採用時の性格検査って、正直ちょっと「盛る」よね、と思ったことはありませんか。
就活のエントリーシートや適性検査で、「少しでも良く見られたい」と感じるのは、きっと多くの人の“あるある”です。まじめさや協調性を少し高めに答えた経験がある人もいるでしょう。
従来は、採用時の性格検査は応募者が良く見せるため、本当の性格を測れず、将来の行動はあまり予測できないと考えられてきました。しかし、最新の研究は少し違う可能性を示しています。
オーストラリアのディーキン大学(Deakin University)やシンガポール・マネジメント大学(Singapore Management University)などの研究チームによる論文「HEXACO Personality Predicts Counterproductive Work Behavior and Organizational Citizenship Behavior in Low-Stakes and Job Applicant Contexts」(Journal of Research in Personality, 2018年)は、607人を約18か月追跡し、性格と職場行動の関係を調べました。
今回も、性格研究者で悪者図鑑著者のトキワ(@etokiwa999)が解説していきます。
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目次
採用時の性格検査は「盛れる」のが普通
研究が扱った「盛る(良く見せる)」とは
重要なのは、応募者は性格を良く見せやすいという事実です。
たとえばあなたが就活中ならどうしますか。
面接官に好かれたいと思いませんか。
そのとき少しだけ自分を良く書くかもしれません。
研究ではこれを「良く見せる回答」と呼びます。
つまり本来の自分より理想に近づける行動です。
実際に260人の応募者が調べられました。
一方で347人の非応募者も比べました。
その結果、応募者は次の性格が高く出ました。
- 誠実性
- 協調性
- 外向性
特に協調性は差が大きく出ました。
それでも完全に別人になるわけではありません。
つまり、少し盛る傾向はあるが極端ではないという結論です。
応募者と非応募者で比べた理由
大切なのは、本当に予測力が下がるかを知ることです。
もしあなたが企業の人事ならどうでしょう。
「盛られたら意味がない」と感じますよね。
そこで研究者は2つの集団を用意しました。
応募時に受けた人と通常の研究参加者です。
そして約18か月後に行動を測りました。
これは時間をあけた予測の形です。
同時に測るより厳しい方法です。
さらに年齢や性別も記録しました。
単純な違いで説明できないようにです。
こうして公平な比較を目指しました。
結果として、単なる偶然ではないと示そうとしました。
どの性格が上がりやすかったか
特に誠実性と協調性が高く出ました。
応募者は平均で約0.6から0.9差が出ました。
これは中くらいから大きめの差です。
たとえばテストで少しだけ高得点になる感じです。
一方で情動性と開放性は差がほぼありません。
つまり全部が上がるわけではありません。
社会的に良いとされる部分が上がります。
- 誠実性はまじめさです。
- 協調性は人への優しさです。
- 外向性は明るさです。
企業に好まれやすい性格です。
しかし差は1点満点の変化ではありません。
したがって、全体像はまだ読み取れると言えます。
スコアのばらつきが小さくなる現象
応募者では点数の広がりが小さくなりました。
ばらつきとは人ごとの差のことです。
応募者の広がりは約80%に縮みました。
たとえば身長がみな同じくらいになる感じです。
特に低めの人が上に寄る傾向があります。
そのため差が見えにくくなります。
しかし完全に同じにはなりません。
性格の基本構造は保たれていました。
つまり形は崩れていませんでした。
ゆえに、多少の圧縮はあっても意味は残ります。
それでも性格の形は大きく崩れない点
盛りがあっても性格のつながりは残りました。
約1年半後に再度性格を測りました。
非応募者は相関0.68でした。
応募者は0.54でした。
相関とは似た傾向の強さです。
0に近いほど関係が弱いです。
応募者は少し弱まりました。
しかし完全に消えてはいません。
もしあなたが少し背伸びしても、
