誠実性とIQは関係があるのでしょうか。
テスト前にコツコツ勉強する友達を見ると、「まじめな人ほど頭がいいのでは」と思ったことはありませんか。
部活でも、最後までやり抜く人は成績も良さそうに感じますよね。
従来は「誠実性が高い人ほどIQも高い」と考えられてきました。
まじめさと賢さはセットだというイメージです。
この疑問に答えたのが、ポーランドのワルシャワ大学(University of Warsaw)心理学部の研究です。
論文タイトルは「Is conscientiousness positively or negatively related to intelligence? Insights from the national level」です。
学術誌『Learning and Individual Differences』に2015年に掲載されました。
今回も、性格研究者で悪者図鑑著者のトキワ(@etokiwa999)が解説していきます。
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目次
誠実性とIQの関係はなぜ「矛盾」して見える?
誠実性とIQは本来プラスだと思われてきた
重要なのは、誠実性とIQは本来は同じ方向に伸びると考えられてきたことです。
誠実性とは、まじめさや計画性のことです。
約束を守る力とも言えます。
一方でIQは考える力の目安です。
たとえば、もしあなたが受験生ならどうでしょうか。
計画を立てて勉強しますよね。
しかも集中力も必要です。
このとき大切なのは次の力です。
- 目標を決める力
- こつこつ続ける力
- 先を考える力
さらに、過去の研究では、
誠実性とIQは仕事や学業で役立つとされました。
したがって、2つはプラスだと予想されていました。
つまり、まじめで賢い人は成功しやすいと考えられてきたのです。
まとめると、理論上は誠実性とIQは同じ方向に動くはずだと想定されてきました。
でも研究ではマイナスの結果も出ていた
ところが、一部の研究では誠実性とIQはマイナスの関係でした。
具体的には、誠実性が高い人ほどIQが低い傾向がありました。
これは直感と逆です。
たとえば、もしあなたが数学が苦手だとします。
その場合どうしますか。
努力で補おうとしませんか。
これを補償と呼びます。
補償とは弱い部分を努力で補うことです。
研究では、
- IQが低い人ほど誠実性が高い
- IQが高い人は努力に頼らない
という可能性が示されました。
ただし、すべての研究が同じ結果ではありません。
しかし、少なくとも一部では負の相関が報告されました。
したがって、誠実性とIQは単純ではない関係だと考えられます。
本研究は「国ごとの平均」で確かめた
この研究の特徴は、個人ではなく国単位で調べた点です。
個人ではなく国の平均値を使いました。
つまり国民全体の傾向を比べました。
もしあなたがクラス代表だとします。
クラス全体の平均点を見るようなものです。
1人ではなく集団で見るのです。
具体的には、
- IQは約40から46か国のデータ
- 誠実性も同じく国平均
が使われました。
国単位で見ると、
自己評価の誠実性はIQとマイナス0.39でした。
一方で他者評価はプラス0.11でした。
つまり視点で方向が変わりました。
このため、国レベルでも単純ではないと分かりました。
性格は自己評価と他者評価で見え方が変わる
重要なのは、同じ性格でも評価の仕方で結果が逆になることです。
自己評価とは自分で答える方法です。
他者評価とは周りが評価する方法です。
たとえば、もしあなたが自分を評価するとします。
「私はまじめです」と答えるかもしれません。
しかし友人は違う印象を持つかもしれません。
本研究では、
- 自己評価では誠実性とIQはマイナス
- 他者評価ではプラス寄り
という違いがありました。
さらに、多くの項目で差は有意でした。
有意とは偶然ではない可能性が高いという意味です。
