世界で活躍するスポーツ選手には、4つの共通する性格特性があります。
「Personality profile of individual sports champions」という研究で明らかになりました。
600人のアスリートを分析した結果、チャンピオン級の選手は「低い情動性」「高い外向性」「高い協調性」「高い誠実性」の4点で際立っていました。
この記事では、その研究内容をわかりやすく解説します。
スポーツで結果を出したい人や、選手を指導する立場の人にとって、きっと役立つ内容です。
今回も、性格研究者で悪者図鑑著者のトキワ(@etokiwa999)が解説していきます。
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目次
スポーツ選手の性格を測る「ビッグファイブ」とは
ビッグファイブとは、性格を5つの次元で数値化する、心理学の代表的な尺度です。
研究や臨床の場で広く使われており、スポーツ選手の性格研究にも活用されています。
5つの次元は以下の通りです。
- 情動性:不安や怒りなどのネガティブな感情を感じやすいか
- 外向性:社交的・活動的か、内向的・控えめか
- 経験への開放性:新しいことへの好奇心や知的関心の強さ
- 協調性:他者に親切で協力的か、利己的・敵対的か
- 誠実性:責任感が強く計画的か、衝動的・怠惰か
ビッグファイブは性格を多角的に捉えられる枠組みです。
今回紹介する研究では「NEO-FFI」という質問紙を使い、この5つを数値化しています。
スポーツ選手の強みや課題を客観的に把握するうえで、非常に有効な手段といえます。
600人のアスリートを調べた研究の概要
ポーランドの研究者が、20歳〜29歳のアスリート600人を対象に大規模な調査を実施しました。
個人競技に絞った点が、この研究の大きな特徴です。
調査の概要は以下の通りです。
- 対象:ポーランド人の個人競技選手600人(20〜29歳)
- 競技数:20競技から各30人ずつ選出
- 競技例:登山・水泳・テニス・アーチェリー・スポーツクライミング・乗馬・カヌー・バイアスロンなど
- 測定方法:NEO-FFI質問紙によるビッグファイブの数値化
- チャンピオンの定義:世界大会・欧州大会でメダルを獲得した56人
この研究ではまず、600人全体の性格傾向を分析しました。
そのうえで、メダル獲得経験のある56人のチャンピオンを抽出し、それ以外の選手と性格を比較しました。
個人競技のトップアスリートに絞った研究は珍しく、スポーツ心理学において貴重なデータといえます。
競技によって選手の性格は違う
調査の結果、競技の種目によって、選手の性格特性に統計的な差があることがわかりました。
特に差が大きかったのは、情動性と経験への開放性の2つです。
情動性は分散の約29%、経験への開放性は約16%を競技間の差が説明しています。
つまり、どの競技を選ぶかによって、求められる心理的な資質が異なる傾向があるということです。
たとえば、情動性(ネガティブ感情への反応しやすさ)が最も低かったのは以下の3競技です。
- スポーツクライミング
- 登山
- リュージュ
一方、相対的に情動性が高い傾向があったのは以下の競技です。
- 乗馬
- スポーツシューティング
- 社交ダンス
同じ個人競技でも、精神的なタフさの求められ方はさまざまです。
競技の特性に合った性格的資質を理解することが、選手育成の第一歩になるかもしれません。
チャンピオン選手に共通する4つの性格特性
世界大会や欧州大会でメダルを獲得したチャンピオン56人には、他の選手と比べて明確に異なる4つの性格特性がありました。
以下の表に、その特徴をまとめます。
| 性格特性 | チャンピオンの傾向 | スポーツへの影響 |
|---|---|---|
| 情動性 | 極めて低い(効果量最大) | プレッシャーに強く、本番で実力を発揮しやすい |
| 外向性 | 有意に高い | 積極的に練習・コミュニケーションができる |
| 協調性 | 有意に高い | コーチや仲間と良好な関係を築きやすい |
| 誠実性 | 有意に高い | 地道な努力を継続し、着実に成長できる |
なお、経験への開放性については、チャンピオンとその他の選手の間に有意差は見られませんでした。
以下では、4つの特性それぞれについて詳しく解説します。
①情動性の低さ:最も重要な性格特性
情動性の低さは、チャンピオンと他の選手を分ける最も重要な特性で、効果量が最大でした。
情動性とは、不安・怒り・落ち込みなどのネガティブな感情を感じやすい傾向のことです。
情動性が低い人は、感情的に安定していて、ストレスに強い傾向があります。
スポーツの場面では、以下のような場面で情動性の低さが力を発揮します。
