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グリット(Grit)やり抜く力を子どもが身につける方法!

    自制心、グリット

    グリットという言葉を聞いたことがあるでしょうか。

    アメリカの心理学者アンジェラ・ダックワース博士が提唱した概念で、「情熱と粘り強さ」を意味します。

    最近の研究で、このグリットが学業成績や人生の成功に大きな影響を与えることが分かってきました。

    特に、学校の環境づくりがグリットの育成に重要だと指摘されています。

    そんな中、興味深い研究結果が発表されました。

    Fostering Grit: Perceived School Goal-Structure Predicts Growth in Grit and Grades」というタイトルの論文です。

    この研究では、学校の目標の在り方が生徒のグリットにどのように影響するのかを調べました。

    果たして、どのような学校環境がグリットを高めるのでしょうか。

    また、グリットを伸ばすことで、私たちの学びや人生はどう変わるのでしょうか。

    今回も、性格研究者で悪者図鑑著者のトキワ(@etokiwa999)が解説していきます。

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    HEXACO性格診断

    グリットとは?熱意と粘り強さを表す新しい概念

    グリットの定義 – 情熱と努力の持続性

    グリットとは、長期的な目標に対する情熱と粘り強さを表す概念です。
    アメリカの心理学者アンジェラ・ダックワース博士が提唱しました。
    グリットは、目標達成に向けて努力を持続する力だと言えます。
    興味や熱意を長く保ち続ける側面と、困難があっても諦めずに頑張り抜く側面の2つがあります。
    つまり、グリットとは長期的な目標の追求に必要不可欠な資質と言えるでしょう。

    グリットは以下の2つの要素から成り立っています。

    • 興味・情熱の一貫性(Consistency of Interest)
    • 努力の粘り強さ(Perseverance of Effort)

    前者は目標に対する深い興味を持ち続ける力、後者は障害にぶつかっても努力を続ける力です。
    この2つが組み合わさることで、人はグリットを発揮し、長期的な目標の達成に近づくことができるのです。

    グリットはIQとは関係ない

    グリットは、知能指数(IQ)とは関連がないことが分かっています。
    つまり、頭の良し悪しはグリットの高さとは関係がないということです。
    むしろ、グリットは IQよりも学業成績や仕事での成功をよく予測するとされています。
    ダックワース博士の研究では、IQが同程度の人でも、グリットが高い人ほど様々な場面で優れた成果を収めていました。
    これは、グリットがIQのような生まれつきの能力ではなく、後天的に伸ばせる資質だからだと考えられています。

    グリットとIQの違いは以下の通りです。

    • グリット:努力と情熱の持続性に関わる性格的な資質
    • IQ:言語理解や論理的思考力など、認知的な能力

    ダックワース博士は、「グリットこそが人生の成功を決める最大の要因だ」と主張しています。
    知識や技能よりも、それを長期的に活用する情熱と粘り強さが重要だというわけです。

    グリットの高い人の特徴

    グリットの高い人は、以下のような特徴を持っています。

    • 長期的な目標達成に焦点を当てている
    • 失敗してもすぐに立ち直り、努力を継続できる
    • 困難な状況でもあきらめずに粘り強く取り組める
    • 目標に向けた深い興味と情熱を持ち続けられる

    また、グリットが高い人は以下のような行動傾向があることも分かっています。

    • 自分の能力を伸ばすために努力を惜しまない
    • 練習や努力を通じて着実に力を伸ばしていく
    • フィードバックを積極的に求め、自分の成長に役立てる
    • 目標達成のためなら、苦手なことにも挑戦する

    つまり、グリットが高い人は努力家であり、成長志向が強いと言えます。
    自分の能力を固定的にとらえるのではなく、伸ばしていこうとする柔軟な考え方(Growth Mindset)を持っているのです。
    このようなグリットの高い人の特徴は、年齢や立場に関わらず、誰にでも当てはまるでしょう。
    学生から社会人まで、グリットを意識的に高めることが、長期的な目標達成に役立つはずです。
    日々の生活や仕事の中で、グリットの視点を取り入れてみるのも良いかもしれません。

