金額換算で幸せを測ると聞くと、少し不思議に感じませんか。
テストの点や給料の額は比べられても、「どれくらい幸せか」を数字で比べるのは難しそうです。
友達が就職した、恋人ができた、部活で負けた。
そんな日常の出来事が、実はお金に直せるとしたらどうでしょうか。
従来は、幸せは人それぞれで比べられないと考えられてきました。
しかし近年の研究では、幸福度アンケートと統計分析を使えば、人生の出来事の影響を「金額換算」できる可能性が示されています。
この方法を示したのが、「A Simple Statistical Method for Measuring How Life Events Affect Happiness」という論文です。
フランス国立科学研究センター(CNRS)とウォーリック大学(University of Warwick)の研究者が発表し、2002年に改訂版が公表されました。
お金そのものよりも大切なものは何か。
この研究は、その問いに新しい視点を与えてくれます。
今回も、性格研究者で悪者図鑑著者のトキワ(@etokiwa999)が解説していきます。
※HEXACO-JP性格診断を開発しました!MBTIより科学的根拠があります。詳細は以下タップしてください。

金額換算で人生の出来事を測るという発想
幸福は本当に測れるのかという疑問
いちばん重要なのは、幸福も数字で比べられるかもしれないという点です。
これまで幸福は心の問題と考えられてきました。
しかし一方で、研究では点数で測っています。
幸福度とは、自分の気分を1から7で答える方法です。
また、心の元気さを12問で測る方法も使われました。
もしあなたが最近落ち込んでいたらどうでしょう。
「今どれくらい元気ですか」と聞かれます。
その答えがデータになるのです。
たとえば次のように集めました。
・約7500人を7年間調査
・毎年の生活の変化を記録
・収入や結婚の有無も確認
さらに、数字を比べることで影響を推定します。
その結果、幸福はある程度安定して測れました。
つまり、主観的な感情でも比較できる可能性があると示されたのです。
結婚と年収アップはどちらが幸せか
結婚の効果は年間約1470万円分と推定されました。
これは7万ポンドを円に直した額です(1ポンド=210円、2026年時点)。
かなり大きな数字に見えます。
もしあなたが独身だとします。
ある日、年収が1470万円増えるとします。
それと同じ幸福効果が結婚にあると推定されたのです。
ただし、すべての人が同じではありません。
研究は平均値を示しています。
また、計算方法はこうです。
・幸福度の変化を測る
・収入の影響も同時に測る
・両者を比べて金額に直す
そのため、実感とずれる人もいます。
とはいえ、結婚は大きな出来事であると数字でも示されたのです。
失業と離婚はどちらがつらいのか
失業の心理的負担は年間約3780万〜5796万円相当でした。
これは単なる収入減ではありません。
心のダメージを含めた推定です。
もしあなたが仕事を失ったらどうでしょう。
収入が減るだけでなく、自信も揺らぎます。
研究ではその影響が非常に大きいと出ました。
一方で、離婚の影響は小さい場合もありました。
ただし死別は年間約3570万円相当です。
整理すると次の通りです。
・失業は非常に大きい影響
・死別も深刻な影響
・離婚は結果が分かれた
つまり、失業の苦しさは想像以上だったといえます。
幸福度アンケートを使った研究方法
研究の要は、大規模な追跡調査です。
同じ人を7年間追いかけました。
これを長期調査といいます。
もしあなたが毎年質問に答える立場ならどうでしょう。
「最近眠れていますか」と聞かれます。
「将来に不安はありますか」とも問われます。
その答えが積み重なります。
具体的には次のような質問です。
・最近落ち込んだか
・物事に集中できるか
・自分に自信があるか
こうした12項目で心の状態を測りました。
この方法で、出来事の前後を比べられます。
そのため、変化をより正確に見られました。
大規模調査データから見えた傾向
健康の影響は特に大きいと示されました。
健康が「とても良い」から「普通」へ下がると、
年間約2520万〜1億332万円相当と推定されました。
もしあなたが体調を崩したらどうでしょう。
お金が増えても完全には補えません。
また、収入が上がっても幸福は限界があります。
特に裕福な国では増えにくい傾向です。
さらに、他人との比較も重要でした。
・自分の収入が高いと満足しやすい
・しかし周囲も高いと効果は弱まる
つまり、幸福は絶対値だけでは決まらないのです。
健康と比較意識が鍵だと示された研究でした。
金額換算でわかった結婚と失業の衝撃