- 大事な試合で過度に緊張せず、冷静に実力を発揮できる
- ミスをしても引きずらず、すぐに気持ちを切り替えられる
- 長期間のプレッシャーにも精神的なバランスを保てる
世界レベルで活躍するためには、技術力だけでなく、感情のコントロール力が不可欠です。
研究では、情動性の低さがチャンピオンを最も強く特徴づける性格特性であることが示されています。
メンタルトレーニングで情動性を下げる取り組みは、競技力向上に直結する可能性があります。
②外向性の高さ:積極性とモチベーション
チャンピオン選手は、他の選手と比べて外向性が有意に高い傾向があります。
外向性とは、社交的・活動的・積極的という性格の方向性を示す特性です。
外向的なアスリートには、以下のような強みがある傾向があります。
- コーチや仲間とのコミュニケーションが自然と活発になる
- 高いモチベーションを維持しながら練習に取り組める
- 試合本番でも積極的に力を出しやすい
- 周囲との関係を通じて、学びや刺激を得やすい
もちろん、内向的な選手が活躍する例も多くあります。
ただし、研究データを見ると、チャンピオン全体として外向性が高い傾向が確認されています。
積極的に環境に働きかける姿勢が、長期的な成長を後押しするのかもしれません。
③協調性の高さ:人間関係が競技力を左右する
チャンピオン選手は、他の選手と比べて協調性が有意に高いことが明らかになっています。
協調性とは、他者への思いやりや、協力的な態度を示す性格特性です。
個人競技では一見、協調性は関係ないように思えます。
しかし実際には、以下のような場面で協調性が重要な役割を果たします。
- コーチの指導を素直に受け入れ、技術を吸収しやすい
- チームメイトや仲間と良好な練習環境をつくれる
- 対戦相手とも敬意を持って接し、フェアな競技ができる
- サポートスタッフとの信頼関係を築き、最善のケアを受けられる
協調性の高さは、周囲との関係をスムーズにし、良質な練習環境を生み出します。
結果として、選手のパフォーマンス向上につながる可能性があります。
人との関係づくりも、競技力の一部といえるかもしれません。
④誠実性の高さ:努力を積み重ねる力
チャンピオン選手は、誠実性においても他の選手を有意に上回っていました。
誠実性とは、勤勉さ・計画性・自制心といった、自分をコントロールする力を示す特性です。
スポーツの世界では、誠実性の高さが以下のような場面で発揮されます。
- 毎日の練習をコツコツと積み重ね、着実に技術を高められる
- 試合に向けて計画的に調整し、ベストな状態で本番を迎えられる
- 誘惑に負けず、規則正しい生活習慣を維持できる
- 長期的な目標に向けて、粘り強く努力を続けられる
才能があっても、継続できなければ結果は出ません。
誠実性の高さは、日々の地道な努力を支え、長期的な成長を可能にする土台です。
世界レベルで活躍するアスリートほど、この「続ける力」を持っている傾向があります。
スポーツ選手の性格研究から学べること
この研究は、アスリートの選抜・育成・メンタルトレーニングに実用的な示唆を与えています。
スポーツ選手の性格特性を理解することで、以下のような活用が期待できます。
- 選手自身が自分の性格的な強みと課題を把握できる
- 指導者が選手の特性に合ったアプローチを取れる
- 競技特性に応じたメンタルトレーニングの個別設計ができる
- 弱点となる性格特性を意識的に鍛える方向性が見えてくる
たとえば、情動性が高い選手は、プレッシャーへの対処法を重点的に練習するとよいでしょう。
また、誠実性が低い選手には、小さな習慣づくりから始めることが有効かもしれません。
性格は完全に変えることはできませんが、トレーニングで伸ばせる部分は多くあります。
自分の性格を知ることは、スポーツの成長においても大切な一歩です。
まとめ:スポーツ選手の性格と競技力の関係
600人のアスリートを分析した研究から、世界で活躍するスポーツ選手には4つの共通する性格特性があることが示されています。
その4つを改めて整理します。
- ①情動性が極めて低い:プレッシャーに強く、感情的に安定している(効果量最大)
- ②外向性が高い:積極的で、コミュニケーション力が高い
- ③協調性が高い:思いやりがあり、周囲との関係を大切にする
- ④誠実性が高い:地道な努力を続け、自己管理ができる
これらはあくまで傾向であり、すべての選手に当てはまるわけではありません。
しかし、自分の性格を知り、強みを伸ばし、弱みを補う努力をすることは、競技力向上に役立つはずです。
スポーツと性格の関係を理解することで、より賢く、より効果的にトレーニングに取り組めるようになるでしょう。