    グリットが学業成績や人生の成功に与える影響

    グリットと学業成績の関係

    学業成績と密接に関係することが明らかになっています。
    グリットが高い生徒ほど、テストの点数や GPA(Grade Point Average)が良い傾向にあります。
    例えば、ダックワース博士らの研究では、グリットが高い生徒は中学校の成績が良く、高校や大学でも優秀な成績を収めていました。
    また、勉強時間が同じ生徒でも、グリットが高い生徒の方が成績が良かったのです。
    この結果は、グリットが勉強への取り組み方に影響を与えていることを示唆しています。

    グリットと学業成績の関係は以下のように説明できます。

    • グリットが高い生徒は、勉強に対する興味や意欲を長く保ち続けられる
    • 勉強が難しくなったり、失敗してもあきらめずに頑張り続けられる
    • 長期的な目標(良い成績を取るなど)に向けて計画的に勉強に取り組める

    つまり、グリットの高さが学習への積極的な姿勢を生み、それが良い成績につながるのです。
    知識やスキルを身につけるためには、継続的な努力が欠かせません。
    その努力を支えるのが、グリットなのです。
    学力向上を目指す教育現場では、生徒のグリットを高める工夫が重要だと言えるでしょう。

    グリットが予測する人生のアウトカム

    グリットは、学業成績だけでなく、人生の様々な側面で成功を予測することが分かっています。
    例えば、グリットが高い人ほど、仕事や趣味、対人関係などで優れた成果を挙げる傾向があります。
    ダックワース博士らの研究では、以下のような結果が報告されています。

    • グリットが高い営業担当者ほど、販売実績が良い
    • グリットが高い教師ほど、生徒の学力向上に貢献している
    • グリットが高い軍人ほど、厳しい訓練を乗り越え、任務を完遂できる

    また、グリットは人生の満足度とも関連することが示唆されています。
    目標に向けて粘り強く努力することで、達成感や自己効力感が高まるのでしょう。
    このように、グリットは学業面だけでなく、人生全般において成功や幸福感に寄与すると考えられます。

    人生の様々な場面で成功するためには、以下のようなグリットの力が必要です。

    • 困難な状況でも諦めずに努力し続ける力
    • 自分の目標や興味を長期的に追求する力
    • 失敗を恐れずに新しいことにチャレンジする力

    グリットを高めることは、よりよい人生を送るためのスキルを身につけることだと言えるでしょう。
    学校教育でグリットの重要性を教えることは、子供たちの将来の成功を後押しすることにつながります。
    また、大人になってからもグリットを意識的に鍛えることで、人生をより豊かにすることができるはずです。

    グリットを測定する方法

    グリットを測定するためには、質問紙やテストを用いるのが一般的です。
    代表的なのは、ダックワース博士らが開発した「Grit尺度」です。
    この尺度は、以下の2つの側面からグリットを評価します。

    1. 興味の一貫性(Consistency of Interest)
    2. 努力の粘り強さ(Perseverance of Effort)

    具体的には、以下のような質問項目に対して、自分がどの程度当てはまるかを5段階で回答します。

    • 新しいアイデアや計画を思いつくと、以前の計画から注意がそれる
    • 私が始めたことは、必ずやり遂げる
    • 目標の達成に何ヶ月もかかるような問題に取り組み続けるのは難しい
    • 私は勤勉である

    このような質問への回答を点数化し、合計点を算出することでグリットの高さを測定するのです。
    Grit尺度は信頼性と妥当性が確認されており、世界中で活用されています。