この視点の違いが矛盾の一因です。
つまり、測り方で関係が変わる点が重要なのです。
誠実性は「1つ」ではなく中身がいくつもある
誠実性は単一の性格ではなく6つの要素から成ります。
この6要素が結果を分けました。
内訳は次の通りです。
- 有能感
- 秩序性
- 義務感
- 達成へのこだわり
- 自己管理
- 慎重さ
たとえば、もしあなたが慎重すぎる人ならどうでしょう。
考えすぎて行動が遅れるかもしれません。
一方で義務感が強い人は規則を守ります。
研究では、
- 義務感はIQとプラス
- 達成へのこだわりはマイナス
- 慎重さもマイナス
でした。
つまり誠実性の中身で方向が違いました。
まとめると、誠実性とIQの関係は一枚岩ではなく、要素ごとに分かれていたのです。
誠実性とIQをどう調べた?研究のデータと方法
IQは国別の推定値データを使った
この研究では、個人ではなく国ごとの平均IQを使った点が重要です。
IQとは考える力の目安です。
国別の平均値がまとめられています。
たとえば、もしあなたが学校全体の成績を見るならどうでしょう。
1人ではなく全体の平均を見ますよね。
それと同じ考え方です。
研究では、
- 既存の国別IQデータ
- 主に知能検査の平均値
が使われました。
一部の国ではデータが不足していました。
その場合は学力の記録から推定しました。
つまり完全な実測だけではありません。
ただし、約40か国以上のデータがありました。
そのため大まかな傾向は見られます。
まとめると、この研究は国の平均IQをもとに関係を探りました。
誠実性はNEO-PI-Rという性格検査の国別データ
誠実性は、広く使われる性格検査の国別平均を利用しました。
性格とは行動や考え方のくせのことです。
この検査は世界で使われています。
もしあなたが性格テストを受けたことがあるならどうでしょう。
質問に答えて結果が出ますよね。
その集計が国単位で行われました。
この検査では、
- まじめさ
- 計画性
- 自己管理
などが測られます。
学生が他人を評価する方法もありました。
さらに、自分で答える形式もありました。
つまり2種類の視点が使われました。
まとめると、誠実性は国ごとの平均点で比べられました。
自己評価の誠実性データは40カ国
自己評価の誠実性は約40か国のデータが使われました。
自己評価とは、自分で自分を評価する方法です。
「私はまじめですか」と答える形です。
もしあなたが自分の性格を点数でつけるならどうでしょう。
少し甘くなるかもしれません。
あるいは厳しく見る人もいます。
研究では、
- 40か国の平均値
- 同じ形式の質問
が使われました。
その結果、
自己評価の誠実性とIQの相関は−0.39でした。
相関とは2つの関係の強さです。
この数値はマイナス方向でした。
まとめると、自己評価では誠実性とIQは逆方向の傾向が見られました。
他者評価の誠実性データは46カ国
他者評価のデータは46か国分が分析されました。
他者評価とは、他人がその人を評価する方法です。
友人や知人が答える形です。
たとえば、もしあなたが友達の性格を答えるならどうでしょう。
自分とは違う見方になるはずです。
この研究では、
- 約46か国
- 学生が知人を評価
という方法が使われました。
結果は、
他者評価の誠実性とIQは+0.11でした。
ただし統計的には強くはありません。
それでも方向はプラス寄りでした。
まとめると、評価の視点で結果が変わることが示されました。
誠実性は6つの要素に分けて見た
誠実性は1つではなく、6つの要素に分けて分析されました。
その内訳は次の通りです。
- 有能感
- 秩序性
- 義務感
- 達成へのこだわり
- 自己管理
- 慎重さ
もしあなたが「まじめ」と言われたらどう感じますか。
勉強を続ける力かもしれません。
約束を守る力かもしれません。
研究では、この6つを別々に調べました。
すると関係の向きが違いました。
たとえば、義務感はIQとプラスでした。
