マインドセットって聞いたことありますか?
「自分の能力は努力で変えられる」と信じる考え方のことです。
最近では、学校の授業や教材にも取り入れられ、「成績が上がる!」と話題になることもあります。でも、本当にそんなにすごい効果があるのでしょうか?
この記事では、実際に多くのデータを集めて分析した「To What Extent and Under Which Circumstances Are Growth Mind-Sets Important to Academic Achievement?」という研究をもとに、マインドセットがどれくらい学業に影響するのかをわかりやすく紹介します。
数字や実験結果をもとに、「本当に効くの?」「どんな人に合ってるの?」という疑問にも答えます。
みなさんにとって、考え方ひとつで未来が変わるのかを一緒に探ってみましょう。
今回も、性格研究者で悪者図鑑著者のトキワ(@etokiwa999)が解説していきます。
※以下のHEXACO-JP診断は個人向けになります。サンブレイズテストは法人向けになります。


マインドセットとは何か?
マインドセットは変われると思う気持ち
まずマインドセットとは、自分の能力が変えられるという考え方です。
この考えは、努力によって頭のよさやスキルが伸びると信じることです。
反対に、「才能は生まれつきで変わらない」と思うのは固定志向です。
つまり、同じ出来事でも考え方によって感じ方が変わります。
たとえば、失敗したときにどう感じるかがわかりやすいです。
成長志向の人は「これで学べた」と前向きにとらえます。
一方、固定志向の人は「自分には無理だ」とあきらめやすいです。
このように、マインドセットは日常の行動にも影響を与えます。
特に学校生活では、勉強や挑戦に対する気持ちに差が出やすくなります。
自分の考え方がどちらに近いかを知ることが第一歩です。
- 成長志向:努力すれば伸びると思っている
- 固定志向:能力は決まっていて変えられないと思っている
マインドセットは、行動や学び方の土台になる大切な考え方です。
成長志向と固定志向の違い
成長志向と固定志向では、物事の受け止め方が大きく異なります。
まず、成長志向の人は困難をチャンスととらえます。
反対に、固定志向の人は失敗を自分のせいと考えやすいです。
この違いは、努力や挑戦への意欲に関係しています。
たとえば、成長志向の人は苦手な教科にも取り組みます。
しかし、固定志向の人は失敗を避けて簡単なことを選びます。
その結果、成績や成長のしかたにも差が出ることがあります。
研究によると、成長志向の人は学業成績と少しだけ関係があるとされています。
相関の強さはr = 0.10で、弱いけれど意味のある数字です。
- 成長志向:失敗してもあきらめずに努力する
- 固定志向:失敗するとやる気をなくす
このように、考え方のちがいが行動や結果に影響することが分かっています。
マインドセットが注目された理由
マインドセットは、教育の現場で注目されてきました。
その理由は、考え方を変えることで成績も良くなると考えられたからです。
この考えにもとづいて、多くのプログラムが開発されました。
たとえば、学校で使える教材や動画などが作られました。
また、研究や教育に関する資金も多く使われました。
・支援団体:学校向けの介入プログラムを提供
・教材:マインドセットの変化を促す内容
・支援:研究者や教育機関にお金が使われた
これらの取り組みは、全世界の学校で取り入れられています。
とくに「努力すれば変われる」というメッセージは、多くの人に希望を与えました。
マインドセットは「教育を変える力がある」と期待されてきたのです。
誠実性や情動性との関係
マインドセットは性格特性とも関係があると考えられています。
たとえば、「誠実性」が高い人はコツコツ努力するタイプです。
成長志向の人も努力を大切にするため、似た面があります。
ただし、どちらも持っていれば必ず成績が上がるとは限りません。
一方、「情動性」が高い人は感情のゆれが大きいです。
このような人は失敗で落ち込みやすく、固定志向に近くなりがちです。
・誠実性が高い人:目標に向かって粘り強く行動する
・情動性が高い人:感情に流されやすい傾向がある
マインドセットだけで性格は語れませんが、心のあり方と深く関係しています。
マインドセットは性格的な特徴と組み合わさることで、影響が変わってくるのです。
学校現場でのマインドセットの扱い
学校ではマインドセットを育てる試みが行われてきました。
特に、生徒のやる気や学びへの意欲を引き出すために活用されます。
先生が「努力すればできるようになる」と教えることもその一つです。
