インターンシップは、大学生が社会人となる前に職業体験をする貴重な機会です。
しかし、インターンシップが学生の性格に与える影響については、あまり知られていません。
最近、「Do experiences during the transition to working life Matter? the role of mastery and psychological commitment in personality trait change」という研究論文が発表され、インターンシップと性格の関係について興味深い結果が報告されました。
この研究では、大学から社会人への移行期にある学生を対象に、インターンシップに参加した群と参加しなかった群の性格特性の変化を比較しました。
この結果は、インターンシップという経験が、学生の性格に一定の影響を及ぼす可能性を示唆しています。
では、なぜインターンシップが性格に影響を与えるのでしょうか。
また、性格の変化は学生の適応にどのような意味を持つのでしょうか。
この記事では、最新の研究結果を踏まえながら、インターンシップと性格の関係について詳しく解説していきます。
今回も、性格研究者で悪者図鑑著者のトキワ(@etokiwa999)が解説していきます。
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インターンシップが性格特性に与える影響
性格特性とは何か
性格特性とは、個人の行動や思考、感情の一貫したパターンを指します。
これは、時間や状況を超えて比較的安定しています。
性格特性は、人格の基本的な構成要素であり、個人差を理解するための重要な概念です。
性格特性は、以下の5つの次元で捉えられることが多いです。
- 外向性:社交的で活発な傾向
- 協調性:思いやりがあり、協力的な傾向
- 誠実性:責任感が強く、規律正しい傾向
- 神経症傾向:不安や情緒不安定な傾向
- 開放性:知的好奇心が強く、創造的な傾向
これらの性格特性は、遺伝と環境の両方の影響を受けて形成されると考えられています。
また、性格特性は人生の様々な場面で重要な役割を果たします。
性格特性は、学業成績、職業選択、人間関係、健康状態などと関連することが知られています。
したがって、性格特性を理解することは、自己理解や他者理解を深める上で重要な意味を持ちます。
大学から社会人への移行期における性格の変化
大学から社会人への移行期は、個人の性格特性に変化をもたらす可能性があります。
この時期は、新たな環境や役割に適応するための重要な転機となります。
例えば、以下のような変化が見られることがあります。
- 責任感や自律性の向上
- 社会的スキルの向上
- ストレス対処能力の向上
- 価値観や目標の変化
これらの変化は、社会人としての要求に応じて、個人の性格特性が適応していく過程を反映していると考えられます。
ただし、性格特性の変化は個人差が大きく、一様ではありません。
性格特性の変化は、以下のような要因に影響を受けることが示唆されています。
- 移行期の経験の質と量
- 個人の適応力や柔軟性
- 周囲のサポートの有無
したがって、大学から社会人への移行期における性格特性の変化を理解するには、個人の経験や環境を考慮することが重要です。
性格特性の変化は、移行期の適応と密接に関連しています。
性格特性の変化を通じて、個人は新たな環境や役割に適応し、社会人としての成長を遂げていくと考えられます。
インターンシップとは何か
インターンシップとは、学生が在学中に企業等で就業体験を行うことを指します。
これは、学生が将来のキャリアを探索し、職業スキルを磨く機会となります。
インターンシップには、以下のような目的があります。
- 職業観や勤労観の育成
- 専門知識やスキルの実践
- 社会人としてのマナーの習得
- 自己理解や自己効力感の向上
インターンシップは、学生にとって貴重な学習の機会であると同時に、企業にとっても優秀な人材を発掘する機会となります。
種類もいくつか存在し、以下のようなものがあります。
- 短期間(1〜2週間程度)のインターンシップ
- 長期間(1〜6ヶ月程度)のインターンシップ
- 有給のインターンシップ
- 無給のインターンシップ
インターンシップの内容は、企業や業種によって様々です。
一般的には、以下のような活動が行われることが多いです。
- 業務の見学や体験
- 企画や調査への参加
- 社員との交流や意見交換
インターンシップを通じて、学生は職業世界の実態を肌で感じ、自らの適性を見極めることができます。
インターンシップに参加する学生の特徴
参加する学生は、一般的に積極性や学習意欲が高いと言われています。
彼らは、自らの興味や関心に基づいて、主体的にインターンシップに参加します。
インターンシップに参加する学生には、以下のような特徴があることが指摘されています。