    グリットを測る他の方法としては、以下のようなものがあります。

    • 行動観察:実際の行動や成果から、グリットの高さを評価する
    • 他者評価:周囲の人(教師や上司など)に、本人のグリットについて評価してもらう

    これらの方法を組み合わせることで、より多面的にグリットをとらえることができるでしょう。

    ※グリットはビッグファイブやHEXACOモデルの誠実性とも関連しています。

    学校の目標構造がグリットに与える影響

    学校の目標構造とは?習熟目標と遂行目標

    学校の目標構造とは、学校や教師が生徒に求める目標の在り方を表す概念です。
    心理学者のキャロル・ドゥエックらによって提唱されました。
    目標構造は、大きく「習熟目標(Mastery Goal)」と「遂行目標(Performance Goal)」の2つに分けられます。
    それぞれの目標は、以下のような特徴を持っています。

    • 習熟目標:新しい知識やスキルの習得、理解の深化、個人の成長を重視する
    • 遂行目標:他者と比較した成績や能力の優劣、競争での勝利を重視する

    学校や教師が習熟目標を強調する場合、生徒は自分の興味や理解に基づいて学習に取り組むようになります。
    一方、遂行目標が強調される場合、生徒は他者との比較や競争に関心が向きがちです。
    つまり、学校の目標構造によって、生徒の学習への動機づけや取り組み方が異なってくるのです。

    研究によると、学校の目標構造は生徒の様々な側面に影響を与えることが分かっています。
    例えば、習熟目標を重視する学校の生徒は、以下のような特徴があると報告されています。

    • 学習内容への興味や理解が深まる
    • 失敗を恐れずに挑戦し、粘り強く取り組める
    • 仲間と協力して学ぶことを楽しむ

    一方、遂行目標を重視する学校の生徒は、学習への不安が高く、失敗を恐れて挑戦を避ける傾向にあります。
    このように、学校がどのような目標を大切にするかによって、生徒の学習観や行動が大きく左右されるのです。

    習熟目標構造の学校とグリットの関係

    習熟目標を重視する学校は、生徒のグリットを高める効果があることが明らかになっています。
    こういった学校では、個人の成長や上達を大切にする雰囲気があります。
    習熟目標の学校がグリットを高めるメカニズムは、以下のように考えられます。

    1. 生徒は自分の興味や目標に基づいて学習に取り組める
    2. 努力の過程が評価されるため、粘り強く頑張ることの大切さを学べる
    3. 失敗を恐れずにチャレンジできる安心感がある
    4. 仲間と協力して学ぶ楽しさを通して、学習への興味を持続できる

    このように、習熟目標の環境は生徒の内発的な動機づけを高め、グリット向上につながるのです。
    実際、習熟目標の学校では、生徒の学習意欲や学業成績が高いことが報告されています。
    また、グリットが高まることで、長期的な目標達成や人生での成功にもつながると考えられます。

    学校教育において、習熟目標を重視することは非常に重要だと言えるでしょう。
    そのためには、以下のような工夫が求められます。

    • 生徒の興味や関心を引き出す多様な学習活動を用意する
    • 努力の過程を丁寧に見取り、適切にフィードバックする
    • 失敗を恐れずにチャレンジできる心理的安全性を確保する
    • 協同的な学習の機会を多く設ける

    このような習熟目標の視点を取り入れることで、生徒のグリットを効果的に育成できるはずです。
    グリットの力を身につけた生徒は、学校生活だけでなく、将来の様々な場面で活躍できるでしょう。

    遂行目標構造の学校とグリットの関係

    遂行目標を重視する学校は、生徒のグリットにマイナスの影響を与える可能性があります。
    こういった学校では、競争や他者比較が重視され、テストの点数や順位が過度に強調されがちです。

    遂行目標の学校がグリットを低下させるメカニズムは、以下のように考えられます。

    1. 他者との比較に意識が向かい、自分の興味や目標が見失われる
    2. 失敗が許されない雰囲気の中で、粘り強く努力することが難しくなる
    3. テストの点数だけが重視され、努力の過程が評価されない
    4. 過度な競争意識から、仲間と協力して学ぶ楽しさが損なわれる