実際に、マインドセットをテーマにした授業も行われています。
教材を使ったり、話し合いをしたりする方法が多いです。
また、一部の学校では「失敗は学びのチャンス」という文化づくりも進められています。
・授業での導入:教材や動画を使う
・日々の声かけ:前向きな言葉を使う
・学校文化:挑戦を応援する雰囲気を作る
しかし、全員に同じように効果があるわけではないという点も重要です。
学校での取り組みは多いですが、方法や内容には工夫が必要とされています。
マインドセットと学業成績の関係
研究では弱いけど確かなつながり
マインドセットと学業成績の関係は、とても弱いけれど存在します。
大規模な研究では、およそ36万人を対象に分析が行われました。
その結果、成長志向と成績の関係はr = 0.10という数字でした。
この数字は、少しだけ正の関係があることを意味します。
つまり、「成長志向だから成績が上がる」とまでは言えません。
ただ、まったく無関係というわけでもありません。
- 効果がなかった研究:全体の約58%
- 効果がマイナスだった研究:6%
- 効果がプラスだった研究:37%
このように、効果のばらつきが大きいのが特徴です。
そのため、マインドセットだけで成績を予測するのはむずかしいです。
成長志向は、学業の一部には関係していても、それだけで決まるわけではないのです。
相関が強いのは子どもと中高生
マインドセットの効果は、年齢によってちがいます。
研究では、子どもや中高生のほうが成績との関係が強いとわかりました。
たとえば、年齢別に見ると次のような数字が出ています。
- 子ども(小学生):r = 0.19
- 中高生:r = 0.15
- 大学生などの大人:r = 0.02
つまり、若い世代ほどマインドセットの影響を受けやすいです。
これは、小学生や中学生のほうが周囲の言葉や教育に影響されやすいからかもしれません。
一方で、大学生は自分の考え方がすでに固まり始めていることが多いです。
このため、成長志向を持っていても行動や成績にはつながりにくい可能性があります。
マインドセットは、特に発達段階の早い時期に意味を持ちやすいといえるでしょう。
大学生になると関係がほとんどない
大学生になると、マインドセットと成績の関係はほぼ見られません。
研究では、大学生や専門学生を「大人」として分析しています。
そのグループの相関係数はr = 0.02でした。
これはほとんどゼロに近い数字です。
つまり、成長志向を持っていても大学生の成績には関係がないことが分かります。
理由のひとつとして、大学生は自分で授業を選ぶことができる点があります。
成長志向の人はあえて難しい授業を選ぶ傾向があります。
そのため、結果的に成績が平均的に見える場合があるのです。
- 難しい課題に挑戦する → 成績が平均的に見える
- 簡単な課題を選ぶ → 成績が高くなる
このように、成長志向が見えにくくなる仕組みも関係しています。
大学生の学業においては、マインドセット以外の要因がより強く働くようです。
誠実な努力よりも他の要因が大きいかも
学業成績には、マインドセット以外の影響も大きいとされています。
たとえば、家庭の環境や学校の支援、学習習慣などが関係します。
どれだけ努力するか(誠実性)も大切な要素のひとつです。
しかし、研究では、誠実性やマインドセットよりも学業支援や学習環境のほうが大きな効果を持つといわれています。
さらに、勉強のやり方や教師との関係も重要です。
- 家庭の支援(親の声かけや学習環境)
- 教師との関係(信頼や期待)
- 勉強の方法(計画、復習、実践)
これらの要素と比べると、マインドセットの影響は小さめです。
努力はもちろん大事ですが、それだけでは十分な結果は得られないこともあるのです。
効果の違いは学力の測り方でも変わる
マインドセットの効果は、学力の測り方によっても変わります。
研究では、いくつかの測定方法が使われました。
たとえば、コースの試験や成績、GPA(平均成績)、標準テストなどがあります。
その結果は以下の通りです。
- 試験の点数:r = 0.08
- 成績:r = 0.13
- GPA:r = 0.08
- 標準テスト:r = 0.12
このように、測定方法ごとにばらつきが見られます。
たとえば、GPAは自分で選んだ授業の成績の平均です。
成長志向の人が難しい授業を選んだ場合、成績が下がることもあります。
結果的に、努力していても数字だけでは評価されにくくなります。
学力の測り方によって、マインドセットの効果は強く見えたり弱く見えたりするのです。
マインドセットの介入って効果あるの?