- 社会や企業に対する関心が高い
- 自己理解や自己啓発に積極的である
- 新たな経験やチャレンジを求めている
- コミュニケーション能力が高い
また、インターンシップに参加する学生は、将来のキャリアに対する意識が高いことが多いです。
彼らは、インターンシップを通じて、以下のような効果を期待しています。
- 職業スキルの向上
- 社会人としての心構えの習得
- 人脈の形成
- 自己の適性の発見
インターンシップに参加する学生は、自らの成長と将来のキャリア形成に対して積極的な姿勢を持っています。
彼らは、インターンシップという貴重な機会を最大限に活用しようとする傾向があります。
このような特徴を持つ学生がインターンシップに参加することで、より大きな学びと成長が期待できると考えられます。
インターンシップに参加する学生の特徴は、彼らの積極性や学習意欲に表れています。
このような学生がインターンシップで得た経験は、将来のキャリアにおいて大きな財産となるでしょう。
インターンシップに参加しない学生との比較
インターンシップに参加する学生と参加しない学生では、いくつかの違いが見られることが指摘されています。
これらの違いは、インターンシップの経験の有無によって生じると考えられます。
インターンシップに参加する学生は、参加しない学生と比較して、以下のような特徴があることが報告されています。
- 社会人基礎力が高い
- 職業意識が明確である
- 自己理解が深まっている
- 職業スキルが向上している
一方、インターンシップに参加しない学生は、以下のような傾向があると指摘されています。
- 職業世界に対する理解が浅い
- 自己の適性が明確でない
- 就職活動への準備が不十分である
- 社会人としての心構えが身についていない
これらの違いは、インターンシップの経験を通じて、学生が成長し、変化していく過程を反映していると考えられます。
ただし、インターンシップに参加しない学生が全て上記の特徴を持つわけではありません。
個人差が大きいため、一概に断定することはできません。
また、インターンシップに参加しなくても、他の方法で社会人としての準備を進めている学生もいます。
大切なのは、学生一人一人が自らの成長と将来のキャリアに対して意識を持ち、主体的に行動することです。
インターンシップはその一つの方法ではありますが、学生の成長を促す機会は他にも多くあります。
学生には、自分に合った方法で、積極的に学びと成長の機会を求めていくことが期待されます。
研究方法と対象者
研究プロジェクト「Change Ahead」について
「Change Ahead」は、大学から社会人への移行期における性格特性の変化を追跡する縦断的研究プロジェクトです。
このプロジェクトは、学生の性格特性がどのように変化するのかを明らかにすることを目的としています。
「Change Ahead」では、以下の2つのグループを対象に調査が行われました。
- インターンシップに参加する学生(インターンシップ群)
- インターンシップに参加しない学生(非インターンシップ群)
両グループの学生に対して、一定期間にわたって複数回の調査が実施されました。
調査では、以下のような内容が扱われました。
- 性格特性の測定
- 教育へのコミットメントの測定
- 学業成績(GPA)の報告
- 就職先と専攻分野の適合度の報告
これらのデータを分析することで、研究者たちは、大学から社会人への移行期における性格特性の変化のメカニズムを探ろうとしました。
「Change Ahead」は、学生の性格特性の変化に焦点を当てた先駆的な研究プロジェクトです。
このプロジェクトの知見は、学生のキャリア支援や教育プログラムの改善に役立つことが期待されています。
また、「Change Ahead」は、性格心理学における重要な研究の一つとして位置づけられています。
このプロジェクトが、大学から社会人への移行期の理解を深める一助となることが期待されます。
インターンシップ群の参加者の詳細
インターンシップ群の参加者は、心理学を専攻する大学院生163名でした。
彼らは、1年制の修士課程に在籍し、インターンシップに参加していました。
インターンシップ群の参加者の特徴は以下の通りです。
- 平均年齢は22.4歳
- 女性の割合は86%
- 約半数が臨床法心理学修士課程に在籍
- 48.5%が臨床発達心理学修士課程に在籍
インターンシップ群の参加者は、以下のような活動を行っていました。
- 臨床面接の実施
- 心理検査の実施
- レポートの作成
- 集団カウンセリングの実施
- 個別カウンセリングの実施
これらの活動を通じて、参加者たちは臨床心理学の専門的なスキルを実践的に学んでいました。
インターンシップの期間は平均38.1週間で、週に3日間の活動が行われていました。