一方で達成へのこだわりはマイナスでした。
この分け方が重要でした。
まとめると、誠実性とIQの関係は要素ごとに異なっていました。
誠実性とIQの結果:自己評価だとマイナス、他者評価だとプラス寄り
自己評価の誠実性はIQとマイナス(相関−0.39)
自己評価の誠実性はIQと−0.39の関係でした。
相関とは2つの動きの強さです。
−0.39は中くらいの逆方向です。
たとえば、もしあなたが自分を評価するならどうでしょう。
「私はとてもまじめです」と答えるかもしれません。
しかしIQが高い国ほど点が低い傾向でした。
この数値は偶然ではない可能性があります。
つまり一定の傾向が見られました。
- データは約40か国
- 自分で答える形式
- 国ごとの平均で比較
一方で、個人全員が当てはまるわけではありません。
あくまで国全体の傾向です。
まとめると、自己評価では誠実性とIQは逆方向の動きを示しました。
他者評価の誠実性はIQとプラス寄り(相関+0.11、ただし有意ではない)
他者評価では相関は+0.11でした。
プラスですがとても弱い関係です。
しかも統計的にははっきりしませんでした。
たとえば、もしあなたが友人を評価するとします。
「彼はまじめだ」と答えるかもしれません。
この場合はIQが高い国ほど少し高めでした。
- データは約46か国
- 知人を評価する方法
- 平均値を使用
しかし+0.11は小さい数字です。
強い関係とは言えません。
それでも方向は自己評価と逆でした。
まとめると、他者評価では誠実性とIQはやや同方向でした。
自己評価では「几帳面さ」「達成へのこだわり」が強くマイナス
自己評価では特定の要素が強いマイナスでした。
特に目立ったのは次の2つです。
- 几帳面さは−0.54
- 達成へのこだわりは−0.61
この数字は比較的強い逆方向です。
もしあなたが目標に強くこだわる人ならどうでしょう。
努力を重ねるタイプかもしれません。
研究では、IQが低い国ほどこの傾向が強めでした。
几帳面さとは整理整頓を大切にすることです。
達成へのこだわりとは目標を強く追う姿勢です。
これらは補う行動かもしれません。
ただし原因ははっきりしません。
まとめると、自己評価では特定の誠実性が強い逆相関でした。
他者評価では「有能さ」「義務感」「自己管理」がプラス
他者評価では別の要素がプラス方向でした。
主な結果は次の通りです。
- 有能さは+0.29
- 義務感は+0.42
- 自己管理は+0.30
これらは統計的に意味がありました。
もしあなたが規則を守る人ならどうでしょう。
周囲はあなたを信頼するでしょう。
研究ではIQが高い国ほど義務感が高めでした。
有能さとは自分の力を信じることです。
自己管理とはやるべきことを続ける力です。
この3つは社会的に望ましい面です。
まとめると、他者評価では責任感の要素がIQと同方向でした。
見え方がずれる現象を研究は「視点の違い」として示した
同じ誠実性でも評価方法で方向が変わりました。
これを研究では視点の違いと説明しました。
自己評価は自分の感覚です。
他者評価は周囲の印象です。
たとえば、もしあなたが自分を厳しく見るならどうでしょう。
自己評価は低くなるかもしれません。
しかし友人は高く評価するかもしれません。
今回の研究では、
ほとんどの項目で差がありました。
つまり測り方が結果を左右しました。
この違いが矛盾の正体です。
まとめると、誠実性とIQの関係は視点によって形が変わると示されました。
誠実性とIQの結論:誠実性の「中身」次第でプラスにもマイナスにもなる
「義務感」はIQとプラスの関係だった
もっとも安定してプラスだったのは「義務感」でした。
義務感とは、約束や規則を守ろうとする力です。
責任を果たそうとする姿勢とも言えます。
研究では、他者評価で+0.42でした。
回帰分析でも強い正の予測でした。
もしあなたが班長だとします。
提出物を必ず守る人を信頼しますよね。
そのような姿勢が国全体で高いほど、IQも高い傾向でした。