小さな効果が確認されている
成長志向を高めるための介入は、小さな効果しかありませんでした。
研究では、約5万7000人を対象に分析が行われました。
その結果、成長志向の介入を受けた人とそうでない人の成績の差はd = 0.08でした。
この数字は、ほんのわずかな違いしかないことを意味します。
つまり、「効果がある」と言い切るには物足りない数値です。
- 小さい効果:d = 0.2以下
- 中くらいの効果:d = 0.5前後
- 大きい効果:d = 0.8以上
この研究では「小さい効果」にとどまりました。
もちろん、効果がゼロではないので、まったく意味がないとは言えません。
しかし、成績を大きく伸ばすような変化は期待できないことが分かります。
マインドセットの介入には効果がありますが、それはごくわずかだというのが現実です。
86%の研究でははっきりした効果なし
成長志向の介入は、ほとんどの研究ではっきりした効果が見られませんでした。
43件の研究のうち、**86%(37件)**は効果が有意でないと報告されました。
つまり、「効果がある」と言い切れるのは、全体の**12%(5件)**だけです。
さらに、1件の研究では逆にマイナスの効果が出てしまいました。
これは、成長志向の介入がかえって成績を下げたことを意味します。
もちろん、この1件だけで全体を判断することはできません。
しかし、「どんな人にも効果がある」という考えには注意が必要です。
- 有意なプラス効果:12%
- 有意なマイナス効果:1件
- 効果なし:86%以上
これらの結果から分かるのは、マインドセットの介入は効果が出る場合と出ない場合があるということです。
全体としては、期待ほどの影響力はなかったというのが結論です。
効果があったのはたった5つの研究だけ
成績を本当に上げたといえる研究は、43件中たった5つでした。
その中には、特定の条件がそろっていたケースが多くあります。
たとえば、対象が経済的に困っている生徒だったり、個別に指導されたりしていました。
また、受け身の方法ではなく、話し合いや作文などを取り入れたタイプが多かったです。
- 経済的に困難な生徒を対象
- インタラクティブな指導(参加型)
- 教室外での実施
つまり、「どこでも誰にでも使える魔法の方法」ではありません。
むしろ、工夫が必要で、限られた条件のもとで初めて効果が出るようなものです。
効果が出た研究が少ないという事実は、教育の現場でもしっかり理解しておく必要があります。
成功した例の多くは読書型のプログラム
効果が出た介入では、読書を中心にした方法が多く使われていました。
たとえば、生徒が「能力は変えられる」という内容を読んだあと、自分の考えを書く方法があります。
こうした方法は、あまりお金がかからず、学校でも取り入れやすいです。
また、自分で読むことでじっくり考える時間が取れるのも特徴です。
他の方法と比べて効果が高かったのはこの「読書型」でした。
- 読んで考える形式
- 自分の経験に当てはめて書く活動
- 静かに学ぶ時間を持てる
このような静かな学びの時間が、考え方の変化につながった可能性があります。
派手なプログラムよりも、地道な方法のほうが効果があったことはとても興味深いです。
授業の中ではなく外でやると効果あり
マインドセットの介入は、授業の中よりも授業外で行うほうが効果的でした。
研究では、授業中に行った場合はむしろマイナスの結果が出ることもありました。
一方で、放課後や特別な時間に行った介入では小さな効果が確認されています。
これは、生徒が「強制されている」と感じるかどうかが関係しているかもしれません。
- 授業中の実施:d = -0.14(マイナス)
- 授業外の実施:d = 0.09(小さな効果)
また、授業とは別にすることで、生徒がリラックスして参加できる可能性もあります。
つまり、「いつやるか」も効果に大きく関わるのです。
マインドセットの介入は、場所やタイミングを工夫することで意味が変わってくることが分かります。
どんな人にマインドセット介入が効くの?