参加者たちは、専門の指導者の下で、自主的に業務を遂行できるレベルまで成長することが期待されていました。
インターンシップ群の参加者は、通常の授業にも出席し、論文を執筆するなど、学業にも励んでいました。
彼らは、インターンシップと学業の両立という挑戦に取り組んでいたのです。
インターンシップ群の参加者の詳細からは、彼らが心理学の専門性を高めるために努力していたことがわかります。
インターンシップでの経験は、彼らの専門的な成長に大きく寄与したと考えられます。
非インターンシップ群の参加者の詳細
非インターンシップ群の参加者は、学士課程最終学年の学部生148名でした。
彼らは、インターンシップには参加せず、通常の学業に専念していました。
非インターンシップ群の参加者の特徴は以下の通りです。
- 平均年齢は20.95歳
- 女性の割合は81.2%
非インターンシップ群の参加者は、以下のような活動を行っていました。
- 通常の授業への出席
- 論文の執筆
- 学業に関連する課題への取り組み
彼らは、学士課程の最終学年として、専門知識を深め、学士論文の準備に励んでいました。
非インターンシップ群の参加者は、インターンシップ群とは異なる学習環境で過ごしていました。
彼らは、大学内での学びに集中し、学業面での成長を目指していたと考えられます。
非インターンシップ群の参加者の中には、インターンシップとは別の形で社会経験を積んでいた学生もいたかもしれません。
しかし、本研究では、彼らのインターンシップ以外の経験については考慮されていません。
非インターンシップ群の参加者は、インターンシップ群との比較対象として位置づけられています。
彼らのデータは、インターンシップの効果を検証する上で重要な役割を果たしています。
非インターンシップ群の参加者の詳細からは、彼らが学業に専念し、学士課程の集大成に向けて努力していたことがわかります。
彼らの学習体験は、インターンシップ群とは異なる側面を持っていたと推察されます。
データ収集の期間と方法
「Change Ahead」プロジェクトのデータは、2014年から2018年の間に収集されました。
この期間中、研究者たちは縦断的な調査を実施し、参加者の性格特性の変化を追跡しました。
データ収集は、以下の方法で行われました。
- 4学年度連続での調査
- 6時点でのデータ収集
- 質問紙による性格特性の測定
- 少なくとも2時点での完全なデータの取得
研究者たちは、参加者に対して繰り返し調査を行うことで、性格特性の変化を詳細に捉えようとしました。
6時点でのデータ収集は、以下のようなスケジュールで行われました。
- 学士課程の最終学年開始時
- 学士課程修了時
- 修士課程開始時
- インターンシップ開始時
- インターンシップ修了時
- 修士課程修了時
このスケジュールにより、研究者たちは、大学から社会人への移行期の各段階における性格特性の変化を捉えることができました。
データ収集には、質問紙が用いられました。
質問紙では、以下のような内容が扱われました。
- 性格特性(ビッグファイブ)
- 教育へのコミットメント
- 学業成績(GPA)
- 就職先と専攻分野の適合度
参加者は、これらの質問項目に回答することで、自身の性格特性や学習状況に関するデータを提供しました。
研究者たちは、少なくとも2時点で完全なデータが得られた参加者のデータを分析の対象としました。
これにより、信頼性の高い結果が得られるようにしたのです。
性格特性の測定方法
「Change Ahead」プロジェクトでは、性格特性の測定にビッグファイブが用いられました。
ビッグファイブモデルは、性格特性を5つの次元で捉える代表的な理論です。
ビッグファイブモデルの5つの次元は以下の通りです。
- 外向性(Extraversion)
- 協調性(Agreeableness)
- 誠実性(Conscientiousness)
- 神経症傾向(Neuroticism)
- 開放性(Openness)
「Change Ahead」プロジェクトでは、ビッグファイブモデルに基づく質問紙が用いられました。
具体的には、以下の尺度が使用されました。
- BFI(Big Five Inventory)
- NEO-PI-R(Revised NEO Personality Inventory)
- HEXACO(HEXACO Personality Inventory)
これらの尺度は、ビッグファイブモデルの各次元を測定するために開発された信頼性と妥当性の高い質問紙です。
参加者は、これらの質問紙に回答することで、自身の性格特性に関するデータを提供しました。
研究者たちは、収集されたデータを分析することで、参加者の性格特性の変化を追跡しました。
インターンシップが性格特性に及ぼす影響の結果
インターンシップ群における外向性の変化