結婚は年間約1470万円の価値
結婚の効果は年間約1470万円分と推定されました。
これは7万ポンドを210円で換算した額です。
平均的な世帯月収は約2000ポンドでした。
それと比べてもかなり大きな数字です。
もしあなたが独身だとします。
突然、毎年1470万円増えると想像してください。
それと同じ幸福効果があると示されたのです。
もちろん個人差はあります。
しかし統計では明確な上昇が見られました。
・対象は約7500人
・7年間の追跡調査
・幸福度は1から7で評価
この結果は平均値です。
それでも結婚は強い影響を持つと考えられます。
つまり、人生の転機は数字でも大きく表れたのです。
失業の心理的ダメージは年約3780万〜5796万円
失業の影響は結婚以上に大きいと出ました。
年間で約3780万〜5796万円相当です。
これは15,000〜23,000ポンドを月額で換算した結果です。
もしあなたが仕事を失ったらどうでしょう。
収入が減るだけではありません。
社会とのつながりも弱まります。
研究では、心の落ち込みが強く出ました。
単なる給料の減少では説明できません。
・雇用から失業へ変化
・幸福度が大きく低下
・金額で補うには莫大な額
つまり、仕事は収入以上の意味を持つ可能性があります。
失業の心理的重さが数字で示されたのです。
失業の苦しさは収入減以上だった
重要なのは、失業の影響は収入減だけではない点です。
給料が減ることは確かに痛手です。
しかし研究では、それ以上の影響がありました。
もしあなたが同じ収入でも、
仕事をしていない状態を想像してください。
将来への不安が強まるかもしれません。
研究ではこう示されました。
・収入の影響は一定
・失業そのものが大きな打撃
・心理面の影響が中心
つまり、仕事は生活の柱といえます。
収入以上の意味があると考えられます。
この点が研究の大きな発見でした。
離婚よりも死別のほうが影響は大きい
死別の影響は年間約3570万円相当でした。
これは約170,000ポンドを換算した額です。
かなり深刻な数字です。
もしあなたが長年連れ添った人を失ったらどうでしょう。
日常の支えが消えます。
その衝撃は計り知れません。
一方で、離婚は必ずしも大きな低下ではありませんでした。
場合によっては差が小さい結果もあります。
・死別は強いマイナス
・別居も大きな影響
・離婚は結果にばらつき
つまり、出来事の種類で影響は変わります。
人間関係の質も関係している可能性があります。
人生イベントは想像以上に大きな差がある
健康、結婚、失業の影響は非常に大きいです。
とくに健康悪化は年間1億円近い推定もありました。
数字で見ると驚きます。
もしあなたが元気だった体を崩したらどうでしょう。
お金では完全に戻せないかもしれません。
研究ではこう整理されました。
・健康の影響が最大級
・失業も非常に大きい
・結婚は大きなプラス
つまり、人生の出来事は軽くありません。
日々の変化が大きな価値を持つと示されました。
金額換算はその重さを見える形にしたのです。
金額換算で最も大きかった健康の影響
健康悪化は年約2520万〜1億332万円規模
ま健康の低下は、研究で最も大きな影響が出ました。
健康が「とても良い」から「良い」に下がると、
月約1万〜1万2000ポンドの差でした。
年に直すと約2520万〜3024万円です。
さらに「普通」まで下がると、
月約3万2000〜4万1000ポンドです。
年では約8064万〜1億332万円になります。
もしあなたが風邪ではなく、
長く続く体調不良になったらどうでしょう。
毎日の生活が重くなるはずです。
・対象は約7500人
・7年間の追跡
・健康状態を自己評価
つまり、健康は最重要の要素といえます。
数字でもその重みがはっきり示されました。
健康の価値は結婚以上だった
健康の影響は結婚より大きい可能性があります。
結婚は年約1470万円相当でした。
しかし健康悪化はそれを上回りました。
もしあなたが高収入でも、
体が思うように動かなければどうでしょう。
満足感は下がるかもしれません。
研究では次の傾向が出ました。
・健康低下は強いマイナス
・結婚は大きなプラス
・差は数千万円規模
つまり、生活の土台は健康です。
幸福は体の状態に強く左右されます。
この結果は直感とも合うかもしれません。
「健康があれば何とかなる」は統計的に正しい
昔からの言葉が、数字でも裏付けられました。
「健康第一」という考えです。
研究では健康が最大級の影響でした。
もしあなたが試験前に体調を崩したらどうでしょう。
実力を出せません。
生活の質も落ちます。
さらに、収入が増えても、
健康が悪ければ効果は弱い可能性があります。
