教育と年収の関係は、多くの人が関心を持つテーマです。
より高い教育を受けた人ほど、収入が高くなる傾向があると言われていますが、それは本当でしょうか。
実は、この問題を解明するために、「双子研究」と呼ばれる独特な方法を用いた研究が行われています。
「双子研究」では、遺伝的に同じ双子のデータを分析することで、教育の効果をより正確に測定することができるのです。
最近、日本でも「双子研究」を用いた大規模な調査が実施され、注目を集めています。
その研究結果は、論文「Estimating the Returns to Education Using a Sample of Twins -The case of Japan-」にまとめられています。
この記事では、その論文の内容を分かりやすく解説しながら、教育と収入の関係について考えていきます。
双子のデータを用いることで、教育の効果がどのように測定されるのか、日本の教育収益率は他の国と比べてどうなのか、といった点を見ていきましょう。
教育は本当に収入を増やすのか、その答えを探っていきます。
今回も、性格研究者で悪者図鑑著者のトキワ(@etokiwa999)が解説していきます。
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教育と年収の関係を探る「双子研究」とは?
「双子研究」で教育の収益率を推定する目的
教育を受けることで収入がどのくらい増えるのか、その効果を正確に測定することが「双子研究」の目的です。
教育年数が長い人ほど収入が高い傾向がありますが、それが教育の効果なのか、もともとの能力の差なのかは分かりません。
この問題を解決するために、「双子研究」では一卵性双生児のデータを使います。
一卵性双生児は遺伝的に同じであるため、教育年数の差が収入の差に与える影響を、より正確に測定できるのです。
こうして測定された教育の収入に対する効果は「教育の収益率」と呼ばれ、教育投資の価値を評価する重要な指標となります。
「双子研究」は、教育と収入の因果関係を明らかにするための強力な研究手法だと言えるでしょう。
「双子研究」のメリット:遺伝や家庭環境の影響を除外できる
最大のメリットは、遺伝と家庭環境の影響を取り除いて、教育の純粋な効果を測定できることです。
一卵性双生児は遺伝的に同一であり、育った家庭環境も同じです。
そのため、双子間で教育年数に差があれば、それは遺伝や家庭環境以外の要因、つまり教育の効果である可能性が高いのです。
これに対し、一般的な研究では、
- 遺伝的な能力の差
- 家庭の所得差などによる教育格差
などの影響を完全に取り除くことが難しいという問題がありました。
「双子研究」は、そうした問題を克服し、教育の因果効果により迫ることができる画期的な研究手法なのです。
教育と収入の関係を探る上で、「双子研究」は非常に有用なアプローチだと言えるでしょう。
日本の教育と年収に関する双子研究の結果
分析に使われた日本の双子データの概要
この研究では、日本全国から集めた2,360組、4,720人の双子のデータを使用しています。
その内訳は以下の通りです。
- 一卵性双生児:1,371組、2,742人
- 二卵性双生児:882組、1,764人
- 卵性不明の双生児:107組、214人
データは大規模なWebアンケートを通して収集されました。
回答者の主な属性は以下の通りです。
- 平均年齢:39歳
- 平均教育年数:14.6年
- 平均年収:409.6万円
この研究は、日本全国の双子を対象とした初の大規模調査であり、教育と収入の関係を探る上で貴重なデータとなっています。
双子データを用いることで、より信頼性の高い分析結果が得られると期待されます。
双子内の比較で教育の収益率は約4.5%
双子の中での教育年数の差と収入の差を比較すると、教育の収益率は約4.5%でした。
この分析では、遺伝と家庭環境が同じ双子の中で、教育年数だけが異なる場合の収入の差を見ています。
具体的には以下のような結果が得られています。
- 一卵性双生児の中での比較:教育の収益率は4.5%
- 二卵性双生児の中での比較:教育の収益率は5.4%
双子間の比較では一卵性双生児の方が収益率が低く、二卵性双生児では少し高くなっています。
これは、一卵性双生児は遺伝的により似ているため、教育の効果がより純粋に表れるためだと考えられます。
つまり、単純な比較で得られた10%という数字は、遺伝や家庭環境の影響で押し上げられていた可能性が高いのです。
双子内の比較によって、教育がもたらす収入増加効果は約4.5%程度であることが明らかになりました。
測定誤差を補正すると教育の収益率は約9.3%
双子内の比較で得られた4.5%という数字は、測定誤差の影響で過小評価されている可能性があります。
そこで、高校の偏差値を用いて測定誤差を補正したところ、教育の収益率は9.3%になりました。
一卵性双生児のデータを用いた分析の結果は以下の通りです。
- 測定誤差を補正する前:教育の収益率は4.5%
- 測定誤差を補正した後:教育の収益率は9.3%
測定誤差の補正によって、教育の収益率は当初の推定値の約2倍に跳ね上がっています。