外向性の平均レベルが時間の経過とともに変化することが明らかになりました。
具体的には、以下のような変化が見られました。
- インターンシップ開始直後は外向性が低下
- その後、外向性が徐々に上昇
- インターンシップ修了時には外向性が高いレベルに
これらの変化は、インターンシップという新しい環境に適応していく過程を反映していると考えられます。
インターンシップ開始直後の外向性の低下は、以下のような理由によるものかもしれません。
- 新しい環境に対する不安や緊張
- 社会人としてのふるまいへの戸惑い
- 自己主張の抑制や控えめな態度
一方、インターンシップ期間中の外向性の上昇は、以下のような要因が関係しているかもしれません。
- 職場での人間関係の構築
- 業務に対する自信の向上
- 社会人としての役割の習得
インターンシップ修了時の外向性の高さは、インターンシップでの経験が参加者の社交性や積極性を高めたことを示唆しています。
インターンシップ群における外向性の変化は、参加者の適応過程を反映した興味深い結果と言えます。
この結果は、インターンシップが単なる就業体験にとどまらず、参加者の性格特性にも影響を及ぼす重要な経験であることを示しています。
インターンシップ群における外向性の変化は、大学から社会人への移行期における適応の過程を理解する上で重要な知見となるでしょう。
女子学生と男子学生の性格特性の違い
「Change Ahead」プロジェクトでは、女子学生と男子学生の性格特性に違いが見られることが明らかになりました。
具体的には、以下のような結果が報告されています。
- 女子学生は男子学生よりも高い誠実性を示す傾向がある
- 女子学生は男子学生よりも高い神経症傾向を示す傾向がある
これらの結果は、性別による性格特性の違いを示唆しています。
誠実性の高さは、以下のような特徴と関連していると考えられます。
- 責任感が強い
- 規律正しい
- 計画性がある
- 勤勉である
一方、神経症傾向の高さは、以下のような特徴と関連していると考えられます。
- 不安になりやすい
- 感情的に不安定である
- ストレスに弱い
- 悩みが多い
これらの性差は、社会的な期待や役割、生物学的な要因など、様々な要因が複雑に絡み合って生じていると考えられます。
ただし、性差はあくまでも平均的な傾向であり、個人差が大きいことに注意が必要です。
すべての女子学生が高い誠実性と神経症傾向を示すわけではなく、また、すべての男子学生が低い誠実性と神経症傾向を示すわけではありません。
性別による性格特性の違いは、キャリア支援や教育場面での配慮に役立つ可能性があります。
インターンシップ群と非インターンシップ群の性格特性の比較
インターンシップ群と非インターンシップ群の性格特性を比較したところ、いくつかの違いが見られました。
具体的には、以下のような結果が報告されています。
- インターンシップ群は非インターンシップ群よりも高い協調性を示す傾向がある
- インターンシップ群は非インターンシップ群よりも低い神経症傾向を示す傾向がある
これらの結果は、インターンシップの経験が参加者の性格特性に影響を及ぼす可能性を示唆しています。
インターンシップ群の高い協調性は、以下のような要因と関連しているかもしれません。
- 職場での対人関係の経験
- チームワークの重要性の認識
- 他者への配慮の習得
- 社会人としてのマナーの習得
一方、インターンシップ群の低い神経症傾向は、以下のような要因と関連しているかもしれません。
- 社会人としての自信の獲得
- ストレス対処能力の向上
- 情動調整スキルの習得
- 困難な状況への適応力の向上
これらの性格特性の違いは、インターンシップという実践的な経験がもたらす成長や変化を反映していると考えられます。
ただし、因果関係の方向性については注意が必要です。
インターンシップ群の高い協調性と低い神経症傾向が、インターンシップの経験によってもたらされたのか、それとも、もともとそのような性格特性を持っていた学生がインターンシップに参加したのかは、断定できません。
この点を明らかにするためには、さらなる研究が必要とされます。
教育への熱心さと神経症傾向の関係
「Change Ahead」プロジェクトでは、参加者の教育に対する熱心さと神経症傾向の間に関連が見られました。
具体的には、以下のような結果が報告されています。
- 教育に熱心に取り組む参加者ほど、神経症傾向が低い傾向がある
この結果は、教育へのコミットメントが参加者の情動的な安定性と関連していることを示唆しています。
教育に熱心に取り組む参加者は、以下のような特徴を持っているかもしれません。
- 目標達成に向けて努力する
- 困難な状況でも諦めない
- 自己効力感が高い
- ストレス対処能力が高い
これらの特徴は、神経症傾向の低さと関連していると考えられます。