・収入は一定の効果
・健康はそれ以上
・心理面にも影響
つまり、健康は幸福の土台です。
言い伝えは統計でも支持されたといえます。
精神的健康も強く幸福に関係する
心の元気さも重要だと示されました。
研究では12問の質問を使いました。
これを心の健康尺度といいます。
もしあなたが最近眠れないならどうでしょう。
集中できない日が続くかもしれません。
その状態が数値化されました。
質問の例は次の通りです。
・最近よく眠れたか
・自信を失っていないか
・気分が沈んでいないか
これらの点数が幸福と関係しました。
つまり、体だけでなく心も重要です。
両方が整うことで幸福が保たれる可能性があります。
お金よりも体の状態が重要だった
収入より健康の影響が大きい結果でした。
収入は幸福を上げる要因です。
しかし健康低下のほうが強い影響でした。
もしあなたが毎月収入が増えても、
長期の病気を抱えていたらどうでしょう。
満足度は下がるかもしれません。
研究では、豊かな国では、
収入増加の効果は弱い傾向でした。
・収入は一定の効果
・健康はより強い効果
・比較意識も関係
つまり、幸福は単純ではありません。
体と心の状態が鍵になると示されました。
健康の重みを再確認する結果でした。
金額換算が示した意外な事実
他人の収入が上がると幸福は下がる
自分の収入だけでなく、周囲との比較も重要でした。
研究では、他人の収入が上がると、
自分の満足度が下がる傾向が見られました。
もしあなたが年収100万円増えたとします。
しかし友人が300万円増えたらどうでしょう。
喜びは少し弱まるかもしれません。
研究では次の点が示されました。
・自分の収入はプラス効果
・周囲の収入上昇はマイナス効果
・幸福は相対的に決まる可能性
つまり、幸福は単なる金額では決まりません。
比較の視点が大きな役割を持つと示唆されました。
人は周囲との位置で感じ方が変わるのです。
みんなが昇給しても満足度は変わらない可能性
全員が10%昇給しても、幸福が増えない可能性があります。
研究ではこの仮説を検証しました。
結果は、明確に否定できませんでした。
もしあなたとクラス全員が同時に評価を上げられたら、
特別な喜びは感じにくいかもしれません。
整理するとこうなります。
・自分だけの昇給は嬉しい
・全員の昇給は影響が弱い
・比較が鍵になる
つまり、豊かさの増加だけでは足りません。
位置の変化が重要だと考えられます。
幸福は相対的である可能性が高いのです。
失業は周囲も失業中だとダメージが軽減
失業の影響は、環境で変わる可能性があります。
研究では地域の失業率も分析しました。
もしあなたが失業したとします。
周囲も多くが失業していたらどうでしょう。
自分だけの問題とは感じにくいかもしれません。
実際に、失業率が20〜25%の地域では、
失業者の幸福度は就業者に近づきました。
・個人の失業は大きなマイナス
・地域の高失業率は緩和要因
・環境が影響
つまり、状況は単独では決まりません。
周囲の状態が心理的負担を左右します。
比較と環境が作用すると示されました。
人は環境に適応する傾向がある
人は不利な状況にも慣れる可能性があります。
研究では過去の失業経験も調べました。
もしあなたが3年間の60%を失業で過ごしたら、
新たな失業の衝撃は小さいかもしれません。
実際、過去に多く失業していた人は、
現在の失業の影響が小さい結果でした。
・経験が心理的影響を弱める
・慣れが生じる可能性
・適応が働く
つまり、人は一定の回復力を持ちます。
状況に順応する力があると考えられます。
この点も重要な発見でした。
金額換算は人生の価値を見える化する方法
金額換算は、目に見えない影響を数字にします。
幸福をお金に直す方法です。
これにより出来事を比較できます。
もしあなたが進路を考えるならどうでしょう。
収入だけでなく健康や人間関係も重要です。
研究では次が明らかになりました。
・健康は最大級の影響
・失業は非常に大きな負担
・結婚は強いプラス
つまり、人生の選択には多面的な価値があります。
金額換算はその重みを示す手段です。
見えない幸福を考えるヒントになる研究でした。
最後に

ライター 兼 編集長:トキワエイスケ @etokiwa999
株式会社SUNBLAZE代表。子どもの頃、貧困・虐待家庭やいじめ、不登校、中退など社会問題当事者だったため、社会問題を10年間研究し自由国民社より「悪者図鑑」出版。その後も社会問題や悪者が生まれる決定要因(仕事・教育・健康・性格・遺伝・地域など)を在野で研究し、論文4本執筆(うち2本ジャーナル掲載)。社会問題の発生予測を目指している。凸凸凸凹(WAIS-Ⅳ)。