本当の自分は少し残りますよね。
研究も同じ傾向を示しました。
つまり基礎の性格は維持されていました。
採用時の性格検査でも職場の良い行動を予測できた
研究で見た「良い行動(OCB)」とは
重要なのは、性格が職場の良い行動をある程度説明できた点です。
良い行動とは何でしょうか。
これは会社や仲間を助ける行動です。
たとえば忙しい同僚を手伝うことです。
ゴミを拾うような小さな配慮も含みます。
研究では16項目で測りました。
7段階でどのくらいするか答えます。
もしあなたが1年後に働いていたらどうですか。
性格はその行動に関係するでしょうか。
実際に約18か月後に調べました。
その結果、誠実性や外向性が関係しました。
相関はおよそ0.17から0.39でした。
0.3前後は中くらいの強さです。
つまり、性格は良い行動をある程度予測しました。
OCBと関係が強かった性格
特に誠実性と外向性が関係していました。
誠実性とはまじめさのことです。
約束を守る傾向を示します。
外向性は人との関わりを楽しむ性格です。
また協調性も影響しました。
協調性は他人を思いやる力です。
一方で情動性は弱い関係でした。
開放性も大きくはありません。
つまり全部が同じ強さではありません。
企業に役立つ行動に結びつく性格が目立ちました。
したがって、性格の種類によって差がありました。
応募者でも傾向がほぼ同じだった点
応募者でもほぼ同じ関係が見られました。
盛っていても結果は似ていました。
非応募者との相関差は平均0.052ほどです。
これは大きな差とは言いにくいです。
分散説明率は非応募者で21%でした。
応募者では少し低めでした。
しかし統計的に決定的ではありません。
もしあなたが少し良く書いても、
行動との関係は残るということです。
つまり応募時でも一定の予測力は保たれました。
予測力がどれくらい下がったかの結論
全体として予測力は少し下がる可能性があります。
研究では約3分の1低下と推定しました。
ただし完全に消えるわけではありません。
応募者でも説明率は10%以上ありました。
数字は小さく見えるかもしれません。
しかし行動予測では意味のある値です。
さらに統計的有意差は明確でない部分もあります。
したがって過度な断定はできません。
結論として、低下は小さめと考えられます。
予測力の見方で印象が変わる注意点
見る指標によって印象は変わります。
相関で見るか説明率で見るかです。
応募者は点のばらつきが小さいです。
ばらつきが小さいと相関は低く見えます。
しかし実際の回帰式は大差ない場合もあります。
つまり数字の見方が重要です。
もしあなたがテストの平均だけ見たら、
本質を見逃すかもしれません。
研究もその点を注意しています。
だからこそ単純な比較は避けるべきです。
採用時の性格検査でも職場の問題行動を予測できた
研究で見た「問題行動(CWB)」とは
重要なのは、性格が職場の問題行動とも関係していた点です。
問題行動とは何でしょうか。
これは会社や人に害を与える行動です。
たとえばサボる行動です。
他人への嫌がらせも含みます。
物を壊す行為も対象です。
研究では19項目で測りました。
7段階で頻度を答えました。
もしあなたが職場で働くなら、
性格と関係がありそうですか。
実際に約18か月後に測定しました。
結果として、いくつかの性格が強く関係しました。
CWBと関係が強かった性格
特に誠実性が強い予測因子でした。
誠実性が低いほど問題行動が多い傾向です。
相関はおよそマイナス0.30前後でした。
さらに協調性や外向性も関係しました。
勤勉さも負の関係を示しました。
情動性と開放性は小さい値でした。
つまり中心は誠実性です。
誠実性とは不正を避ける傾向です。
約18%の分散を説明しました。
これは決して小さくありません。
したがって、誠実性は重要な鍵でした。
応募者でも傾向がほぼ同じだった点
応募者でも基本的な関係は維持されました。
盛っていても方向は同じでした。
非応募者よりやや弱い傾向でした。
しかし平均差は小さめでした。
応募者の説明率は約11%でした。
非応募者は18%でした。
半分ほど減ったように見えます。
ただし統計的差は明確ではありません。
つまり確定的とは言えません。
結論として大きな崩れはありませんでした。
応募者で性格の効き方が少し変わる可能性
一部で効き方の違いが見られました。
