アプリを使って性格を変えられるとしたら、あなたは試してみたいですか。
性格は生まれつきのものだと思われがちですが、最新の研究は違う可能性を示しています。
今回紹介する「Personality Change Through a Digital-Coaching Intervention」は、スマホのアプリを使った3か月の取り組みで、人の性格特性にどんな変化が起きるのかを詳しく調べた論文です。
外向性や誠実性、情動性といった性格特性が、どのように変わるのかが明らかになりました。
この記事では、研究の方法や結果を分かりやすく紹介しながら、アプリを活用した性格変化のポイントを解説します。
自分をもっと成長させたいと考えている人に役立つ内容です。
今回も、性格研究者で悪者図鑑著者のトキワ(@etokiwa999)が解説していきます。
※以下のHEXACO-JP診断は個人向けになります。サンブレイズテストは法人向けになります。


アプリで性格特性は変わるのか
外向性を高める変化の特徴
外向性は人との関わりや活動性を表す性格特性です。
この研究では、3か月間のアプリ利用で外向性の一部が大きく向上しました。
特に「社交性」が大きく上がり、効果量はd=0.89から1.00と高い数値です。
外向性は3つの下位要素で構成されます。
- 社交性:人との交流を楽しむ傾向
- 自己主張性:自分の意見をはっきり伝える力
- 活動性:日常でのエネルギー量や行動の活発さ
しかし、変化は均一ではありませんでした。
自己主張性や活動性にはほとんど向上が見られませんでした。
これは、介入が特定の要素に特に効果的である可能性を示します。
まとめると、外向性全体ではなく社交性に集中して変化が起きたといえます。
誠実性を高める変化の特徴
誠実性は計画性や責任感を持って行動する傾向です。
アプリ利用者のうち、この特性を上げたいと望んだ人では、特定の下位要素が大きく改善しました。
特に「組織立て」と「生産性」が向上し、効果量は組織立てがd=0.42から0.49、生産性がd=0.64から0.93でした。
- 組織立て:生活や仕事を整然と管理する力
- 生産性:効率よく多くのことを成し遂げる力
一方で「責任感」はほとんど変化がありませんでした。
つまり、誠実性全体が上がったのではなく、特定の部分だけが成長しました。
まとめると、日常の整理整頓や効率性は伸びても、責任感の変化は限定的でした。
情動性を下げる変化の特徴
情動性は不安や落ち込みやすさを示す性格特性です。
この研究では、情動性の中でも「不安」が大きく低下しました。
効果量はd=−0.57から−0.89と、心理的改善としては大きい値です。
- 不安:心配や緊張を感じやすい傾向
- 抑うつ:落ち込みやすさ
- 情緒不安定性:感情の揺れやすさ
全体としても低下が見られましたが、不安の減少が最も顕著でした。
これは日常での安心感や心の落ち着きが増したことを示します。
まとめとして、不安の減少が情動性全体の改善を引き起こしました。
変化が特定の部分に集中する理由
性格特性は複数の下位要素から成り立っています。
このため、介入の効果は全体ではなく特定部分に集中することがあります。
研究では、外向性・誠実性・情動性のいずれも一部の要素だけが強く変化しました。
考えられる理由は次の通りです。
- 介入内容が特定の行動や思考に直結している
- 個人の生活環境が特定の変化を後押ししている
- 全ての要素が同じように変わるわけではない
こうした偏りは、効果的な介入設計にもつながります。
まとめとして、性格変化は一律ではなく、重点的に変化する部分があることが確認されました。
全体が均等に変わらないことの意味
全体が同じように変わらないことは重要な発見です。
従来は平均値の変化だけで性格変化を判断することが多くありました。
しかしこの研究は、下位要素ごとに効果が異なることを示しました。
- 外向性では社交性が変化しやすい
- 誠実性では組織立てと生産性が変化
- 情動性では不安が大きく減少
この視点を持つことで、介入の設計や効果測定がより精密になります。
まとめると、性格変化の分析には要素ごとの視点が欠かせないことが明らかになりました。
アプリを使った3か月間の取り組み
チャットで毎日サポートする仕組み
このアプリは毎日のチャット形式で利用者を支えます。
チャットは人との会話のように進み、自然なやり取りができます。
毎日少しずつ性格特性に関する行動や考え方を促します。
- 目標に沿った質問
- 励ましやポジティブなフィードバック
- 習慣化のための提案
こうしたやり取りにより、利用者は行動を継続しやすくなります。
さらに、自分の変化を意識できる点も特徴です。
まとめると、日々のやり取りが継続と変化の土台になっています。
