疲れやすい人と疲れにくい人がいるのは、性格の違いが関係しているかもしれません。
最近発表された「Personality and fatigue: meta-analysis of seven prospective studies」という研究論文で、性格特性と疲れの関係が明らかになりました。
この研究は、4万人以上の人を対象に、長期間にわたって性格との関係を調べたものです。
この研究結果は、性格が大きく関わっていることを示唆しています。
自分の性格特性を知ることで、疲れやすさの傾向を把握できるかもしれません。
そして、性格特性に合わせた対策を立てることで、疲労を軽減できる可能性があります。
この記事では、性格特性との関係について、研究結果を交えながら詳しく解説していきます。
今回も、性格研究者で悪者図鑑著者のトキワ(@etokiwa999)が解説していきます。
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目次
性格特性によって疲れやすさが違う?
性格特性と疲れの関係を調べた大規模研究
疲れやすさは性格ごとに違いがあることが分かってきました。
これは、7つの大規模な研究を統合して分析したメタ分析の結果明らかになったことです。
研究チームは、性格特性と疲れの関係性について、詳細に調査を行いました。
その結果、特定の性格特性を持つ人は、疲れを感じやすい傾向にあることが示されたのです。
一方で、疲れを感じにくい性格特性もあることが分かりました。
4万人以上の幅広い年齢層が対象
この研究では、16歳から104歳までの幅広い年齢層の人々、合計4万人以上が対象となりました。
参加者は、以下のような多様な集団から集められました。
- 高齢者を対象とした健康と退職に関する調査
- 全国規模の社会生活と健康に関する調査
- ウィスコンシン州の高校卒業生とその兄弟姉妹を対象とした長期追跡調査
- オランダの一般集団を対象としたインターネット調査
このように、さまざまな背景を持つ人々が研究に参加したことで、結果の信頼性が高まっています。
研究の大規模さと多様性は、性格特性と疲れの関係を明らかにする上で、重要な意味を持つと言えるでしょう。
疲れの度合いを5年から20年の期間で追跡調査
研究では、性格特性との関係を詳しく調べるために、長期的な追跡調査が行われました。
具体的には、5年から20年という期間で、参加者の疲労の度合いが評価されたのです。
最初の調査時点で性格特性と疲労の度合いを測定し、その後の追跡調査で再びその度合いをチェックしました。
こうすることで、性格特性が将来の疲れに与える影響を明らかにすることができました。
長期的な視点に立って変化を追跡したことで、性格特性と疲れの関連性がより明確になったと言えます。
疲れを感じやすい性格特性とは
神経症的な傾向が強いほど疲れを感じやすい
神経症的な傾向が強い人ほど、疲れを感じやすいことが分かりました。
これは、不安やストレスを感じやすく、悲観的になりがちな性格特性を指します。
研究の結果、神経症的な傾向が強いほど、以下のような影響があることが明らかになりました。
- 同時期の疲れを感じるリスクが高くなる
- 将来的に疲れを感じるリスクも高くなる
つまり、神経症的な人は、今現在の疲れだけでなく、長期的な疲れのリスクも高いと言えるのです。
神経症的な性格特性は、疲れやすさに大きく関わっていると考えられます。
神経症的だと同時期の疲れのリスクが73%増加
研究では、神経症的な傾向が1標準偏差高いと、同時期の疲れのリスクが73%増加することが分かりました。
この数値は、神経症的な性格特性が疲れに与える影響の大きさを示しています。
標準偏差とは、データのばらつきを表す指標です。
つまり、平均的な人よりも神経症的な傾向が強い人は、平均的な人よりも73%も疲れを感じやすいということになります。
この結果から、神経症的な性格特性が疲れと密接に関係していることが見て取れます。
神経症的だと将来の疲れのリスクも38%増加
神経症的な傾向が強いと、将来的に疲れを感じるリスクも高まることが明らかになりました。
研究によると、神経症的な傾向が1標準偏差高いと、将来の疲れのリスクが38%増加するのです。
これは、神経症的な性格特性が長期的な疲れにも影響を及ぼすことを意味しています。
現在の疲れだけでなく、将来のリスクも高めてしまうのが神経症的な性格特性だと言えます。
神経症的な人は、疲れやすさへの対策を長期的に考える必要がありそうです。
不安になりやすく悲観的だと疲れに影響か
神経症的な性格特性を持つ人の特徴として、以下のようなものが挙げられます。
- 不安やストレスを感じやすい
- 物事を悲観的に捉えがち
- ネガティブな感情を抱きやすい
こうした特徴が、疲れやすさにつながっているのかもしれません。