経済的に困っている人には効果大
経済的に厳しい家庭の生徒には、マインドセットの介入が特に効果的でした。
研究では、低い経済状況(たとえば給食の補助を受けている生徒)に対してはっきりとした成績の向上が見られました。
具体的には、低所得層の生徒に対して行われた介入では、d = 0.34という中くらいの効果が出ています。
これは、他の条件と比べてかなり高い数字です。
一方で、家庭に余裕がある中〜高所得層ではd = 0.03と、ほとんど効果が見られませんでした。
- 低所得層:明確な成績の向上が見られた
- 中〜高所得層:成績への影響はほとんどなかった
つまり、マインドセットの介入は「どんな人にでも効く」わけではなく、「必要な人に効く」ものなのです。
支援が少ない子どもたちにとっては、考え方を変えるだけでも大きな支えになるのかもしれません。
高リスクの生徒にとっては助けになる可能性
成績が悪かったり、失敗の経験がある生徒には、効果が見られる可能性があります。
研究では、学校でうまくいっていない「学業的にリスクが高い」生徒に注目しました。
たとえば、以前に授業で落第したり、自信を失っていた生徒が対象です。
このグループではd = 0.17という効果が出ています。
これは小さな効果ではありますが、まったくないわけではありません。
- 落第経験がある
- 自信を失っている
- 学校で孤立している
こうした生徒たちにとって、成長志向の考え方は再び挑戦する勇気になるかもしれません。
しかし、注意が必要です。
この効果も全体から見ると数が少なく、特別な条件が重なったときだけの可能性もあるからです。
リスクの高い生徒には「きっかけ」を与える手段のひとつとして活用できます。
中高生や大学生にはあまり効果が見えない
思春期やその後の年代では、マインドセット介入の効果はほとんど見られませんでした。
中学生や高校生、そして大学生などを対象にした研究では、どれもd = 0.08と小さな効果しか出ていません。
これは、思考や価値観がすでにある程度かたまっているからかもしれません。
また、学習の習慣や教科ごとの関心も、この年代では強く影響します。
- 中高生:すでに自分のやり方がある
- 大学生:授業を自由に選べるため成績が見えにくい
そのため、成長志向を教えても行動や成績にまで反映されにくいのです。
この年代では、マインドセットの考え方を「教える」よりも、他の学び方や支援が必要かもしれません。
誠実性が高い人には効果が出にくいかも
もともと真面目に努力できる人には、マインドセット介入の効果は小さい可能性があります。
「誠実性」とは、コツコツと計画的に取り組む性格のことです。
このような性格の人は、すでに「努力が大切」という考え方を持っています。
そのため、成長志向をあらためて教えられても、新しい刺激にならないかもしれません。
- 誠実性が高い人:もともと努力を信じている
- マインドセットとの違いが小さい
研究では、誠実性の高さと成績の関係がもともと強いとも言われています。
つまり、すでに自分のペースで頑張っている人にとっては、マインドセット介入は「すでに知っていること」の可能性が高いです。
効果が見えにくいのは、そうした理由も関係していると考えられます。
情動性が高い人が影響を受けやすいことも
気持ちが揺れやすい人には、マインドセットの考え方が支えになることがあります。
「情動性」とは、感情が大きく動いたり、不安になりやすい性格を指します。
こうした人は、失敗に強く落ち込みやすく、自信をなくすこともあります。
そのときに、「失敗は成長のチャンスだよ」という成長志向の言葉は、前向きな気持ちを取り戻す手助けになります。
- 感情が動きやすい
- ネガティブになりやすい
- 自分に自信がない
ただし、感情が動きやすい人は「気分によって反応が変わる」こともあります。
そのため、介入の内容やタイミングが合っていないと効果が出にくいこともあるのです。
うまく活用できれば、心を落ち着けて学習に向かうきっかけになります。
マインドセットのこれからと注意点
全員に効果があるわけじゃない
マインドセットの介入は、すべての人に効くわけではありません。
これまでの研究では、明確な効果が出たのは一部の人だけでした。
特に、経済的に困っている人や学業リスクの高い人に限られています。
それ以外の多くの人には、効果が小さかったか、まったくなかったという結果が出ています。