    このように、遂行目標の環境は生徒の内発的な動機づけを阻害し、グリットの発達を妨げるのです。

    実際、遂行目標の学校では、生徒のストレスや不安が高く、学習意欲が低下することが報告されています。

    ただし、遂行目標の影響は一様ではなく、個人差があることにも留意が必要です。 例えば、もともと競争心が強く、自信のある生徒は、遂行目標の環境でもグリットを発揮できるかもしれません。

    学校教育では、遂行目標よりも習熟目標を重視することが大切だと考えられます。 ただし、現実には両方の目標のバランスを取ることも必要でしょう。 例えば、以下のような工夫が考えられます。

    • テストや成績は必要最小限にとどめ、過度に強調しない
    • 個人の努力や進歩を評価し、他者比較を控える
    • 競争より協同を重視し、生徒同士の支え合いを大切にする

    生徒のグリットを高める学校環境とは

    生徒のグリットを効果的に育むには、学校全体で習熟目標を重視する環境を作ることが大切です。
    習熟目標の学校では、生徒の興味や挑戦を大切にし、個人の成長を支援する文化があります。
    ダックワース博士らの研究から、グリットを高める学校環境には以下のような特徴があることが分かっています。

    • 生徒の自主性や興味を尊重し、主体的な学びを促す
    • 努力の過程を丁寧に見取り、建設的なフィードバックを与える
    • 失敗を恐れずにチャレンジできる心理的安全性がある
    • 協同的な学習活動を多く取り入れ、生徒同士の学び合いを大切にする
    • 教師自身がグリットのロールモデルとなり、粘り強く取り組む姿勢を示す

    このような習熟目標の環境づくりには、教師だけでなく、学校管理職やスタッフ、保護者の理解と協力が不可欠です。

    また、グリットを育む具体的な取り組みとしては、以下のようなものが考えられます。

    • 生徒が自分の目標を設定し、進捗を振り返る機会を設ける
    • 間違いを恐れずに質問や発言ができる授業づくりを心がける
    • 失敗から学ぶことの大切さを伝え、粘り強く取り組む姿勢を称賛する
    • 協同的な問題解決場面を多く設定し、生徒同士の対話を促す

    このように、日々の学校生活の中で習熟目標を意識した働きかけを積み重ねることで、生徒のグリットは着実に育まれていくはずです。

    学校でグリットを育てる具体的な方法

    多様な課題を用意する

    生徒のグリットを育むためには、多様な課題を用意することが大切です。
    様々なタイプの課題に取り組むことで、生徒は柔軟な思考力と粘り強さを身につけることができるからです。

    課題は、生徒の興味や関心に合ったものであることが理想的です。 そうすることで、生徒は自分なりの目標を見出し、意欲的に取り組むことができるでしょう。

    具体的には、以下のような課題が考えられます。

    • 身近な問題を解決するプロジェクト学習
    • 自分の興味を深められる探究型の学習
    • 体験を通して学ぶアクティブラーニング
    • 他者と協力して行うグループワーク

    このように、知識の暗記だけでなく、思考力や表現力、協働力などを育む課題を多く取り入れることが重要です。

    課題の難易度にも配慮し、生徒が挑戦しがいを感じられるようにすることも大切でしょう。 失敗してもあきらめずに粘り強くトライできる課題設定を心がける必要があります。

    また、課題に取り組む過程では、適切な支援やフィードバックを与えることが欠かせません。

    生徒の努力を認め、適切なアドバイスを与えることで、生徒は自信を持って課題に向き合えるようになるのです。

    教師は生徒と信頼関係を築き、一人ひとりの成長を支えることが、教師に求められる重要な役割だと言えるでしょう。

    生徒を意思決定プロセスに巻き込む

    生徒のグリットを育むには、生徒自身を意思決定のプロセスに積極的に巻き込むことが大切です。

    自分で考え、選択し、行動する経験を通して、生徒は自律性と責任感を身につけることができるからです。 例えば、学習内容や方法、ルールづくりなどに生徒を参加させることが考えられます。