自分が変えたい性格特性を選べる方法
利用者は最初に変えたい性格特性を選びます。
外向性、誠実性、情動性などから一つを選択します。
方向も「増やす」か「減らす」かを設定できます。
- 外向性を高めたい
- 誠実性を高めたい
- 情動性を下げたい
この選択は介入の内容に直結します。
目標が明確なため、行動も一貫しやすくなります。
まとめとして、明確な自己目標が効果的な変化を促します。
行動を試して定着させる流れ
アプリは行動を促し、それを生活に組み込みます。
まずは小さな行動を試すことから始めます。
その後、繰り返し行い習慣として定着させます。
- 新しい交流の場に行く
- 生活を整理整頓する
- 不安を和らげる方法を試す
こうした行動は日常に溶け込みやすい形で提案されます。
まとめると、小さな行動から始めることで変化が長続きします。
ポジティブな気持ちを引き出す工夫
前向きな気持ちは行動変化を後押しします。
アプリは利用者の良い面や成功を強調します。
小さな達成も認めることで自信が高まります。
- 過去の成功体験を思い出させる
- 成果を言葉で褒める
- 進歩を可視化する
これにより、続けたい気持ちが維持されます。
まとめると、前向きな感情が行動の持続につながります。
内省を促すための工夫
内省とは自分の考えや行動を振り返ることです。
アプリは質問や提案でこの作業を助けます。
深く考えることで自分の変化に気づきやすくなります。
- 何がうまくいったか考える
- 次に試したいことを整理する
- 気持ちの変化を記録する
こうした内省は変化の定着に重要です。
まとめると、内省が自分の成長を実感させます。
アプリで外向性がどう変わったか
社交性が大きく上がった理由
社交性は人と交流することを楽しむ傾向です。
この研究では、アプリ利用で社交性が大きく向上しました。
効果量はd=0.89から1.00と非常に高い値でした。
- 人と話す機会を増やす課題
- 新しい人との交流を促す提案
- ポジティブな経験の共有
こうした活動が社交性を高めました。
まとめると、日常的な交流機会が増えることで社交性が伸びました。
自己主張はあまり変わらなかった理由
自己主張性は自分の意見をはっきり伝える力です。
アプリ利用後もこの要素はほとんど変わりませんでした。
効果量はd=0.12から0.15と小さい値にとどまりました。
- 会話の中心になる練習が少ない
- 意見を表明する課題が少ない
- 社交性中心の活動が多かった
こうした要因で自己主張性の変化は限定的でした。
まとめると、介入内容が自己主張を強く刺激しなかったといえます。
活動的になる変化が見られなかった点
活動性はエネルギー量や日常の行動の活発さです。
研究では、活動性の変化はほぼ見られませんでした。
効果量はd=0.20から0.17で小さい値でした。
- 運動や外出を増やす課題が少ない
- 社交性向上が主な介入内容
- 身体的活発さに直結しない活動が多い
こうした点が活動性の変化を妨げました。
まとめとして、活動性を上げるには別の工夫が必要です。
外向性の変化が一様でないこと
外向性は3つの下位要素で構成されます。
しかし今回の変化はその全てに均等ではありませんでした。
社交性は大きく伸びた一方で、自己主張性や活動性はほぼ変化なしです。
- 特定の要素だけ変化する傾向
- 平均値だけ見ると誤解の可能性
- 介入内容の偏りが影響
このことから、外向性全体を変えるには複数の要素を刺激する必要があります。
まとめると、外向性は部分的にしか変わらない場合があります。
他者から見た外向性の変化
他者評価では自己主張性にのみ変化がありました。
効果量はd=0.40と中程度の向上が見られました。
社交性や活動性は他者からの評価では変化していません。
- 他者が観察しやすい行動の影響
- 内面的変化は伝わりにくい
- 短期間では印象が変わりにくい
こうした理由が考えられます。
まとめると、外向性の変化は自己評価と他者評価で異なります。
アプリで誠実性がどう変わったか
組織立てが向上した変化
組織立ては物事を整理し計画的に進める力です。
アプリ利用後、この要素が大きく向上しました。
効果量はd=0.42から0.49で中程度の改善です。
- 予定を立てる練習
- 部屋や作業スペースの整理
- 優先順位をつける方法の提案
これらが整理整頓の習慣化につながりました。
まとめとして、日々の小さな整理が計画性の向上を支えました。
生産性が高まった変化
生産性は効率よく成果を出す力です。
アプリ利用で生産性も大きく伸びました。
効果量はd=0.64から0.93と高い改善です。
- 作業の集中時間を設定
- 無駄な行動を減らす提案
- 達成感を味わえる課題設定