これは、双子内の比較では測定誤差の影響が大きくなるためだと考えられます。
測定誤差を適切に補正することで、教育の収益率はより正確に推定できるのです。
以上の結果から、日本における教育の収益率は約9%程度であると結論づけられます。
日本では教育年数が長いほど年収が高くなる傾向が確認された
この研究から、日本では教育年数が長いほど年収が高くなる傾向があることが確認されました。
教育年数が1年長いと、年収が約9%増加するという結果が得られたのです。
これは、日本社会において教育が収入を増やす上で重要な役割を果たしていることを示唆しています。
ただし、この結果は教育の因果効果を完全に証明したわけではありません。
- 教育年数の差が収入の差を生んでいるのか
- 収入を得られる人が教育を長く受けているのか
因果関係の方向性についてはさらなる検討が必要でしょう。
また、教育の収益率は평균値であり、個人差も大きいと考えられます。
教育を受けることが必ずしも高収入につながるわけではないことにも留意が必要です。
この研究は、日本における教育と収入の関係について、新たなデータを提供した点で意義があると言えるでしょう。
中国の教育と年収に関する研究と比較
中国では教育の収益率が3.8%と日本より低い
同様の「双子研究」が中国でも行われていますが、そこでは教育の収益率が3.8%と推定されています。
日本の分析結果と比べると、中国での教育の収益率は半分以下の水準にとどまっているのです。
中国における「双子研究」の主な結果は以下の通りです。
- 単純な比較:教育の収益率は8.4%
- 双子内の比較:教育の収益率は2.7%
- 測定誤差を補正した分析:教育の収益率は3.8%
日本と同様、中国でも双子内の比較で教育の収益率は大きく低下しています。
しかし、測定誤差を補正しても3.8%にとどまっており、日本の9.3%を大きく下回っているのです。
この結果は、中国における教育の収益率が日本と比べてかなり低いことを示唆しています。
教育が収入の増加に与える影響は、日本ほど大きくないと考えられます。
日本と中国で教育の収益率に差が生じる要因については、さらなる検討が必要だと言えるでしょう。
中国と日本は受験重視の教育制度が似ているのになぜ違う?
中国と日本は、ともに受験重視の教育制度を持つ点で共通しています。
しかし、「双子研究」の結果を見ると、教育の収益率には大きな差があることが分かります。
- 中国:教育の収益率は3.8%
- 日本:教育の収益率は9.3%
なぜ、似たような教育制度を持つ国の間で、このような違いが生じるのでしょうか。
その理由としては、以下のような点が考えられます。
- 労働市場の構造の違い
- 教育の質の違い
- 社会的な評価の違い
中国と日本では、教育を経済的に評価する仕組みが異なっている可能性があるのです。
教育をあまり受けていなくても、やる気や地頭によってチャンスをつかみ、年収を上げているのかもしれません。
また、教育制度の詳細な違いが、教育の収益率に影響を与えているのかもしれません。
教育内容と仕事内容が一致していれば、教育を受ければ受けただけ年収が上がるでしょう。しかし、違う場合は年収に影響しません。
中国と日本の比較は、教育の収益率を左右する要因を考える上で示唆に富んでいます。
大学入試で筆記試験以外の要素を重視し始めた日本
日本の大学入試では、筆記試験以外の要素を評価する動きが広がっています。
具体的には、以下のような入試方法が導入されつつあります。
- AO入試:学力試験だけでなく、面接や小論文、活動実績なども評価する
- 推薦入試:高校での成績や活動、人物評価なども含めて総合的に判断する
こうした動きは、受験勉強だけでは測れない能力を評価しようとする試みだと言えます。
これに対し、中国の大学入試は依然として筆記試験中心だと指摘されています。
日本の大学入試の変化は、教育の収益率を高める要因の1つかもしれません。
筆記試験以外の能力が評価されるようになることで、教育を通じて収入に結びつくスキルが身につきやすくなると考えられるからです。
ただし、これはあくまで可能性の1つに過ぎません。
入試制度の違いが教育の収益率に与える影響については、さらなる検証が必要でしょう。
大学入試のあり方は、教育の経済的な価値を左右する重要な要素の1つだと言えそうです。
統治の質の違いが教育の収益率に影響している可能性
教育の収益率の違いには、統治の質が関係している可能性があります。
世界銀行が発表している「世界ガバナンス指標」を見ると、日本と中国の間には大きな差があることが分かります。
- 日本:政治の安定性、法の支配、腐敗の制御などで高い評価を得ている
- 中国:政府の有効性、規制の質、腐敗の制御などで日本より低い評価となっている
つまり、日本の方が統治の質が高く、国民の権利がより尊重される傾向にあるのです。
こうした違いが、教育の収益率に影響を与えているのかもしれません。
統治の質が高い国では、教育を通じて身につけた能力が、労働市場で適切に評価されやすいと考えられるからです。
また、汚職が少なく、ル