    そうすることで、生徒は自分事として学びに向き合い、粘り強く取り組む姿勢を育むことができるでしょう。

    具体的には、以下のような取り組みが考えられます。

    • 生徒と一緒に学習の目標や計画を立てる
    • 生徒同士で課題の進め方を話し合わせる
    • 生徒主体のプロジェクトを企画・実施する
    • クラスのルールを生徒と一緒に決める

    このように、生徒の意見を尊重し、主体性を引き出すことが重要です。 もちろん、全てを生徒に任せるのではなく、教師が適切にサポートすることも必要不可欠です。

    生徒の発達段階に合わせて、意思決定の機会を徐々に増やしていくことが大切でしょう。

    生徒が自分で考え、決めたことは、強い当事者意識を生みます。 自分の選択に責任を持ち、困難があっても粘り強く乗り越えようとする姿勢が育まれるのです。

    また、意思決定のプロセスで他者の意見を聞き、議論することは、コミュニケーション能力の向上にもつながります。

    努力を称賛し、詳しくフィードバックする

    生徒のグリットを育むには、努力を称賛し、詳しくフィードバックすることが大切です。 努力が認められ、適切な指導を受けることで、生徒は自信を持って粘り強く学習に取り組めるようになるからです。 称賛やフィードバックは、生徒の具体的な行動に対して行うことが重要です。 そうすることで、生徒は自分の頑張りが評価されていることを実感し、さらに努力しようという意欲が高まるのです。

    具体的には、以下のような工夫が考えられます。

    • 努力の過程を丁寧に見取り、具体的に褒める
    • 良い点だけでなく、改善点についても前向きに伝える
    • 生徒の進歩や成長を、データを示しながら可視化する
    • 小さな成功体験を積み重ね、自信につなげる

    このように、生徒の頑張りに気づき、言葉で伝えることが大切です。 ただし、褒めるだけでなく、課題についても建設的に指摘することが求められます。

    生徒の現状を正しく理解し、一人ひとりに合った丁寧なフィードバックを心がける必要があります。

    成功だけでなく、失敗も学びの機会ととらえることも重要です。 うまくいかなかった時こそ、改善点を探り、新たな戦略を考えるチャンスだと伝えることが大切でしょう。

    失敗を恐れず、粘り強くチャレンジする姿勢を称賛し、支援することが求められます。

    興味に基づいて生徒をグループ分けする

    生徒のグリットを育むには、興味に基づいてグループ分けをすることが効果的です。 同じ興味を持つ仲間と切磋琢磨することで、生徒は学習への意欲を高め、粘り強く取り組めるようになるからです。

    グループ分けの際は、生徒の興味関心を丁寧に聞き取り、できるだけ希望に沿うことが大切です。 そうすることで、生徒は自分の関心に没頭し、主体的に学びを深めていくことができるでしょう。

    具体的には、以下のようなグループ分けが考えられます。

    • 興味のあるテーマごとのプロジェクトチーム
    • 部活動やサークルなどの自主的な活動グループ
    • 得意分野を生かせる学習グループ
    • 関心の近い生徒同士の話し合いグループ

    このように、生徒の興味関心に基づいたグループを多く取り入れることが重要です。 同じ目標に向かって協力する過程で、生徒は仲間と支え合い、励まし合う大切さを学ぶことができます。

    困難な課題にも、仲間と一緒に粘り強く取り組む姿勢が育まれるのです。

    また、異なる興味を持つ生徒同士が交流する機会も大切です。

    多様な視点に触れることで、生徒は新たな興味や可能性を発見できるからです。 グループ活動の中で、生徒同士が刺激し合い、学びを深め合える関係性を築くことが求められます。