さらに、自己評価でも方向は同じでした。
偶然とは言いにくい結果です。
まとめると、義務感は誠実性の中でもIQと前向きに結びつく要素でした。
「達成へのこだわり」はIQとマイナスの関係だった
一方で「達成へのこだわり」ははっきりマイナスでした。
これは目標を強く追い求める姿勢です。
高い目標を掲げる気持ちとも言えます。
自己評価では−0.61でした。
他者評価でも回帰では−0.57でした。
もしあなたがテストで苦戦しているとします。
そのとき努力を何倍にも増やすかもしれません。
これが補う行動です。
研究では、IQが低い国ほど
この傾向が強い可能性が示されました。
もちろん断定はできません。
しかし数字は逆方向を示しました。
まとめると、強い達成志向はIQと逆に動く傾向がありました。
「慎重すぎる考え方」はIQとマイナスの関係だった
慎重さもIQとは逆方向でした。
慎重さとは、行動前に深く考える力です。
急がずに判断する姿勢です。
自己評価では−0.51でした。
他者評価でも−0.31でした。
もしあなたが問題を解く場面ならどうでしょう。
考えすぎて時間が足りなくなるかもしれません。
逆に素早い判断が役立つこともあります。
研究では、IQが高い国ほど
慎重さは低めの傾向でした。
これは処理の速さと関係する可能性があります。
ただし原因は断定できません。
まとめると、過度な慎重さはIQと逆方向でした。
この3つのパターンは自己評価でも他者評価でも共通
重要なのは、3つの傾向が両方の評価で似ていたことです。
視点が違っても方向は同じでした。
具体的には、
- 義務感はプラス
- 達成へのこだわりはマイナス
- 慎重さはマイナス
この並びは一貫していました。
もしあなたが2つのカメラで同じ景色を撮るならどうでしょう。
色味は違っても形は同じかもしれません。
それに近い現象です。
つまり測り方の違いはあっても、
中身ごとの関係は安定していました。
まとめると、要素ごとの動きは評価方法を超えて共通でした。
つまり誠実性とIQは「一言で決められない」
結論は、誠実性とIQは単純ではないということです。
誠実性は6つの要素から成ります。
そのうち少なくとも3つが異なる方向でした。
もしあなたが「まじめな人は賢い」と言い切るならどうでしょう。
それは一部だけを見た判断かもしれません。
研究は約40から46か国のデータを使いました。
数字は一方向ではありませんでした。
- 義務感は前向き
- 達成志向は逆向き
- 慎重さも逆向き
このため、誠実性とIQは
一言では説明できません。
まとめると、誠実性の中身を見ないと本当の関係は分からないのです。
最後に
誠実性とIQの関係は、思っていたよりもずっと複雑でした。
まじめな人ほど賢い、と単純には言えません。
研究では、自己評価ではマイナスの傾向が見られました。
一方で、他者評価ではプラス寄りの結果も出ました。
さらに大切なのは、誠実性の「中身」です。
義務感はIQと前向きな関係でした。
しかし、達成へのこだわりや慎重さは逆方向でした。
つまり、誠実性のどの部分を見るかで結果が変わります。
もしあなたが「自分はまじめだから頭もいいはず」と考えているなら、それは一部しか見ていないかもしれません。
逆に「努力型だから賢くない」と決めつける必要もありません。
この研究が教えてくれるのは、性格と知能は一言で決められないということです。
大切なのは、自分のどんな力が強みなのかを知ることです。

ライター 兼 編集長:トキワエイスケ @etokiwa999
株式会社SUNBLAZE代表。子どもの頃、貧困・虐待家庭やいじめ、不登校、中退など社会問題当事者だったため、社会問題を10年間研究し自由国民社より「悪者図鑑」出版。その後も社会問題や悪者が生まれる決定要因(仕事・教育・健康・性格・遺伝・地域など)を在野で研究し、論文4本執筆(うち2本ジャーナル掲載)。社会問題の発生予測を目指している。凸凸凸凹(WAIS-Ⅳ)。








