個人の価値観と住んでいる国の価値観が一致することは、必ずしも幸福につながるとは限りません。
価値観の適合性がウェルビーイング(幸福感)に与える影響は、価値観の種類によって正反対になることが最新研究で明らかになりました。
開放性を重視する価値観では適合性が低いほど、保守的価値観では適合性が高いほど幸福度が向上する傾向があります。
この記事では、Nature Communications(2020)に掲載された論文『Well-being as a function of person-country fit in human values』をもとに、国の価値観と個人の幸福度の複雑な関係を解説します。
欧州29カ国、54,673名を対象とした大規模調査の結果から、価値観の適合性が幸福感に与える影響を詳しく見ていきましょう。
国の文化や価値観が個人の心理状態に与える影響を理解することで、より良い生活環境を見つけるヒントを得ることができます。
自分らしく生きるために、どのような価値観の環境が最適なのかを考えてみませんか?
今回も、性格研究者で悪者図鑑著者のトキワ(@etokiwa999)が解説していきます。
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価値観の適合性が幸福度に与える影響
個人と国の価値観の適合性は、価値観の種類によって幸福度への影響が180度変わることが判明しました。
従来は「価値観が合えば幸せ」と考えられていましたが、実際はもっと複雑な仕組みになっています。
研究では、10種類の価値観について詳細な分析が行われました。
- 開放性価値観:自己決定、刺激、快楽主義
- 保守的価値観:安全性、達成、権力
- 社会的価値観:普遍主義、博愛、伝統、同調
価値観の適合性効果は、その価値観が持つ本質的な性質によって決まる傾向があります。
個人の成長を重視する価値観と、安定性を重視する価値観では、環境との関わり方が根本的に異なるのです。
研究内容:欧州29カ国の大規模調査
この研究は欧州28カ国とイスラエルの合計29カ国で、54,673名を対象とした大規模な国際比較調査です。
参加者の平均年齢は48.31歳で、女性29,727名、男性24,929名が含まれています。
さらに、国レベルだけでなく地域レベルでも184地域、45,282名のデータを分析しました。
価値観はシュワルツ理論の10種類の価値観モデルに基づいて、21項目の質問票で測定されました。
また、ウェルビーイングは以下の6つの次元で総合的に評価されています。
- 評価的ウェルビーイング:人生満足度・幸福感(相関係数r=0.71)
- 感情的ウェルビーイング:過去1週間の感情状態(α=0.82)
- 機能性:自己決定感・自尊心など(α=0.85)
- 活力:エネルギー・睡眠の質など(α=0.69)
- コミュニティウェルビーイング:他者との親近感・信頼(α=0.67)
- 支援的関係:孤独感の逆転項目など(α=0.57)
研究では多項式回帰分析という精密な統計手法を使用し、年齢・性別・教育水準・収入を統制変数として含めました。
0.001水準での統計的有意性を採用し、多重比較の問題にも配慮した厳密な分析となっています。
開放性価値観:適合すると幸福度が低下
自己決定、刺激、快楽主義の価値観では、国との適合性が高いほどウェルビーイングが低下することが明らかになりました。
統計的には、刺激価値観で-1.99、自己決定価値観で-1.85という負の値を示しています。
これらは「不安のない価値観」と分類され、個人の成長や自由を重視する特徴があります。
- 自己決定:独立性・創造性を重視
- 刺激:新しい経験・変化を求める
- 快楽主義:楽しみ・喜びを追求する
開放性価値観を重視する人は、国への同一化が低く、他者との区別を求める傾向があります。
そのため、周囲の人々が同じ価値観を共有していると、かえって窮屈に感じる可能性が高くなるのです。
個性を重視する人にとって、画一的な環境は心理的な負担となりやすいといえるでしょう。
保守的価値観:適合すると幸福度が向上
安全性、達成、権力の価値観では、国との適合性が高いほどウェルビーイングが向上することが判明しました。
統計的には、達成価値観で1.15、安全性価値観で0.64という正の値を示しています。
これらは「不安回避価値観」と分類され、安定性や秩序を重視する特徴があります。
- 安全性:個人・家族・国家の安全を重視
- 達成:個人的成功・能力の実証を求める
- 権力:社会的地位・威信・支配力を重視
保守的価値観を重視する人々は、安定性や秩序を好み、同じ価値観を共有する環境で安心感を得ることができます。
社会の規範や制度と調和することで、心理的な安定を保ちやすくなる傾向があります。
結果として、価値観の適合性が高い環境では、より高い幸福感を体験できるのです。
性格タイプ別の適応戦略
ビッグファイブ性格理論の観点から見ると、開放性の高い人と誠実性の高い人では、適応戦略が異なることがわかります。
開放性の高い人は多様性のある環境を好み、誠実性の高い人は秩序ある環境を好む傾向があります。
MBTIタイプでも、直観型(N)と感覚型(S)で環境への適応パターンが違います。
- 開放性・直観型:価値観の多様性がある環境で幸福度向上
- 誠実性・感覚型:価値観の統一性がある環境で安心感獲得
- 情動性の高い人:安全性価値観の適合で不安軽減効果
興味深いことに、刺激価値観では全てのウェルビーイング次元で逆U字型の関係が見られました。
適度に刺激を求める人が最も幸福で、極端に刺激を求める人や全く求めない人よりも高い幸福度を示したのです。
バランスの取れた価値観が、心理的健康にとって重要であることを示唆しています。

ライター 兼 編集長:トキワエイスケ @etokiwa999
株式会社SUNBLAZE代表。子どもの頃、貧困・虐待家庭やいじめ、不登校、中退など社会問題当事者だったため、社会問題を10年間研究し自由国民社より「悪者図鑑」出版。その後も社会問題や悪者が生まれる決定要因(仕事・教育・健康・性格・遺伝・地域など)を在野で研究し、論文4本執筆(うち2本ジャーナル掲載)。社会問題の発生予測を目指している。凸凸凸凹(WAIS-Ⅳ)。