    自己の成長を基準とした評価を取り入れる

    生徒のグリットを育むには、自己の成長を基準とした評価を取り入れることが大切です。

    他者との比較ではなく、自分自身の成長を実感することで、生徒は学習への意欲を高め、粘り強く取り組めるようになるからです。

    評価の際は、生徒の努力の過程を丁寧に見取り、進歩を具体的に伝えることが重要です。

    そうすることで、生徒は自分の成長を実感し、さらに高い目標に向かって頑張ろうという気持ちが湧いてくるのです。

    具体的には、以下のような評価の工夫が考えられます。

    • 生徒自身が目標を設定し、達成度を自己評価する
    • 個人の伸びを可視化するポートフォリオ評価を取り入れる
    • 絶対評価を基本とし、相対評価は控えめにする
    • 努力の過程を重視し、結果だけで判断しない

    このように、生徒一人ひとりの成長に目を向けた評価を心がけることが大切です。 ただし、自己評価だけでは客観性に欠ける恐れがあります。

    教師が適切にサポートし、多面的な評価を行うことも必要不可欠でしょう。

    自分の成長を実感する経験は、生徒の自己効力感を高め、困難な課題にも立ち向かう原動力となります。 小さな進歩を一つひとつ積み重ねることで、生徒は着実に力を伸ばしていくことができるのです。

    生徒の可能性を信じ、成長を励まし続けることが、教師に求められる重要な役割だと言えます。

    学習時間の使い方を柔軟にする

    生徒のグリットを育むには、学習時間の使い方を柔軟にすることが大切です。

    生徒の興味や習熟度に合わせて、学習のペースや内容を調整することで、意欲を高め、粘り強く取り組めるようになるからです。 例えば、プロジェクト学習など、生徒が主体的に時間を管理する学習スタイルを取り入れることが考えられます。 そうすることで、生徒は自分のペースで学びを深め、困難な課題にも粘り強く向き合えるようになるでしょう。

    具体的には、以下のような工夫が考えられます。

    • 生徒の習熟度に合わせて、学習内容や進度を調整する
    • 生徒が自分で学習計画を立て、時間を管理する機会を設ける
    • 授業とは別に、自主学習の時間を確保する
    • 生徒の興味に合わせて、学習内容を選択できるようにする

    このように、画一的な時間割にとらわれず、生徒の多様性に配慮した時間の使い方を工夫することが重要です。

    もちろん、基礎的な知識や技能の習得も欠かせません。 生徒の実態を見極め、バランスの取れた時間配分を心がける必要があるでしょう。

    自分のペースで学習を進められる環境は、生徒の自律性を高め、粘り強く学び続ける姿勢を育ててくれます。

    時間を自分でコントロールする経験は、生徒の自己管理能力を向上させる効果も期待できます。 生徒の主体性を尊重し、柔軟な学習環境を整えることが、教師に求められる大切な役割だと言えます。

    失敗や挑戦を奨励する文化を作る

    生徒のグリットを育むには、失敗や挑戦を奨励する文化を作ることが大切です。

    失敗を恐れずにチャレンジできる環境があることで、生徒は粘り強く困難に立ち向かう力を身につけられるからです。

    そのためには、教師自身が失敗を恐れない姿勢を示し、生徒の挑戦を後押しすることが重要です。 失敗した時は、そこから学ぶことの大切さを伝え、再チャレンジを促すことが求められます。

    具体的には、以下のような工夫が考えられます。

    • 間違いを恐れずに発言できる心理的安全性のある環境を作る
    • 失敗から学ぶことの大切さを伝え、生徒の挑戦を称賛する
    • 教師自身が新しいことに挑戦する姿を見せる
    • 失敗事例を共有し、皆で改善策を考える機会を設ける

    このように、失敗を前向きにとらえ、挑戦を奨励する文化を醸成することが大切です。 ただし、失敗を肯定するだけでは不十分です。

    適切なフィードバックを行い、生徒が失敗から学び、成長できるようサポートすることも欠かせません。

    失敗を恐れずにチャレンジできる環境は、生徒の創造性を引き出し、新しい可能性を切り拓く原動力となります。

    困難な課題にぶつかった時も、諦めずに粘り強く向き合う姿勢が育まれるのです。 「失敗してもいい」というメッセージを発信し続けることが、教師に求められる重要な役割だと言えるでしょう。