教育に熱心に取り組むことで、参加者たちは自信やレジリエンス(回復力)を身につけ、情動的な安定性を高めていくのかもしれません。
ただし、この結果は相関関係を示すものであり、因果関係を示すものではありません。
教育への熱心さが神経症傾向の低さをもたらすのか、それとも、神経症傾向が低い参加者が教育に熱心に取り組むのかは、明らかではありません。
両者の関係性を明らかにするためには、さらなる研究が必要とされます。
また、教育へのコミットメントは、性格特性以外の要因とも関連している可能性があります。
性格特性と教育・職業上の変数の関連
外向性、誠実性、協調性、神経症傾向と教育・職業上の変数の関連
「Change Ahead」プロジェクトでは、性格特性と教育・職業上の変数の関連が検討されました。
具体的には、外向性、誠実性、協調性、神経症傾向と、以下のような変数との関連が報告されています。
- 教育へのコミットメント
- 学業成績(GPA)
- 就職先と専攻分野の適合度
これらの結果は、性格特性が学生の適応や成功に影響を及ぼす重要な要因であることを示唆しています。
外向性、誠実性、協調性は、以下のような特徴と関連していると考えられます。
- 社交性や積極性(外向性)
- 責任感や勤勉さ(誠実性)
- 対人関係スキルや共感性(協調性)
これらの特性は、教育場面や職場での適応や成功に寄与すると考えられます。
一方、神経症傾向は、以下のような特徴と関連していると考えられます。
- 不安や情緒不安定さ
- ストレスへの脆弱性
- 自己肯定感の低さ
これらの特性は、教育場面や職場での適応や成功を阻害する可能性があります。
開放性と教育・職業上の変数の関連の少なさ
「Change Ahead」プロジェクトでは、性格特性の中でも開放性と教育・職業上の変数の関連が少ないことが報告されました。
開放性は、以下のような特徴と関連していると考えられます。
- 知的好奇心
- 創造性
- 新しい経験への開放性
- 非伝統的な価値観
これらの特性は、学問的な場面では重要な役割を果たすかもしれません。
しかし、「Change Ahead」プロジェクトでは、開放性と以下のような変数との関連は見られませんでした。
- 教育へのコミットメント
- 学業成績(GPA)
- 就職先と専攻分野の適合度
この結果は、開放性が教育・職業上の適応や成功に直接的な影響を及ぼすわけではないことを示唆しています。
開放性は、学問的な探究心や創造性を支える重要な特性ですが、それだけでは教育・職業上の成果につながらないのかもしれません。
他の性格特性や要因との相互作用が必要なのかもしれません。
ただし、開放性と教育・職業上の変数の関連の少なさは、「Change Ahead」プロジェクトの限界を反映している可能性もあります。
例えば、対象者が心理学専攻の学生に限定されていたことや、測定方法の制約などが影響しているかもしれません。
他の専攻分野や教育・職業上の変数との関連を検討することで、開放性の役割がより明確になるかもしれません。
他の職業トレーニングにおける性格特性との関連の可能性
「Change Ahead」プロジェクトでは、インターンシップという特定の職業トレーニングに着目して、性格特性との関連が検討されました。
しかし、他の職業トレーニングにおいても、性格特性との関連が見られる可能性があります。
例えば、以下のような職業トレーニングが考えられます。
- 企業の新入社員研修
- 専門職(医師、弁護士など)の実地研修
- 教員の教育実習
- 軍隊の基礎訓練
これらの職業トレーニングは、インターンシップとは異なる特徴を持っています。
例えば、期間の長さ、指導体制、求められるスキルなどが異なります。
これらの違いによって、性格特性との関連の仕方も異なってくるかもしれません。
例えば、企業の新入社員研修では、協調性や誠実性がより重要な役割を果たすかもしれません。
一方、軍隊の基礎訓練では、外向性や神経症傾向がより重要な役割を果たすかもしれません。
また、職業トレーニングの内容や目的によっても、性格特性との関連の仕方が異なるかもしれません。
多くの研究の積み重ねの重要性
「Change Ahead」プロジェクトは、性格特性と教育・職業上の変数の関連について重要な知見を提供しました。
しかし、この知見はあくまでも一つの研究プロジェクトの結果に基づくものです。
性格特性と教育・職業上の変数の関連について、より確かな理解を得るためには、多くの研究の積み重ねが重要です。
以下のような点を考慮した研究が求められます。
- 対象者の多様性(専攻分野、年齢、文化背景など)
- 教育・職業上の変数の多様性(学業成績、就職先、職務満足度など)
- 性格特性の測定方法の多様性(質問紙、行動観察、他者評定など)
- 研究デザインの多様性(縦断研究、介入研究、質的研究など)
