人的資本は本当にお金のムダなのでしょうか。
「研修ばかりでコストが増える」「経験者を採ると給料が高い」と感じたことはありませんか。
アルバイト先や部活でも、「育てるより今すぐ結果がほしい」と思う場面はあるあるです。
従来は「人的資本は大切だ」と理論では言われてきました。
しかし、実際の研究では結果がばらばらで、本当に効果があるのかははっきりしていませんでした。
では、本当に人的資本は企業の成果を伸ばすのでしょうか。
この疑問に答えたのが、テネシー大学ノックスビル校(University of Tennessee, Knoxville)などの研究者による論文「Does Human Capital Matter? A Meta-Analysis of the Relationship Between Human Capital and Firm Performance」です。
この研究は『Journal of Applied Psychology』に2011年に掲載されました。
今回も、性格研究者で悪者図鑑著者のトキワ(@etokiwa999)が解説していきます。
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目次
人的資本は本当に効かないのかという疑問から始まる物語
人的資本って何
人的資本は人が持つ知識や経験のことです。
まず人的資本とは何かを説明します。
これは人の中にある力のことです。
たとえば次のようなものです。
- 学校で学んだ知識
- 仕事で積んだ経験
- 身につけた技能
つまり道具ではなく人の力です。
もしあなたが部活の主将ならどうでしょうか。
経験豊かな先輩が多いほど安心です。
それと同じ考え方です。
さらに企業ではこの力が集まります。
その合計が会社の強さになります。
この研究ではその力と業績の関係を調べました。
まとめると人的資本とは人の中の能力であり、会社の土台になる力です。
これまで結果が割れていた理由
実は人的資本の効果は一貫していませんでした。
これまでの研究はばらつきがありました。
33本中11本だけが有意でした。
つまり約3分の1です。
ではなぜでしょうか。
まず研究数が少なかった点があります。
次に測り方が違いました。
さらに時間差を考えない研究もありました。
もしあなたが1回のテストだけで成績を決められたらどうでしょう。
本当の実力は見えにくいです。
企業でも同じです。
したがって結果が分かれた可能性があります。
この研究は66本をまとめました。
合計12163社のデータです。
まとめると過去は証拠が不足し、結論がはっきりしなかったのです。
人的資本はお金と時間がかかる問題
人的資本は育てるのに費用がかかります。
教育や研修には時間が必要です。
その間に利益は出ないかもしれません。
したがって短期では不利に見えます。
もしあなたがアルバイトを教育するとします。
教えている間は売上が下がります。
しかし慣れれば効率が上がります。
企業も同じ構造です。
この研究では時間の影響も考えました。
ただし縦の時間研究は特別強くありませんでした。
横断研究と差は有意ではありません。
つまり効果はすぐにも現れる可能性があります。
まとめるとコストはあるが、効果は無視できないと示されました。
会社に残る知識と移りやすい知識
会社特有の人的資本は効果が大きいです。
研究では2種類に分けました。
- 会社特有の経験
- どこでも通用する一般経験
特有型の相関は0.24でした。
一般型は0.14でした。
差は約71%大きいです。
もしあなたがその会社の仕組みを熟知していたらどうでしょう。
他社では使えない知識です。
だから価値が高まります。
一方で一般経験は移りやすいです。
そのため効果がやや弱まります。
まとめると会社特有の経験が業績とより強く結びついていました。
利益がどこに消えるかという壁
人的資本の成果は必ずしも利益に残りません。
従業員は給料として受け取ります。
経営者も報酬を得ます。
そのため利益指標に反映しにくいです。
研究では次の2種類を比べました。
- 財務指標
- 現場成果指標
財務は0.15でした。
現場成果は0.26でした。
もしあなたが商品開発の担当ならどうでしょう。
売上よりも開発成功率が先に上がります。
このように段階があります。
したがって現場で効果が強く出ます。
まとめると利益の取り分の影響で、数字の見え方が変わると分かりました。
人的資本をまとめて調べたら見えてきた本当の姿
66研究をまとめて検証した
66本の研究を統合しました。
合計12163社のデータです。
これを統合分析と呼びます。
ばらばらの結果を平均します。
もしあなたがクラス全体の平均点を見るならどうでしょう。
1人の点数より安定します。
同じ考え方です。
その結果、全体相関は0.17でした。
誤差補正後は0.21です。
これは中程度の大きさです。
まとめると多くの研究を統合すると、人的資本は確かに業績と関係していました。
どんな研究を集めたかの条件
条件を満たす研究だけを集めました。
まず人的資本を測っていることです。
次に業績も測っていることです。
さらに両者の相関が報告されていることです。
1991年以降が対象です。
これは理論が広まった年です。
研究数は68効果でした。
一部は複数指標を平均しました。
厳格な基準で整理しました。
まとめると公平な条件で集めた研究だけを分析しました。
企業業績の測り方の2タイプ
業績は2つに分けられました。
まず財務型です。
たとえば資産利益率などです。
次に現場型です。
顧客満足や開発速度などです。
財務型は0.15でした。
現場型は0.26でした。
もしあなたが店舗責任者ならどうでしょう。
売上よりも接客評価が先に上がります。
