グリットという言葉を聞いたことがあるでしょうか。
アメリカの心理学者アンジェラ・ダックワース博士が提唱した概念で、「情熱と粘り強さ」を意味します。
最近の研究で、このグリットが学業成績や人生の成功に大きな影響を与えることが分かってきました。
特に、学校の環境づくりがグリットの育成に重要だと指摘されています。
そんな中、興味深い研究結果が発表されました。
「Fostering Grit: Perceived School Goal-Structure Predicts Growth in Grit and Grades」というタイトルの論文です。
この研究では、学校の目標の在り方が生徒のグリットにどのように影響するのかを調べました。
果たして、どのような学校環境がグリットを高めるのでしょうか。
また、グリットを伸ばすことで、私たちの学びや人生はどう変わるのでしょうか。
今回も、性格研究者で悪者図鑑著者のトキワ(@etokiwa999)が解説していきます。
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目次
グリットとは?熱意と粘り強さを表す新しい概念
グリットの定義 – 情熱と努力の持続性
グリットとは、長期的な目標に対する情熱と粘り強さを表す概念です。
アメリカの心理学者アンジェラ・ダックワース博士が提唱しました。
グリットは、目標達成に向けて努力を持続する力だと言えます。
興味や熱意を長く保ち続ける側面と、困難があっても諦めずに頑張り抜く側面の2つがあります。
つまり、グリットとは長期的な目標の追求に必要不可欠な資質と言えるでしょう。
グリットは以下の2つの要素から成り立っています。
- 興味・情熱の一貫性(Consistency of Interest)
- 努力の粘り強さ(Perseverance of Effort)
前者は目標に対する深い興味を持ち続ける力、後者は障害にぶつかっても努力を続ける力です。
この2つが組み合わさることで、人はグリットを発揮し、長期的な目標の達成に近づくことができるのです。
グリットはIQとは関係ない
グリットは、知能指数(IQ)とは関連がないことが分かっています。
つまり、頭の良し悪しはグリットの高さとは関係がないということです。
むしろ、グリットは IQよりも学業成績や仕事での成功をよく予測するとされています。
ダックワース博士の研究では、IQが同程度の人でも、グリットが高い人ほど様々な場面で優れた成果を収めていました。
これは、グリットがIQのような生まれつきの能力ではなく、後天的に伸ばせる資質だからだと考えられています。
グリットとIQの違いは以下の通りです。
- グリット:努力と情熱の持続性に関わる性格的な資質
- IQ:言語理解や論理的思考力など、認知的な能力
ダックワース博士は、「グリットこそが人生の成功を決める最大の要因だ」と主張しています。
知識や技能よりも、それを長期的に活用する情熱と粘り強さが重要だというわけです。
グリットの高い人の特徴
グリットの高い人は、以下のような特徴を持っています。
- 長期的な目標達成に焦点を当てている
- 失敗してもすぐに立ち直り、努力を継続できる
- 困難な状況でもあきらめずに粘り強く取り組める
- 目標に向けた深い興味と情熱を持ち続けられる
また、グリットが高い人は以下のような行動傾向があることも分かっています。
- 自分の能力を伸ばすために努力を惜しまない
- 練習や努力を通じて着実に力を伸ばしていく
- フィードバックを積極的に求め、自分の成長に役立てる
- 目標達成のためなら、苦手なことにも挑戦する
つまり、グリットが高い人は努力家であり、成長志向が強いと言えます。
自分の能力を固定的にとらえるのではなく、伸ばしていこうとする柔軟な考え方(Growth Mindset)を持っているのです。
このようなグリットの高い人の特徴は、年齢や立場に関わらず、誰にでも当てはまるでしょう。
学生から社会人まで、グリットを意識的に高めることが、長期的な目標達成に役立つはずです。
日々の生活や仕事の中で、グリットの視点を取り入れてみるのも良いかもしれません。
グリットが学業成績や人生の成功に与える影響
グリットと学業成績の関係
学業成績と密接に関係することが明らかになっています。
