非認知能力の遺伝は、最近とくに注目されている話題です。
学校のテストや成績だけでなく、「やる気」「我慢する力」「まじめさ」なども、人生の成功に大きく関係しています。
こうした心の力は「非認知能力」と呼ばれています。
でも、それが生まれつき決まっているのか、それとも育ち方で変わるのか、不思議に思ったことはありませんか?
今回紹介するのは、「Investigating the Genetic Architecture of Non-Cognitive Skills Using GWAS-by-Subtraction」という研究です。
この論文では、100万人以上のデータを使って、非認知能力と遺伝との関係をくわしく調べています。
これから紹介する内容は、自分の性格や生き方を見つめなおすヒントになるかもしれません。
今回も、性格研究者で悪者図鑑著者のトキワ(@etokiwa999)が解説していきます。
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非認知能力の遺伝とは何か?
非認知能力とはどんな力?
まず非認知能力とは、知識や学力以外の心の力のことです。
たとえば、やる気を持ち続ける力や、途中であきらめない気持ちなどです。
他にも、人と仲良くする力や、自分の感情を落ち着かせる力も含まれます。
このような力は、テストでは測れないけれど、生きていくうえでとても大切です。
具体的には、次のような力がふくまれます。
- モチベーション(やる気)
- 自己コントロール(がまんする力)
- 粘り強さ(途中でやめない心)
- 協調性(人とうまくやる力)
非認知能力は、学校の成績や将来の仕事にも深く関係します。
つまり、見えないけれど大きなちからなのです。
このように、非認知能力とは「心の性格や行動のちがい」にかかわる力です。
認知能力とのちがいとは?
認知能力は「頭のよさ」、非認知能力は「心の力」です。
具体的に、認知能力とは、情報を早く理解したり、問題を解いたりする力です。
たとえば、計算や読解、記憶力などがこれにあたります。
一方で、非認知能力は人との関わり方や考え方に関係します。
つまり、ちがいは以下のようになります。
- 認知能力:知識を使って考える力
- 非認知能力:行動や気持ちをコントロールする力
研究では、どちらも教育や人生に大きくかかわることがわかっています。
ですが、非認知能力はまだ知られていないことも多いです。
このように、認知と非認知はちがう種類の力で、どちらも大切なのです。
なぜ非認知能力に注目が集まっているのか
非認知能力は、人生の成功に深くかかわっているからです。
最近の研究で、学校の成績だけでなく、将来の仕事や健康にも関係していることがわかってきました。
とくに、子どものころの教育が大人になってからの生活にも影響することが注目されています。
これは次のような理由によります。
- 自分の気持ちをコントロールする力が、社会で役立つ
- 人とうまく関わる力が、仕事の場で必要とされる
- 我慢強さややる気が、高い学びにつながる
つまり、勉強だけでなく「どう生きるか」にも関係があるのです。
また、教育の現場でもテストだけでなく心の力を育てる動きが広がっています。
こうして、非認知能力は多くの人から関心を持たれるようになっています。
非認知能力と教育の関係
非認知能力は、教育の成果にも大きな影響をあたえます。
これは、学校での成績だけでなく、どこまで学びを続けるかにも関係しています。
研究では、モチベーションや自己管理の力が高い人は、より高い学歴を得やすいことがわかっています。
また、早い段階の教育支援が将来の成功につながることも確認されています。
さらに、ある研究では次のような点が明らかになりました。
- 認知能力が変わらなくても、非認知能力の向上で学歴が上がる
- 子どものころの教育プログラムが、長いあいだ良い影響を与える
- 非認知能力の高い人は、より健康で安定した生活を送っている
このように、心の力が学びの質を高めてくれるのです。
教育において、非認知能力は見えないけれどとても大きな役割を持っています。
非認知能力は遺伝するのか?
非認知能力も、ある程度は親から子へと受けつがれます。
ただし、頭のよさほどはっきりとした遺伝の影響はないとされています。
本論文では、100万人以上のデータから分析が行われました。
先行研究では双子の調査から以下のような結果が出ています。
- 非認知能力の遺伝率は30~50%程度とされている
- 同じ家庭で育った影響(共有環境)や個人の経験(非共有環境)も関係する
- 環境との相互作用によって、個人差が生まれる
つまり、非認知能力は遺伝だけで決まるものではないということです。
育ち方や経験によって変わる部分も大きいのです。
このように、非認知能力には遺伝の要素もありますが、それだけでは説明できません。
非認知能力の遺伝に関する最新の研究
100万人以上のデータを使った大規模研究
この研究は、100万人以上のデータを使った非常に大きな研究です。
教育達成と非認知能力の関係を、遺伝子レベルで調べました。
具体的には、教育の最終学歴やテストの結果などと、遺伝情報を結びつけて分析しました。
さらに、認知能力を取りのぞいたうえで、残った非認知的な要素だけを取り出しました。
この研究に参加した人は以下の通りです。
- 教育達成の調査:約113万人
- 認知能力の調査:約26万人
- 多くの国と地域から集められたデータ
これまでの研究と比べても、非常に広い範囲をカバーしています。
たくさんの人の遺伝情報をもとにしているので、結果の信頼性が高いのが特徴です。
このように、大規模な調査により、非認知能力の遺伝に関する深い理解が進みました。
「GWAS-by-subtraction」とは何か?