不安やストレスは、心身の疲労感を高める要因の一つです。
また、物事を悲観的に捉える傾向が強いと、疲れを感じやすくなるかもしれません。
神経症的な性格特性と疲れの関係には、こうした心理的な側面が関わっていると考えられます。
ただし、疲れやすさには個人差もあるため、一概には言えない部分もありそうです。
疲れを感じにくい性格特性とは
外向的で誠実な性格ほど疲れを感じにくい
外向的で誠実な性格の人ほど、疲れを感じにくいことが分かりました。
これは、社交的で活発な性格特性を指します。
一方、誠実さとは、規律正しく責任感の強い性格特性のことです。
研究の結果、外向的で誠実な人は、以下のような傾向があることが明らかになりました。
- 同時期の疲れを感じるリスクが低い
- 将来的な疲れのリスクも低い
つまり、外向的で誠実な性格の人は、疲れを感じにくいと言えるのです。
こうした性格特性は、疲れへの耐性を高めているのかもしれません。
外向的だと同時期の疲れのリスクが35%減少
研究では、外向性が1標準偏差高いと、同時期の疲れのリスクが35%減少することが分かりました。
この数値は、外向的な性格特性が疲れの軽減に与える影響の大きさを示しています。
外向的な人は、人との交流を楽しみ、活発に活動する傾向があります。
こうした特徴が、疲れの軽減につながっているのかもしれません。
外向的な性格は、疲れへの耐性を高める効果があると考えられます。
誠実な性格だと同時期の疲れのリスクが50%減少
誠実な性格の人は、同時期の疲れのリスクが50%減少することが明らかになりました。
この結果は、誠実さが疲れの軽減に大きく関わっていることを示唆しています。
誠実な人は、規則正しい生活を送り、計画的に行動する傾向があります。
こうした生活習慣が、疲れを感じにくくしているのかもしれません。
また、誠実さは自己管理能力の高さとも関連するため、疲れへの対処力が高いと考えられます。
将来の疲れのリスク減少にも外向性と誠実性が関与
外向性と誠実性は、将来のリスク減少にも関与していることが分かりました。
研究では、外向性と誠実性が高いほど、将来的なリスクが低くなる傾向が見られたのです。
この結果は、外向的で誠実な性格が長期的な疲れの予防につながる可能性を示唆しています。
外向性と誠実性は、メンタルヘルスの維持にも役立つと考えられます。
こうした性格特性を伸ばしていくことで、将来の疲れリスクを下げられるかもしれません。
性格特性が疲れに影響する理由
健康状態の自己評価と関連している可能性
性格特性が影響する理由の一つとして、健康状態の自己評価との関連が考えられます。
研究では、健康状態の自己評価が性格特性と疲れの関係を部分的に説明することが分かりました。
つまり、性格特性が健康状態の自己評価に影響を与え、その結果として疲れやすさが変化するのかもしれません。
例えば、神経症的な人は自分の健康状態を悪く評価しがちで、それが疲れにつながる可能性があります。
一方、外向的で誠実な人は健康状態を良好に評価する傾向があり、疲れを感じにくくなるのかもしれません。
運動不足になりやすいことが一因かもしれない
性格特性が疲れに影響するもう一つの理由として、運動習慣との関連が挙げられます。
研究では、身体的な不活動が性格特性と疲れの関係を部分的に説明することが示されました。
つまり、性格特性によって運動不足になりやすいかどうかが変わり、それが疲れに影響するのかもしれません。
例えば、神経症的な人は運動不足になる傾向があり、それが疲れにつながる可能性があります。
逆に、外向的で誠実な人は運動習慣を維持しやすく、疲れを感じにくくなるのかもしれません。
ただし、運動習慣以外の要因も関わっている可能性があるため、さらなる検討が必要です。
ストレスへの反応の違いが影響している可能性
性格特性がストレスへの反応に影響を与え、その結果として疲れやすさが変化する可能性があります。
神経症的な人は、ストレスに敏感で反応しやすい傾向があります。
こうしたストレス反応の高さが、疲れを引き起こしているのかもしれません。
一方、外向的で誠実な人は、ストレスへの耐性が高いと考えられます。
ストレスに適切に対処できることが、疲れの軽減につながっている可能性があります。
性格特性とストレス反応の関連性を探ることで、疲れのメカニズムがさらに解明できるかもしれません。
社交性の高さが軽減につながるのかもしれない
外向的な性格の人は、社交性が高いことが特徴です。
この社交性の高さが、疲れの軽減に役立っている可能性があります。
外向的な人は、人との交流を楽しみ、社会的なサポートを得やすい傾向があります。
こうした社会的なつながりが、ストレスの軽減や気分転換につながり、疲れを和らげているのかもしれません。
また、外向的な人は人と一緒に活動することを好むため、運動不足になりにくいという利点もあります。