- 低所得層の生徒:効果あり(d = 0.34)
- 一般的な生徒:ほとんど効果なし
- 大学生など:ほぼ関係なし
このように、だれにでも使える万能な方法ではないのです。
効果を期待するには、対象となる人の状況をよく理解することが大切です。
マインドセットの介入は「誰にでも効く魔法の言葉」ではないことを、しっかり知っておく必要があります。
しっかりとした検証が必要
マインドセットの効果をはかるには、正しい検証方法が欠かせません。
研究では、「操作チェック」と呼ばれる確認が大事になります。
これは「本当にマインドセットが変わったか」を確かめるものです。
しかし、実際の研究ではその確認がされていない場合も多くありました。
また、操作チェックが「成功」とされた研究ほど効果が見られなかったという矛盾もあります。
- 操作チェックなし:効果あり
- 操作チェックあり:効果なし
- 操作チェック失敗:なぜか効果あり
このような結果は、「マインドセットが変わったから成績が上がった」と言い切れないことを意味します。
つまり、しっかりとした検証がなければ、本当の効果は見えてこないのです。
成功した介入でも本当に意識が変わったか不明
効果が出た介入でも、それがマインドセットの変化によるものかは分かりません。
たとえば、成績が上がったとしても、それが本当に「考え方が変わったから」かは確かめられていません。
一部の研究では、操作チェックがうまくいっていないのに、なぜか効果が出ているという結果がありました。
これは、「他の理由」で成績が良くなった可能性があることを示しています。
- 教材の内容がたまたま合っていた
- 特別な先生や状況が影響した
- 学生が「注目されている」と感じた
このように、原因がマインドセットとは限らないのです。
本当に意識が変わったのか、それが行動につながったのかは、別の視点での検証が求められます。
他の支援と組み合わせることが大切
マインドセットの考え方だけでは、効果が不十分な場合もあります。
とくに学業に困っている生徒には、他のサポートも必要です。
たとえば、学習の方法を教えたり、先生との信頼関係をつくったりすることです。
成長志向の言葉だけでは、自信を持つのが難しい場面もあります。
- 学習方法の指導(計画の立て方、復習の仕方)
- 教師や家族との安心できる関係
- 時間や場所など環境の整備
このような支援とあわせて取り組むことで、はじめてマインドセットの力が発揮されます。
単体で使うのではなく、教育全体の一部として考える必要があります。
教育政策としては慎重に考えるべき
マインドセットは教育の大きな柱にするには、まだ早いかもしれません。
たしかに注目され、多くの予算や授業で取り入れられてきました。
しかし、全体としては効果が小さく、結果もばらばらです。
研究では、「教育を変える革命」とまで言われてきましたが、数字はそれを裏づけていません。
- 平均効果:d = 0.08(小さな効果)
- 教育全体の平均介入効果:d = 0.57(大きめ)
このように、他の方法と比べてもマインドセットだけの効果は目立ちません。
限られた教育資源をどう使うかを考えるとき、慎重な判断が求められます。
マインドセットはあくまで「補助的な考え方」として扱うのが現実的です。
最後に
ここまで読んでくれてありがとうございます。この記事では、マインドセットが学業にどれくらい影響するのか、実際の研究データをもとに紹介してきました。
「努力すれば変われる」という考え方は、たしかに一部の人にはプラスになることが分かりました。
特に、経済的に苦しい人や成績に悩んでいる人には、前向きな気持ちを取り戻すきっかけになります。
でも、全員に効果があるわけではなく、工夫やサポートも必要です。「考え方を変えるだけでうまくいく」とは言いきれません。
大切なのは、自分に合ったやり方を見つけることです。マインドセットはそのヒントのひとつ。あなたの毎日の努力を支える“考え方の土台”として、うまく活用していきましょう。

ライター 兼 編集長:トキワエイスケ @etokiwa999
株式会社SUNBLAZE代表。子どもの頃、貧困・虐待家庭やいじめ、不登校、中退など社会問題当事者だったため、社会問題を10年間研究し自由国民社より「悪者図鑑」出版。その後も社会問題や悪者が生まれる決定要因(仕事・教育・健康・性格・遺伝・地域など)を在野で研究しており、社会問題の発生予測を目指している。凸凸凸凹(WAIS-Ⅳ)。