この研究では「引き算」を使った特別な方法を使っています。
それが「GWAS-by-subtraction(引き算による遺伝子解析)」という方法です。
簡単に言えば、認知能力の影響を取りのぞき、それ以外の要素(非認知)だけを残すという手法です。
たとえば、次のような流れで分析が行われます。
- 教育達成に関係する遺伝子を見つける
- 認知能力に関係する遺伝子を引き算する
- 残った遺伝子が「非認知能力」に関係している
このやり方を使うことで、直接測れない非認知的な特徴を取り出すことができます。
つまり、「測れないものを、別の角度から見つけ出す」方法と言えます。
このように、工夫された手法によって、非認知能力の遺伝が見えるようになったのです。
認知と非認知を分けて調べる理由
非認知と認知のちがいをはっきり分けることが大事だからです。
これまでの研究では、ふたつをまとめて見てしまうことが多くありました。
ですが、それでは「どちらがどれくらい影響しているのか」が分かりません。
今回の研究では、それぞれの影響を分けて次のように調べました。
- 教育達成を、認知と非認知に分けて見る
- 各グループに対して、どんな遺伝子が関係するかを調べる
- それぞれの影響度を数字で示す
こうすることで、非認知能力だけの力をより正確に知ることができるのです。
そして、その結果が社会や教育にどう影響するかも見えてきます。
このように、ちがいを明確にすることで、新しい発見が得られるのです。
157個の遺伝子領域が関係していた
非認知能力に関係する157個の遺伝子が見つかりました。
この中には、これまで知られていなかった新しいものもふくまれています。
また、どれも「認知能力とは関係しない」部分だということも分かっています。
見つかった遺伝子の特徴は以下の通りです。
- それぞれが独立して働いている
- 主に脳の中で使われている
- 行動や性格に関係する部分に多く見られる
とくに、感情や行動をコントロールする場所での発現が多かったとされています。
これは、非認知能力が「心の動き」に深くかかわっている証拠になります。
また、教育達成の遺伝的要因のうち、57%が非認知能力要因ということも分かりました。
このように、遺伝子の研究からも非認知能力の特別な役割が明らかになっています。
非認知能力の遺伝と性格との関係
誠実性や外向性との関係
非認知能力は誠実性や外向性と深くつながっています。
誠実性とは、まじめに物事をこなす力のことです。
たとえば、約束を守ったり、こつこつ努力を続けたりすることです。
外向性とは、人との関わりを前向きに楽しめる性格です。
研究では、次のような結果が出ています。
- 非認知能力と誠実性の遺伝的な関係:0.13
- 非認知能力と外向性の関係:0.14
- どちらも、教育の成功に関係がある性格です
これらの性格は、大人になるにつれて伸びるとされています。
つまり、非認知能力は「成長する力」とも言えるかもしれません。
このように、非認知能力は、まじめさや社交性といった性格とつながっています。
協調性や情動性との関係
非認知能力は、やさしさや感情の安定とも関係しています。
協調性とは、他人と仲良くする力のことです。
情動性(神経症傾向)は、感情のゆれやすさを表します。
調査では以下のような傾向が確認されています。
- 協調性との遺伝的な関係:0.14
- 情動性との関係はマイナス0.15(つまり感情が安定している)
非認知能力が高い人ほど、落ち着いて行動できる傾向にあります。
また、人とうまくやっていく力も高いことがわかります。
このように、非認知能力は「感情を整える力」とも深く関係しているのです。
開放性との強いつながり
非認知能力の遺伝に関するよくある質問
非認知能力は何歳まで伸ばすことができますか?
非認知能力は生涯にわたって向上可能です。特に幼少期から青年期にかけて大きく成長し、意識的な取り組みにより大人になっても改善できます。
遺伝率30-50%とは具体的にどういう意味ですか?
これは非認知能力の個人差のうち、30-50%程度が遺伝的要因で説明できるという意味です。残りの50-70%は環境や経験によって決まります。
子どもの非認知能力を高めるにはどうすればよいですか?
目標設定、困難への挑戦機会の提供、感情表現の練習、他者との協力体験などが効果的です。日常的な関わりの中で継続して取り組むことが重要です。
認知能力が低くても非認知能力で補えますか?
はい、非認知能力の向上により学習効果や人生の成功度は大幅に改善されます。やる気や継続力があれば、認知能力の不足をカバーできることが研究で示されています。
非認知能力の遺伝子検査は受けられますか?
現在、非認知能力に特化した遺伝子検査は一般的ではありません。157個の関連遺伝子が発見されていますが、実用的な検査法の確立にはさらなる研究が必要です。
非認知能力が高い人の特徴を教えてください
目標に向かって継続的に努力し、困難な状況でも感情を安定させ、他者と良好な関係を築くことができます。また、新しいことへの好奇心も強い傾向があります。