社交性の高さは、疲れの軽減に直接的にも間接的にも影響している可能性がありそうです。
性格特性と疲れの関係を探る上で、社会的な要因にも注目する必要がありそうです。
性格特性以外の疲れに関わる要因
年齢や性別は疲れと性格特性の関係にあまり影響しない
研究では、年齢や性別が疲れと性格特性の関係にあまり影響しないことが分かりました。
つまり、性格特性と疲れの関連性は、年齢や性別に関係なく一貫して見られたのです。
この結果は、性格特性が疲れに与える影響の普遍性を示唆しています。
ただし、年齢や性別によって疲れやすさ自体は変化する可能性があります。
高齢者は若者よりも疲れを感じやすいかもしれませんし、女性は男性よりも疲れを自覚しやすいかもしれません。
年齢や性別は、疲れの感じ方に影響を与えるかもしれませんが、性格特性との関連性には大きく作用しないようです。
社会経済的地位や教育レベルとの関連は複雑
疲れに関わる要因として、社会経済的地位や教育レベルも注目されています。
しかし、これらの要因と性格特性の関連性は複雑であり、一概には言えないようです。
例えば、高い社会経済的地位や教育レベルは、疲れを感じにくくする可能性があります。
一方で、高い地位や教育レベルに伴うストレスが、疲れを引き起こすかもしれません。
また、性格特性によって、社会経済的地位や教育レベルの影響が異なる可能性もあります。
疲れと社会経済的要因の関係を明らかにするには、性格特性との相互作用を考慮する必要がありそうです。
疲れを感じやすい状況や環境要因も関わってくる
性格特性以外にも、疲れを感じやすい状況や環境要因があります。 例えば、以下のような要因が疲れに影響を与える可能性があります。
- 仕事のストレスや過重労働
- 家庭内の問題やストレス
- 睡眠不足や生活リズムの乱れ
- 病気や体調不良
これらの要因は、性格特性とは独立して疲れに影響を与えるかもしれません。
また、性格特性によって、こうした状況や環境要因の影響の受けやすさが変化する可能性もあります。
疲れを理解するには、性格特性だけでなく、状況や環境要因にも目を向ける必要がありそうです。
まとめ:性格特性を知ることで疲れ対策を
自分の性格特性を知り、疲れやすさの傾向を把握する
性格特性と疲れの関係を理解することは、対策を考える上で役立ちます。
まずは自分の性格特性を把握し、疲れやすさの傾向を知ることが大切です。
自分が神経症的な傾向が強いのか、外向的で誠実な性格なのかを見極めましょう。
性格特性を知ることで、自分の疲れやすさのパターンが見えてくるはずです。
また、性格特性に応じた対策を立てることもできるでしょう。
自分の性格特性を理解することは、対処力を高める第一歩だと言えます。
疲れやすい性格特性の人は疲労軽減策を積極的に
神経症的な性格特性を持つ人は、疲れやすさに注意が必要です。
疲労を軽減するための対策を積極的に取り入れることが大切でしょう。 例えば、以下のような方法が効果的かもしれません。
- ストレス対処法を身につける
- 規則正しい生活リズムを維持する
- 運動習慣を取り入れる
- リラックスする時間を確保する
こうした疲労軽減策を実践することで、疲れの影響を和らげられるはずです。
自分に合った方法を見つけ、継続的に取り組むことが重要です。 疲れやすい性格特性を持つ人こそ、疲労対策に積極的に取り組む必要があります。
性格特性は変化するので、良い特性を伸ばすことも大切
性格特性は生まれつきのものではなく、変化する可能性があります。
疲れを感じにくい性格特性を伸ばしていくことも、疲れ対策の一つと言えるでしょう。
例えば、外向性や誠実性を高めるために、以下のようなことに取り組むのも良いかもしれません。
- 人との交流を積極的に持つ
- 新しいことにチャレンジする
- 計画的に行動する習慣を身につける
- 自分に与えられた役割に責任を持つ
性格特性を変えるには時間がかかりますが、少しずつ良い特性を伸ばしていくことが大切です。
性格特性は疲れとの関係が深いだけに、良い特性を身につけることが疲れ対策につながるはずです。
疲れを感じにくい性格特性を目指して、自分なりの方法で取り組んでみましょう。
※この記事は以下の本に掲載された論文を参考に執筆しています。
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ライター 兼 編集長:トキワエイスケ @etokiwa999
株式会社SUNBLAZE代表。子どもの頃、貧困・虐待家庭やいじめ、不登校、中退など社会問題当事者だったため、社会問題を10年間研究し自由国民社より「悪者図鑑」出版。その後も社会問題や悪者が生まれる決定要因(仕事・教育・健康・性格・遺伝・地域など)を在野で研究しており、社会問題の発生予測を目指している。凸凸凸凹(WAIS-Ⅳ)。