現場成果が先に変わります。
この違いが示されました。
まとめると人的資本の効果は現場でより強く見られました。
人的資本の2タイプの分け方
人的資本は特有型と一般型に分かれます。
特有型は会社限定の経験です。
一般型はどこでも通用する経験です。
特有型は0.24でした。
一般型は0.14でした。
この差は統計的に有意でした。
もしあなたがその会社独自の機械を扱えるならどうでしょう。
他社では使えません。
だから価値が高まります。
まとめると会社固有の経験がより強く業績と結びついていました。
結果を公平に見るための工夫
信頼性の補正も行いました。
人的資本の平均信頼性は0.81です。
業績は0.91でした。
これを補正しました。
補正後相関は0.21です。
さらに重複企業も確認しました。
重複除外でも0.18でした。
つまり結果は安定していました。
まとめると多角的な確認でも人的資本の効果は揺らぎませんでした。
人的資本が業績を伸ばす条件が見えてきた
全体として人的資本は業績とプラス
人的資本は業績と正の関係です。
相関は0.17でした。
補正後は0.21です。
有意水準は1%未満でした。
もしあなたが経験豊富な店長ならどうでしょう。
売上は伸びやすいです。
この研究も同じ傾向です。
ただし万能とは言えません。
条件で差があります。
まとめると人的資本は平均的に業績を押し上げる傾向が示されました。
縦断研究が特別強いわけではなかった
時間差研究は特別強くありませんでした。
横断は0.19でした。
縦断は0.10でした。
差は有意ではありません。
予想とは異なる結果です。
もしあなたが短期の成績と長期の成績を比べたらどうでしょう。
意外に差がない場合もあります。
企業でも同様でした。
まとめると時間を考慮しても効果の大きさは大きく変わりませんでした。
会社特有の人的資本は効果が大きい
特有型は効果が明確に強いです。
0.24と0.14の差です。
これは約7割大きいです。
会社の歴史や文化に合った経験です。
もしあなたがその店だけの常連客を知っていたらどうでしょう。
接客がうまくいきます。
他店では使えません。
その分価値が高いです。
まとめると会社独自の経験が競争力の源になる可能性が高いと示されました。
現場の成果で見ると効果がより大きい
現場成果では相関0.26でした。
財務は0.15でした。
現場型が約70%大きいです。
つまり顧客満足や開発速度です。
もしあなたが開発担当ならどうでしょう。
成功率が先に上がります。
利益は後で反映します。
この段階差が示されました。
まとめると人的資本の真価は現場成果でより強く確認されました。
技術開発などの成果では特に強い
技術関連では相関0.30でした。
これはかなり大きい値です。
技術開発は人の知識に依存します。
もしあなたが研究部門ならどうでしょう。
経験者が多いほど成果は出やすいです。
この研究でも同様でした。
ただし件数は4研究です。
そのため慎重な解釈が必要です。
まとめると技術分野では人的資本の効果が特に強く見られました。
人的資本をどう活かすかという次の課題へ
経営陣だけでなく全社で育てると強い
全階層で育てると相関0.27でした。
経営陣だけは0.17です。
現場だけは0.10です。
全体型が最も強いです。
もしあなたがサッカーチームの監督ならどうでしょう。
主将だけ強くても勝てません。
全員の力が必要です。
企業も同じ構造です。
まとめると人的資本は組織全体で高めるほど効果が強まります。
会社特有の経験を増やし離職を減らす
特有型が鍵になる可能性があります。
特有型は0.24でした。
一般型より大きいです。
つまり会社内で育てる経験です。
もしあなたが新人ならどうでしょう。
長く働くほど理解が深まります。
離職すると知識が失われます。
そのため定着も重要です。
まとめると会社内で積む経験を増やすことが成果につながる可能性があります。
財務指標だけでなく現場指標も見る
財務だけでは効果を見逃します。
財務は0.15でした。
現場は0.26でした。
数字の見え方が違います。
もしあなたが先生ならどうでしょう。
テスト点だけで努力は測れません。
授業態度も見るはずです。
企業でも同様です。
まとめると人的資本を評価する際は現場成果も重視する必要があります。
現場の成果が会社全体の成果につながる流れ
現場成果が媒介の可能性があります。
つまり間に入る役割です。
人的資本が現場成果を高めます。
その後に全体業績へ広がります。
図では部分的な媒介でした。
もしあなたが部活で練習を増やせばどうでしょう。
試合成績は後から上がります。
段階的な流れです。
ただし研究数は5本です。
結論は慎重に見る必要があります。
まとめると人的資本は現場を通じて業績に影響する可能性が示されました。
人的資本の測り方次第で見え方が変わる
測定方法で結果は変わります。
集計型は0.14でした。
非集計型は0.21でした。
測り方が重要です。
もしあなたが身長を測るならどうでしょう。
靴を履いたままだと正確でありません。
同じように測定が影響します。
そのため解釈は慎重です。
まとめると人的資本の効果は測り方によって強さが変わると示されました。
最後に

ライター 兼 編集長:トキワエイスケ @etokiwa999
株式会社SUNBLAZE代表。子どもの頃、貧困・虐待家庭やいじめ、不登校、中退など社会問題当事者だったため、社会問題を10年間研究し自由国民社より「悪者図鑑」出版。その後も社会問題や悪者が生まれる決定要因(仕事・教育・健康・性格・遺伝・地域など)を在野で研究し、論文4本執筆(うち2本ジャーナル掲載)。社会問題の発生予測を目指している。凸凸凸凹(WAIS-Ⅳ)。