    協力的な学びを促進する

    生徒のグリットを育むには、協力的な学びを促進することが大切です。

    仲間と力を合わせて困難な課題に取り組む経験を通して、生徒は粘り強く物事に向き合う力を身につけられるからです。

    そのためには、生徒同士が協力し合える学習活動を多く取り入れることが重要です。 お互いの良さを認め合い、高め合える関係性を築くことで、生徒は安心して挑戦できるようになるのです。

    具体的には、以下のような取り組みが考えられます。

    • グループでの探究活動やプロジェクト学習を積極的に導入する
    • ペアワークやグループディスカッションの機会を多く設ける
    • 生徒同士で教え合う、学び合う場面を意図的に作る
    • 異年齢の交流活動など、多様な協力の機会を用意する

    このように、生徒同士の関わり合いを大切にした協調的な学習環境を整えることが求められます。 もちろん、一人で集中して取り組む時間も必要です。

    メリハリを付けながら、協力的な学びと個人の学びをバランス良く組み合わせることが大切でしょう。

    仲間と協力して困難を乗り越える経験は、生徒の自己有用感を高め、社会性を育む効果も期待できます。

    支え合い、励まし合う中で、生徒は「一人ではない」という安心感を得られるのです。 生徒同士の豊かな関わり合いを大切にし、協力的な学びを支援することが、教師に求められる重要な役割だと言えます。

    グリットを伸ばす教育の効果と今後の展望

    グリットを重視した教育の実践例

    近年、グリットを重視した教育の実践が世界中で広がりつつあります。 例えば、アメリカの一部の学校では、グリットを育成するための特別なプログラムが導入されています。

    具体的には、目標設定やタイムマネジメント、感情コントロールなどのスキルを身につける授業が行われているそうです。 また、イギリスでは、粘り強さや回復力を養う「レジリエンス教育」が注目を集めています。

    日本でも、グリットを意識した教育実践が徐々に広がっています。 例えば、ある小学校では、「粘り強く努力する子を育てる」をスローガンに掲げ、日々の指導に取り組んでいるそうです。 具体的には、以下のような実践が行われています。

    • 失敗を恐れずチャレンジする姿勢を称賛する
    • 子供たちが自分で目標を設定し、振り返る機会を設ける
    • 興味関心に基づいた課題解決型の学習を多く取り入れる
    • 協力的な学びを通して、人と関わる力を育てる

    このように、グリットを育成するための様々な取り組みが、各地の学校で展開されています。 まだ始まったばかりの実践も多いですが、着実に成果を上げつつあるようです。

    子供たちの意欲や粘り強さが向上し、学力の伸びも見られるという報告もあります。

    グリットと学業成績の因果関係

    グリットと学業成績の間には、強い相関関係があることが分かっています。 しかし、両者の因果関係については、まだ十分に解明されていない部分もあります。

    グリットが高いから学業成績が良いのか、それとも学業成績が良いからグリットが高くなるのか。 この点については、今後さらなる研究が必要だと考えられています。

    ただし、いくつかの研究からは、グリットが学業成績に与える影響の方が大きいことが示唆されています。

    例えば、アメリカの大規模な調査では、中学生のグリットが高校での成績を予測することが明らかになりました。 一方、高校の成績が中学生のグリットを予測するという逆の因果関係は見られなかったそうです。

    また、グリットと学業成績の関係は、単純ではないかもしれません。 例えば、知能指数(IQ)が高い子供の場合、グリットの影響力は相対的に小さくなるという指摘もあります。

    また、教科によってもグリットの効果が異なる可能性が考えられます。

    グリットには再現性がないかもしれない、つまり本当はグリットなんてものはないのではないか、という研究もあります。(参考「非認知能力とGritは本当に有効か」)