これにより、効率の良い行動習慣が定着しました。
まとめると、行動の最適化が成果の増加につながりました。
責任感があまり変わらなかった点
責任感は約束や義務を守る姿勢です。
研究ではこの要素の変化は小さく、有意ではありませんでした。
- 行動内容が直接責任感に関係しない
- 短期間で変化しにくい特性
- 他の要素より刺激が少ない
これらの理由で効果は限定的でした。
まとめとして、責任感にはより長期的な働きかけが必要です。
一部の項目だけ変わったこと
同じ要素でも項目ごとの変化は異なります。
例えば責任感の中でも「落ち着いていて頼れる」は向上しました。
一方で「不注意」や「無責任」の改善は見られませんでした。
- 行動改善が特定の場面に影響
- 項目ごとに変化のしやすさが異なる
- 課題内容との相性の差
このことから、細かい視点での評価が重要とわかります。
まとめると、同じ特性でも変化する部分としない部分があります。
他の特性への広がりの可能性
誠実性を目標にした人でも他の特性が変化しました。
これはスピルオーバー効果と呼ばれます。
- 外向性の一部が向上
- 情動性が軽減
- 自己効力感の上昇
こうした広がりは、介入が複数の特性に影響することを示します。
まとめると、一つの特性を鍛えることで他の面も変わる可能性があります。
アプリで情動性がどう変わったか
不安が大きく下がった変化
不安は心配や緊張を感じやすい傾向です。
アプリ利用でこの要素が大きく改善しました。
効果量はd=−0.57から−0.89と大きな低下です。
- リラックスできる行動の提案
- 自分を安心させる習慣の形成
- 小さな成功体験を積む機会
これらが不安を和らげる要因となりました。
まとめると、日常での安心感が増えたことで不安が減少しました。
抑うつ感の改善の様子
抑うつは気分の落ち込みや無気力を示します。
アプリ利用で一部の項目が改善しました。
特に「挫折後も楽観的」や「自分に安心感がある」などが向上しました。
- 前向きな視点を持つ練習
- 自己受容を高める活動
- 否定的感情を減らす習慣
ただし「悲しい気持ちの頻度」には大きな変化がありませんでした。
まとめとして、思考面での改善が先に進んだと考えられます。
情緒の安定が見られた理由
情緒不安定性は感情の揺れやすさを示します。
研究ではこの要素も全体的に低下しました。
- 感情を振り返る習慣
- 冷静に対処する方法の学習
- 気持ちを落ち着かせる時間の確保
これらが情緒を安定させる助けとなりました。
まとめると、感情管理のスキルが安定感の向上につながりました。
他者評価での情動性の変化
他者から見た情動性の変化は明確ではありませんでした。
自己報告では改善が見られた一方、他者報告では差が小さいです。
- 内面の変化は観察されにくい
- 他者は短期間で印象を変えにくい
- 行動として現れるまで時間がかかる
この違いは評価方法の性質にも関係します。
まとめとして、外から見える変化には時間が必要です。
項目ごとの変化の違い
情動性の中でも項目によって変化の度合いは異なります。
不安ではほぼ全ての項目が改善しましたが、抑うつや情緒不安定性では一部のみの改善でした。
- 効果が出やすい項目と出にくい項目
- 行動介入との相性
- 個人差による影響
この結果は、性格特性の評価に細分化が必要な理由を示します。
まとめると、全体の改善だけでなく細かい部分の変化を見ることが重要です。
最後に
今回紹介した研究は、アプリを使った3か月の取り組みで性格特性が変わる可能性を示しました。
外向性では社交性、誠実性では組織立てや生産性、情動性では不安の低下が特に目立ちました。
しかし、すべての要素が同じように変化するわけではなく、特定の部分だけが強く改善する傾向が見られました。
これは、介入内容や生活環境との相性によって、効果が出やすい部分とそうでない部分があることを意味します。
また、自分の変化は自分では実感できても、他者からはすぐに気づかれないこともあります。
重要なのは、平均値だけでなく細かい要素ごとの変化を見ることです。
アプリを活用することで、自分の弱点を重点的に伸ばし、望む方向へ少しずつ近づけます。
性格は固定されたものではなく、工夫次第で成長できるものだと、この研究は教えてくれます。

ライター 兼 編集長:トキワエイスケ @etokiwa999
株式会社SUNBLAZE代表。子どもの頃、貧困・虐待家庭やいじめ、不登校、中退など社会問題当事者だったため、社会問題を10年間研究し自由国民社より「悪者図鑑」出版。その後も社会問題や悪者が生まれる決定要因(仕事・教育・健康・性格・遺伝・地域など)を在野で研究し、論文3本執筆(うち1本ジャーナル掲載)。社会問題の発生予測を目指している。凸凸凸凹(WAIS-Ⅳ)。