誠実性は応募者で強く出ました。
一方で外向性は弱まりました。
回帰係数は応募者でマイナス0.45でした。
非応募者ではマイナス0.14でした。
これは傾向の違いを示します。
しかし年齢や性別を入れると消えました。
つまり確実な違いとは言えません。
もしあなたが少し背伸びしても、
影響の方向は大きく変わりません。
ゆえに慎重に解釈すべき結果です。
年齢や性別を入れると差が弱まる点
背景要因を入れると差は小さくなりました。
年齢が高いほど問題行動は減りました。
男性はやや高い傾向がありました。
これらを調整すると差は弱まりました。
応募者と非応募者の差も縮みました。
つまり単純比較は危険です。
複数の要因が関わります。
研究ではその点も確認しました。
したがって結論は控えめです。
総合すると、性格の予測力は保たれていました。
採用時の性格検査は「細かい性格」を見ると精度が上がる
6つの性格だけで見る分析
まず6つの大きな性格で分析しました。
誠実性や協調性などです。
非応募者ではCWBを18%説明しました。
OCBは21%でした。
応募者ではやや低くなりました。
それでも一定の割合です。
6つだけでも意味があります。
しかし研究者はさらに踏み込みました。
もっと細かく見たらどうなるかです。
そこで25の細かい性格を使いました。
さらに細かい性格で見る分析
細かい性格を加えると説明力が増えました。
これを細部分析と言います。
25の要素に分けて見ます。
非応募者のOCBは32%になりました。
21%から11ポイント増えました。
CWBも21%に上がりました。
応募者でも増加しました。
ただし幅は小さめでした。
もしあなたを細かく知れば、
より具体的に予測できる感じです。
つまり細部を見る価値がありました。
細かい性格はどれくらい増えたか
増加はおよそ3分の1程度でした。
分散説明率が約1.3倍です。
ただし全てが有意ではありません。
一部は偶然の可能性もあります。
非応募者ではいくつかの細部が有効でした。
応募者では少数のみでした。
一致しない点もありました。
したがって過信はできません。
それでも傾向は見えました。
細かい分析は一定の意味を持ちました。
再現性は慎重に見るべき点
ただし再現性には注意が必要です。
応募者と非応募者で一致しませんでした。
同じ細部が常に有効とは限りません。
大規模研究がさらに必要です。
また自己申告で測っています。
他者評価では違う可能性があります。
研究もその限界を認めています。
だから断定はしません。
しかし方向性は示されました。
結論は慎重ですが前向きです。
この研究の限界と読み方
最後に限界も理解することが重要です。
行動は自己申告でした。
客観的記録ではありません。
サンプルは607人です。
応募者は260人でした。
より大きな研究が望まれます。
それでも時間差設計は強みです。
約18か月後の行動を測りました。
つまり短期効果ではありません。
もしあなたが人事なら、
完全に無意味とは言えないはずです。
総合すると、採用時の性格検査は一定の可能性を示しました。
最後に
今回の研究からわかったのは、採用時の性格検査は「盛られる」可能性があっても、まったく無意味ではないということです。応募者は少し良く見せる傾向がありますが、それでも約18か月後の良い行動や問題行動を、一定の割合で予測できました。特に誠実性は、職場でのトラブルの少なさと強く関係していました。
もちろん、説明できる割合は100%ではありません。自己申告という限界もあります。それでも「どうせ当てにならない」と切り捨てるのは早いと言えます。性格は将来の行動のヒントになります。
これから就活をする人も、採用に関わる人も、性格検査を単なる形式だと思わず、自分や相手の行動傾向を知る手がかりとして、冷静に向き合うことが大切です。

ライター 兼 編集長:トキワエイスケ @etokiwa999
株式会社SUNBLAZE代表。子どもの頃、貧困・虐待家庭やいじめ、不登校、中退など社会問題当事者だったため、社会問題を10年間研究し自由国民社より「悪者図鑑」出版。その後も社会問題や悪者が生まれる決定要因(仕事・教育・健康・性格・遺伝・地域など)を在野で研究し、論文4本執筆(うち2本ジャーナル掲載)。社会問題の発生予測を目指している。凸凸凸凹(WAIS-Ⅳ)。