これらの点を考慮した研究を積み重ねることで、性格特性と教育・職業上の変数の関連についての理解が深まるでしょう。
また、多くの研究の積み重ねは、以下のような点でも重要です。
- 結果の一般化可能性の検討
- 文化差や時代差の検討
- 因果関係の検討
- 介入方法の開発と評価
これらの点を検討することで、性格特性と教育・職業上の変数の関連についての知見が、より実践的に活用できるようになるでしょう。
例えば、特定の性格特性を持つ学生に対する効果的な教育方法や、特定の職業に適した性格特性を明らかにすることができるかもしれません。
そのような知見は、教育現場やキャリア支援の現場で大いに役立つはずです。
まとめ:インターンシップと性格特性の関係
移行経験の違いと性格特性の変化の個人差
「Change Ahead」プロジェクトでは、大学から社会人への移行期における性格特性の変化に個人差が見られることが明らかになりました。
この個人差は、移行経験の違いによって説明できる可能性があります。
具体的には、インターンシップへの参加が、性格特性の変化の個人差に影響を及ぼしていました。
インターンシップに参加した学生は、参加しなかった学生とは異なる性格特性の変化を示しました。
特に、外向性の変化に顕著な違いが見られました。
この結果は、移行経験の質が性格特性の変化に影響を及ぼすことを示唆しています。
インターンシップのような実践的な経験は、学生の性格特性を変化させる重要な契機となるのかもしれません。
ただし、インターンシップへの参加が全ての学生に同じ影響を及ぼすわけではありません。
インターンシップの内容や期間、学生の個人的な特性などによって、影響の仕方は異なってくると考えられます。
また、インターンシップ以外の移行経験も、性格特性の変化に影響を及ぼす可能性があります。
マスターとコミットメントが性格特性の変化に与える影響
「Change Ahead」プロジェクトでは、移行のマスター(GPA、修士号と仕事の適合度)と心理的コミットメント(教育アイデンティティ)が性格特性の変化に与える影響が検討されました。
しかし、分析の結果、マスターとコミットメントは性格特性の変化の個人差を説明しないことが明らかになりました。
この結果は、以下のような解釈が可能です。
- マスターやコミットメントは性格特性の変化に直接的な影響を及ぼさない
- マスターやコミットメントの影響は他の要因によって媒介される
- マスターやコミットメントの測定方法に改善の余地がある
ただし、この結果はあくまでも一つの研究プロジェクトの結果に基づくものです。
他の研究では異なる結果が得られる可能性もあります。
また、マスターやコミットメントが性格特性の変化に与える影響は、より長期的な視点で検討する必要があるかもしれません。
「Change Ahead」プロジェクトでは、比較的短期間の変化に着目していました。
しかし、マスターやコミットメントの影響は、より長期的な適応や成長の過程で現れるのかもしれません。
さらに、マスターやコミットメントが性格特性以外の側面に与える影響も検討する必要があります。
例えば、自己効力感や職業的アイデンティティなどが考えられます。
インターンシップ参加による外向性の変化の個人差
「Change Ahead」プロジェクトでは、インターンシップへの参加が外向性の変化の個人差を説明することが明らかになりました。
具体的には、インターンシップに参加した学生は、参加しなかった学生に比べて、外向性が変化する傾向が見られました。
ただし、この結果は個人差が大きいことにも留意が必要です。
この個人差は、以下のような要因によって説明できるかもしれません。
- インターンシップの内容や期間の違い
- インターンシップ先の組織風土の違い
- 学生の適応力や柔軟性の違い
- 学生の元々の外向性のレベルの違い
また、外向性の変化が必ずしも適応的でない可能性も考慮する必要があります。
例えば、インターンシップ参加者に対して、外向性の変化に関する心理教育を行うことが考えられます。
また、インターンシップ先の組織風土を改善することで、より適応的な外向性の変化を促すことができるかもしれません。
多様な要因を考慮した研究を通じて、より実践的な知見が得られることが期待されます。
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ライター 兼 編集長:トキワエイスケ @etokiwa999
株式会社SUNBLAZE代表。子どもの頃、貧困・虐待家庭やいじめ、不登校、中退など社会問題当事者だったため、社会問題を10年間研究し自由国民社より「悪者図鑑」出版。その後も社会問題や悪者が生まれる決定要因(仕事・教育・健康・性格・遺伝・地域など)を在野で研究しており、社会問題の発生予測を目指している。凸凸凸凹(WAIS-Ⅳ)。