グリットが高い生徒ほど、テストの点数や GPA(Grade Point Average)が良い傾向にあります。
例えば、ダックワース博士らの研究では、グリットが高い生徒は中学校の成績が良く、高校や大学でも優秀な成績を収めていました。
また、勉強時間が同じ生徒でも、グリットが高い生徒の方が成績が良かったのです。
この結果は、グリットが勉強への取り組み方に影響を与えていることを示唆しています。
グリットと学業成績の関係は以下のように説明できます。
- グリットが高い生徒は、勉強に対する興味や意欲を長く保ち続けられる
- 勉強が難しくなったり、失敗してもあきらめずに頑張り続けられる
- 長期的な目標(良い成績を取るなど)に向けて計画的に勉強に取り組める
つまり、グリットの高さが学習への積極的な姿勢を生み、それが良い成績につながるのです。
知識やスキルを身につけるためには、継続的な努力が欠かせません。
その努力を支えるのが、グリットなのです。
学力向上を目指す教育現場では、生徒のグリットを高める工夫が重要だと言えるでしょう。
グリットが予測する人生のアウトカム
グリットは、学業成績だけでなく、人生の様々な側面で成功を予測することが分かっています。
例えば、グリットが高い人ほど、仕事や趣味、対人関係などで優れた成果を挙げる傾向があります。
ダックワース博士らの研究では、以下のような結果が報告されています。
- グリットが高い営業担当者ほど、販売実績が良い
- グリットが高い教師ほど、生徒の学力向上に貢献している
- グリットが高い軍人ほど、厳しい訓練を乗り越え、任務を完遂できる
また、グリットは人生の満足度とも関連することが示唆されています。
目標に向けて粘り強く努力することで、達成感や自己効力感が高まるのでしょう。
このように、グリットは学業面だけでなく、人生全般において成功や幸福感に寄与すると考えられます。
人生の様々な場面で成功するためには、以下のようなグリットの力が必要です。
- 困難な状況でも諦めずに努力し続ける力
- 自分の目標や興味を長期的に追求する力
- 失敗を恐れずに新しいことにチャレンジする力
グリットを高めることは、よりよい人生を送るためのスキルを身につけることだと言えるでしょう。
学校教育でグリットの重要性を教えることは、子供たちの将来の成功を後押しすることにつながります。
また、大人になってからもグリットを意識的に鍛えることで、人生をより豊かにすることができるはずです。
グリットを測定する方法
グリットを測定するためには、質問紙やテストを用いるのが一般的です。
代表的なのは、ダックワース博士らが開発した「Grit尺度」です。
この尺度は、以下の2つの側面からグリットを評価します。
- 興味の一貫性(Consistency of Interest)
- 努力の粘り強さ(Perseverance of Effort)
具体的には、以下のような質問項目に対して、自分がどの程度当てはまるかを5段階で回答します。
- 新しいアイデアや計画を思いつくと、以前の計画から注意がそれる
- 私が始めたことは、必ずやり遂げる
- 目標の達成に何ヶ月もかかるような問題に取り組み続けるのは難しい
- 私は勤勉である
このような質問への回答を点数化し、合計点を算出することでグリットの高さを測定するのです。
Grit尺度は信頼性と妥当性が確認されており、世界中で活用されています。
グリットを測る他の方法としては、以下のようなものがあります。
- 行動観察:実際の行動や成果から、グリットの高さを評価する
- 他者評価:周囲の人(教師や上司など)に、本人のグリットについて評価してもらう
これらの方法を組み合わせることで、より多面的にグリットをとらえることができるでしょう。
※グリットはビッグファイブやHEXACOモデルの誠実性とも関連しています。
学校の目標構造がグリットに与える影響
学校の目標構造とは?習熟目標と遂行目標
学校の目標構造とは、学校や教師が生徒に求める目標の在り方を表す概念です。
心理学者のキャロル・ドゥエックらによって提唱されました。
目標構造は、大きく「習熟目標(Mastery Goal)」と「遂行目標(Performance Goal)」の2つに分けられます。
それぞれの目標は、以下のような特徴を持っています。
