報だけでは変わらないのです。
このように、社会のしくみは人の意見に深く関係し、それが投票行動にもつながっているのです。
今の社会にも活きるエリー調査の教え
SNSはメディアか準拠集団か?
SNSはメディアであると同時に準拠集団の場でもあります。
たとえば、有名人やニュースアカウントを見るなら、それはメディアとしての使い方です。
一方、友達や同じ考えを持つ人の投稿を見るとき、それは準拠集団の影響を受けています。
つまり、SNSはどちらの側面も持っています。
エリー調査の考え方で見ると、情報がどこから来たかだけでなく、誰を信じるかが重要でした。
SNSでは信頼する人の意見にひかれることが多いです。
だから、SNSは人間関係の中での意見形成にも強く関係しているのです。
このように、SNSは単なる情報の場ではなく、意見がつくられる関係の中で動いています。
経済的な不満と意見のつながり
もともとの暮らしの不満が、意見や交友関係を形づくります。
お金のゆとりがない人ほど、不公平を感じやすくなります。
その不満を話す相手は、同じような立場の人が多くなります。
すると、自然と同じ考えの人たちが集まるようになります。
その中で意見がつくられ、信じることが強くなっていきます。
このように、経済格差は人の関係を通じて意見の形成に関わっています。
エリー調査でも、収入や暮らしが投票に影響することが明らかでした。
つまり、不満や困りごとからつながる人間関係が、そのまま意見の土台となるのです。
人はメディアを選んでいる
人は、自分の考えに合うメディアを自然と選びます。
すべての情報を平等に見ているわけではありません。
たとえば、ある政党が好きな人は、その政党に有利な情報を選びがちです。
これを「選択的接触」といいます。
つまり、自分の意見に合う情報だけを集めてしまうのです。
この行動も、エリー調査の「先有傾向」と深く関係しています。
意見が先にあって、それに合う情報をあとから探しているのです。
情報に左右されているようで、実は自分の意見に合うものを選び取っているのが現実です。
準拠集団が意見を決める仕組み
人は自分の意見を、まわりの人との関係の中で決めています。
自分の考えは、自分だけで生まれるわけではありません。
友人、家族、同僚などとの会話の中でつくられます。
これがエリー調査で明らかになった「準拠集団」の考え方です。
たとえば、同じような不満をもつ人どうしが集まれば、その不満を前提に意見がまとまります。
その中で「当たり前」とされる考えが、個人の意見にもなっていきます。
つまり、人の意見は社会との関係や交友関係の中で形づくられていくのです。
メディアの影響よりも人間関係の力
最後に意見を決めるのは、信じている人の言葉です。
テレビや新聞の話より、友達や家族の言葉が強く残ります。
エリー調査では、情報の出どころよりも「誰から聞いたか」が大事でした。
たとえば、同じニュースでも、信頼する人が言えば納得できます。
逆に、知らない人が言っても心に残りません。
これは今のSNS時代でも変わりません。
見ている内容よりも、「誰が言ったか」が大きなカギになります。
だからこそ、これからの社会でも、情報の内容だけでなく、人との関係を大切にすることが重要です。
最後に
エリー調査からわかるのは、人の考えはまわりとの関係の中でつくられるということです。
テレビや新聞のようなメディアよりも、信頼できる友達や家族の意見が強く影響します。
SNSが広まった今でも、このしくみは変わっていません。
自分の考えに近い人とつながり、その中で意見が固まっていくのです。
また、意見の元には、暮らしの不満や社会への思いもあります。
それがつながりを生み、やがて政治の考え方にもつながります。
つまり、あなたの「選ぶ理由」は、あなただけで決めたようで、実はまわりと一緒につくってきたものかもしれません。
選挙や社会の話を考えるとき、「誰と話してきたか」「どんな環境で育ったか」も意識してみてください。
情報を正しく受け取るためには、人とのつながりと自分の立ち位置を知ることがとても大切です。

ライター 兼 編集長:トキワエイスケ @etokiwa999
株式会社SUNBLAZE代表。子どもの頃、貧困・虐待家庭やいじめ、不登校、中退など社会問題当事者だったため、社会問題を10年間研究し自由国民社より「悪者図鑑」出版。その後も社会問題や悪者が生まれる決定要因(仕事・教育・健康・性格・遺伝・地域など)を在野で研究しており、社会問題の発生予測を目指している。凸凸凸凹(WAIS-Ⅳ)。