    グリットと他の非認知的能力の関係性

    グリットは、非認知的能力の一つとして注目されています。

    非認知的能力とは、学力テストでは測れない、意欲や協調性、自制心などの力を指します。 これらの能力は、学業成績だけでなく、社会で活躍するために欠かせない力だと考えられています。

    グリットと他の非認知的能力の関係性については、徐々に研究が進められつつあります。

    例えば、グリットとレジリエンス(回復力)の関係が注目されています。 レジリエンスとは、困難な状況に直面しても、うまく適応し乗り越えていく力のことです。

    グリットとレジリエンスは、ともに粘り強さや忍耐力に関わる概念だと言えます。 実際、いくつかの研究から、両者の間には正の相関関係があることが示されています。

    また、グリットとマインドセット(心の在り方)の関係も注目されています。

    マインドセットとは、能力は努力次第で伸ばせると信じるか、生まれつきだと考えるかという信念のことです。

    成長的マインドセットを持つ人は、グリットが高くなる傾向があると報告されています。 自分の能力は向上できると信じることで、困難に立ち向かう粘り強さが育まれるのかもしれません。

    グリットを育てる教育の課題と可能性

    グリットを育てる教育は、大きな可能性を秘めています。 しかし、同時にいくつかの課題も指摘されています。 例えば、グリットを重視し過ぎると、過度な競争を助長したり、子供たちのストレスを高めたりする恐れがあります。

    また、グリットが低い子供を排除するような風潮が生まれることも懸念されています。 グリットを育てる教育を進める上では、こうした課題にも留意が必要だと考えられます。

    大切なのは、一人ひとりの個性や特性を大切にしながら、グリットを育てていくことです。 全ての子供が同じようにグリットを発揮できるわけではありません。

    それぞれのペースで、自分なりの目標に向かって粘り強く取り組む姿を認め、支援することが求められます。

    グリットを育てる教育は、まだ発展途上の分野だと言えます。 効果的な指導方法や評価の在り方など、明らかにすべき点は多く残されています。

    教師一人ひとりが創意工夫を凝らしながら、グリットを育てる教育を実践していくことが期待されます。 同時に、研究者と教育現場が連携し、エビデンスに基づいた指導方法を確立していくことも重要です。

    グリットを育てる教育の可能性を最大限に引き出すためには、多くの人の知恵と努力が必要不可欠だと言えるでしょう。

    子供たちの輝く未来のために、今、私たちにできることは何か。 グリットの視点を通して、教育の在り方を問い直していくことが求められています。

    最後に

    グリットを育てる教育の重要性が、今、注目を集めています。
    学校の目標の在り方を工夫することで、生徒の粘り強さや情熱を高められることが分かってきたからです。
    特に、個人の成長を重視する「習熟目標」の環境づくりが大切だと言えるでしょう。

    でも、グリットを伸ばすことは、簡単ではありません。
    教師一人ひとりの努力はもちろん、学校全体で取り組む体制づくりが欠かせません。
    時には、試行錯誤の連続かもしれません。
    それでも、グリットを育てることは、私たち一人ひとりの可能性を広げてくれるはずです。

    皆さんの将来は、無限の可能性に満ちています。
    困難に立ち向かう粘り強さ、目標に向かって情熱を注ぐ力。
    そんなグリットを胸に、自分なりの夢や目標に向かって歩んでほしい。
    それが、これからの時代を生き抜くための、大きな武器になるはずです。

    ※本記事は以下の本に掲載されている論文をもとに作成しています。ぜひご覧ください。

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    tokiwa eisuke

    ライター 兼 編集長:トキワエイスケ @etokiwa999
    株式会社SUNBLAZE代表。子どもの頃、貧困・虐待家庭やいじめ、不登校、中退など社会問題当事者だったため、社会問題を10年間研究し自由国民社より「悪者図鑑」出版。その後も社会問題や悪者が生まれる決定要因(仕事・教育・健康・性格・遺伝・地域など)を在野で研究しており、社会問題の発生予測を目指している。凸凸凸凹(WAIS-Ⅳ)。