- 習熟目標:新しい知識やスキルの習得、理解の深化、個人の成長を重視する
- 遂行目標:他者と比較した成績や能力の優劣、競争での勝利を重視する
学校や教師が習熟目標を強調する場合、生徒は自分の興味や理解に基づいて学習に取り組むようになります。
一方、遂行目標が強調される場合、生徒は他者との比較や競争に関心が向きがちです。
つまり、学校の目標構造によって、生徒の学習への動機づけや取り組み方が異なってくるのです。
研究によると、学校の目標構造は生徒の様々な側面に影響を与えることが分かっています。
例えば、習熟目標を重視する学校の生徒は、以下のような特徴があると報告されています。
- 学習内容への興味や理解が深まる
- 失敗を恐れずに挑戦し、粘り強く取り組める
- 仲間と協力して学ぶことを楽しむ
一方、遂行目標を重視する学校の生徒は、学習への不安が高く、失敗を恐れて挑戦を避ける傾向にあります。
このように、学校がどのような目標を大切にするかによって、生徒の学習観や行動が大きく左右されるのです。
習熟目標構造の学校とグリットの関係
習熟目標を重視する学校は、生徒のグリットを高める効果があることが明らかになっています。
こういった学校では、個人の成長や上達を大切にする雰囲気があります。
習熟目標の学校がグリットを高めるメカニズムは、以下のように考えられます。
- 生徒は自分の興味や目標に基づいて学習に取り組める
- 努力の過程が評価されるため、粘り強く頑張ることの大切さを学べる
- 失敗を恐れずにチャレンジできる安心感がある
- 仲間と協力して学ぶ楽しさを通して、学習への興味を持続できる
このように、習熟目標の環境は生徒の内発的な動機づけを高め、グリット向上につながるのです。
実際、習熟目標の学校では、生徒の学習意欲や学業成績が高いことが報告されています。
また、グリットが高まることで、長期的な目標達成や人生での成功にもつながると考えられます。
学校教育において、習熟目標を重視することは非常に重要だと言えるでしょう。
そのためには、以下のような工夫が求められます。
- 生徒の興味や関心を引き出す多様な学習活動を用意する
- 努力の過程を丁寧に見取り、適切にフィードバックする
- 失敗を恐れずにチャレンジできる心理的安全性を確保する
- 協同的な学習の機会を多く設ける
このような習熟目標の視点を取り入れることで、生徒のグリットを効果的に育成できるはずです。
グリットの力を身につけた生徒は、学校生活だけでなく、将来の様々な場面で活躍できるでしょう。
遂行目標構造の学校とグリットの関係
遂行目標を重視する学校は、生徒のグリットにマイナスの影響を与える可能性があります。
こういった学校では、競争や他者比較が重視され、テストの点数や順位が過度に強調されがちです。
遂行目標の学校がグリットを低下させるメカニズムは、以下のように考えられます。
- 他者との比較に意識が向かい、自分の興味や目標が見失われる
- 失敗が許されない雰囲気の中で、粘り強く努力することが難しくなる
- テストの点数だけが重視され、努力の過程が評価されない
グリット(Grit)やり抜く力に関するよくある質問(FAQ)
グリットは生まれつきの能力ですか?
グリットは後天的に身につけられる能力です。努力と環境によって向上でき、年齢に関わらず育成可能な資質として研究で確認されています。
グリットを高めるために家庭でできることはありますか?
子どもの興味を尊重し、困難にぶつかった時に「まだできない」と伝える、過程を褒める、長期目標を一緒に立てるなどが効果的です。
グリットが高すぎると問題はありますか?
過度なグリットは柔軟性を欠く場合があります。状況に応じて目標を見直すことも重要で、バランスの取れたグリットが理想的です。
グリットが低い子どもの特徴は何ですか?
すぐに諦める、興味がころころ変わる、困難を避けたがる、短期的な結果ばかり求めるなどの傾向があります。適切な支援で改善できます。
グリットを測るテストはどこで受けられますか?
ダックワース博士開発のGrit尺度がオンラインで無料公開されています。ただし、正式な評価には専門家の指導を受けることをお勧めします。
スポーツや習い事でもグリットは育ちますか?
はい。継続的な練習、目標設定、困難な技術習得への挑戦など、スポーツや習い事はグリット育成に非常に効果的な活動です。

